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自然史博物館の資料保存と活用・管理を解説した「自然史博物館の資料と保存」を出版

概要

高野温子 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)と 三橋弘宗 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 講師 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)が編集を務めた書籍「自然史博物館の資料と保存」が、朝倉書店より2024年11月10日に出版されます。

内容紹介

自然史博物館を知るための入門書。
収蔵資料の作製・保存・活用から博物館の運営まで丁寧に解説します。

自然史博物館を知るための入門書。収蔵資料の作製・保存・活用から博物館の運営まで丁寧に解説します。
    ◎自然史博物館の収蔵資料の種類
    ◎自然史標本の作成方法
    ◎自然史資料のデジタル化手法
    ◎自然史資料の各種公開データベース
    ◎自然史博物館の施設整備・運営
・自然史博物館に収集・保管されている資料の種類を解説
・自然史博物館の特徴として、学芸員自らが収蔵する標本を作製することがあげられる。各分野の標本作製について概説
・収集した標本は適切に整理されて保管されることで、初めて研究や教育・展示への活用が可能になる。各分野の標本整理法について述べ、昨今のAI技術やデジタル技術を活用した資料整理法の効率化についても解説
・自然史標本がどのように研究やシンクタンク、レッドデータブック編纂に活用されているか、多くの具体例を挙げて解説
・各分野の自然史標本デジタル化の手法について解説
・自然史資料の同定や整理に役立つ、各種自然史資料公開データベースも多数紹介
・自然史資料収蔵のための施設整備・自然史博物館の管理や運営について解説

目次

序章 自然史博物館と自然史標本
 ーその特色と期待される役割の変化ー

1章 自然史博物館における収蔵資料の種類
 1.1 化石 矢部 淳
 1.2 岩石、鉱物など 加藤 茂弘
 1.3 植物 高野 温子
 1.4 昆虫 大島 康宏・山田 量崇
 1.5 無脊椎動物 石田 惣
 1.6 魚類 北村 淳一
 1.7 脊椎動物 林 光武
 ◆トピックス 自然史博物館の資料収集とは 林 光武

2章 自然史標本の作製方法
 2.1 化石、プレパラート 齋藤 めぐみ
 2.2 岩石、鉱物など 加藤 茂弘
 2.3 植物 高野 温子
 2.4 昆虫 大島 康宏・山田 量崇
 2.5 無脊椎動物 石田 惣
 2.6 魚類 北村 淳一
 2.7 脊椎動物(魚類以外) 林 光武
 ◆トピックス 自然史博物館における資料収集の手段 生野 賢司
 ◆トピックス 標本DNAをよりよく保存する方法 中濱 直之

3章 自然史標本と整理方法
 3.1 化石 矢部 淳
 3.2 岩石、鉱物など 加藤 茂弘
 3.3 植物 李 忠建
 3.4 昆虫 大島 康宏・山田 量崇
 3.5 液浸標本(脊椎動物、無脊椎動物) 山﨑 健史・北村 淳一
 3.6 脊椎動物(乾燥標本) 林 光武
 ◆トピックス AIを活用した資料整理のアップデート 高野 温子

4章 自然史資料の保存
 4.1 地学系資料 加藤 茂弘
 4.2 生物系の乾燥標本 高野 温子
 4.3 液浸標本  石田 惣・高野 温子
 ◆トピックス 人と自然の博物館におけるIPMの実践 高野 温子

5章 自然史資料を見せる
 5.1 展示 水島 未記
 5.2 アウトリーチ 水島 未記
 5.3 教育普及活動での活用  真鍋 徹
 5.4 収蔵しながら見せるー魅せる収蔵庫ー  高野 温子

6章 自然史標本を利用する
 6.1 調査、研究 高野 温子
 6.2 シンクタンク、レッドデータブックの編纂 橋本 佳延・三橋 弘宗

7章 自然史資料のデジタル化ー標本画像撮影法ー
 7.0 資料デジタルアーカイブ作成上の留意点 高野 温子
 7.1 化石の撮影方法 兼子 尚知・松原 尚志
 7.2 植物標本の撮影方法 高野 温子
 7.3 昆虫標本の撮影方法  奥山 清市
 ◆トピックス 自然史標本の3Dデータ化の可能性 橋本 佳延

8章 自然史資料公開データベース
 8.1 S-Net、GBIF、その他自然史資料に関するデータベース 高野 温子
 8.2 jPaleoDB(日本古生物標本横断データベース) 伊藤 泰弘
 8.3 昆虫類のデータベース 山田 量崇
 8.4 植生資料データベースー物理的に収蔵できない自然の姿を後世に伝える環境資料ー 橋本 佳延
 8.5 クモ類のデータベース 山﨑 健史

9章 自然史資料収蔵のための施設整備
 9.1 自然史資料に必要な収蔵庫施設 高野 温子・加藤 茂弘
 9.2 資料収集の中長期計画 高野 温子
 9.3 収蔵庫の管理計画  高野 温子

10章 自然史博物館の運営
 10.1 館維持運営費と予算の内訳 林 光武・高野 温子
 10.2 自然史博物館における職種と組織体制 奥市 清市
 10.3 自然史博物館間の連携 高野 温子
 10.4 植物館友の会、ボランティアなどとの連携  奥市 清市

書籍情報

【タイトル】自然史博物館の資料と保存
【編集者】
 高野温子 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)
 三橋弘宗 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 講師 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)
【執筆者(五十音順)】
 生野 賢司 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 石田  惇 大阪市立自然史博物館
 伊藤 泰弘 九州大学総合研究博物館
 大島 康宏 三重県総合博物館
 奥山 清市 市立伊丹ミュージアム
 加藤 茂弘 兵庫県立人と自然の博物館
 兼子 尚知 産業技術総合研究所・地質調査総合センター地質標本館
 北村 淳一 三重県総合博物館
 齋藤めぐみ 国立科学博物館
 髙野 温子 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 中濱 直之 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 橋本 佳延 兵庫県立人と自然の博物館
 林  光武 前 栃木県立博物館
 松原 尚志 北海道教育大学教育学部釧路校
 真鍋  徹 北九州市立自然史・歴史博物館
 水島 未記 北海道博物館
 三橋 弘宗 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 矢部  淳 国立科学博物館
 山﨑 健史 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 山田 量崇 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館
 李  忠建 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館

【その他書籍情報】
 出版社: ‎朝倉書店
 発売日:‎ 2024年11月10日
 言 語:‎ 日本語
 単行本: ‎192ページ
 ISBN: ‎ 978-4-254-10306-9

博物館標本の遺伝情報を扱った書籍「種生物学シリーズ タイムカプセルの開き方
博物館標本が紬ぐ生物多様性の過去・現在・未来」を出版

概要

中濱直之 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)、中臺亮介 (横浜国立大学大学院環境情報研究院講師)、岩崎貴也 (お茶の水女子大学基幹研究院講師)、大西亘 (神奈川県立生命の星・地球博物館主任学芸員)が責任編集を務めた書籍「種生物学シリーズ タイムカプセルの開き方 博物館標本が紬ぐ生物多様性の過去・現在・未来」が文一総合出版より2024年10月4日に出版されます。

内容紹介

博物館標本はタイムカプセル! 何が入ってる? どうやって調べる?

DNA解析技術の発展により,博物館の標本が雄弁に語りはじめた! 採集の時期や場所の情報,他の標本から得られたデータも組み合わせれば,生物多様性の歴史が見えてくる。過去を知り未来に活かすためのノウハウを簡明に解説。
    ◎DNAの解析技術の発展で,標本のDNAも解析可能に!絶滅した生物の詳細が見えてきた。
    ◎最先端で活躍する若手研究者が,標本からのDNA採集のノウハウを紹介。
    ◎将来の研究者に貴重な標本を引き継ぐために,現在の利用者,管理者は何をすべきだろう?
    ◎できるだけ多くの情報を未来に送るための標本の作り方とは?
    ◎2022年のノーベル医学・生理学賞で注目された標本DNA研究の魅力を満載。
***********************************************************************
  • 過去に採集され保管されていた標本からDNAを採取して解析できれば,過去の遺伝的多様性や集団の大きさがわかるはず。絶滅のおそれのある生物で調べれば,減少の要因を推定することができる。チョウの仲間やシマフクロウ,タンチョウなどを例に紹介。
  • もちろん,進化のプロセスを解明することも。今は絶滅してしまい,標本しか残っていない生物と,現生生物の関係も明らかにしたり,種の同定が困難だった標本の正体を明らかにしたり。
  • 遺跡から出土した動物の骨からDNAが採取できれば,古代の環境の推定が可能に。人間の影響が少ない時代の生物のようすを知ることができるかも。
  • 標本から得られたDNA情報もデータベース化されている。どんな研究ができるのだろうか?
  • 標本からDNAを採集するための技術を,目的に即して解説。
  • DNA情報を壊さずに維持するために必要な標本管理のノウハウ,貴重な標本を利用させてもらうために知っておくべきことも丁寧に解説。

目次

第1部 標本から新しい事実が明らかに!
 第1章 標本DNA 情報からひもとく絶滅危惧チョウ類の栄枯盛衰と保全 中濱 直之
 第2章 博物館標本から稀少種の過去を探る 表 渓太
 第3章 昆虫の標本DNA による分子系統解析 長太 伸章
 コラム1 次世代シーケンサーを用いた海藻類のタイプ標本の遺伝子解析 鈴木 雅大
 第4章 古代DNA で探る縄文時代の鯨類の遺伝的多様性 岸田 拓士
 第5章 博物館に収蔵されている植物標本のDNA バーコーディングへの活用 遠山 弘法
 コラム2 昆虫のDNA バーコーディングとその利用 岸本 圭子

第2部 貴重な標本から情報を取得する方法
 第6章 標本DNA の活用法 伊藤 元己
 第7章 標本を対象としたシーケンス解析 兼子 伸吾
 第8章 標本DNA におけるマイクロサテライト解析の手法 中濱 直之
 コラム3 博物館標本を用いた同位体分析研究 松林 順
 第9章 標本DNA からMIG-seq でゲノムワイド変異を調べる 岩崎 貴也
 第10章 ターゲットキャプチャー法による遺伝情報の収集 中臺 亮介
 第11章 少数個体のゲノム全長に基づく集団解析 岸田 拓士
 第12章 DNA を長期保存する昆虫標本の作製手法 中濱 直之
 第13章 植物標本の非破壊的DNA 抽出 杉田 典正
 コラム4 Museomics をとりまくデータベース 仲里 猛留
 コラム5 ミュゼオミクス時代の博物館とその役割 大西 亘
 第14章 標本のミュゼオミクス的利用について 岩崎 貴也・大西 亘

書籍情報

【タイトル】種生物学シリーズ タイムカプセルの開き方: 博物館標本が紬ぐ生物多様性の過去・現在・未来
【編集】種生物学会
【責任編集】中濱直之 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)、中臺亮介 (横浜国立大学大学院環境情報研究院講師)、岩崎貴也 (お茶の水女子大学基幹研究院講師)、大西亘 (神奈川県立生命の星・地球博物館主任学芸員)
【その他書籍情報】
 出版社: ‎文一総合出版
 発売日:‎ 2024年10月4日
 言 語:‎ 日本語
 単行本: ‎248ページ
 ISBN-10: ‎ 4829962127
 ISBN: ‎ 978-4-8299-6212-1
当館の廣瀬孝太郎主任研究員がその一部を出版した図鑑が小学館より出版されました。


書籍の内容
水の中に広がる、小さな生き物たちの世界! (小学館公式HPより)

 身近な水辺から海、そして北極・南極から熱帯など、どこにでもたくさんいるのにもか かわらず、まだ多くの謎に包まれたプランクトン。児童向け図鑑では初めての約500種と いうボリュームで紹介します。今まであまり注目していなかった水中の小さな生物たちの すがたを、きれいな写真で表現した決定版ポケット図鑑です。
 知られざる事実に驚かされる「プランクトンがいなければ地球はめつぼうする?!」、不思 議な生態がわかる「新種発見」「光るプランクトン」、また「プランクトンを集めに行こう!」のような自由研究に最適なコーナーまで、幅広い切り口で、読んでいて楽しい大充実の内容です。
小学館の図鑑NEO POCKET
プランクトン:クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物
指導・執筆/山崎博史 指導・執筆/仲村康秀 指導・執筆/田中隼人

定価 1100円(税込)
発売日 2024.06.25
判型/頁 新書判/176頁
ISBN9784092172975

電子版情報
価格 各販売サイトでご確認ください
配信日 2024.06.25
形式 ePub


研究員からひとこと
 「ケイ藻のなかま」を主に担当しました。川や海に何万種類もいると言われるケイ藻の中から、とっておきを選びました。他にもたくさんの魅力的なプランクトンが載っていて、自信を持っておすすめできる図鑑です!
人と自然の博物館 廣瀬孝太郎(分担執筆者)
オーストラリアで研究発表・学術交流を行ってきましたのでご報告します。


ひとつめの目的地はメルボルンでした。目的はディーキン大学で研究発表を行うことです。知人であるマシュー・シモンズ准教授にセミナーの機会を用意していただきました。大学を訪ねたのは128日です。この日のメルボルンは最高気温34度の予報で、冬の日本から来た身には暑さが応えました。朝10時に大学で待ち合わせ、まずは大学院生のサラさんも交えてコーヒーを飲みながらお話をしました。その後は大学を案内してもらいました。サラさんは博士論文をちょうど提出したところで、博物館の鳥類標本を3Dデータとしてスキャンして、形態の解析などを行ったとのこと。3Dデータを取得する様子を鳥の人形を使って見せてくれました。午後1時からはセミナー発表を行いました。40分ほどの発表のあと、20分程度の質疑応答を行いました。発表では、カンサイタンポポで行っている研究などを紹介しました。いろいろな事情により、外部からセミナーの演者が来るのは数年ぶりだったそうです。そういった事情もあってのことと思いますが、セミナーはとても好評だったと後日シモンズ准教授に教えていただきました。

左:3Dデータ取得のデモをしている大学院生のサラさん。右:ディーキン大学でのセミナー発表の様子。


続いての目的地はアデレードでした。荒天のためメルボルンからアデレードへのフライトがキャンセルになるトラブルにも見舞われましたが、別便で何とか無事に移動できました。1213日からの3日間、アデレード大学にてオーストラレジアン進化学会(Australasian Evolution Society)の年次大会に参加しました。この学会では最近おこなった数理モデル研究について発表しました。また、他の方の発表を聴いて、どんな研究が行われているのか情報収集をしました。この学会はオーストラリアからの参加者がほとんどで、有袋類を用いた研究など、オーストラリアならではの研究が多かったのが印象的でした。また、アデレード市街の緑地にも野生のインコが沢山いるなど、ユーラシアとは違う生物相を実際に見ることができたのも良い経験でした。

左:学会発表の様子。中央:ディーキン大学のマシュー・シモンズ准教授と学会の懇親会にて。右:公園にいたゴシキセイガイインコ(Rainbow Lorikeet)。



日本からは少し距離のあるオーストラリアですが、アメリカやヨーロッパに比べると時差がほとんど無いというメリットがあります。今後もオーストラリアの研究者コミュニティーと積極的に交流する機会を作っていきたいと思います。




生態研究グループ 京極大助



2022年3月まで、当館で主任研究員を勤められた 橋本 佳明 先生(現 兵庫県立大学特任教授)に、「日本応用動物昆虫学会」第67回大会において、学会英文誌「Applied Enotology and Zoology」に掲載された橋本研究員によるマイクロカプセル化わさび成分によるヒアリ忌避効果の論文被引用回数が多かったことを賞して、第9回(2023年次)論文賞が授与されました。

20230313_photo-1.jpg【受賞論文】
著者名: Yoshiaki Hashimoto, Masashi Yoshimura, Rong-Nan Huang
論文タイトル: Wasabi versus red imported fire ants: preliminary test of repellency of microencapsulated allyl isothiocyanate against Solenopsis invicta (Hymenoptera: Formicidae) using bait traps in Taiwan
巻号頁: Applied Entomology and Zoology (2019) Vol. 54, No. 2, 193-196.
※論文の概要はこちらをご覧ください。
 (マイクロカプセル化わさび成分がヒアリ忌避に有効であることを、初めて明らかにした論文です)

 日本応用動物昆虫学会は、応用昆虫学及び応用動物学の進歩普及を図ることを目的として、1957年1月1日に設立された学会です。
 会員数は、個人会員が1,500人を超え、団体会員が144団体を有し、本分野で日本有数の学会になります。

 本論文賞の研究成果は、現在、環境省の環境研究総合推進費(研究代表者 橋本佳明 46,584千円)に引き継がれ、マイクロカプセル化わさび成分によるヒアリ国内侵入阻止技術の社会実装化が進められています。

 この度の受賞、本当におめでとうございました。

【受賞式の様子】
20230313_photo-2.jpg 20230313_photo-3.jpg

(文責:生涯学習課 坂井)

ホソバナンブスズのアイソシンタイプ(副等価基準標本)

Isosyntype of Sasa uinuizoana Koidz. in Acta Phytotax. Geobot. 4: 90 (1935).

