ご利用案内

交通アクセス

利用案内(観覧料金)

団体でのご利用

ひとはくの展示

セミナー情報


ひとはく活用術

移動博物館車 ゆめはく

自然・環境科学研究所

恐竜化石

ひとはくKids

行政や企業の方へ「シンクタンク事業」

学校関係者の方へ「学校教育支援」


昆虫の最近のブログ記事

12月8日(土)ひとはくで、このような集会が開かれます。
学会会員外の方も聴講できますので、この機会に、のぞいてみてください。

日本昆虫学会近畿支部2012年度大会・日本鱗翅学会近畿支部第146回例会

(昆虫学公開研究発表会)

 

 

※ 受付は10:00から、本館4階大セミナー室前で行います。

※ 学会会員以外の方も聴講できます。観覧券(大人200円)を購入して入館し、受付で参加費(1人50円:茶菓代充当)をお支払い下さい。

※ お申込・問合せ先:兵庫県立人と自然の博物館 八木 剛

電話079-559-2001、E-mail: yagi(アット)hitohaku.jp

日時 2012年12月8日(土)10:30−17:30(10:00受付開始)

会場 兵庫県立人と自然の博物館 大セミナー室(兵庫県三田市)

 

プログラム

研究発表 

10:30 1 カワウの巣の昆虫相/八尋克郎1・亀田佳代子1・那須義次2・村濱史郎31滋賀県立琵琶湖博物館・2大阪府病害虫防除所・3株式会社野生生物保全研究所)

10:45 2 琵琶湖竹生島のカワウの巣の鱗翅類/那須義次・村濱史郎・大門 聖・八尋克郎・亀田佳代子

11:00 3 オオヒロズコガ(ヒロズコガ科)に近縁な国内未知種/○長田庸平・坂井誠*・広渡俊哉 (大阪府大院・生環  *共生科学)

11:15 4 ツマグロケンヒメバチとその近縁種における分類学的諸問題/○伊藤誠人・渡辺恭平・前藤 薫(神戸大院・農)

11:30 5 DNAバーコーディングによって発見されたハラボソコマユバチ属Meteorusの1新種/○藤江隼平・前藤 薫(神戸大・農・昆虫多様性)

11:45 6 マイマイガに寄生するチビアメバチ2種とその高次寄生蜂、およびマイマイガを利用するヒメバチ上科に見られる繭形態の多様性/渡辺恭平(神戸大院・農)

12:00〜13:00  <休憩>

研究発表 

13:00 7 ガガイモ科の送粉系に関する知見(その4):イケマへの飛翔性訪花者は送粉に貢献しているのか?_コハナバチ・マルハナバチ・蛾類、および、アリ類の間での、送粉関連形態ならびに訪花行動についての比較考察/濱西 洋(三田市)

13:15 8 クロヤマアリを誘引するカラスノエンドウ上の奇妙な種間相互作用/笠井 敦(京都大学大学院農学研究科)

13:30 9 クルミホソガ Acrocercops transecta (鱗翅目:ホソガ科) のホストレース間での寄生蜂相の比較/○河村友裕・大島一正(京都府大・生命環境)

13:45 10 ギンケハラボソコマユバチの体色の異なる2系統における日周活動性の比較/○藤井智浩(神戸大・農)・西村卓真・前藤 薫(神戸大院・農)

14:00 11 ホソヘリカメムシが飛翔時に示す光走性の解析/○名和厚樹・後藤慎介・志賀向子(大阪市大・院・理)

14:15 12 セスジアメンボ Limnogonus fossarum fossarum の餌条件を統一した飼育手法の確立/○広岡佑太,大島一正 (京都府大・生命環境)

14:30 13 ヤママユが食べて糞をする植物と全く囓らない植物の差は何?/寺本憲之(びわ湖の森の生き物研究会)

14:45〜15:45  <ポスターセッション・休憩・収蔵庫見学>

P1 外来昆虫ヘクソカズラグンバイの四国における分布拡大(第3報)/○加藤敦史(東大阪市)・山田量崇(徳島県立博物館)

P2 ヨコヅナサシガメの配偶行動とその化学因子/〇坂田大介・薬丸亮太・秋野順治(京都工芸繊維大・生物資源フィールド科学教育研究センター)

P3 寄生蜂のSSR解析のための羽化繭からのDNA抽出方法/梅基弘宣・西村卓真・前藤 薫(神戸大院・農)

P4 クロヤマアリ巣仲間認識に対する巣間距離の影響/坂田惇一・秋野順治(京都工芸繊維大・生物資源フィールド科学教育研究センター)

P5 ツノヤハズモドキの多様性/沢田佳久(兵庫県博・昆虫共生)

