「聴覚失認者に認知しやすい緊急災害時のチャイム音」に関する論文の出版について
1 内容紹介
緊急災害放送では注意喚起のチャイム音が付きものです。しかし聴力は正常で音は聞こえるのに、「音」を「音」として認識できない聴覚失認者にとって「注意喚起のチャイム音」とはどんなものなのでしょう。もし脳に届いていても、認知できないのなら意味はありません。そこで失語症を含む高次脳機能障害の皆さんにお願いして、「聴覚失認者に認知しやすい緊急災害時のチャイム音」を視聴覚実験で確かめてみることにしました。聴覚失認者は言語音の聞き取りが苦手ですので、負荷刺激として記号としてのアルファベットとトランプの柄、それに一桁の足し算・引き算を暗算してもらって、チャイム毎の注意喚起力を調べることにしました。結果は、負荷が軽いか繰り返しがあれば、聴覚失認者でも大抵のチャイム音には注意喚起されることが分かりました。
2 執筆者
三谷雅純(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所/人と自然の博物館 コミュニケーション・デザイン研究グループ)
3 論文掲載誌
福祉のまちづくり研究 21巻、13-23、2019(福祉のまちづくり学会誌)
4 論文標題
日本文:聴覚失認者に認知しやすいチャイム音は存在するか―視覚刺激と数値計算の負荷による検討―
英文:Are there chime sounds easy to hear for persons with auditory agnosia?
- Examination by the workloads of visual stimuli and of numerical calculation -
5 研究成果の展開
簡単な負荷とか、何度か繰り返してくれればいいといっても、緊急事態に陥った時、注意喚起のチャイム音と共に放送されるのは「地震が来ます」とか「洪水です」といった言語音による情報が圧倒的です。その時、言語音を理解することの苦手な聴覚失認者は、何か大変なことが起こっていることは理解できるが、それが何なのか正確に理解することは出来ないでしょう。チャイム音も同じです。しかし、繰り返し出てくるのであればチャイム音は理解できそうです。
災害情報は、しつこいくらい繰り返し放送されます。それならば言語音で伝えられる災害情報はどうなのでしょう? 繰り返し放送されれば、内容が理解できるのでしょうか? 今後は、より現実に近い言語音で視聴覚実験をやってみる必要があります。
簡単な解説はここにも掲載しています。
>>ひとはく研究員の発表論文紹介(2019年)
兵庫県立大学自然・環境科学研究所のWebページでも紹介しています。
>>研究報告「聴覚失認者に認知しやすい緊急災害時のチャイム音」を探る視聴覚実験を行いました。
※他の研究員の論文もどうぞご覧ください。 ひとはくの研究とは