Fig12.JPG


ホソバナンブスズは小泉源一氏により1935年に記載されたササ類で,種小名は採集者の宇井縫蔵氏註1にちなみます (Koidzumi 1935).原記載には「Hab. Japonia: prov. Settsu, mt. Rokkozan (lg. Nuizo Ui 27 Jul. 1934)」と引用されています.京都大学総合博物館にはそれに対応する標本が2枚ありましたので (KYO-00078990 & 00078991) ,両者はシンタイプと考えられます.今回ひとはくから見いだされた標本 (HYO_C2-133843: 左写真) には,2枚のラベルが貼付されていました.1枚は武田薬品工業株式會社研究所腊葉標本庫のヘッダのもので,「Sasa Uinuizoana Koidzumi Hosoba-nanbu-suzu. Rokko-santyo. Settu. Jul, 27 1934 N, Ui Num. 13559」と記されていました.ラベルの上に"Ex Herb. N. Ui" という赤い判が押されており,この標本が宇井縫蔵氏のコレクションから出た標本であることが分かります.もう1枚は室井綽氏のラベル ("Herb. Hiroshi Muroi, Kobe, Japan." というヘッダを持つ) で,「Sasa Uinuizoana Koidz. Syn. Sasamorpha Uinuizoana Koidz. Setsu: mt. Rokko July 27. 1934 Nuizo Uno」とあります.武田薬品のラベルとほぼ同じ標本情報ですが,採集者を「Nuizo Uno」としています.おそらく室井氏がラベル情報を書き写す際に採集者の宇井氏の苗字を,やはり関西の有名な植物収集家である宇野確雄氏註2(1895−1984) と取り違えて書き間違えたのではないかと思われます.また,ひとはくの標本には宇井氏自身が書いたメモなどは残されておらず,京都大学の標本にある標本番号 (no. 52) もありません(武田薬品のラベルにある no. 13559 は、武田薬品のハーバリウム・ナンバーと思われます).しかしながら,採集日,採集地,採集者などの標本情報は京都大学の標本と一致することから,この標本はその重複標本と考え,アイソシンタイプと判断しました。(自然・環境評価研究部 高野温子)


註1) 宇井縫蔵 (1878−1946) 和歌山県生まれ.和歌山県師範学校卒業後小学校で訓導,大正14年には田辺高等女学校教諭となり,教鞭をとる傍ら和歌山県内の生物,特に魚類の研究を専門としたが,植物にも関心を持ち採集をした.著書に『紀州魚譜』,『紀州植物前編』,『紀州植物誌』などがある.

註2)宇野確雄 (1895−1984) 岡山県生まれ.大正4年岡山師範学校を卒業後,岡山県内の小学校の訓導を歴任し,大正9年から和歌山で県立海草中学校,神戸・京都で旧制中学校教諭を歴任し,旧制神戸高等商業学校助教授を経て,戦後は倉敷青陵高等学校,ノートルダム清心女子大学などで教鞭をとる.北海道,樺太,台湾,朝鮮などで植物採集や研究活動をおこなっている.また昭和11年以降,数度にわたりアメリカ・ハーバード大学に行き,アメリカの著名な研究者と標本の交換をしている.

テイフメダケのアイソシンタイプ(副等価基準標本)
Fig10.JPG

Isosyntype of Pleioblastus sadawoanus Koidz. in Acta Phytotax. Geobot. 10: 63 (1941), ut "sadawoana".

テイフメダケは小泉源一氏により1941年に記載されたササ類で,種小名は採集者の浅野貞夫氏にちなみます (Koidzumi 1941).原記載には標本の情報として「Hab. Japonica: prov. Awa, Kita-miharamura (S. Asano, no. 262)」とあります.京都大学総合博物館 には該当する標本が2点 (KYO-00078725 & 00078726) あり,ラベルには小泉氏の筆跡で「Pleioblastus Sadawoana Koidz テイフメダケ 房州 北三原村 1 XII 1940 S. Asano (浅野貞夫) 262」と記されていました.従ってこの2点の標本が、テイフメダケのシンタイプと考えられます.

ひとはくの標本 (HYO_C2-134367 左の写真) には浅野氏の手書きのメモが記された紙片が貼付してあり,それには「262 テイフ女竹(小泉氏) Pl. Sadawoana Koidz. n. sp 一九四〇・十二・一・ 北三原村」と書かれています.これは京大の標本と採集場所,日付,採集者,採集者番号が一致するので、シンタイプの重複標本と考えられます.従って、ひとはくの標本はアイソシンタイプということになります.この標本には千葉県立中央博物館(CBM) のラベルが貼付されているので,浅野氏が小泉氏に標本を送る一方で手許に重複標本を残していたものが、浅野氏の没後に千葉県立中央博物館に寄贈され,その後交換標本として頌栄短期大学に送られたものとわかります.(自然・環境評価研究部 高野温子)

イヌナヨネザサのアイソシンタイプ(副等価基準標本)

Isosyntype of Pleioblastus dimorphophyllus Koidz. in Acta Phytotax. Geobot. 10: 62 (1941), ut "dimorphophylla".

                     

Fig09.JPGイヌナヨネザサは小泉源一氏によって1941年に記載されたササ類です.原記載には「Hab. Japonia: prov. Awa, Saijohmura (S. Asano, no. 266)」と書かれており、京都大学総合博物館(KYO)にはそれに対応する標本が3点収蔵されています (KYO-00019409−00019411).標本の採集者である浅野貞夫氏(下の註参照。=S. Asano)が小泉氏に標本を送り、それを鑑定した小泉氏によって新種記載されたものと思われます。標本の1枚には浅野氏から送られたラベルとKYOのヘッダのラベルが添付され,2枚にはKYOのヘッダのラベルのみが貼られていますが,小泉氏の手書きで「Pleioblastus dimorphophyllus Koidz イヌナヨネザサ(2枚にはイヌナヨタケ) 安房 西條村 28 XII 1940 浅野貞夫 266」とあるので,この3枚はシンタイプと考えられます.ひとはくには浅野氏が手許に残したと考えられる標本が1枚あり,本人手書きの紙片が貼付されていました (HYO_C2-134351: 左の写真).そこには「266 イヌナヨダケ(小泉氏) Pl. pseudogracilis Koidz., n. sp. 一九四〇・一二・廿八・西條村」と書かれています.採集地,採集日および採集番号から,この標本はイヌナヨネザサのタイプ標本の重複品と考えられます.なお,浅野氏のメモに出てくる "Pl. pseudogracilis Koidz." は,小泉が同じ年にやはり浅野氏の採集品をもとに発表したナガバナヨダケPleioblastus pseudogracilis Koidz. (in Acta Phytotax. Geobot. 10: 255. 1941) のことですが,ナガバナヨダケの原記載には「Japonia, prov. Kadsusa; Choseigun, Taitohmura, Taitoh.」とあり,採集地が異なることから,浅野氏がイヌナヨネザサとナガバナヨダケの学名を取り違えて学名を書き入れたのではないかと考えられます.

ひとはくの標本には浅野氏のメモのみが残され,小泉氏がみた形跡がないため,浅野氏は小泉氏に標本を送ると同時に自分の手許に重複標本を残していたようです.シンタイプの重複標本なので、アイソシンタイプということになります。この標本に貼られたラベルは千葉県立中央博物館のフォーマットですから,浅野氏の没後に標本が千葉県立中央博物館に寄贈された後,重複標本の一枚が頌栄短期大学に交換標本として送られてきたものと思われます.(自然・環境評価研究部 高野 温子)

註) 浅野貞夫 (1906−1994) 山形県生まれ.大正15年山形県師範学校卒業.山形県で小学校教諭を務めた後,昭和5年に千葉県立長狭中学校教諭となり戦後学校が高校となってからも教鞭をとり昭和40年まで在職.昭和45年から和泉自然公園管理事務所に勤務し,長年にわたり千葉県の植物相について研究した.著書に『植物生体野外観察の方法』,『芽生えとたね』,『浅野貞夫日本植物生態図鑑』などがある.

アカシネザサのアイソシンタイプ(副等価基準標本)
Isosyntypes of Pleioblastus akasiensis Koidz. in Acta Phytotax. Geobot. 6: 68 (1937).

Fig08.JPGFig07.JPG アカシネザサは,小泉源一氏(元京都大学教授)により1937年に記載されたササ類です(Koidzumi 1937).原記載には「Hab. Japonia: prov. Harima, Akashigun, Tamatsumura (lg. H. Muroi !)」とあり,京都大学総合博物館で調べたところ,それに対応すると考えられる標本が3枚 (KYO-00019393 − 00019395) 見つかりました.それらにはすべて小泉氏の手書きのラベルが貼付されており,ラベルには「Pleioblastus akasiensis Koidz アカシネササ Prov. Harima, 明石郡 玉津村 17 1935 H. Muroi」と書かれていました.したがって,この3枚の標本はどれも等価のタイプ標本であるため、シンタイプになります.

ひとはくには,それら標本の重複標本と考えられる標本が2点ありました.1枚には「播磨.明石郡玉津村 July 17, 1935 H. MUROI No. 337」(HYO_C2-134348: 上右の標本),もう一枚には「摂津國明石市外 玉津村 1935年7月17日 H. MUROI No. 336」(HYO_C2-134349: 上左の標本)と書いてありました.さらに両標本には赤字で "Co-type" と書かれていました.原記載および京都大学の標本には採集番号が示されていませんが,その他の情報は一致するので,この2枚は京都大学にあるシンタイプの重複品と考えられます.ただし,ひとはくの標本は採集者である室井棹氏が小泉氏に送った標本の重複品を手許に残していたものと考えられ,小泉氏はこれらの標本を実際には見ていないと思われます.したがって,ひとはくの標本はアイソシンタイプ(副等価基準標本)と考えられます.なお,ひとはくにはタイプ標本が採集された翌日(1935年7月18日)に同じ玉津村で室井氏によって採集されたアカシネザサの標本 (HYO_C2-134350) がありますが,採集日が異なることから,タイプとはみなされません.

明石市民の方には"アカシ"と名前がついた植物があるのは嬉しいことかと思いますが、残念ながら現在アカシネザサはネザサのシノニム(=同物異名)とされており、図鑑などで名前を見る機会はほとんどありません。(自然・環境評価研究部 高野温子)

確認標本

Japan. Harima (Hyogo Pref.), Akashi-gun, Tamatsu-mura [播磨(摂津國)赤穂郡玉津村] (H. Muroi nos. 336 & 337, 17 July 1935, HYO_C2-134349 (no. 336) & 134348 (no. 337)-isosyntypes).

ミヤコザサのシンタイプ(等価基準標本)
Syntypes of Bambusa nipponica Makino in Bot. Mag. Tokyo 9: (72) (1895).
Fig05.JPGFig04.JPG

ネパールのバラ科植物から、再びササ類標本に戻ります。
 ミヤコザサは牧野富太郎によって1895年に発表されたササ類です (牧野 1895).北海道~九州の太平洋側にみられ、兵庫県では六甲山の他、本州の瀬戸内側に知られます。
 1895年の原記載論文で、牧野は『新種ナリ昨年晩秋之ヲ山城比叡山ニ採ル又江州彦根ノ城阜ニ見ル又紀州高野山 (明治十六年七月十八日理科大學採收) ニ産スルヲ知ル』と3ヶ所の地名を記述しています.したがって,これら3か所で採集された標本がシンタイプ(等価基準標本)と考えられます.今回頌栄コレクションから見出された標本 (HYO_C2-134681 & 134682: 左の写真) には,牧野が自筆で「Nov. 6, 1894. Hieizan, Yamashiro. Coll. T. Makino」と書いた紙片が貼付されており,牧野の言う『昨年山城比叡山ニ採ル』に当たる標本と考えられます.したがって,この2枚の標本はミヤコザサのシンタイプに当たると考えられます.標本は2枚とも東京都立大学牧野標本館(MAK)から送られてきた標本で,MAK278639の番号が振られています.
 採集年が1894年ということは、今から127年前に作られた標本です。1994年に貼られた村松博士のアノテーションスリップがあるので、頌栄に送られたのは1994年以降のはずです。それまではずっと東京にあった訳で、1923年の関東大震災、その後の第2次世界大戦を乗り越えて現在に受け継がれてきた標本だと思うと、大切に将来の世代に渡さなくてはと身の引き締まる思いがします。(自然・環境評価研究部 高野 温子)

東ネパール産バラ科タテヤマキンバイ属のアイソタイプ標本
Isotype of Sibbaldia emodi H.Ikeda & H.Ohba in J. Jpn. Bot. 71: 188-190.

前回に引き続いて、元ひとはく研究員の池田博氏(現東京大学総合研究博物館)が参加した調査隊により、ネパール東部のソルクンブ(Solukhumbu)地方から発見された、タテヤマキンバイ属の新種 Sibbaldia emodiを紹Sibbaldia emodi H. Ikeda et H. Ohba.jpgします。S. emodiはしばしば近縁のS.micropetalaと同所的に生育していますが、根出葉の托葉裂片が合着すること(S.micropetalaは離生)、花弁の色が濃紅色であること(S.micropetalaは黄色)で区別されます。タテヤマキンバイ属は北半球の寒帯~亜寒帯、高山に広く分布し20種ほどが知られていますが、日本にはタテヤマキンバイ1種しか分布していないので、あまり馴染みがないかもしれません。
←写真をクリックすると拡大します(自然・環境評価研究部 高野 温子) 

大学院公開セミナー(兵庫県立大学大学院 環境人間学研究科 共生博物部門)


 大学院の魅力を対面・Webでご紹介します!
 どなたでも参加できます!


 人と自然の博物館および森林動物研究センターに併設の大学院(兵庫県立大学 環境人間学研究科 共生博物部門)では、博士課程(前期・後期)への学生(社会人学生含む)の受け入れを積極的に行っています。この「大学院公開セミナー」は、大学院進学・入学希望者向けのセミナーですが、博物館での研究活動や野生動物管理の実践に関心のある大学生や一般社会人の方も参加できます。皆様のご参加をお待ちしております。

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■概 要
・日  時:令和3年5月15日(土)13:00~15:30
・会  場:兵庫県立人と自然の博物館
・参 加 費:無料
・内  容:前半部 部門概要・研究紹介 13:00~14:00(対面・Web)
      後半部 研究紹介&施設案内 14:10~15:30(主に対面対応)
       ※後半部では、6研究部門(地球科学、系統分類、生態、環境計画、生物資源、森林動物)のうち、
        希望する1つの研究部門の研究内容と施設(収蔵庫、展示など)をご案内します。
申込締切:令和3年5月5日(水)

■お申し込み方法
 メール、FAX、はがき、封書のいずれかで、①氏名、②年齢、③住所、④電話番号、⑤メールアドレス、⑥参加方法(来館またはWeb:一部Web等で配信する予定です。希望者にはWebでの視聴方法をご連絡します。※ネット環境が必須)、⑦研究紹介・施設案内を希望する研究部門、⑧指導を希望する教員や興味のある研究テーマ(入学を検討している方のみ)を明記の上、下記までお申し込みください。研究指導、入学試験、部門・大学院等に関するご相談・ご質問などありましたら合わせてご記入ください。

■お申し込み・お問い合わせ
 〒669-1546 兵庫県三田市弥生が丘6丁目
 兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 所長室
 E-mail:instsec(アット)hitohaku.jp ※(アット)を@に代えてください。
 TEL・FAX:079-559-2004
  ※電話でのお問い合わせは火・水・木・金曜日にお願いいたします。

チラシのダウンロードはこちら>>> 大学院公開セミナーチラシ
 共生博物部門についてはこちら>>> https://www.hitohaku.jp/shizenken/kyousei/

■内容詳細
<前半部>(対面・Web対応)
 12:30 受付開始 ※入学試験関連の資料は対面でのみ閲覧できます(12:30~13:00、15:30~16:30)
 13:00 共生博物部門の概要紹介
 13:10 入学試験関連の説明
 13:20 研究事例紹介(中濱 直之 氏:博物館標本を用いた新たな生物多様性保全研究)
<後半部>(主に対面対応)
 14:10 研究紹介&施設案内―研究部門ごとに分かれ、研究内容と施設(収蔵庫、展示など)をご案内します―
      地球科学研究部門:地学系収蔵庫
      系統分類研究部門:生物系収蔵庫(両生類、爬虫類、昆虫類など)
      生態研究部門  :生物系収蔵庫(魚類など)
      環境計画研究部門:環境系収蔵庫
      生物資源研究部門:植物栽培施設
      森林動物研究部門:森林動物研究センターとWeb中継(実習室で参加可能)

兵庫県立人と自然の博物館
主任研究員 池田忠広
バンシュウゴキダケのアイソタイプ(副基準標本)

Isotypes of Pleioblastus muroianus Koidz. in Acta Phytotax. Geobot. 5: 128 (1936).