P6 エゾスジグロシロチョウの香気成分の経時変化/棚橋一郎(大阪工業大学)

展示 ジナンドロモルフのスズムシの行動/兵庫県立人と自然の博物館

15:45 14 アカハネオンブバッタの近畿地方への移入と分布拡大/河合正人1・市川顕彦1・冨永 修1・森 康貴1・西口栄輔1・伊藤ふくお1・金沢 至2・加納康嗣1・○松本吏樹郎21日本直翅類学会・2大阪市立自然史博物館)

16:00 15 関西での冷温帯性キジラミの新知見、特にヤマオオトガリキジラミとキハダヒメキジラミについて/宮武頼夫(橿原市昆虫館友の会)

16:15 16 海岸性甲虫類と海浜の面積および孤立度との関係/○河上康子(高槻市)・村上健太郎(名古屋産業大学)

16:30 17 聟島列島の異翅半翅類相/○伴 光哲(エー環境研究所)・岸本年朗(自然環境研究センター)

16:45 18 ブータンの蝶類について/渡辺康之(日本鱗翅学会)

17:00 19 マダラチョウ類の越冬地を求めて−台湾蘭嶼島と香港−/金沢 至(大阪市立自然史博物館)

 

 

2010年の末に大きな世界のクワガタ図鑑が出ました.なんと1,414種も載っています.その前の図鑑は1994年に出た,約800種載ってるもので,これらは全て日本で編纂されています.クワガタは熱帯〜亜熱帯に多い虫ですが,ヨーロッパの研究者によって調べられて来ました.現在,もっとも活発にクワガタの,特に分類学的研究が行われているのは日本なのです.

 分類の研究の基礎は標本です.すべて以前の研究成果を踏まえ,その再検討からはじまります.標本についても,百年以上前に調べられた標本を見直す必要が出てきます.研究の基礎になった証拠標本は,各地の博物館などの収蔵庫に保存されています.特に新種として記載命名された際の証拠物である標本は「タイプ標本」(単一の「ホロタイプ」や「レクトタイプ」と,その他の「パラタイプ」などがある)と呼ばれ,明示的に指定するルールになっています,

 クワガタの場合,多くの証拠標本,タイプ標本はヨーロッパ各地の博物館に収蔵されていることが多いようですが,創設20年の当館にもホロタイプが3個体だけあります.これら既記載種のホロタイプ3個体も図鑑の編纂にあたって貸し出されました,
 その際に要検討の一般標本28個体も貸し出され、研究および図示掲載に供されました.特に一般標本として貸し出されたもののうち1ペアは、新種と判断され,この図鑑の中で記載命名されました.二個体はその種のホロタイプとパラタイプに指定されました.その結果,当館のクワガタのホロタイプは4個体になりました.\(^O^)/
 でも,この図鑑には1400種ほど載ってますので,クワガタだけでもホロタイプは1400個体以上(未掲載群や同物異名もあるのでもっと多いはず)あり,それらは世界のどこかの収蔵庫に保存されているのです.そのうちの4点を当館が所蔵.
 これらタイプ標本などの証拠標本は、通常、直接検視の必要がある場合以外は厳重な保存に徹するのですが,親しまれているクワガタムシ科の新種ですので,期間限定で現物を展示しています.モノが小さいので展示ではじっくり観察とはいきませんが,未知の部分を多く残した生物的多様性の存在や標本保存の意義を感じて頂ければ幸いです.
 さて,その新種のクワガタとはどんな虫か?
Aegus inaharai Fujita, 2010 イナハラハネナシネブトクワガタ

 漢字で書くと「稲原無翅ネブトクワガタ」でしょう,日本のネブトクワガタと同じ属(Aegus属,ネブトクワガタ属)に含まれると考えられています.「稲原」はこの標本をコレクションの中に位置づけ,保存しておられた,世界的なクワガタコレクター,研究者,故稲原延夫氏に由来します.ご本人は別の属の未記載種と判断されていたようです.「無翅」は,後翅が退化していることをさします.前翅つまり翅鞘は肩が丸くなっています.要するに,飛ばないクワガタです,

t-06.jpg                 ホロタイプ(♂) 

 

この属にでは無翅の種は珍しく(約150種中に2種),体はヒョウタン形にくびれていて一見して同属の他種とは異なる印象を受けます.近似属との系統的関係や生態的類似性が興味深い種だと言えそうです.

 タイプ標本などの証拠標本のみどころ,それは虫体だけではありません.ラベルです.この二匹ははマレーシア(半島本土) Genting Highlands 産です.1975年に H.Yokoyama さんによって採集され,N. Inahara さんのコレクションに加えられ,日本生命コレクションの一部として博物館に収蔵されました.そして Fujita さんによって新種として記載されたのが 2010 年です.


