ミニ企画展「干潟に侵入する脅威の外来植物ヒガタアシ」
本展示の解説動画を作成しました(2022/9/20更新)
1 主旨
ヒガタアシ(学名:スパルティナ・アルテルニフロラSpartina alterniflora)は北アメリカの大西洋岸およびメキシコ湾岸原産の干潟や河口の塩性湿地に生育するイネ科多年生草本です。本種は干潟の陸地化や沿岸域の保護を目的とした意図的な導入、また非意図的な移入・逸出によって世界各地に分布を広げており、定着地に大規模な密生群落を形成することで在来の生態系や産業に大きな影響を及ぼしています。
日本国内において、ヒガタアシは2008年に愛知県豊橋市の梅田川河口で初めて確認され、その後2010年に熊本県、2020年に山口県と発見地点数が増えてきています。国内でヒガタアシを意図的に導入した事例はないことから、植物体や種子がバラスト水、貨物、船体などへ混入、付着して非意図的に持ち込まれ、定着に至った可能性が高いと推測されます。ヒガタアシのもつ干潟生態系への脅威から、2014年には本種を含むスパルティナ属全種が特定外来生物に指定されました。侵入地では現在駆除が進められています。近畿地方や兵庫県ではまだ確認されていませんが、愛知県、熊本県、山口県への侵入・定着過程の詳細は不明であり、当地域へも今後侵入のおそれがあります。
人と自然の博物館ではこれまでに、遺伝子解析によるヒガタアシの侵入経路の解明や山口県における本種の発見ならびに防除に関わってきました。本展示では、ヒガタアシの早期発見と効果的な防除に向けた情報発信を目的に、栽培株を展示*すると共に、本種の形態や侵入地の状況、干潟や塩性湿地に生息・生育する在来の動植物などについて解説します。
*環境省近畿地方環境事務所から栽培および展示許可を取得済み
2 実施概要
(1) 日時:令和4年8月13日(土)~10月15日(土)
(2) 場所:兵庫県立人と自然の博物館 4階ひとはくサロン
(3) 内容:ヒガタアシの栽培株 1点
在来植物の栽培株 2~3点
ベントス標本 5点
鳥類はく製 3点
解説パネル(A1) 5~6点
(4) 主催:兵庫県立人と自然の博物館
(5) 協力:日本スパルティナ防除ネットワーク
港湾内で群生するヒガタアシ | |
下流部に群生するヒガタアシ | ヒガタアシの花 |
ヒガタアシ駆除のための防草シートの設置状況 |
※写真は全て山口県下関市で撮影
3 担当
兵庫県立人と自然の博物館 自然・環境再生研究部 黒田有寿茂
電話:079-559-2001(代表)