バンシュウゴキダケは京都帝国大学の小泉源一教授(当時)により1936年に記載されたササ類です. 種小名のmuroianusは,採集者である室井綽先生の名前にちなみます (Koidzumi 1936).原記載論文には, 標本の情報として「Hab. Japonia: prov. Harima, Akogun, Minoyama (lg. H. Muroi !)」とあります (Koidzumi 1936).京都大学総合博物館植物標本庫(KYO)にはタイプと考えられる標本が1点 (KYO-00078724) あり,KYOのヘッダをもつラベルには,小泉先生の手書きで「Pleioblastus Muroiana Koidz バンシウゴキダケ Prov. Harima Akohgun 三濃山 6 Ⅷ 1935 室井綽」と記されていることから,この標本がバンシュウゴキダケのホロタイプ(正基準標本)と考えられます.ひとはくに収蔵されている2点の標本 (HYO_C2-134111 & 134112: 下の写真) は,KYOの標本に採集番号がないのに対し,no. 333 という採集番号が与えられている以外は,採集地,採集者,採集日時ともにホロタイプの情報と一致しているので,ホロタイプの重複標本,すなわちアイソタイプ(副基準標本)と考えられます.
 標本写真をみると、コンゴウタケ(Pleioblastus kongosanensis Makino)というアノテーションスリップが貼られているのが分かると思います。バンシュウゴキタケは現在コンゴウタケのシノニム(=異名)と認識されています。日本のタケササ類の分類は、日本における植物分類学の父と称される牧野富太郎によってまず属が整備され、中井猛之進東京大学教授(当時)と小泉源一教授(当時)により体系が整いましたが、1930年代から40年代にかけて両者が競うように新種を発表し、膨大な数の分類群が生まれてしまいました。中井先生の発表された新分類群は約180、小泉先生はなんと380もあるそうです(鈴木1978)。室井先生の発表された分類群も併せると、1960年代にはササ属Sasaが420種、アズマザサ属Sasaellaが140種、バンシュウゴキダケも含まれるメダケ属Pleioblastus は110種といった具合で、これらを見分けることは至難の業でした。その700近くあった日本産タケササ類の種を整理したのが、鈴木貞雄氏でした。鈴木貞雄氏の著した「日本タケ科植物総目録」は、日本のタケササ類研究の金字塔ともいうべき一冊です。

Fig03.JPGFig02.JPG

左・右ともバンシュウゴキダケの標本
Japan. Harima (Hyogo Pref.), Akoh-gun, Minoyama [播磨國赤穂郡 三濃山] (H. Muroi no. 333, 6 Aug. 1935, HYO_C2-134111 & 134112-isotypes).
(自然・環境評価研究部 高野温子)

カタシボの原資料 

Original material of Phyllostachys bambusoides var. marliacea f. katasibo Muroi

 原資料という言葉、聞きなれないですね。ここでは植物に学名をつけるときに参照した資料という意味になります。タイプとは少し異なりますが、タイプ標本と同じくらい重要な標本です。カタシボはマダケの変種シボチクの品種。というややこしい立ち位置の植物ですが、その命名にもややこしい経緯がありました。

生物に名前を付ける際には命名規約に従う必要があると以前述べましたが、より正確にいうと新分類群の提案時に有効であった規約に従っている必要があります。命名規約は植物の場合なら6年に一度見直され、時代に合わせて少しずつ変更が加えられています。最近の大きな変更は、2012年メルボルン規約から、これまで新分類群提案の際に必須だったラテン語による記載文・判別文が英語でOKになったこと、電子出版のみの発表が有効と認められるようになったことでしょうか。

話をカタシボに戻します。カタシボは,まず室井先生が1956年に出版した「竹と笹」のなかで、学名Phyllostachys bambusoides var. marliacea f. katasibo Muroiと図を発表されました。しかしラテン語の

Fig13.JPG記載がなかったため、正式発表とはなりませんでした。次に杉本順一氏が著作『日本樹木総検索誌』(1961) の中で,室井先生命名の新学名とラテン語記載文を発表しました (杉本 1961).しかし,1961年に有効だった命名規約では新分類群の発表の要件として学名・ラテン語記載文の他にタイプの指定を要求しているため、タイプの引用がない杉本(1961)も、カタシボの正式発表には至りませんでした.この学名は,次の年に室井先生が『有用竹類図説』(1962) で,学名と初発表文献および『竹と笹』(1956) の図を引用したことによりようやく正式発表されました.意外に思われるかもしれませんが、タイプは標本の他、その植物を精細に描いた図版や写真もその役目を果たすことができます。カタシボのタイプは標本ではなく、「竹と笹」に掲載された図版ということになるのです。



写真の標本 (HYO_C2-133908) は,ラベルに室井先生の手書きで「Phyllostachys bambusoides var. Marliacea forma Katasibo Muroi Tatsuno Hyogo-pref. Feb. 5. 1957」と書かれ,採集者として "H. MUROI" の印が押されています.1956年に梅玉旅館を訪れた室井先生がカタシボを庭で発見し、その後1958年に国の天然記念物に指定されたのだそうです。1957年という採集年から、この標本は天然記念物指定の調査の時に採られたものと考えられます。支倉さんは全国の植物標本庫を訪れてササ類の標本調査をされていますが、カタシボと名のついた標本はこの標本1枚しかないのだそうで、これがカタシボの唯一の実物の原資料なのです。 (自然・環境評価研究部 高野温子)

 最近ひとはく収蔵のササ類標本から、タイプ標本やその他の重要標本の発見が相次いでいます。これは結構凄いことです。なぜかというと、ササ類の区別が出来る人は今の日本にはそういないからです。その貴重な人材が複数名、ひとはくの収蔵庫を訪れては次々に色んな発見をしてくださっています。
 他の顕花植物と違い、ササ類は毎年同じ時期に花を咲かせることをしません。毎年咲かない上に互いに似通っているので、ササ類の同定には、葉や茎(=稈)等に生える毛の状態が重視されます。ですが「毛」なので、出始めの春先の頃はよくても、梅雨から夏へと季節が変わる毎に段々と抜け落ち、夏以降は元々無毛か毛が落ちてしまったのか、よくわからなくなります。また「毛」なので、個体により量の多少や変異はつきものです。自信をもって同定出来るようになるには、まず生きた状態のササ類を沢山観察することが必要だそうです(ササ類愛好家
 M氏談)。恥ずかしながら、私はいまだに自信を持って鑑定が出来ませんが、、。
 兵庫県には室井綽先生、岡村はた先生などササ類の研究で有名な方がおられ、先生方の採集されたササ標本がひとはくにあることはわかっていたのですが、私自身は横目で眺めるだけでした。当館のササ類標本を鑑定に来てくださった支倉千賀子さん(東京農大)が、タイプ標本等重要な標本を沢山発見されました。これからしばらくは、見つかったササ類の重要標本を紹介したいと思います。文章は、支倉他 
2020. 兵庫県立人と自然の博物館植物標本庫(HYO)「頌栄コレクション」から見出された特筆すべきササ類標本(兵庫の植物 30号5‐32頁)を一部改変しています。

ヤマキタダケのアイソレクトタイプ(副選定基準標本)

 Isolectotype of Arundinaria yamakitensis Makino in J. Jap. Bot. 3: 4 (1926).

                     

Fig01.JPGヤマキタダケは1926年に牧野富太郎により記載されたササ類で,原記載によれば,基準標本は相模・山北(現在の神奈川県山北町)で,牧野富太郎自身が1921年1月20日に採集したものとされています(Makino 1926).しかし,支倉さんらの調査によると,牧野は1921年11月20日には山北には行った記録はなく,さらに基準標本と目された標本に貼られたラベルの日付(1921年1月20日)も間違いで,状況証拠からそれらは1921年2月20日に採集されたものと推測されました(支倉・池田 2015).今年は2021年ですから、ちょうど100年前の今頃、牧野富太郎は山北町でこの標本を採っていたのです。
 1921年2月20日(ラベル上は11月20日)に採集されたヤマキタダケの標本は,東京都立大学牧野標本館(MAK)から3枚,大阪市立自然史博物館の植物標本庫から2枚見いだされ,(支倉・池田2015)は牧野標本館の標本中の1点 (MAK-291809-2/2) をレクトタイプ(選定基準標本)に選定しました

 今回ひとはくから見つかったのは牧野標本館から頌栄短大に送られた交換標本で,MAKのヘッダのついたラベルに "Yamakita, Ashigarakami-gun, Kanagawa Pref. Date: Nov. 20, 1921 Coll.: Tomitaro MAKINO Det. M. Muramatsu (1996)" とタイプされ,"291809" の番号が振ってありました (HYO_C2-135054: Fig. 1).これは支倉・池田 (2015) で指定したレクトタイプの情報と一致し,この標本がヤマキタダケのレクトタイプの重複標本,すなわちアイソレクトタイプ(副選定基準標本)であると考えられました.

ちなみに,MAK の同定ラベルを用いて同定している "M. Muramatsu" は,元岡山大学農学部教授の村松幹夫博士のことで,1996年当時村松博士が牧野標本館のタケ・ササ類の標本整理にあたられていたそうです.また,"H. Okamura" による同定ラベルが貼付されていますが,これは標本が牧野標本館から頌栄短大に送られた後、岡村はた氏によって再同定されたもののようです.標本左上には支倉さんによる同定ラベルが貼られています。村松博士はヤダケ、岡村はた先生はスズダケと同定した標本でしたが、支倉さんによってヤマキタダケと決着がつきました。貼られたアノテーションの数からも、ササ類の分類の難しさを感じて頂けるのではないでしょうか。

(自然・環境評価研究部 高野温子)




ヒメタツナミソウ標本画像.pngキカイタツナミソウ(ヒメタツナミソウ)Scutellaria kikai-insularis Hatus. ex T.Yamaz. アイソタイプ

キカイタツナミソウは初島住彦先生(1906‐2008)により、1971年に出版された琉球植物誌の中で新種として発表されましたが、タイプ標本の引用がなかったため、残念ながら初島先生がつけられたS.kikai-insularisという名は、有効に発表された学名になっていませんでした。1993年に山崎敬先生がFlora of Japanの中で東大総合博物館収蔵の清水孝浩氏採集の標本をホロタイプとして引用してキカイタツナミソウの記載を行い、初めて有効な学名として認められました。学名は正式には属名+種小名+著者名(=その分類群の名前を正式に発表した人の名前)+学名が発表された雑誌や本名、の順に並べます。そうすることで、その学名が何時、誰によって、何処に発表されたかがわかります。キカイタツナミソウの場合は、Scutellaria kikai-insularisの後に名前を考案した初島先生の名前、exの後ろに学名を正式に発表した山崎先生の名前がついています。清水孝浩氏は兵庫県在住の在野の植物研究家で、日ごろ頌栄短大に標本を送られていました。そのなかにキカイタツナミソウの標本が2枚あったため、1枚は重複標本ということで頌栄短大から東大に送られ、ホロタイプに指定されたわけです。当館の当該標本はアイソタイプということになります。

画像をクリックすると拡大されます (自然・環境評価研究部 高野温子)


  サンインヒエスゲC arex jubozanensis J.Oda & A. Tanaka(パラタイプ)
Carex jubozanensis J. Oda etA. Tanaka.jpg

今回ご紹介するのは、2004年に発表されたサンインヒエスゲというカヤツリグサ科スゲ属ヒエスゲ節に属する植物のパラタイプ標本です。学名の種小名jubozanensisはホロタイプの産地である鳥取県の鷲峰山(じゅぼうざん)にちなみます。

サンインヒエスゲ記載論文で引用されパラタイプとなった細見末男氏の標本は、当初ホソバカンスゲと認識されて収蔵庫に納められていました。20031月、ひとはくに新種発表のための植物標本調査に来られた織田二郎氏が、ホソバカンスゲ標本の束に入っていたこの標本を発表準備中のサンインヒエスゲと認識し、アノテーションスリップ(the annotation slip)を添付されました。アノテーションスリップとは、標本ラベルの学名が誤っていると認識した場合に、正しい学名と記入者の名前と日付を書いて貼り付ける小さなラベルのことです。左の写真の標本では標本ラベルのすぐ上に貼られています。
 織田氏が貼られたスリップは、厳密なことを言えば貼った時点においては論文発表前なので正式な学名ではなく裸名ですが(論文が審査されている途中で学名を変更することは時々あります)、本ケースにおいてはこの学名で論文として受理され正式な学名になったので、結果オーライといったところでしょうか。新しい分類群を発表する際には、出来るだけ多くの収蔵庫で標本を見て新種の標本が埋もれていないかを探し、分布域の推定を行います。織田氏らは新種発表の準備のため京大(KYO)、金沢大(KANA)、それにひとはくに足を運んで標本調査を行い、サンインヒエスゲの分布が若狭湾を挟んだ日本海沿岸地域であることを確認し、それら標本庫で発見したサンインヒエスゲ標本をパラタイプとして引用した。ということになります。


zyuboza.jpg    サンインヒエスゲの記載論文(
Oda et al. 2003 Acta Phytotax.Geobot. 54:127-135)の一部。 赤丸で囲った部分が、パラタイプにあたる標本の引用部分。赤下線部がひとはく収蔵の細見末男氏の標本。

 植物の名前は、採集した時にはきちんと分からないことがままあります。ひょっとして間違っているかも、、と思いつつも、とりあえず「この植物名にしておいて、そんなに大間違いじゃないだろう」という名前でラベルを作成してしまうことも(大きな声では言えませんが)あります。そうしないといつまでたっても標本整理が終わりませんし、標本庫に配架されなければ他の人の目に触れる機会も失うからです。標本庫にある標本の名前が合っている(=正しく同定されている)確率は実際は50パーセント程という報告や、生物の新種の半分以上は野外からではなく標本庫から見つかっている。という報告もあるくらいです。標本全部が名無しの権兵衛では博物館としても困るのですが、近いと思しき分類群の名前をつけておけば、将来その分類群の専門家がやってきて調査をしたときに、今回のように新種として認識されタイプ標本になる可能性もなくはないのです。 
(自然・環境評価研究部 高野温子)



M.mullerensis.jpgひとはくのタイプ標本紹介 その①


タイプ標本という用語を聞かれたことはあるでしょうか。学術標本の中でも特に重要なもので、ひとはくには昆虫や植物のタイプ標本が千点以上収蔵されています。

現生の生き物であれ恐竜に代表されるような化石種であれ、新種に学名をつけるときには、国際的なルールである命名規約に法った形で発表する必要があります。現生植物の場合は国際藻類・菌類・植物命名規約に従います。新種を発表するまでの大筋はどの生物群でも同じで、新種の形態的・生態的な特徴を詳細に記述し、近縁種との類似性や相違点について議論した論文を、査読のある学術雑誌等に発表するという手続きを踏みます。その際、論文には新種の存在の証拠となる標本を引用しなければなりません。それがタイプ標本です。いわばその種の「メートル原器」というわけです。これがなくなると、種を規定する「物差し」がなくなるわけで大問題です。ですので、タイプ標本は個人で所蔵するのではなく、公共性と永続性が担保された公立博物館に納めることが推奨されています。逆に言えば公立博物館は、それら標本を未来に継承する義務を負っているのです。

植物標本は他の生物群と異なり、虫害、カビ害や火災による消失のリスクがある一方、一か所で複数個体を採集することが比較的容易で同じ種の標本を多数つくりやすいため、リスク分散のために重複標本(同じ日、同じ場所で、同じ人が採集した同種の標本)を作って各地の植物標本庫に配布することが推奨されています。ですので、植物特有の命名規約上のルールとタイプ標本があります。タイプ標本の種類を説明すると、最も重要なのは記載論文で命名者が定めるタイプで、ホロタイプ(Holotype: 正基準標本)と呼ばれます。2021年現在、藻類・菌類・植物命名規約に従えば新種記載のホロタイプ標本の引用の際には、どこの植物標本庫にある標本かまで指定しなければなりません。往々にしてホロタイプにも重複標本が存在するからです。ホロタイプの重複標本で、指定された植物標本庫以外の標本庫に収蔵されているものはアイソタイプ(Isotype: 副基準標本)と呼ばれます。アイソタイプは植物命名規約にのみ出てくる用語です。ただタイプ標本がメートル原器とはいえ、生物には多少とも個体間変異があるのが普通ですから、変異の幅を示すためにも記載論文に標本が複数点引用されることが望ましいです。ですので、タイプ標本以外にも可能な限り多くの新種の標本を引用します。記載論文中に引用されたホロタイプ、アイソタイプ以外の新種標本のことをパラタイプ(Paratype: 従基準標本)と呼びます。

 ここでご紹介するのは、ボルネオ島のほぼ真ん中にあるミュラー山脈(Müller Range)の植物調査を行った時に発見された、ショウガ科の新属新種Myxochlamys mullerensisのアイソタイプ標本です。外国人がインドネシア政府から許可を得て調査研究を実施する際には色々と条件がつきますが、その中に「新種を見つけた場合は、ホロタイプをボゴール植物園に納めること。」というものがあります。ですのでホロタイプはボゴールに納めた標本を指定しました。その重複標本を京都大学総合博物館とひとはくに収蔵したので、ひとはくのMyxochlamys標本はアイソタイプというわけです。

ところで、「属」というのは似た種を集めて作る分類学上のカテゴリですが、この種を記載したとき、既存のどの属のカテゴリにも合わないので新属記載も一緒に行うことにしました。本種を記載した際には11種でしたが、その後別の種がみつかり、現在Myxochlamys12種となっています。

mullensis description.jpg      Myxochlamys の新属新種記載論文の一部(Takano & Nagamasu 2007)。

赤線で囲った部分がタイプ標本の指定箇所。標本の詳細情報(採取された産地、採集日、採集者番号)のあとに(Holo-BO; iso- HYO, KYO)とあるが、ここがタイプ標本が収められた植物標本庫を略称で指定している部分となる。BOはボゴール植物園(インドネシア)、HYOはひとはく、KYOは京都大学総合博物館の植物標本庫の略記号。Myxochlamysのホロタイプはボゴール植物園、アイソタイプはひとはくと京大総合博物館収蔵の標本である。という意味になる。

                                 (自然・環境評価研究部 高野温子)


 日中韓の環境省で,ポスト2020.生物多様性世界枠組みについて議論する会議に参加させていただきました。新型コロナの影響で,今回はオンラインでの開催になり,回線が切れないか,ちゃんとスライド画面は共有できるか,ハラハラしながらの登壇でした。講演では,この三ヵ国共通の外来生物問題となっているヒアリ対策で,マイクロカプセル化わさび成分を使ったヒアリの忌避・燻蒸技術や,コンテナヤードでのヒアリ営巣を防ぐためのシリコン樹脂を使った割れ目補填技術などの紹介しました。発表は,参加者の皆さんが興味津々で聞いてくださり,特に,わさび成分の話には,「どこで買えるのか?」「具体的な使用方法は?」等,質問が殺到しました。マイクロカプセル化わさび成分は,博物館での標本資料の保管で,環境に安全な防虫や防カビ剤として使用できないかと研究をはじめたものです。シリコン樹脂の技術は,博物館で樹脂包埋標本に使われているものを活用しています。皆さん,博物館で使われている技術や知見は,直接,世の中に役立つことは少ないと思われているかもしれませんが,人博は博物館の技術や知見を活用して,ヒアリ対策でも実社会に役立つ貢献をしているのです。

橋本 佳明(系統研究部 昆虫)
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ひとはくからのお知らせです。