                            3878.jpg      3880.jpg

               ホロタイプのラベル(右は裏面)

 

これで終わりではありません.このあとクワガタ研究の進展に伴い,この標本が参照,検討される機会が何度もおとずれ,ラベルが付け加わっていくことになると思われます.

 

                                 期間:2012年9月8日〜11月4日

                                                                        

                                                                                 沢田佳久(自然・環境評価研究部)

                                             

8月12日(日)からの19日(日)の連続8日間、ひとはく2階展示室にて実施した「むしむしたいけん」。会期中、小さなお子さん連れのご家族を中心に、2,990名のお客様をお迎えしました。
虫を好きな子どもたち、はじめて虫にさわった子どもたち。みんなのキラキラした眼が印象的な8日間でした。

「むしむしたいけん」で虫に興味をもったら、つぎは、実際に野外に出て、いろんな虫をつかまえてみてください。
さらに興味をもったら、博物館に展示されている「標本」を、じっくり見てみてください。
小学高学年になれば、自分で標本をつくってみることもよいでしょう。
ひとはくでは、対象年齢に応じたさまざまなプログラムをご用意しています。


さて、みなさんに朗報です。
9月15日(日)11:00から15:00、兵庫県公館(神戸市中央区:県庁前)の庭にて「むしむしたいけん」を開催します!
「化石のレプリカづくり」など、楽しい体験イベントもありますよ。
ぜひお越しください。

「ひとはくが公館にやってきた」のくわしくは、こちら(↓)
http://www.hitohaku.jp/20th/preforum/index.html


恒例の、キラキラKidsのご紹介です。みんな、いい表情を、ありがとうございました!
これまでのキラキラKidsは、こちら(↓)
初日(8月12日) 2日目(8月13日) 3日目(8月14日)

IMG_9654.jpg

IMG_9709.jpg

IMG_9721.jpg
ダンゴムシの女王様、登場。脚は何本あるのかな?

IMG_9775.jpg

IMG_9793.jpg

IMG_9827.jpg

IMG_9828.jpg
最終日に登場したヤママユガ。秋の気配ですね。

IMG_9833.jpg

IMG_9873.jpg

IMG_9865.jpg

IMG_9847.jpg
「おっきな虫かご」は順番待ちもありました。ちゃんと並んで、とってもおりこうさんです。


最後になりましたが、このプログラムの実施にあたって、ひとはく連携活動グループrun♪ run♪ plaza、同 テネラルのみなさんには、多大なご協力をいただきました。お礼申し上げます。

(主任研究員 八木 剛)
8月14日(火)、スペシャルプログラム「むしむしたいけん」の3日目。
前2日にも増して、幼児〜低学年のこどもたちが中心の、とてもたくさんの来場者をお迎えしました。

今日も、すてきな表情がいっぱいでした。


IMG_9582.jpg

IMG_9596.jpg

IMG_9614.jpg

IMG_9603.jpg

IMG_9617.jpg

IMG_9635.jpg


3回続いた、キラキラKidsシリーズはいかがでしたか?
以後は、数日分まとめてご紹介したいと思っています。


(主任研究員 八木 剛)
2階展示室で開催中の「むしむしたいけん」2日目です。

IMG_9454.jpg
なかよしの姉妹ちゃんです。

IMG_9463.jpg
小さな虫ならだいじょうぶ。

IMG_9471.jpg
お絵描きもしました。そのあとは、再び、蚊帳の中へ突入!

IMG_9514.jpg
蚊帳の中で。おねえさんが、虫をさわらせてくれます。

IMG_9562.jpg
大きなカミキリムシも持てるようになったよ。

IMG_9531.jpg
Kidsひとはく大使のゆうまくん。昨日に続き、さっそうと。


IMG_9553.jpg
真剣なまなざしがキラキラKids!、ということで。

IMG_9525.jpg
「むしむしたいけん」は、19日まで続きます。


今日も、ひとはく連携活動グループrun♪ run♪ plazaの細川真理恵さん、テネラルの森野光太郎くん、安達誠文くん、堀内湧也くん、牧田 習くん、テネラルOBの清水一陽くんがサポートに入ってくれました。ありがとうございました。

(主任研究員 八木 剛)
19日(日)までのスペシャルプログラム「むしむしたいけん」開幕しました。


タマムシです。ステキ。仙台から里帰りのMちゃんでした。

mushimushi_9321.jpg
大っきなバッタを発見!

mushimushi_9327.jpg
持てた!

