生物の歴史
地球は約46億年前に誕生し、生命をはぐくんできました。ここでは、多くの化石標本をもとに、約38億年前の生命の誕生から人類誕生までの生物の歴史をたどります。
生物世界の拡大(海中) 音声案内 ※YouTubeにリンク
地球は今から約46億年前に誕生しました。原始地球上に海が誕生すると,そこでは生命を支える物質が自然合成されていき,やがて生命へと発展しました。生命がどのようにして誕生したかは明らかではありませんが,最も古い微生物の化石を含む地層の年代から,生命の起源は約38憶年前と推定されています。原始生物は酸素を必要としない嫌気性(けんきせい)生物で,海中の有機物を取り入れて従属栄養(じゅうぞくえいよう)型の生物であったと考えられています。 |
海洋生物の発展 音声案内 ※YouTubeにリンク
脊椎(せきつい)動物(魚類,両生類,爬虫(はちゅう)類,鳥類,哺乳(ほにゅう)類が含まれる)の祖先は海底で濾過食(ろかしょく)をしていたと考えられます。カンブリア紀の終わりごろになると脊椎動物の祖先は懸濁物食者(けいだくぶつしょくしゃ)からから捕食者へと進化し,獲物を追いかける上で有利な目,耳,鼻などの感覚器官を獲得しました。シルル紀には,顎(あご)を持った魚類が出現し,より強力な捕食者となりました。顎を獲得した脊椎動物はデボン紀になるとさまざまなものへ分化しました。
顎のない魚類:無顎類(むがくるい) ドレパナスピス(異甲類(いこうるい)/デボン紀) 現在のヤツメウナギやヌタウナギは無顎類の生き残り。顎がないため,食物は口から吸入して入れた |
顎のある魚類:顎口類(がくこうるい) ボトレオレピス(板皮類(ばんぴるい)/デボン紀)</strong 板皮類はデボン紀に繁栄し,絶滅した魚類。体が分厚いこうらでおおわれている。体長が2mを超すものがあり,デボン紀最大の捕食者となった。 |
生物の上陸 音声案内 ※YouTubeにリンク
地層に残された土壌や植物の破片,胞子の化石から,オルドビス紀の終わりには,地衣類(ちいるい),コケ類,菌類(きんるい)そして小さな無脊椎(むせきつい)動物による陸上の生態系が成立していたと推定されます。しかし,生物の本格的な上陸は,維管束(いかんそく)植物がシルル紀に出現してから始まりました。デボン紀になると維管束植物は最初の森林を形成するまでに進化し,動物に重層的な生活空間を与えるようになりました。この生活空間に海から入り込めたのは,無脊椎動物の内のほんの一部でした。 |
陸上脊椎動物の進化
デボン紀に出現した最初の四足類(しそくるい)は昆虫などをを食べる捕食者で現在の両生類のように水中に卵を産んでいました。石炭紀の後期になると,乾燥した陸上に卵を産むことのできる有羊膜類(ゆうようまくるい)が現れ,その中から維管束(いかんそく)植物を食べる四足類がはじめて出現しました。このとき,はじめて陸上の脊椎動物による植食者から捕食者までの役割分担が完成しました。これ以降の歴史は,地球を襲(おそ)う環境変動の影響を受けて,一旦(いったん)成立した役割分担が大量絶滅のたびに破壊され,また再建されるということを数千万年おきに繰り返すものとなりました。
ティラノサウルス頭骨(レプリカ)トリアス紀の終わり頃,哺乳類様爬虫類が衰えると,それに代わってアルコサウルス類(恐竜,ワニ,鳥など)が繁栄し始めました。アルコサウルスの繁栄は白亜紀の終わりまで続き,その間,哺乳類は小型で目立たない存在でした。ティラノサウルスは白亜紀後期の恐竜で,地球の歴史上最大の捕食者です。しかし,この最大の捕食者も白亜紀最後の大量絶滅を生き延びることができず絶滅してしまいました。興味深いことに,このティラノサウルスが属する肉食恐竜の仲間は,鳥に近縁であるとする説があります。
ティラノサウルス 音声案内 ※YouTubeにリンク |
哺乳類の時代
恐竜が絶滅した約6500万年前から現在にいたる新生代は,哺乳類が大発展した時代です。前半の古第三紀(こだいさんき)には地球は高緯度まで暖かく,陸地は深い森林におおわれ,哺乳類はそこで進化しました。しかし,新第三紀(しんだいさんき)になると高緯度地方で寒冷化がはじまり,乾燥地域が世界各地に現れます。厳しい気候の下にある地域は時代が下がるにつれて拡大し,乾燥・寒冷気候に耐えられる動植物が進化しました。第四紀(だいよんき)になると,氷期が周期的に地球を襲(おそ)うようになり,そのたびに高緯度地方の陸地は氷河・氷床(ひょうしょう)によっておおわれました。
メッスル鉱山の化石 プロパレオテリウム(奇蹄目(きていもく) ドイツのメッスル鉱山からは始新世のきわめて保存のよい動植物化石が産出し,当時の熱帯~亜熱帯林の生物相を教えてくれます。 |
霊長類(れいちょうるい)の進化とヒトの起源 音声案内 ※YouTubeにリンク
中生代の終わりごろに,果実や昆虫などを求めて樹上生活に入った哺乳類(ほにゅうるい)がいました。霊長類(ヒトや猿の仲間)は,こうした哺乳類から進化したと思われます。霊長類は元来,樹上の生活に適応した森林性の動物です。ところが新生代の終わりごろになると,森林は急速に減少し,広がり始めたサバナに進出する霊長類が現れました。ヒトの直立歩行などの特徴はこのとき獲得されました。やがて社会,言語,技術,文化の発展は脳を巨大化させ,巨大化した脳はさらに複雑な社会,言語,技術,文化を発展させました。その結果,人類は自然環境に大きな影響を与える存在となりました。
オーストラロピテクス・ボイセイの頭骨(a) 直立歩行をしていたが,脳の巨大化は起きていなく石器も作っていなかった。 |
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ホモハビリスの頭骨(b)と石器(c) 最初の石器の製作者と考えられる。脳が巨大化し始めている。 |
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ホモ・エレクタス(d)の頭骨と石器(e) アフリカからユーラシアに進出した最初のヒト。 |
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ホモ・サピエンスの頭骨(f)と石器(g) 現在のヒト.からだつきはひどく華著(きゃしゃ)だが,生物の歴史上最強の捕食者であり最もあつかましい植食者でもある。 |