先日(4/28)、ひとはくの橋本 佳明 主任研究員らの研究グループが、ヒアリの燻蒸・殺虫法にマイクロカプセル化したワサビ成分を安全かつ簡便に活用する研究成果を発表した(※詳しくはこちらをクリック)ところですが、その橋本 佳明 主任研究員が執筆・編集された書籍「外来アリのはなし」が本日(5/1)に出版されることになりました。

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【書籍の内容について】

 ※出版社(朝倉書店)のページを引用

○概要
 海外から日本に侵入する「外来アリ」について、基礎から対策までを解説。
 ヒアリ・アカカミアリ/アルゼンチンアリ/アシナガキアリ/ヒゲナガアメイロアリ/ツヤオオズアリ/オオハリアリ/コカミアリ/ハヤトゲフシアリ他を取り上げた。

○編集部から
・海外から日本に侵入し、さまざまな影響や被害をもたらす「外来アリ」についてまとめて学べる入門書。
 そもそもアリとはどういう生き物なのか、どういう種類の日本在来/外来のアリがいるのか、という基礎的な知識から始まり、なぜ外来アリは有害なのか、どういう対策をとり、どのように防除すればよいのか、といったことまで総合的に解説。
・昆虫、外来種や害虫対策にかかわる研究者・実務者から、環境問題に関心の高い一般読者まで。
 図書館のレファレンスとしても好適。



○目次
1. 外来生物としてのアリ〔橋本佳明〕
2. 増殖マシンとしてのアリ〔後藤彩子〕
3. 刺す虫としてのアリ〔夏秋 優〕
4. 外来アリの分類学〔吉村正志〕
5. 外来アリの社会生物学〔辻 和希〕
6. アリをめぐる種間相互作用と外来アリ〔上田昇平〕
7. ヒアリとアカカミアリ〔坂本洋典〕
8. アルゼンチンアリ〔井上真紀〕
9. アシナガキアリ〔YANG Chin-Cheng/翻訳:橋本佳明〕
10. ヒゲナガアメイロアリ〔伊藤文紀〕
11. ツヤオオズアリ〔菊地友則〕
12. オオハリアリ〔末廣 亘〕
13. コカミアリ〔宮川美里〕
章コラム 新顔の侵略的外来アリ―ハヤトゲフシアリ〔岸本年郎〕
14. 外来アリ防除の手法と課題〔五箇公一・坂本佳子〕

○執筆者一覧
・編者
 橋本 佳明
 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所/兵庫県立人と自然の博物館)
・著者(五十音順)
 伊藤 文紀(香川大学農学部)
 井上 真紀(東京農工大学農学部)
 上田 昇平(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
 菊地 友則(千葉大学海洋バイオシステム研究センター)
 岸本 年郎(ふじのくに地球環境史ミュージアム)
 五箇 公一(国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室)
 後藤 彩子(甲南大学理工学部)
 坂本 洋典(国立環境研究所生物・生態系環境研究センター)
 坂本 佳子(国立環境研究所生物・生態系環境研究センター)
 末廣  亘(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/岡山県和気町地域おこし協力隊)
 辻  和希(琉球大学農学部)
 夏秋  優(兵庫医科大学皮膚科)
 宮川 美里(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター)
 吉村 正志(沖縄科学技術大学院大学沖縄環境研究支援センター)
 YANG Chin-Cheng(京都大学生存圏研究所)

○書籍情報
 「外来アリのはなし」橋本佳明 編
 A5/200ページ/2020年05月01日
 ISBN978-4-254-17172-3 C3045
 定価3,740円(本体3,400円+税)

 ※書籍の購入については、出版社(朝倉書店)のページをご参照ください。

(文責:生涯学習課 坂井)

ひとはくでは、2月11日、第15回目「共生のひろば」を開催し、約2,000名を超える皆さまにご来館いただきました。発表については、口頭発表8本、ポスター発表78本、計86本、約300名の方々にご発表をいただきました。その名の通り、発表者と来館者、また発表者どうしの多様な交流のある素晴らしい『ひろば』となりました。ご来館いただいた発表者と来館者の皆さまにお礼申し上げるとともに、発表と交流のようすをご報告します。


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(左:ポスター発表)さまざまの年代の方々にポスター発表を通して交流いただきました。
(右:口頭発表)小学生が発表のハマガニの謎!題して「干潟のマッスルビルダー」


■口頭発表

口頭発表では8団体から身近な食べ物のことからDNAによる分類までさまざまな発表がありました。


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(左)宝塚北高校「温泉水で鉄分が多い豆苗は育つか?」学校近くの宝塚温泉も調査。(右)小学生兄弟によるぬか漬けとお茶の抗酸化作用の研究。紙芝居形式の発表です。

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(左)尼崎小田高校「瀬戸内海産トゲワレカラの遺伝的2グループの特性解明」。質問も予想し応答スライドも用意して素晴らしい発表でした。質問した太田研究員からも学会発表のお勧め。
(右)香寺高校「河川のデトリタスが生物に及ぼす影響に関する研究」。調査地近くに泊まり込んで24時間データを取った、との苦労話に一同感心!

■ポスター発表

ポスター発表は78本の発表をいただきました。個性豊かなポスターをはじめ、展示物、実態顕微鏡を用いた体験的展示など、それぞれ工夫を凝らしての素晴らしい発表ありがとうございました。

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(左)ひとはくサロンでのポスター発表    (右)研究者の撮影した野生動物の動画に見入る高校生

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(左)8月実施の「高校生のための生きもの調査体験ツアーin台湾」の発表 (右)吹田市立博物館の展示にもたくさんの高校生が集まってくれました。

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(左)市民団体『人と自然の会』、25年間のあゆみの展示 (右)兵庫古生物研究会「異常巻アンモナイト、ノストセラス大集合〜」これだけ見事な異常巻きが大集合すると、美しさすら感じます。

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(左)有馬高校における30年間にわたる気象観測データを農業高校の生徒と一緒に発表。まさに地道な努力の結晶 (右)幻想的なテラリウムの展示


■ギャラリートーク

プログラムの最後には、ひとはく研究員赤澤宏樹によるギャラリートーク「苦情の分析からはじまる多様な街路樹の可能性」を行いました。

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(左)つくば市の色鮮やかなモミジバフウの並木道。さまざまな並木道から街路樹とは何か、またその価値とはを問いかける内容です。(右)街路術に対する意識啓発のため、将来の価値を表示。ロードアイランド州プロビデンス市

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(左)企業が育てる街路樹。ティファニー前のドレスのオブジェと樹木 (右)「桜の木を切らないで」という小学生からの意見への回答張り紙。この桜の枝から次の並木が育てられたそうです。

多数の方々にお聴きいただきありがとうございました。

■表彰式および茶話会

終了後は表彰式および希望者による茶話会も行いました。本日素晴らしい発表をいただいた方々には、ひとはくから館長賞、名誉館長賞を贈らせていただきました。表彰を受けていただいたのも、小学生から高校生、一般の方々とさまざまな年代の方です。

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このように「第15回共生のひろば」は自然や環境に興味がある方々の活発な議論や交流が行われる中で閉会となりました。ひとはくでは来年度も「共生のひろば」を計画中です。皆さまとまた交流できることを楽しみにしております。


生涯学習課 竹中敏浩

 ヒアリを始め外来生物に関する講習会を,東京,岡山県,広島県に招聘されて実施してきました.最近は,ヒアリやアカカミアリが,あまりニュースにも取り上げられなくなり,多くの方が,もう大丈夫だと思われているかもしれません.その中で,しっかりと対策を続けている自治体の取り組みには,心から感謝です.その思いを込めて,しっかりと講習を行ってきました.ちょうど,この講習会のすぐ後で,300匹を超えるアカカミアリが岡山県の水島港で発見され,駆除されました.この発見は,岡山県と港湾管理局が水島港で自主的に実施している定期モニタリングによるものでした.油断せずに,抜かりなく監視を続けていたことが,アカカミアリの早期発見と早期駆除につながったのです.出かけて行っての講習会は,なかなか大変ですが,これからも,こうした地域の取り組みを応援していければと思っています.(系統分類 橋本佳明)
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ラジオとテレビ番組の収録しました.ラジオは「ラジオ関西-正木明の地球にいいこと」という番組で,生物多様性とは何かを,わかりやすく解説.テレビは読売テレビ制作の特番で,全国から話し上手な人を紹介する番組です.こちらは,「地球はアリが回している」という博物館でのセミナーをお披露目しました.(系統分類 橋本佳明)
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神戸市環境局が開講した「身近なアリ調査」で,講師をしてきました.これは,市内にある高校の生物部や科学部を対象としたもので,最も身近な昆虫であるアリ類の生息調査などをすることで,生物多様性の意味や重要性を知ってもらおうという取り組みです.さらに,ヒアリのような外来アリの侵入を,市民と行政が協働して監視する体制構築の基盤を作りに繋げることも目的です.7校の参加があり,アリの生態や分類に関する講義,野外での餌トラップによるアリ採集実習,採集したアリの同定実習など,10時から17時まで,みっちり指導してきました.(系統分類研究部 橋本佳明)
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 ひとはくでは、2月11日(月・祝)、第14回目「共生のひろば」を開催しました。当日は、発表者400名、聴講を合わせて約2,000名を超える皆さまにご来館いただき、素晴らしい『ひろば』となりました。まずは、ご発表いただいた皆さま、そしてご来館いただいた皆さまにお礼申し上げます。


今年第14回は、口頭発表8本、ポスター発表76本で、全部で84本の口頭発表・ポスター発表をいただきました。その発表と交流のようすをご報告します。
  

(左)4階ひとはくサロンでのポスター展示   (右)3階展示室でのポスター展示

■ギャラリートーク
中瀬館長からのあいさつの後、ひとはく研究員秋山弘之によるギャラリートーク「人の暮らしと共生するコケ植物」を行いました。
地球表面の2%という広大な面積を覆って繁栄しているにも関わらず、人類史上一度も食用にならず、普段あまり目立っていないコケ植物ですが、実は、自然の多い地域のみならず都市部でも人の暮らしと密接に結びついているさまを、ユーモアを交えて紹介しました。
  

(右)質疑応答で、コケ植物の生殖について質問する高校生。生物の授業での知識を見事に生かしながらの質問でした。

■ポスター発表
ポスター発表は76本の発表をいただきました。個性豊かなポスターをはじめ、展示物、実態顕微鏡を用いた体験的展示など、それぞれ工夫を凝らしての素晴らしい発表ありがとうございました。

  
三田の10年間にわたる野鳥観察の記録をまとめたポスター発表や、17年間にわたる六甲山再度公園のキノコの多様性を調べた研究、千種川生物調査の45年の歴史をまとめたものなど、地道な努力の結晶がまとめられた発表が数多くありました。

  
また、「共生のひろば」の特徴は何といっても世代を超えた学びと交流にあります。写真は高校生の発表に熱心に聴き入り、質問や示唆をしてくれている一般の方々です。こんな場を作り出せることを嬉しく、またありがたく思います。
  


長年の地道な研究の蓄積があるかと思えば、最新のデジタルツール=ドローンやGPS、GISを駆使しての発表などもありました。

また、実演や体験のできる楽しい発表もたくさんありました。左は、竜山石やガーネットの性質を楽しく体験的に発表してくださっている様子です。

■口頭発表
口頭発表では8団体から発表がありました。一般の方々でNPOとして環境保全活動をされている方や、高校生、小学生に至るまで多様な年代の方々、さまざまな団体からご発表いただきました。
  
(左)親子での発表「Neo玉虫厨子〜身近な昆虫の潜在的美しさ〜」 (右)作成したNeo玉虫の厨子を聴衆に見てもらっています

  
(左)「川から学んだ自然の大切さ 2018」  (右)大好き!みんなの「ブイブイの森」~地域団体・博物館・行政と連携した環境学習〜。小学校の環境学習と地域団体の活動が融合した発表でした


  
(左)「ピークはなぜでない?〜高校での成長促進物質の同定方法の確立を目指して〜」 (右)「ひすいハンター国石の魅力を探る」実演パフォーマンス付きの発表でした

■茶話会・表彰式および歓談(希望者)

終了後は希望者による茶話会も行いました。本日素晴らしい発表をいただいた方々には、ひとはくから館長賞、名誉館長賞を贈らせていただきました。表彰を受けていただいたのも、幼稚園生から高校生、一般の方々とさまざまな年代の方です。

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このように「第14回共生のひろば」は自然や環境に興味がある方々の活発な議論や交流が行われる中で閉会となりました。ひとはくでは来年度も「共生のひろば」を計画中です。皆さまとまた交流できることを楽しみにしております。


生涯学習課 竹中敏浩



2018年11月25日(日)、人と自然の博物館にて、兵庫県農政環境部が,ヒアリやアライグマ等の外来生物問題をメインにテーマに開催した「県政150周年記念・生物多様性県民セミナー」は,おかげさまで,トータルで380名を超える方々に参加いただき,大成功に終えることができました.
 
 当日は,私も,ヒアリの最新の知見に基づいて,今後,兵庫県と県民が外来種問題に,どのように取り組んでいくべきかについて提案をさせていただきましたが,講演後,参加者の方々と1時間以上にわたる質疑応答を交わすことができ,兵庫県民の環境意識の高さを実感しました.また,講演会と同時開催で,オープンセミナー「標本のミカタ スペシャルーヒアリ」で,当館の三橋さんが「百均ショップの素材でできるヒアリ封入標本作り」を,また,ゲスト講師で来ていただいた伊丹市昆虫館の長島さんが「超絶美麗アリ標本作り」を実施してくださいました.こちらも,まさに,アリが群がるような盛況ぶりでした.県民の方々に実物のヒアリを見ていただき,県下でのヒアリ侵入を行政だけでなく,市民や企業との協働で監視する社会の実現を目指す試みとして,50個体ほどのヒアリ標本を用意して,UVレジン封入標本で持って帰っていただけるように準備しましたが,瞬く間に,用意したヒアリが尽きてしまいました.

 多くの参加者の方々が熱心に講演を聞かれている様子や,アリの標本を喰い入るように観察されている姿を見て,「やっぱり,自然史博物館が一番役に立つ」ということを,手前味噌ですが,あらためて強く実感できました.これからも,「やっぱり,自然史博物館が一番役に立つ」と言っていただけるよう,外来生物問題をはじめ,生物多様性保全のための研究や社会貢献に,しっかりと邁進してまいります(系統・昆虫 橋本佳明).

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9月18日に,京都府特定外来生物バスターズ事業の第2回目の研修会で講習を行ってきました.今回は,物流業者さんを対象とした研修会です.物流に関わる皆さんは,ヒアリ侵入の第一発見者になることが多いだけでなく,ヒアリが定着すると,大きな被害を受けることになる方々なので,真剣に研修を受けられていました.講義をする私の方も,それを受けて,思わず熱弁をふるってしまいました.
 ヒアリをはじめアリ類は巣が成長すると,羽のある新女王アリとオスアリの生産をはじめ,結婚飛行で母巣から飛び出した羽アリが,新しい場所に新しい巣を作ることで,分布を広げていきます.しかし,アメリカ合衆国や台湾など,ヒアリの定着を許した国々では,ヒアリの分布拡大が羽アリによる自然分散だけでなく,物資などに紛れ込んだヒアリのコロニーが,国内物流によって移送され,その分布拡大に拍車をかけたことが分かっています.このため,これらの国々では,ヒアリに汚染された地域から物資を移送するときには,国内であっても検疫を受けねばならい法律が定められました.もし,日本でヒアリの定着を許してしまえば,海外からの輸入だけでなく,国内の物流においても,大きな経済的損失を被るケースも起こってきます.今回の研修では,ヒアリがなぜ恐ろしくて,厄介なのかを,物流に視点をおいて講習してきました.
 ヒアリの定着を未然に防げるかは,行政だけでなく,社会のあらゆる方々に,ヒアリのことを正しく理解いただき,協働して早期発見,早期l駆除に取り組める社会を構築できるかにかかっています.これまで,環境省や各地の地方自治体などで,ヒアリ対策について研修会を数多く実施してきましたが,毎回,参加される対象に合わせて,講習の内容を変えるようにしています.労力や時間がかかり,なかなか大変ですが,そうした対応ができるのも,博物館や大学で,長年アリの研究を続けてきたからで,少しでも研究の成果を社会に還元できるよう,今後も,その努力を続けていきたいと思っています(系統・昆虫 橋本佳明)


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9月7日に,奈良県自然環境課が,県下の市町村職員を集めて開催したヒアリ講習会を実施してきました.
現時点では,奈良県でヒアリの侵入発見は起っていません.しかし,昨年,京都府などの内陸部でもヒアリ侵入が発生しており,経済のグローバル化や物流のスピード化がますます進む中,今後,ヒアリ侵入が奈良県でも発生する可能性は否定できません.また,ヒアリの被害として,毒針による健康被害がよく認識されていますが,既にヒアリが定着拡散している米国や中国,オーストラリア,台湾では,ヒアリは様々な農作物を食害したり,家畜を傷つけたりと,農業や畜産業,林業に膨大な経済的損失をもたらす害虫になっています.さらに,ヒアリだけでなく,最近,問題になっているクビアカツヤカミキリなど,外来生物には農業生産を脅かすものが多く知られています.恵まれた気象条件や高い生産能力を活かして、古くから農業が発達してきた奈良県で,外来生物早期発見体制の構築に取り組むことは急務です.

 ヒアリ講習・同定実習の会場には,樫原市立昆虫館の研修室を使わせていただき,昆虫館の中谷さんにも講師補助を務めていただきました.外来生物問題に取り組むためには,どうしても自然や生物学の知見を持った専門家や機関との協働が必要になります.兵庫県には人博があり,アリ類をはじめ様々な動植物の研究者がいますが,自然史博物館を有しない県では,みなさん,色々と苦労されているようでした.外来生物大襲来時代を迎える中,自然史博物館や昆虫館など,生物多様性研究に従事する研究機関の設立や充実が,今,強く求められいることは間違いなさそうです(系統・昆虫 橋本佳明)


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「高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾5日目」です。
今日は朝食後にホテルからバスで15分の台北市立動物園に直行、1日動物園内で過ごし、多彩なプログラムを実施しました。
本日のプログラム
・動物園遊歩道における生き物観察
・動物園内の昆虫館見学
・野生動物の追跡調査体験
・キノボリトカゲの食性調査
・コウモリトラップの設置
・夜間生物観察

キノボリトカゲの食性調査は、毎年多くの高校生が印象に残ったプログラムとして挙げる人気の調査メニューですを。高校生たちが体験した調査方法は、極力トカゲの身体を傷つけずに胃の内容物を調べるものなのですが、実際に生きたトカゲを使って実施するので、どの生徒も真剣そのものです。
今回のツアーでの夜間観察では、過去の開催と比べて多くのヘビを観察することができました。普段ヘビを至近距離で観察する機会はほとんどありませんが、今回は、ひとはく太田先生と池田先生、台湾の専門家がヘビの出現ごとに詳しい解説をしてくださり、安全を確保した上で実際に触れることもできました。
プログラムの合間の休憩時間には、誕生日を迎えた日本人女子高校生と、グループリーダーを務めてくれている台湾人ボランティア大学生の二人へバースデーソングとお誕生日ケーキのサプライズがありました。台湾側主催者のご好意に感謝です!
今日で大半の生物調査体験を終え、明日は日台高校生の交流がクライマックスを迎えます。

公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会
佐々木洋平

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葉の上で獲物昆虫を待ち構えるハナグモの一種  動物園内の歩道を歩きながら生き物を探す

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何かが見つかる度に足を止め、実物を前に講師の解説に聞き入る

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(左)動物園内で電波発信機をつけたカメを探してみる
(右)この日が誕生日の日台それぞれの参加者にハッピーバースデーの歌とともにサプライズでケーキが!

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間近で見ることができた台湾固有のカササギの仲間ヤマムスメ(Urocissa caerulea)と、その飾り羽を拾いご満悦の布野先生

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動物園内で捕まえたスウィンホーキノボリトカゲ(Japalura swinhonis)に口から管を入れ胃内容物を吸い出す実習
「ちょっとごめん、君たち朝ごはんにどんな虫を食べた?」

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コウモリ類を捕獲するためのハープトラップを動物園内の歩道に仕掛ける

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(左)カタツムリ類を専門に食べるセダカヘビ(Pareas atayal)登場
(右)続いてタイワンオオガシラ(Boiga kraepelini)も登場

8月1日に,人博の教職員セミナーで,「外来種問題を,どのように,学校で教えれば良いのか」について,ヒアリの例に,4時間ぶっ通しで講義を行いました.
 まずは,もともと南米のアリだったヒアリが,ヒトの経済活動のグローバル化に伴って,北米,そして環太平洋地域に分布を広げ,最悪の侵略的外来アリになったことを講義し,なぜ,ヒアリが最悪なのかを,社会性昆虫としてアリの生態から解説しました.そして,外来種問題を教える上で,先生方が理解しておく必要がある「人為的移入と自然分散」,「外来種の生態的解放」,「地理的障壁と固有種の進化」「共進化と生物多様性の増大・維持の仕組み」について,イラストなどを駆使して,できるだけ平易に,わかりやすく講義を行いました.例えば,ヒアリが,海上コンテナ輸送によって,たった60年ほどで3大陸に分布を拡大したように,外来種の場合,その生物が本来持っている移動能力を超えて,短時間に,長距離の分散が起こります.その結果,分布拡大地で在来の生物たちと共進化する余裕も与えられず,さらに,本来の生息地にいた天敵や競争相手がいないために,異常に増殖してしまうのです.その結果,在来の生物を駆逐し,人の暮らしにも被害を及ばすことになるのです.
 外来種問題は,人の営みが引き起こした問題です.人が責任を持って外来種問題の解決に取り組むしかありません.そして,そのためには,外来種問題を正しく知って,正しく理解し,正しく行動できる社会の実現が不可欠です.これから社会の主流となっていく子供達に,どのように外来種問題を教えていくのか,その手助けに,少しは尽力できたかと思っています.実際,講義の後のアンケートでは,「これまでで,最高に役に立つ講義」だったという感想も頂けました.また,セミナーでは,実物のヒアリやアカカミアリ標本を観察して頂き,その見分け方も伝授しました.子供達の安全を見守る先生方のヒアリ不安症を,少しは解消できたかなとも思っています(系統・昆虫 橋本佳明)
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教職員や学校を利用した地域活動をしている皆さん、人間と自然や環境に関わる活動をしている市民団体とNPO・NGOの皆さんへの呼びかけです。
 研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員会では、論文(原著論文・総説・報告・資料)の原稿と、意見や書評、さらにそれらに分類できない論文以外の原稿を募集しています。教職員の皆さんは、夏休みの間に普段とは違った活動をしようと張り切っておられることでしょう。また市民団体とNPO・NGOの皆さんは、長年、取りためたデータをまとめ、全国に発信する良い機会です。

 夏休みを活かして、論文原稿や論文以外の原稿をまとめてみませんか?

 論文の掲載には、博物館内外の専門家による審査があります。論文以外の原稿は研究紀要編集委員会の承認があれば掲載されます。
 専門家からは、通常、2、3回の書き直し要求がありますので、場合によって博物館の研究者と連絡をとり、その研究者に共著者になってもらって投稿をするのも良いかもしれません。
 10月中旬までに審査を通って受理された原稿は、その年の12月までに掲載する予定です。それまでに受理が出なくても、じっくりと書き直せば、次の年には掲載されるはずです。皆さまのご投稿をお待ちいたします。

 投稿締め切りが廃止されました。原稿に投稿カード(http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/seiri-form.xls)を添えてご投稿下さい。メールの添付書類でお送り下されば結構です。コンピュータが使えないなどの特別な場合を除いて、郵送はしなくてかまいません。その他、必要なことは投稿規定(http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/bosyu&toukoukitei.html)に書いてあります。投稿規定を、よくお読み下さい。何かわからない事があれば、三谷雅純までメールでお問い合わせ下さい。

投稿先・問い合わせ先:研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長 三谷雅純 宛て
mitani(アット・マーク)hitohaku.jp[(アット・マーク)を @ に変えて下さい。]

 投稿を、心よりお待ちいたします。

                                                               研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長 三谷雅純

7月26日,東播磨県民局で,ヒアリとアカカミアリ対策について講習会を開催してきました.

ヒアリなどの外来生物問題では,港湾地域での水際対策にばかりに関心が払われがちです.しかし,ヒアリやアカカミアリが発見される場所は,実は,内陸部の事業所敷地内が圧倒的に多いのです.これは,海外から運ばれてくるコンテナは,輸送途中の盗難などを防ぐために,輸出先で封印され,発注主のところに届いて,初めて,開封されるからです.さらに,優秀な日本の物流システムでは,港に陸揚げされたコンテナは,早ければ1日か2日で内陸部の事業所に陸送されてしまいます.このため,ヒアリやアカカミアリの定着を防ぐには,水際だけではダメで,内陸部の事業所の方々との協働が極めて重要になるのです.

播磨地域は,神戸,阪神地域と並ぶ,鉄鋼、造船、機械などの産業が集積する兵庫県の大都市地域です.このため,中国をはじめ海外の様々な国から,神戸港に陸揚げされたコンテナが,この地域に運ばれてきます.西播磨県民局に続いて,東播磨県民局でも,ヒアリとアカカミアリの講習会を実施したのは,播磨地域も外来生物問題の最前線にあるからです.
この日も猛暑でしたが,製造業や物流産業など様々な業種から,41名もの方に参加頂けました.講義では,一旦,ヒアリやアカカミアリの定着を許せば,健康被害だけでなく,経済活動へも大きな損害を与える続ける存在であることや,女王アリを見つけて完全駆除することは非常に困難で,侵入発見時に適切に対応することが,唯一の防除策であることなどを,お話しました.また,ヒアリやアカカミアリの標本を持参し,実物の観察会も行いました.みなさん,やはり,ヒアリやアカカミアリが,こんなに小さいのかと,驚かれていました.テレビなどの画像からは,殺人アリと報道されたこともあり,もっと巨大なおどろおどろしいアリのイメージがあるようです.

今後も,尼崎市や川西市,奈良県などで,続けてヒアリとアカカミアリの講習会を実施する予定になっています.しばらく,猛暑が続くようで,移動だけでも,かなり消耗しますが,人博が掲げる「思索し,行動し,提言する博物館」をモットーに,ぶっ倒れないよう気を配りながら,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)
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6月16日と17日,大阪で,連続して3箇所でヒアリの侵入が発見されました.2000匹を超える大きなコロニーがコンテナに潜んでいたこともあり,荷下し作業をされていた方と,環境省の職員の方が,ヒアリに刺されるということまで起きました.
これを受けて,環境省から職員がヒアリに刺されないための装備や,刺された時の対処法について,アドバイスを求められました.装備について色々とアドバスをしていたら,それは,私が熱帯雨林へアリの調査に行く時のいつも格好だと気がつきました.熱帯には刺されると,飛び上がるくらい痛いアリがたくさんいます.しかし,調査には,採集や実験道具も持っていくので,装備は軽装で,かつ身を守れるものになります.例えば,スズメバチなどと比べると,アリはサイズが小さいので,使い捨ての薄いゴム手袋があれば,毒針が貫通することはありません.足元は,どうしても注意がおろそかになり,手に比べて皮膚が薄いので,ゴム長靴か,足袋のようなもので,しっかりと守っておくのが無難です.さらに,虫除けスプレーを長靴にかけておくと,アリが寄り付きにくくなるので,より安心です.採集には,私はハンディ掃除機を吸虫管の代わりに使っています.これは,口で吸う吸虫管で採集に時間をかけていると刺される確率が上がるのと,土などを吸い込んでしまうを避ける意味もあります.

私が長年の熱帯でのアリ調査から編み出したスタイルやノウハウが,ヒアリ対策の最前線に立つ方々の安全を確保することに役立つとは,想像もしていませんでした.しかし,経済のグローバル化がますます進み,思いもよらない生き物たちが,続々と侵入してくる,今,海外で昆虫や植物など,自然を相手に基礎的な調査をしてきたノウハウが,実は,一番役に立つ時代になったと言えそうです(系統・昆虫 橋本佳明)
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美しき蝶たちを,ちょっと美術館風におしゃれに展示するために,シックな色合いのドイツ箱スタンドや,額縁のようなドイツ箱枠を,あたらたに開発して,夏の江田コレ展の準備を進めています.展示する200種以上の蝶の選定は完了し,それらの標本を,収蔵庫から,展示用に新しくドイツ箱に並べる作業を黙々と行っています.標本を損ねることなく,できるだけ見栄え良く並べる作業は,気の抜けない作業ですが,みなさんに,美しき多様性の世界を堪能していただけるよう,頑張っています(系統・昆虫研究室)

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6月13日に,西播磨県民局で,ヒアリ・アカカミアリ対策についての講習と同定実習を行ってきました.西播磨は,4月8日に,インドネシアから神戸港を経て,播磨町にある事業所に搬送されたコンテナからアカカミアリが発見され,その対応に,少し苦労されたとも伺っていたので,兵庫県にある自然史博物館として,日本の外来種問題の最前線にある研究機関として,講習会を実施させていただくことにしました.

会場となった西播磨県民局には,所管地区の市町村から40名以上の参加がありました.つい最近に,アカカミアリの侵入を受けたこともあり,みなさん,真剣に聴講され,講義と実習後には,活発な質疑応答で,大幅に時間延長して対応させていただきました.

アカカミアリの侵入発見は,4月8日以降も,5月28日 インドネシアー成田空港ー茨城県東海村(事業所),6月3日 台湾ー神戸港ー愛媛県新居浜市(事業所),6月11日 台湾ー東京港ー千葉県柏市(物流倉庫)と続いています.アカカミアリはヒアリと同属のアリで,原産地もアメリカ大陸ですが,ヒアリと違って,台湾,中国,そして東南アジアからインド,アフリカまで,すでに,世界中に侵入定着していることで,今後も,ヒアリ以上に,日本への侵入が起こると予想されます.外来種対策の肝は,早期発見と早期駆除です.このためには,監視の目を増やし,その質を高める地域行政の取り組みが必須になります.思索し,提言し,行動する自然史博物館として,地域行政が地域の人々の安全な暮らしを守るために取り組む「火アリ用心,戸締り用心」に,これからも,お役に立てるように,微力ですが,尽力していきます(系統・昆虫 橋本佳明).

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6月1日,姫路で開催された兵庫県博物館協会の研修会で,これまでの人博のヒアリ対策への貢献を例に,「外来種問題でも,自然史博物館が一番役に立つ」という内容の講演をしてきました.

 2010年,愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で,「2020年までに侵略的外来種とその定着経路を特定し、優先度の高い種を制御・根絶すること」等を掲げた愛知目標が採択されました.これを受けて、環境省、農林水産省及び国土交通省は、2015年に「外来種被害防止行動計画」を策定し,目標の実現を目指すことになりました.ヒアリをはじめ侵略的外来種は、生態系や人の生命・身体だけでなく、農林水産業,物流,商業等のさまざまな人の活動に多大な被害を与えることが国内外で知られています.このことは,広く多様な主体が連携して,合意のもとに取り組む体制がないと,外来種問題は解決できないことを示しています.外来種被害防止行動計画でも「社会において外来種対策を主流化する」ために,その対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことを計画の一つに掲げられています.しかし,昨年,2017年に,神戸港で,国内初のヒアリ侵入が発見された以降の社会パニックや,対策の経緯を見ていると,必ずしも,外来種対策を社会の主流化することが,うまくいっているとは言えないでしょう.

 大学や研究機関が広く市民に,直接的に,啓蒙や教育活動を行うことは難しいですが,自然史博物館は,生物多様性や生態系の重要性やそれらの保存の必要性を社会へ実装できる場です.人博では,このために,蓄積した標本資料や高度な研究成果を活用して,セミナーや自然観察会,展示などの生涯学習を数多く行い,大きな成果を上げてきました.まさに,博物館は,外来種問題とその対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成を進めていくことができる機関です.神戸港でのヒアリ国内初侵入は,国際貿易が盛んな兵庫県が、改めて外来生物の侵入リスクが高く、我が国の外来種問題の最前線に立たされていることを再認識させてくれました.外来種問題の最前線にある自然史博物館として,「外来種問題でも,博物館が一番役に立つ」と言えるように,微力ながら頑張っていければと思っています(系統・昆虫 橋本佳明)

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5月30日に,広島県で地方自治体向けのヒアリ講習会を実施してきました.広島県環境県民局や広島市や呉市などの市町職員,県の港湾局の方々など40名ほどの参加者に,「ヒアリ対策A to Z 」というタイトルで,ヒアリがなぜ怖いのか,ヒアリの侵入ルートとルート別の対策の考え方などを講義しました.90分の長い講義でしたが,参加者の皆さんは最後まで真剣に聞いてくださいました.講義の後の質疑応答でも,たくさんの質問があり,広島県がヒアリを始め外来種問題に真剣に取り組まれていることが,よく分かりました.翌日,広島県環境県民局の方から,参加者の皆さんが「来てよかった」と感想を寄せられているとメールをいただき,次回は,是非,ヒアリ同定実習会を実施して欲しいというリクエストも頂きました.
 いろいろなところへ出向いて,多くの講義を行うのは,正直なところ,体力的に,そして,ルーチンの仕事もあるので,大変です.しかし,環境省・農林水産省・国土交通省がH27年に策定した「外来種被害防止行動計画~生物多様性条約・愛知目標の達成に向けて~」でも,外来種による被害を防止するための考え方と指針として,社会において外来種対策を主流化するために,まずは,「外来種問題とその対策の必要性を国民全体に広く浸透させ、その解決に向けた行動を促すための、適切な普及啓発と、人材の育成が必要です」と謳われています.自然史博物館は,まさに,生物多様性や生態系の重要性を社会に実装する場で,外来種問題を知り,理解し,行動する市民を育成することができる機関です.ヒアリ騒動を契機にして,外来種問題を正しく知り,正しく行動できる社会の実現に,博物館の研究員として,そしてアリの研究に生涯をかけて取り組んできた大学研究者として,少しでも貢献できればと思って,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)

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5月23日,京都府環境部の「外来種バスターズ」委員会に,委員として参画してきました.

 外来種の侵入定着を防ぎ,地域の安全な暮らしを守るためには,外来種が定着・分布拡大する前に発見して,初期段階で駆除するのが,一番有効な手立てです.しかし,行政だけで,十分に,外来種監視の目を光らせるのは,なかなか難しいところです.そこで,京都府は,本年度から,行政と民間,そして市民の協働で,外来種の監視,駆除に取り組む「外来種バスターズ隊,監視協力隊」を立ち上げることにしたのです.このような試みを本格的な施策として,地方自治体が実行する試みは,これまでに例の無い,画期的なものです.

 外来種バスターズを実施していくためには,対象とする外来種の選定だけにとどまらず,正確な自然科学の知識に基づいて,外来種の発見や駆除が行える人材育成にも,行政担当者だけなく民間企業や市民を含めて,広く取り組む必要があります.「思索し、行動し、提言する博物館」の研究員として,また「社会から信頼され評価される、世界水準の大学」の教員として,私がこれまでに人博や兵庫県大で蓄積した研究成果や啓蒙・教育活動のノウハウを生かして,この画期的な取り組みが成功するように,微力ながら支援していこうと思います.そして,この活動で得たノウハウを,地域の自然と安全な暮らしを守るために,兵庫県での環境施策や外来種対策に還元できるように,しっかりと学んできます(系統・昆虫 橋本佳明).

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5月22日に,岡山県環境文化部自然環境課主催の第2回ヒアリ講習会を実施してきました.今回は,港湾関係者向けということで,倉敷市の水島港近くの倉敷市環境学習センターで,3時間の講習.70名を超える港湾事務所,事業者,荷主の方々の参加がありました.
 講習会では,まず,「ヒアリ対策A to Z」のタイトルで,なぜ,ヒアリが怖いのか,ヒアリの侵入ルートは2つ,各侵入ルートごとに,どのような対策が必要かを講義,続いて,岡山県が用意してくださった実体顕微鏡と,人博から持参したヒアリやアカカミアリの標本を使って,ヒアリやアカカミアリの一次スクリーニングの実技講習を行いました.さらに,今回は,特に,現場でヒアリに遭遇することが多い方々が対象でしたので,肉眼で,ヒアリやアカカミアリと,アリグモや在来のアリを区別するポイントについても講義してきました.倉敷市の港湾地区は,岡山駅から車でも1時間以上の距離があり,人博から近いようで遠い場所での講習会ということもあり,結構,体力的に疲れましたが,ヒアリ水際防衛の最前線におられる方々に,直接,講習をさせていただける貴重な機会となりました.
 明日は,京都府の環境部自然環境保全課が計画している,行政と民間,市民の力を集結して外来生物対策にあたる「外来種バスターズ」組織委員会に参画してきます.これから,ますます,経済のグローバル化が進む中で,地域に,生物多様性保全に関わるセンターや自然史博物館があることが,いかに,外来生物対策に力になるのかを実感しています.人博の存在価値,そして,大きくは,日本の自然史博物館の意義をアッピールする好機ととらえて,少々,くたびれてきましたが,外来種から地域の方々の安全な暮らしを守る手助けのために,頑張ります(系統・昆虫 橋本佳明)

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 JICA(独立行政法人国際協力機構)が行っている課題別研修のうちのひとつの研修として今日、ひとはくで6カ国の研修員の方々が研修を行われました。また、この機会に館内の展示を見学して頂きました。このようすをご報告します。

 今回の課題別研修のテーマは「市場メカニズムを活用した持続的森林・自然資源管理」で、日本で5月13日から6月24日まで研修されています。世界6カ国(ブラジル・ホンジュラス・ケニア・レバノン・チュニジア・ウガンダ)から来られた研修員の方々ですが、研修員といっても学生ではなく、それぞれの国でこのテーマに取り組まれている専門家や行政の方々で日本の技術を学びに来られています。ひとはくでは今日1日GIS(地理情報システム)を用いた自然資源管理について学ばれました。
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6カ国6名の研修員の方々。本日研修の講師を務めた本館の三橋弘宗主任研究員(右から3番目)、JICA関係者(両脇)とともに。

  
(左写真)スマホに「館ナビ」kan-naviアプリをインストールしていただき、英語の解説を見ながら各自の興味のある展示をご覧いただきました。館ナビには日本語や日本語(子ども用)の案内もありますので、次回ご来館の際にはお試しください。>> ご自身のスマホを使って「展示解説」が楽しめます!
(右写真)「世界の森」展示を見る研修員の方。自国から運ばれてきた展示物を見ていただきました。

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(左・右写真)興味を感じていただけたのは、やはり兵庫県産の丹波竜タンバティタニスの展示です。母岩に含まれる様子を再現した模型の展示を熱心に写真に撮られていました。

  左写真は、研修を終えられ出発される6カ国6名の研修員の方々です。三橋研究員(左手前)から豊岡での研修についての励ましを受けています。
これから豊岡市までバスで移動され、現地で研修を続けられるとのこと。遠く海外に来られてタイトなスケジュールで研修されるのは、体力的にもかなり厳しいことと思います。お体に留意され、6月24日まで研修を続けられるよう願っています。


生涯学習課 竹中敏浩 

昨年に,ヒアリについて,「見慣れない赤いアリに注意」というフレーズが注意喚起のチラシやポスターに使われたためか,今も,赤い体色のアリを見つけた方から,ヒアリかもしれないという問い合わせが博物館にあります.特に,この時期,胸部と腹部の一部が真っ赤なムネアカオオアリの結婚飛行シーズンで,このアリを見て,ヒアリと思う方が多いようです.
 台湾で撮影したヒアリの生態写真(肉眼での印象に近い倍率)とヒアリ・アカカミアリの体色と在来アリの体色に比較表を掲載しておきます.見てわかるように,ヒアリは,むしろ茶色から黒っぽく見えるアリで,決して,赤いアリではありません.また,殺人アリと騒がれたことで,みなさんのイメージの中では,ヒアリは巨大なアリと思われている方が多いようですが,体長は,小型の働きアリで2mmぐらい,一番大きな働きアリでも6mmほど,女王アリも1cmぐらいの大きさです.アリ界では,ヒアリは中肉中背のアリです.ムネアカオオアリは働きアリでも体長1cmぐらい,女王アリは2cmもある日本で最大のアリです.
 人博では,小型から大型の働きアリまで,実物のヒアリ標本を展示しているので,一度,実物を見に来てください.「百聞は一見にしかず」です.実物を実際に見ることができるのが,自然史博物館の良さ.そして,人博では,外来生物の事や生物多様性を学ぶことができるセミナーも多数開講しています.「百見は一考に如かず,そして,百考は一行に如かず」です.正しく知って,正しく怖がり,正しく行動できるようになれますよ (系統 昆虫 橋本佳明)

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5月11日に,岡山県の環境文化部自然環境課主催の自治体向け「ヒアリ対策講習会」が開催されました.岡山県のヒアリ有識者会議の委員を務めている関係もあり,この講習会で,講師として,ヒアリを始めとする外来アリ対策の講義と,持参した標本を使って,ヒアリやアカカミアリの一次スクリーニング技術の実習を行ってきました.同課で,ヒアリや外来生物問題に積極的に取り組まれている継山さんのご尽力もあり,岡山県下の市町村から,40名近い方々の参加がありました.また,地元のテレビ局や新聞社も取材にこられ,講習会の様子を熱心に撮影したり,参加者にインタビューをされていました.

 講義では,まず,ヒアリを正しく知って,正しく怖がるために,「なぜヒアリが怖いのか」から講義をしました.ヒアリが怖いのは殺人アリだからではなく,ヒアリの侵入定着を許すと,地域の生態系や生物多様性だけでなく,農業や商業活動という人の営みにも大きな被害をもたらし,さらには自然を愛好する文化までを破壊するモンスターだから恐ろしいのです.そして,アリと言う生き物の凄まじい繁殖力と,それ故にヒアリの駆除は難しいこと,それでは,その強敵に,どのように,立ち向かえば良いかを,できるだけ具体例をあげて,お話しをさせていただきました.

 実習では,持参した在来のアリと,ヒアリ,アカカミアリの標本を各テーブルにお渡し,岡山県に用意いただいた実体顕微鏡を使って,参加者の方々にヒアリとアカカミアリのスクリーニングを体験していただきました.顕微鏡の標本画像をスクリーンに投影する装置で識別のポイントを解説しながら,参加者のところを回って,一緒に顕微鏡を覗き,さらには,その合間にテレビ局のインタビューも受けるという,かなりハードな実習講義でした.しかし,人博で作成したヒアリとアカカミアリの一次スクリーニングの教科書を開いて,実体顕微鏡を使うのが初めてという方や,老眼で顕微鏡を覗くのに苦労されている方が,一生懸命にアリの標本を見ておられるので,へこたれるわけには行かず,頑張りました.実習では,参加者の皆さんが,実際にヒアリの標本を見て,思っていたよりもヒアリが小さいと驚かれていたのが印象的でした.すぐにヒアリやアカカミアリを同定できるようになるのは無理だとしても,実物を知ったことで,他のアリをヒアリやアカカミアリと簡単に間違えることはなくなるに違いありません.博物館でヒアリの展示を作り,実物の標本を配架している意義も,ここにあります.実物を多く保管している博物館は,外来生物の問題でも,一番役に立つところなのです.

 岡山県では,さらに,倉敷市で港湾関係者を集めて,ヒアリ対策講習会を開催される予定で,そこでも講師を務めることになっています.外来生物問題と地域の自然や生活を守るために,人博と兵庫県も頑張ってますが,岡山県,さらに頑張っておられます.(系統 昆虫 橋本佳明).

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 5月9日に,芦屋市環境衛生協会主催で開催された市民向けの害虫対策講習会で,ヒアリの講演をしてきました.
平日にもかかわらず,100名近い方々が講習会に参加してくださり,講演する方としても熱が入りました.

ヒアリは殺人アリ?
 講習会は,蚊が媒介する病気の話とその対策と,ヒアリ対策のお話の二本立てでした.昨年度,ヒアリは殺人アリだと騒がれたこともあり,人への刺噛被害に,どうしても,皆さんの関心がいきがちです.私も,神戸で日本初のヒアリ侵入が発見された当初は,米国では年間,何人もの人がヒアリで亡くなっているという情報もあり,ヒアリは怖いアリだと思っていました.しかし,その情報をよく調べてみると,必ずしも,科学的な根拠に基づくものではないことがわかりました.例えば,何かの虫に刺された一般の方が,正確に,その虫をヒアリと同定できるわけはなく,ハチやアリのような虫に刺されたという報告例の中から,これは,ヒアリに刺されたのだろうという推定に基づく数字のようでした.そこで,住居環境などが日本に似た台湾に直接,出向いてヒアリ被害の現状を伺ってくることにしました.台湾は,米国からヒアリが侵入して10年になります.台北にある保健所で話を伺うと,ヒアリによる台湾での死亡例は,これまでに0人で,ヒアリに刺された多くの方は,薬局でヒスタミン軟膏等を買って,自分で対処されているということでした.私も,その時にヒアリの野外調査を行い,2回ほどヒアリに刺されました.刺された瞬間は,かなりの痛みがありましたが,その後は,少し赤く腫れただけで,特に,体に異変を感じることはありませんでした.もちろん,ヒアリによるアナフィラキーショックが起こるかどうかは,刺された人の体質によるところが大きいので,安心はできません.しかし,殺人アリという表現は,少々,大げさであることがわかりました.

ヒアリが怖いわけ
 ヒアリの侵入と定着を許すと,怖いのは,ヒアリがアリだからです.アリは,卵を産むのと長生きするのが仕事の女王アリと,雑用をこなす働きアリが一緒に,家族で巣を作って暮らす昆虫です.産卵マーシンの女王アリは毎日膨大な数の卵を産むことができ,ヒアリの女王アリは1日1000個以上の卵を産むことが知られています.その結果,ヒアリの巣にいる働きアリの数は,6年ぐらいで,20万匹を超えるまでに増殖します.ヒアリは雑食性で,花の蜜から種子,動物,時には,機械油までを餌にすることがわかっています.このため,中国では農作物の花がすべてヒアリに食い荒らされて,巨額の農業被害が生じたり,米国では電気ボックスなどにヒアリが入り込み,ケーブルなどを齧ることで停電などの経済被害まで起こっています.ヒアリは,単に健康被害を引き起こす衛生害虫ではなく,農業から産業まで,人の営みすべてに大きな被害をもたらすモンスターなのです.さらに,ヒアリを駆除するためには,いくら働きアリを殺しても意味がありません.何十万匹という数のアリの中から,産卵する女王アリをピンポイントで攻撃し,殺さないと駆除することはできないのです.ヒアリが本当に怖い理由は,こうしたアリという生物の特徴にあります.ヒアリを正しく怖がり,ヒアリと正しく戦っていくためには,まずは,ヒアリやアリという生き物の事を正しく知る必要があります.

 博物館には,アリを研究する私のような,基礎的な自然史研究に取り組む多彩な研究員がいます.ヒアリと正しく戦うために,アリという生き物のことを正しく知る必要があるように,外来種問題をはじめ,生物多様性や生態系の保全や県民の安全な暮らしを守るためには,実は,博物館が有する自然科学の成果が役に立つことを,ヒアリは示してくれました.今後も,微力ではありますが,これまでの研究成果を,少しでも社会に還元できるように,尽力してまいります(系統 昆虫 橋本佳明)

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中国から帰国早々,神戸港のコンテナから,ヒアリらしいアリが発見されたので,同定確認して欲しいという連絡が,神戸市,兵庫県,環境省からありました.標本の到着を待って調べてみると,ヒアリではなく,同属のアカカミアリでした.アカカミアリも,ヒアリと同様に有毒の針を持ち,刺されると非常に危険なアリで,特定外来生物に指定されています.

 アカカミアリが見つかったコンテナは,3月22日にインドネシアのジャカルタから,合成繊維の材料を積載して4月5日に神戸港へ陸揚げされたもので,26日に県内の工場へ陸送され,荷下しの時にコンテナ内にアリがいることが通報されました.空コンテナは神戸港へ戻され,燻蒸によってアリは殺虫,神戸港などに逃げ出していないかを念のために調べるモニタリング調査が行われています.

ヒアリよりも厄介なアカカミアリ
 アカカミアリも,ヒアリと同様に,米国南部から南米にいたものが世界に広がったものです.その習性や生態的特性はヒアリと変わらず,侵入地で健康被害だけでなく,農業被害や生物多様性の破壊など,深刻な問題を引き起こしています.さらに,ヒアリよりも怖いのは,アカカミアリが,インドネシアを始め,中国からベトナム,タイ,マレーシア,インドまで,アジア熱帯のほぼ全域,そしてアフリカ大陸にまで,侵入・定着していることです.このため,今後,ますます経済のグローバル化が進めば,アカカミアリの侵入頻度がウナギのぼりに高くなることが懸念されます.実際,アカカミアリの発見は,今年に入って,すでに,これが2件目になります.1件目は,4月14日に,なんと,長野県の住居屋内で,生きたアカカミアリの女王アリが発見されました.海外から輸入された什器類に紛れて国内に侵入したのではないかと推測されています.ヒアリの侵入は全国版のニュースになることが多いですが,なぜか,アカカミアリだと報道されないようです.しかし,実は,アカカミアリの方が防衛ラインを突破して,国内に定着してしまう可能性が高い,ヒアリよりも怖い外来アリなのです.

ヒアリとアカカミアリの識別ポイントー博物館の標本が役に立つ
 アカカミアリはヒアリと同じトフシアリ属のアリなので,形や体色,大きさなどが,非常によく似ています.両種を見分けるには,顕微鏡などを使って,大アゴの付け根など細部を,よく観察する必要があります.その中で,見やすいのは,アカカカミアリには,前脚の付け根あたりの胸部側面板に突起や張り出した辺がある点です.人博に長い研究時間をかけて収集集積したアリの標本などを使って調べた結果では,少なくともアジア全域に分布するアカカミアリには,この特徴が安定して見られます.一方,ヒアリには,このような突起はありません.博物館に多くの標本を集積・保管しておくこと,そして,それを活用出来る研究者がいることが,外来種問題でも大きな力になるのだと,実感しています.(系統分類 昆虫 橋本佳明)

(写真上段:神戸港で発見されたアカカミアリ,写真下段:アカカミアリの識別ポイントー胸部側面の突起)

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環境省のヒアリ有識者会議のメンバーとして,環境省,国立環境研究所の五箇さんと一緒に,中国広東省広州市に,日中両国ヒアリ対策会議に行ってきました.

 広東省にある華南農業大学(中国重点大学)の中国ヒアリ研究センターで,その先生方や中国中央政府の生態系・環境保護部,地元広東省環境保護庁の方々と,中国でのヒアリの現状や,その対策についての情報・意見交換を行い,そのあと,実際にヒアリが高密度で生息している造成地に出向いて,その駆除作業の視察もしました.


中国でヒアリは農業害虫・・・

 今回の視察で,中国では,ヒアリは主に農業害虫として捉えられていることがわかりました.例えば,ヒアリは色々な作物の花を,花蜜を集めるために食害し,その結果,結実が妨げられ,農業に大きな損益が出ているとのことです.さらに,ヒアリが増えるにつれて,その被害は林業,そして住居地域での健康被害にまで拡大しています.これを受けて,華南農業大学の昆虫学の先生方は,14年をかけてヒアリ対策に関する基礎的な研究成果を積み上げ,現在,30以上の特許からなるヒアリ駆除のための新薬開発に成功されていました.さらに,その散布方法についても,ヒアリの生息状況の違いに合わせた精緻なマニュアルを作成・公表,そのレベルの高さに,驚かされました.


科学的な駆除方法を開始・・・

 現在,この科学的な駆除方法に基づいて,本格的なヒアリ駆除が開始されたところのようです.広東省では年間20億円近い対策費を計上して,農業,林業,環境の各部署による合同チームがヒアリ対策に取り組んでいました.まだ,限定された地域ではありますが,ヒアリの根絶に成功した面積は広がっていました.国内では,中国での,このような情報は全く入ってきません.やはり,現場に飛び,顔と顔を突き合わせて,話し合うことの重要性を痛感しました.特に,外来種問題は,まさに国際協働の課題でもあるわけですから,積極的な交流が求められるのは当然のことといえるでしょう..


日本へのヒアリ侵入を防ぐには・・・

 日本へのヒアリ侵入を防ぐためには,今後も,日中でヒアリ対策に関する協議を進め,中国との協働体制を構築していく必要があります.兵庫県は,中国との貿易量が国内でも最大規模を誇る港の一つである神戸港を抱える,外来種問題の最前線にある地域です.そして,広東省は,兵庫県の姉妹県の一つで,この省には多くの日本企業が進出しており,日本への輸出量最大規模を有する港の一つである南沙港を抱えています.国と国,そしてアリや害虫駆除の研究者同士,さらに,地域と地域との積極な交流が,ヒアリを始め,今後,増大するであろう外来種の対策に大きな力となることを,実地で学ぶことができた視察となりました.近いうちに,華南農業大学の先生や広東省の方々を兵庫や人博,県立大学にお呼びできる機会を作り,県下のヒアリ対策に少しでも貢献できるよう努力してまいります.

(系統分類研究部,昆虫 橋本佳明)


(写真 上段:華南農業大学の熱烈歓迎電光掲示,写真 二段目左:大学のホームページに掲載された日本ヒアリ視察団の記事.写真 二段目右:大学入り口で記念写真ー五箇先生にポーズを合わせて)

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(写真三段目左:ヒアリ研究センターで情報と意見交換会,写真三段目中:広東省環境庁,写真三段目右:広東省環境庁での意見交換会,写真下段:広東省広州市郊外のヒアリ生息地で,ヒアリ駆除作業の視察)

ひとはくではこれまで、3階丹波の恐竜展示室において、2006年に発見され2014年に新属新種として認められた植物食恐竜、通称"丹波竜"=学名"タンバティタニス・アミキティアエ"の化石の産出状況のレプリカや生体復元像(右)を展示していました。 tambatitanis1.JPG 

これに加えて、昨日4月27日(金)より、タンバティタニス・アミキティアエ全身骨格模型(10分の1)実物大頭骨模型を展示しました。昨日は、新聞各紙(朝日、毎日、読売、神戸、産経、六甲タイムス)とサンテレビに取材いただき、この展示担当の三枝春生主任研究員が説明を行いました。 
   
熱心に取材いただき、さまざまなご質問をいただきました。
■大きさに関するご質問:体長約15mを10分の1にして、1,5mの模型を製作
■製作方法:3Dプリンタによる製作
■材質に関するご質問:10分の1全身骨格模型は硬質プラスチック、実物大頭骨は樹脂
■これまで発見されている部分は:全身骨格では肋骨・血道弓・尾椎など、頭骨では歯骨・脳函など
■推定の参考にしているのは:アジアや南米などで発見されている他の竜脚類などを参考にして推定

   
ちょうど昨日は、兵庫県立大学附属中学校の生徒さんたちが見学に訪れてくれていましたが、新聞社の取材の様子も含めて写真を撮り、見学をしてくれていました。

今回展示を開始したタンバティタニス・アミキティアエの全身骨格・頭骨模型以外にも、北米で発見されたカマラサウルスの頭骨レプリカ、アパトサウルス(かつてブロントサウルスと呼称)の骨格模型(12分の1)も引き続き展示されていますので、これらと比較もしながら展示をお楽しみください。

これら恐竜化石のほか、緊急速報展「篠山層群からみつかった小さな植物化石」や、原始的な真獣類(哺乳類の一種)"ササヤマミロス・カワイイ"の展示などで、かつてこの地域が個性豊かな生物たちの繁栄の地であったことを感じていただければ、うれしく思います。

このゴールデンウィーク期間中、4月30日(月)、5月5日(土)、6日(日)には、今回取材を受けた三枝研究員による展示解説が行われます。
また、5月6日(日)には「化石発掘体験セミナー」(申込締切4月29日(日))が開催されます。 


ゴールデンウィーク期間中、ぜひ、ひとはくへもお立ち寄りください。


生涯学習課 竹中敏浩

1月28日(日)に神戸で開催される「第10回サイエンスフェアin兵庫」に・・・
今回もひとはくは・・出展いたします!

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会場は兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス 神戸大学統合研究拠点コンベンションホール
甲南大学フロンティアサイエンス学部(ひとはくは6F講義室です!)などです!
 
今回も1000名を超える高校生などが参加し、科学技術分野における研究や実践発表の場として
口頭発表やポスター発表が行われます!
そして・・・今回の・・・
ひとはくの出展タイトルは・・・いろいろな「虫」でございます!
世の中にはいろいろな「虫」がいます。きれいな虫、かっこいい虫、変な虫......。
さまざまな昆虫やダンゴ虫などの標本や生体を展示します。
その形や生活の不思議などを紹介しますね!

また、「高校生のための生きもの調査体験ツアーin台湾」の説明もしていますので
興味のある方は どんどん質問して下さいね~!

ひとはくとしても、「研究や実践の拡大・充実・活性化」というフェアの目的にかなうべく、
出展し、高校生などと交流をさらに図ります!
昨年も・・・・ひとはくブースはいつも「大入り満員」でございました。
標本の説明等を兼ねたミニセミナーや高校生や参加者からの質問など
研究員が熱心に説明と研究のアドバイスをいたしますね!

高校生のみならず!ひとはくファンのみなさまも
ぜひ!当日会場にお越しくださいね~
ひとはくはみなさんの夢の実現を応援します!

それでは会場でお待ちしております!

                            生涯学習課 中前 純一

今日1月8日、大阪教育大学附属天王寺校舎の高校生3名(1年2名、2年1名)が、各自進めている研究に関する助言を求めて、ひとはくを訪れてくれました。
 大阪教育大学附属高等学校は、附属高校として大学とともに教育の理論と実際について研究を進めておられます。また、平成27~31年のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)にも指定され、理数教育にも力を注いでおられる学校です。

 3名のうち2年生1名は、オオセンチコガネの生態について研究しています。ファーブルが検証しながらも結論が出なかったフランスの農家の「センチコガネが天気を予想する」という口伝に触発され、オオセンチコガネの餌の探索行動における風向き・風速等の関係について非常に興味深い研究を進めています。本年度の「高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾」にも参加し、昆虫好きで探究心豊かな生徒さんです。すでに風速とオオセンチコガネの飛行について興味深い結果も導き出していますが、今後の研究の深まりに注目したいと思います。

(左・右)「気象条件によるオオセンチコガネの行動の変化~風速と飛翔行動の関係性~」の研究について説明
  

このほか、1年生1名は、市立西宮高校南にある新池に生息するアオサギやコサギ、カワウなど鳥類の生息数と周辺環境について、調査を行っています。10年にわたり粘り強く丹念な調査を継続するとともに、新池から約6km離れた昆陽池にも調査に出かけるなど、地理的な視点も踏まえて調査を行っています。カワウとサギ類の生息数の相互関係など、非常に興味深いデータを得ながら、周辺環境との関係をさらに調査を重ねようとする熱意には感心させられました。

(左)新池・昆陽池における鳥類の生息数調査について、ひとはくの鈴木・山内両研究員に熱心に説明
(右)鈴木研究員から、クマワラジムシを題材に、調査研究の方法や外来種の問題について聴く高校生たち
  

今日、遠方から来てくれた生徒さんたちの研究に対する熱心さには頭が下がる思いです。次期学習指導要領では、高校では特に探究心を育てることが求められていますが、今日来られた生徒さんたちが継続して自らの探究心を育ててくれることを期待します。

生涯学習課 竹中敏浩

ひとはくファンのみなさまへ
 
毎日・・ひとはくにいろいろな質問やお問い合せがまいります!!
なんと4月から動物・昆虫・植物・化石など数百件を超え、各研究員が回答・解説をさせていただいております!!
その回答や解説の参考に 
お知らせいたします!!(少しだけ研究員気分が体験ができるかも??)


みなさま ひとはくの収蔵資料検索システムをご存知でしょうか?




ご存知のとおり・・・
ひとはくでは、動物・昆虫・植物・鉱物・岩石・化石等の自然史系標本や、
古地図・古絵図・映像・画像・書籍等の自然・環境に関する資料の収集に努めています!

開館前から続く一連の収集活動により、2016年度末には資料点数が161万点を越えるまでになりました。
このシステムは・・・収蔵されている161万点以上に及ぶ膨大な資料の一部を、ごらんいただくことができます!

例 植物
                    

例 昆虫

     


>> 収蔵資料検索システム をクリックして、ぜひ体験してみてください!!



                     生涯学習課 情報管理室 中前純一
ひとはくでは、9月23日(土)より、三田市立中学校の「理科自由研究作品展」を開催中です。


  
中学生の皆さんが自分で見つけたテーマを、中学校で学んだ科学の方法にしたがって探求してまとめた成果が理科自由研究です。このうち、優秀作品を「理科自由研究作品展」として、ひとはくサロンに展示しています。各中学校から選ばれてきた優秀作品であるだけに、どの作品も非常に立派な作品ばかりです。この中から未来のサイエンティストが生まれるかも。。

10月3日(火)までの展示ですので、作品が展示されている中学生やその保護者の皆さまもお見逃し無く。

ご覧いただいた中学生にちょっとアドバイスですが、このひとはくサロンのもう少し奥には、ひとはく研究員の最近の論文も掲示されています。大学・博物館レベルの研究はどう違うのか、同じなのか。もちろん探求の深さは違うのですが、自然に対する興味や静物に対する愛情は同じものです。どうぞそんなところも見て感じてくださいね。1、2年生は是非来年の自由研究のヒントにもしてください。
生涯学習課
竹中敏浩

9月22日(金),神戸市環境局より要請を受け,主任研究員橋本佳明が講師を務め,同市環境局環境保全部自然環境共生課や保健所の方々を対象とするヒアリ講習会を実施しました.

※本講習会で使用した手順書はこちらからダウンロードできます.>>ヒアリとアカカミアリの疑いがあるアリの1次スクリーニング手順 非営利目的であれば出典を明記してご利用いただて結構です.(CC-BY NC4.0


講師を務めた橋本佳明の感想です.
「4時間に及ぶ,講義と実習というハードなプログラムで,講師の方がむしろ疲れ気味であったにもかかわらず,実習生のみなさんは,終始,真剣に,そして,熱心にプログラムに取り組んでいただきました.
少しでも,お役に立てたなら,幸いです.」

以下,その講習会の模様と資料(このページ下部からダウンロード可)を掲載します.


 ヒアリの増加について説明,驚異となる繁殖力.    アリの繁殖システムについて説明
  


 講習会の様子.細かい作業です.          ヒアリの特徴,前伸腹節・腹柄節・後腹柄節の説明
  


 アカカミアリの頭部について説明           比較のため在来種の特徴について説明
  



左写真は,鏡下で特徴を確認し,手順書と見比べながらスクリーニング(せんべつ)を行っているところです.

慎重に丁寧に行うことでスクリーニングを行うことができます.



※写真提供は神戸市環境局自然環境共生課より

主任研究員 橋本佳明
生涯教育課 竹中敏浩

■第2回高校生のための生きもの調査体験ツアー1日目■ 


 去年に始まった「高校生のための生きもの調査体験ツアー」も、今年で2回目となりました。 台風9号、10号と立て続けに2つの台風が台湾に上陸したことから、残念ながら2日遅れの開催となりましたが、今日、2つの航空便に分かれて渡航、台湾に無事到着し、スタートしました。

    関西国際空港より出発          台湾桃園国際空港に到着
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 桃園国際空港で合流、バスに乗って、まずは台湾北部の高地、東眼山の自然教育センターに向かいました。到着と同時に土砂降りの雨。スーツケースを抱えながら、なんとかセンターの屋根に逃げ込みましたが、みんなびしょ濡れ。いきなり着替えからのスタートです。
 その後、日本と台湾の高校生がグループごとに着席、英語や身振り手振りで自己紹介をしながら初対面の交流がなされました。まだ緊張感が解けていない中、台湾の高校生たちからサプライズのウェルカムカードを1人ずつもらい、日本の高校生たちも緊張が溶けたような笑顔を見せてくれました。
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 夕食の後は、今年1回目の夜間観察。 遊歩道沿いに生息するヘビ(シュウダやバイカダなど無毒のもの)やキグチキノボリトカゲ、カエル(スウィンホーガエル、ヒキガエルの仲間)などを観察しました。

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 また、施設前では恒例のライトトラップを実施、去年のツアーでは現れなかったヤママユやオオミズアオも姿を見せてくれました。

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 明日は夕方まで東眼山に滞在し、昼間に活動する生きもの達を観察する予定です。 まだ始まったばかりのツアー、高校生たちの成長を見るのが楽しみです!


公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会
佐々木 洋平

 兵庫県立北須磨高等学校のサイエンスクラブ部員3名が来館し、ひとはくの岩石試料を用いて放射線測定実験を行いました。
 同校サイエンスクラブは、日本各地の中高校生が自然環境中の放射線を測定し、放射線地図を作るプロジェクト「ゆりかもめプロジェクト」にも参加しています。今日は、ひとはくが所蔵する岩石試料の中でも兵庫県内の岩石試料を中心に、ガイガー計数管方式の放射線測定器を用いて、岩石種による放射線量の違いを測定するために来館しました。
 高校生が自分たちの住む自然環境に興味を持ち、連携して調査を行っていこうとすることは、地球環境を次の世代に引き継いでいく上でも素晴らしいことです。北須磨高校サイエンスクラブの生徒の皆さんは、8月11日に福島県で行われる情報交換会を目指してデータをまとめていくそうですが、今後の継続した取り組みへ向けエールを送りたいと思います。

ガイガー計数管方式の放射線測定器を用いて岩石種ごとの放射線量を測定

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佐藤事業推進部長(兵庫県立大教授)より収蔵庫内の化石標本の説明を受ける
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神戸層群の植物化石の産出地点地図を見て
北須磨高校がその中心にあることを知る   展示室で兵庫の岩石の展示を見学
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兵庫県立人と自然の博物館
竹中敏浩

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研究紀要「人と自然 Humans and Nature」は,人と自然の博物館が年に1回,毎年冬に発行する学術誌です.
>> 研究紀要http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin.html

7月末日に設定していた原稿の締め切りを廃止し,通年で,いつでも投稿できるようにしました.

また、原稿の種類を増やしました.2016年度発行の第27号までは 原著論文・総説・報告・資料 の4種類でしたが,2017年度発行の第28号からは 原著論文・総説・報告・資料 の論文原稿に加えて 意見・書評・その他 も投稿いただけます.論文原稿は,これまで通り博物館内外の専門家が審査をし、編集会議で審議され,編集委員長が同意したものだけが掲載されますが,意見・書評・その他 は編集会議の審査と編集委員長の同意だけで掲載可能となります.ただし, 意見・書評・その他 では「論文」とは標榜できません

詳しくは、>> 人と自然原稿連絡先と投稿規程http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/bosyu&toukoukitei.html
を参照して下さい.

2017年11月末までに審査が済み,受理が確定した原稿は28号に載ります.
審査には、通常4か月ほどが掛かります.

出版は電子版のみとなりました.これまで同様,電子版は人と自然の博物館ホーム・ページから無料でダウン・ロードできます.>> 研究紀要http://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin.html

出版したものは公共の学術プラット・フォームに掲載し,利用がより広がるように計画しています.公共の学術プラット・フォームは J-Stage の予定です.

2017年第28号への投稿も,すでに,いくつかが審査過程にあります.多くの皆さまの投稿を、お待ちしています.


研究紀要「人と自然 Humans and Nature」編集委員長
三谷 雅純
E-mail: mitani (at) hitohaku.jp
(at) を @ に変えて下さい.

人と自然の博物館では、ひとはく地域研究員や連携活動グループをはじめ、地域の自然・環境・文化を自ら学び伝える活動を行っている方々が、お互いの活動を知り、活動の質をあげ、新たな展開のヒントを得る場として、「共生のひろば」を開催しています。2006年からはじめて、12 回目となりました。開催した発表会では、口頭発表・ポスター発表等を合わせて80件を超えるの発表があり、活発な情報交換ならびに交流がおこなわれました!子どもからシニアの方、自然観察を始めて間もない方、超プロフェッショナルの方、どなたでも参加できるのが「ひとはく」のいいところですね!

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今回もひとはくのライブ映像配信機器を活用して、大セミナー室で開催された加藤研究員のギャラリートーク「人類誕生の時代を探る試み」や各種団体、学校などの口頭発表などをビデオカメラで撮影した映像をライブ映像配信機器や配信サーバー・無線LANを活用して中セミナー室やひとはくサロンでモニター等に生中継を来館者に提供し、研究内容の効果的な発表や来館者の理解度の向上に役立てております!

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ギャラリートーク
「人類誕生の時代を探る試み」(加藤研究員) 
ギャラリートーク終了後もみなさんから研究に関する質問がたくさんありました!
また、研究に関する個別の質問が学生さんなどからもあり・・・このままだと・・
夕方までいきそうな雰囲気でしたね~
みなさんの知的好奇心はアフリカ大陸より熱い!!
  
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口頭発表
口頭発表の部では、地域の活動団体や高等学校、大学を含め8団体の発表があり
質疑応答などもあり会場は熱気があふれておりました!
10代の方々の発表が多く・・・
みなさんに元気なエネルギーが・・・青春っていいですね~

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ポスター発表など
ポスター発表があり、参加の皆様たちも互いの活動を知る場として観覧するとともに
観覧者からの質問に回答されている光景が見られました。
また、当館の研究員が参加者の研究への助言も行いました。
その場で研究員の特注セミナー状態です!

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また、ひとはくでは
12日からはミニ企画展「淡路島の和泉層群北阿万層の化石調査」
本日からはミニ企画展「六甲山のキノコ展2017~野生のキノコの不思議な魅力~」
ミニ企画展 ひとはく研究員展2017「ひとはくの今」が開催しています!
本日、「共生のひろば」は終了しますが、まだまだ、ひとはくは企画展が盛りだくさん!
みなさまのお越しをお待ちしております。

                               情報管理課 中前純一 

 
ひとはくは、1月29(日)兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス
(ポートライナー「京コンピュータ前」駅下車スグ)などで
開催される第9回サイエンスフェアin兵庫にブースを設け出展します!

前回も1500名を超える高校生などが参加し、
科学技術分野における研究や実践発表の場として
口頭発表やポスター発表が行われました!
フェア当日の会場はとってもアカデミックな熱気がいっぱいなんです!

前回の様子です!

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 鈴木研究員のダンゴムシセミナー    秋山研究員の植物セミナー
 
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 山内研究員の標本セミナー       ひとはくブースは高校生で満員です!


ちなみに・・・ひとはくとサイエンスフェアの関係につきまして・・・

主催の兵庫「咲いテク」事業推進委員会は・・・
高校・大学・企業・研究機関等が連携して、主に課題研究的な活動を通じて
科学技術人材の育成を図ることを目的とする、いろいろな行事・プログラム、
「兵庫『咲いテク』事業」を運営されています!
兵庫県教育委員会と県内SSH(スーパーサイエンスハイスクール)
指定校8校(神戸高明石北高尼崎小田高加古川東高龍野高豊岡高
神戸市立六甲アイランド高武庫川女子大附属中高)により組織されています!

実はひとはくとも関係が深く・・・研究員が
研究支援や相談、セミナー受講などで来館いただいている学校ばかりでございます!

そして・・・今回の・・・
ひとはくの出展タイトルは・・・いろいろな「虫」でございます!
世の中にはいろいろな「虫」がいます。きれいな虫、かっこいい虫、変な虫......。
さまざまな昆虫やダンゴ虫などの標本や生体を展示します。その形や生活の不思議などを紹介します。
そのほかにも・・・当日のお楽しみです!

ひとはくとしても、「研究や実践の拡大・充実・活性化」というフェアの目的にかなうべく、
ブースを出展し、高校生などと交流をさらに図りたいと思います!
それぞれの"ひとはく研究員"の"研究"ぶりを感じ取ってもらえるよう頑張ります!

研究員は出展に向けて鋭意準備中です!乞うご期待!

見学~入場料は無料です。
どなたでも見学していただけます。

日時 平成29 年1 月29 日(日) 10:00 ~ 16:30
会場(今年度は3 会場での分散開催になります。)
兵庫県立大学神戸情報科学キャンパス(7F 大講義室・中講義室、5F 小講義室)
神戸大学統合研究拠点コンベンションホール・ラウンジ
甲南大学FIRST(7F レクチャールーム、6F セミナー室)
※ひとはくは7F レクチャールームの予定です!
3 会場ともポートライナー「京コンピュータ前」駅下車スグ

昨年度の様子はこちら

追伸

実はサイエンスフェア参加した高校生などが・・
ひとはくに・・・たいへん興味を持ってもらって・・・

共生のひろばに多くの高校生が参加・見学をしてくれました!
当日の様子(ブログ) 共生のひろば(単行本) 
今年度はこちら
第12回 共生のひろば(2017年2月11日)

そして・・・
高校生のための生き物調査体験ツアーin台湾(ブログ)
参加してくれた高校生も!

志のある高校生などをひとはくは・・・
末ながーく支援していきますね!
それでは・・・来館お待ちしておりますね!

                     情報管理課 中前純一




兵庫県立人と自然の博物館では、古生物学・岩石学/生態学分野での任期付研究員を募集しております。
当館での業務内容は、地球科学及び生物学を基盤とした、人と自然の共生に関する調査・研究、教育普及等の業務を担っていただきます。
任期は、2017年4月からの3年間です。条件などの詳細は、下記のURLをご参照ください。

http://www.hyogo-c.ed.jp/~board-bo/kisya28/2811/281102jinnji.pdf

応募締切は11月30日(必着)ですので、お急ぎご準備・ご応募下さい。
各種試験(専門試験、面接)については、12/15(木)に実施されます。
どうぞよろしくお願いいたします。
                                                                                 (みつはしひろむね)

県民情報番組 ひょうご"ワイワイ"の取材を受けました!!
レポーターはおなじみの高曽根里恵 広報専門員です!
「ひとはく」の魅力をいろんな角度から紹介していただきます!


同番組の特集コーナー にて紹介されます!
是非ご覧ください!
放 送 局:サンテレビ
放送予定日:7月10日(日) 8:30~9:00
再 放 送:7月11日(月) 18:00~18:30 

ひょうごワイワイplus+ (ブログ)

撮影風景の一場面をみなさんに紹介いたします! 
橋本佳明主任研究員、山内健生主任研究員、大平和弘研究員が出演予定です!
放送当日を楽しみにして下さいね!

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番組紹介予定の企画展
「ひょうごの昆虫展」

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収蔵資料展「温古写真大作戦!!むかしの写真で未来をつむごう」

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                         情報管理課
                          中前 純一

 人と自然の博物館では、ひとはく地域研究員や連携活動グループをはじめ、地域の自然・環境・文化を自ら学び伝える活動を行っている方々が、お互いの活動を知り、活動の質をあげ、新たな展開のヒントを得る場として、「共生のひろば」を開催しています。2006 年からはじめて、11 回となりました。開催した発表会では、口頭発表・ポスター発表等を合わせて例年の倍以上の90件を超えるの発表があり、活発な情報交換ならびに交流がおこなわれました。

ギャラリートーク
「ダイオウイカの謎に迫る最新研究」(和田研究員)            
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口頭発表
口頭発表の部では、地域の活動団体や高等学校を含め8団体の発表がありました。

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ポスター発表
ポスター発表があり、参加の皆様たちも互いの活動を知る場として観覧するとともに観覧者からの質問に回答されている光景が見られました。
また、当館の研究員が参加者の研究への助言も行いました。

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特設会場での展示

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展示の部(共生のひろば展)

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また、兵庫県立人と自然の博物館4階ひとはくサロンでは第11回共生のひろば展として4月3日(日)まで展示されています。
地域で活動されている各団体のこの素晴らしい研究や成果は一見の価値あり! 是非一度ご覧下さい。

                                 情報管理課 中前純一



hiroba2016_annai_s.JPG以前からアナウンスしておりましたとおり、2月11日(祝)に第11回共生のひろばを開催します。

 どなたでもご参加いただけます。ぜひ、ご来館ください(混んでますが・・・)。この日はスペシャルです。

共生のひろばとは、いわゆる「市民学会」で、幼稚園児からレジェンドまで、あらゆる立場の方が、日頃の活動や研究の成果を発表する、なんでもありな発表会です。これまで、ひとはく地域研究員や連携活動グループの方に限定していましたが、今回からは、広く参加者を公募したところ、この時期にも関わらず、県内外から多くの団体さんのエントリーがありました。その数、なんと90件近いテーマ。小さな学会よりもずっとたくさんの発表数があり、それぞれが大変ユニークです。小学生が取り組み外来種対策もあれば、NPO等によるシカの被害対策に関するはなし、都市公園での1年間の生態調査もあれば、はたまた生き物コレクションの迫力ある展示もあれば、プラナリアの実験や茅葺民家の暮らし紹介など、とても多様性です(プログラムはこちら)。そして、何よりも、参加される方々がとてもユニークで面白い。そんな方々と、丸一日、交流できる機会があるのが、共生のひろばの特徴です。ポスター発表が中心で、参加者どうしでの議論が深まり、あらたな活力が生み出されることを期待しております。

環境科学分野や教育分野に携わっておられる方々にとっても、新たな発見がたくさんあるはず。各地で展開されている保全活動や教育普及の活動の事例があつまりますので、色んな工夫が参考になるかと思います。学校教育や大学教育とは違う、ミュージアムでも生涯学習に関心があるかた、もっとヤヤコシイ言い方をすれば社会構成主義に基づくアクティブラーニングに関心がある方にも、実践教育の様相をお伝えできると思います。そして、何よりも、こうした地域での自律的な取り組みの質と数が、ひょうごの自然を支える原動力になっていることが実感できるのではないでしょうか。

プログラムなどは以下のサイトにあります。
http://www.hitohaku.jp/infomation/event/kyousei11th.html

また、当日は、当館の和田研究員によるダイオウイカに関する最新研究の紹介(若いダイオウイカの標本も登場!)や、伊丹市昆虫館の長島さんによるピンセット講座なども開催されます。興味のある方は、ぜひ、ひとはくへお越しください。

それと、毎年恒例の御影高校による六甲山のキノコ展2016が開催されるほか、最新研究からのトピックスとして恐竜?卵化石の実物展示もあります。ぜひ、みなさまお誘いあわせのうえ、博物館にお越し頂ければと思います。

(みつはしひろむね)

 かつて、六甲山地に位置する東お多福山には、ススキが優占する広大な面積(約83ha)の草原が広がっていましたが、戦後の植林や土地開発、草原管理停止による森林への遷移により、現在は約9haにまで面積が縮小しています。また、ススキも衰退しネザサや優占する草原に変化、草原生植物の多様性が低下するとともに、ススキの穂が広がる景観が失われるなどの課題が発生しています。これらの解決のため、平成19年度より東お多福山草原保全・再生研究会が中心となり、当地でのススキ草原の景観の再生と、草原生植物の多様性の保全を目的とした活動がすすめられています。
 本展示では、当地の草原保全で目指すべき草原の姿を検討するために、約460点の古写真を収集、整理、分析し、当地の植生と利用の変遷を紐解くとともに、かつてのススキが優占していた頃の草原の姿を明らかにした結果を紹介します。また、1人でも多くの方にかつての東お多福山草原の姿を伝えることで、草原保全の目標像が共有されるとともに、保全活動の賛同者・参画者の輪が広がることを期待しています。
 なお、本展示は平成23年度~25年度科学研究費補助金若手研究B(課題番号:23701026、代表者 橋本佳延)で実施した古写真による東お多福山草原景観調査の研究成果の一部を使用しています。

1  展示概要
 ①  東お多福山草原の概要(場所、希少性、消失の危機など)解説パネル
 ②  東お多福山草原で撮影された1930年代以降の古写真と文献等情報により構成される草原の変遷をまとめた年表パネル(1点)
 ③  古写真の撮影地点(推定)の位置図および、同一撮影地点の現在の様子を収めた写真を比較するパネル
 ④  東お多福山草原の植生、景観、利用を特徴付ける古写真
 ⑤  大正期以降に発行された、東お多福山草原の写真を掲載したハイキングガイド(実物)
 ⑥  東お多福山草原における草原保全活動の紹介パネル

  ※会場によって展示物の構成が異なります。

2 主催・協力
  主 催:兵庫県立人と自然の博物館
      兵庫県三田市弥生が丘6丁目 電話:079-559-2001(代表) http://hitohaku.jp
  共 催:東お多福山草原保全・再生研究会ほか

3  担   当
                 兵庫県立人と自然の博物館 自然・環境再生研究部 橋本佳延
             電話&FAX(直通):079-559-2014     

4 巡回日程・会場     終了しました。
(1)期間 9月16日(水)~9月29日(火)
   場所 兵庫県立美術館ホワイエ 神戸市中央区脇浜海岸通1-1−1
(2)期間 10月1日(木)~10月9日(金) 
   場所 伊丹市立生涯学習センター(ラスタホール)ロビー 伊丹市南野2丁目-3-25
(3)期間 11月5日(木)~11月19日(木)
         場所 神戸市シルバーカレッジ ホワイエ 神戸市北区山田町下谷上中一里山14-1
(4)期間 12月26日(土)~1月15日(金)
   場所 神戸市東灘区民センターロビー 神戸市東灘区住吉東町5丁目1-16
(5)期間 平成28年1月29日(金)~2月8日(月)
   場所 神戸市立灘区民ホール神戸市灘区岸地通1丁目1-1

   巡回展の詳細はこちらから

5  展示の様子 ※兵庫県立人と自然の博物館での展示構成。会場によって変更があります。

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岡山県吉備中央町の宇甘渓にアオキの調査に行ってきました。アオキには「アオキ」と「ナンゴクアオキ」と呼ばれるものがあります。アオキは染色体数が2n=32の4倍体で、北海道から中国・四国地方まで広く分布しています。一方、ナンゴクアオキは2n=16の2倍体で中国・四国地方以西に分布しています。岡山県ではアオキとナンゴクアオキの両方が生育していてとても調査しやすい場所なのです。

さて、これまでアオキとナンゴクアオキは染色体数が違うものの外見で区別するのは難しいとされてきました。
しかし、この2種類のアオキは葉の鋸歯の形で区別できるのです。

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これがアオキ(右)とナンゴクアオキ(左)の葉です。

 

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 この2枚の葉を比べて見ると、アオキの葉は鋸歯の先は外を向いています(赤線)。しかしナンゴクアオキの葉は鋸歯の先が内側を向いているのです(黄線)。

個別に見てみると、
こちらがアオキ。鋸歯の先は外側を向いて鋭い感じです。

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こちらはナンゴクアオキ。鋸歯の先は内側を向いていて丸みがあります。

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この違いは伊豆諸島や屋久島など島嶼部に生育するものには当てはまりませんが、本土のアオキとナンゴクアオキであればほぼ区別できます。

山本伸子(自然・環境評価研究部)

 三田市内8中学校の理科自由研究作品を、9月20日(金)~26日(木)、当館4階ひとはくサロンで展示しております。

 

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▲ひとはくサロンでの展示の様子

 地元の中学生の研究成果を是非ご覧ください。
今年は8中学校より33の作品が出展されております。
<出展中学校>
三田市立上野台中学校
三田市立長坂中学校
三田市立狭間中学校
三田市立八景中学校
三田市立けやき台中学校
三田市立富士中学校
三田市立藍中学校
三田市立ゆりのき台中学校

 

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▲図や写真を使い、わかりやすくまとめられています。

 なお、展示を見学するには、博物館の観覧券が必要です。大人100円、65歳以上50円、高校生50円、中学生以下無料です。

西岡敬三(生涯学習課)

高校の生物の教科書には生態学のテーマがいくつか取り上げられています。食物連鎖、食う食われるの関係、群系分布(植生分布)、垂直分布、個体群、植生遷移などです。その中でも長い年月の経過によって溶岩地帯のような裸地でもいくつかの群落を経て最終段階の極相に至るという植生遷移(一次遷移)は動かないと思われている植物、植物群落を動的にとらえたテーマとしてたいへんおもしろく、教科書の題材としても適切と考えられます。

 しかし、裸地から極相に至るという遷移の系列や遷移に要する年数にはいつくかの学説があり、各々の学説に基づく教科書ごとに記述内容に大きな違いが認められ、混乱しています。

 今回、桜島や伊豆諸島などの溶岩地帯の植生遷移について、地域間比較という視点をもとに再調査し、分析した結果、裸地から始まる植生遷移系列は地衣・コケ群落、草本群落、陽樹群落(クロマツ-ヤシャブシ群落)、タブ群落を経てシイ・カシ群落の極相であること、その遷移に要する時間としては400-600年であることが明らかとなりました。遷移系列における各段階の群落の主要散布形をみると前期段階では種子が風によって運ばれる風散布型、中期段階では種子が鳥によって運ばれる鳥散布型、極相では散布距離の短い重力散布形と変化していることもわかりました。このような遷移系列、遷移年数は国内の照葉樹林帯全域の一次遷移に該当します。これらの研究成果を論文としてまとめ、植生学会誌に投稿したところ、論文は受理され、2013年に印刷、発行されました。

 

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         昭和溶岩                     大正溶岩                          

 

 

                                 服部保(自然・環境再生研究部)

 30代の後半、(有)栗林自然科学写真研究所で昆虫生態アドバイザーをしていた。気ままに突然出掛ける栗林さんにいつも同行する(写真1)。出掛けないときは、長い、暇な待機の時間がある。まとまった仕事は無理、いつでもすぐに中止できる昆虫の観察などが向いている。とくに、自分から勝手に音声情報流し続ける鳴く虫・・・その本体を突き止める仕事がぴったりだった。待機の時間をそのまま使える。いつでもストップ、いつでも開始。これで鳴く虫の本体を次々と明らかにしていく。私の聞き分け能力は暇な待機の時間に育てられた。

 

 

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写真1:虫の目カメラで撮影した栗林さんとオオカマキリ(栗林慧撮影)。

 

私の聞き分け能力獲得法は、暇な待機の時間をふんだんに使い、忙しい人にはまったく不向きだ。まず、単独で離れて鳴いている一匹に着目する。二方向から聞いて、大体の鳴いている位置を予測し、鳴き止むまで少しずつ接近する。鳴き止んだら、再び鳴くまで立ち止まって待つ。気配を消してじっと待てば、必ず再び鳴き出す。鳴き出したら、また接近。この繰り返しだ。一時間も経つと、虫の姿が見えるところまで接近できる。その時まで、その鳴く虫の鳴き声をたっぷり聞いている。「この虫が鳴いていたのか!」・・・声と姿が一致した感動は独り占めである。長い集中した時間はその鳴き声を脳に定着させ、忘れることはない。覚える努力はいっさい不必要。声と姿の一致の感動を味わいつつ、三年も経つと、約40種の鳴く虫を聞き分ける能力が手に入っていた。

毎年その季節になると、聞き覚えのある鳴き声が脳に直接飛び込んでくる。鳴いている姿も脳裏に浮かぶ。10種近くの鳴く虫が同時に鳴いていても、一匹一匹確認していくことができる。鳴いている音の高さは多様で紛らわしいものはない。例外は大正時代からの外来種アオマツムシ(写真2)。鳴き声の高さは、クサヒバリ(写真3)とほぼ同じで、同時に鳴くと、クサヒバリの声はほとんど聞こえない。カネタタキ(写真4)も高さが近く、アオマツムシの大声集団に負けてしまう。アオマツムシがいなければ、カネタタキとクサヒバリの共存は鳴き方の違いから成立する。 

 

 

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写真2:都市部の街路樹で大声で鳴くオアマツムシ(高田要撮影)

 

 

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写真3:庭の潅木で鳴くクサヒバリ。声はアオマツムシにかき消される(河井典子撮影)

 

 

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写真4:垣根や庭の潅木で、チンチンチン・・・と鳴くカネタタキ(河井典子撮影)

 

                       大谷 剛(自然・環境マネジメント研究部)

 

 

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