mushimushi_9339.jpg
これはコワイ! ママのリアクションも、すばらしい。

mushimushi_9353.jpg
イモリの感触、ふしぎです。

小さなこどもたちには、ぜひ、いろんな生き物に触れて、いろんな感触をたしかめてほしいと思います。

mushimushi_9366.jpg
「おっきなむしかご」では、トンボやセミなど、よく飛ぶ虫にさわることができます。

mushimushi_9432.jpg
やさしいお兄さんが、虫のさわりかたを、アドバイス。

mushimushi_9413.jpg
こちらは、クワガタムシ、カブトムシなど、あまり飛ばない虫。

mushimushi_9426.jpg
標本を見ながら、お絵かきをするコーナーもあります。


この機会をお見逃しなく。19日(日)まで、連日です。

ひとはく連携活動グループrun♪ run♪ plazaの前田志保さん、細川真理恵さん、テネラルの中瀬大地くん、船元祐亮くん、牧田 習くん、前畑くん、博物館実習の服部選樹くん、吉田紀亜さん、ありがとうございました。

(主任研究員 八木 剛)

hatsukagawa2012_1.jpg

2012年7月30日は、武庫川水系羽束川での観察会が行われました。場所は、三田市野外活動センターのすぐ横です。こちらのイベントは、三田市立有馬富士自然学習センターさん主催のイベントとなります。学習センターの専門指導員の中峰さん、河内さんをはじめ、NPO法人きっぴーフレンズのみなさま、ご協力ありがとうございました。
参加者は約40名です。ちょっと少ないように思いますが、適正人数です。説明もひとりひとり行き届きます。この場所での観察会は、大勢になると深みもあって目が行き届かないので抽選とさせていただいております。倍以上のたくさんの方に申し込み頂いていたのですが、申し訳ありませんでした。これに懲りずにまたお申し込みいただくか、博物館等の観察会にご参加頂ければと思います。

 
s-DSCN0398.jpg  s-DSCN0406.jpg

博物館から車で約20分程度のところで、水はとてもきれいです。箱メガネをつかって川底をながめると色んな生物が活動している様子がはっきりと見えます。この観察方法、意外にはまりますので、ぜひお試しください。夏休み中に、ぜひ足をはこんでみられてはいかがでしょうか。

s-DSCN0403.jpg 川底でカワニナが石面についた付着藻類をノシノシと食べている様子はなかなかユニークです。
写真は、学習センターの河内さんが撮影されたものです。ありがとう!

hatsukagawa2012_2.jpg

hatsukagawa_2012_4.jpg hatsukagawa2012_3.jpg

みんな思い思いの方で採集を続けて、台の上に採集した昆虫や魚などをあつめてゆきます。左上の写真にあるように、樹が覆い被さり、流れが緩くなっているところで、砂地や落葉がたまったところをすくうと、これまで採れていなかった生物やシマドジョウやヤゴ、モンカゲロウなどが採れました。川のなかの環境の違いを、できるだけ多くの方に体感いただくために、会の後半になってから採集をアドバイスします。そうすることで、なぜコンクリート3面張りの川が生物にとってダメなのか、実感していただくことができます。最後は、じっくり台の上でみんなの採ってきたものをデジカメ撮影しつつ、まとめをおこないます。

・・・と、いつもならこれで終わりなんですが、今回はとった生物を博物館に持ち帰って、そのまま大急ぎでオープンセミナーへ。

opsemi2012_suisei1.jpg   opsemi2012_suisei3.jpg  

羽束川でとってきた水生生物をこんな感じで顕微鏡とカメラをつなげて大きな画面にうつします。リアルに鰓のつくりやトゲや毛などの細かいところまで、生きた状態で観察するとド迫力!!水生昆虫が呼吸するときの仕組みや、餌をたべるための仕組み(口器を超拡大)、泳ぐための仕組み(尾の拡大)を生きた水生昆虫でしっかりと観察&解説します。これは、図鑑では学ぶことができません。
午前中の観察会から引き続き参加してくれたひともたくさんいました。採った生物の中から1つを選んで右上の写真にあるような装置(顕微鏡とデジカメが合体)で自ら撮影してもらいます。それを小型のプリンターで打ち出して、ラミネートしてできあがりです。オリジナル水生昆虫ブロマイドが完成します。

opsemi2012_suisei4.jpg 朝から夕方まで水生昆虫三昧だったお二人さん、お疲れ様でした。ゲンジボタルの幼虫とオジロサナエのブロマイドを作成して、バックにはエルモンヒラタカゲロウのドアップを写して大満足です。

野外体験からはじまり、ちょっとお勉強したあと、博物館にもどってじっくりと色んな機器をつかってじっくりと観察し、印象に残った生物を撮影し、カードにして記念に持ち帰っておさらい。今回は、三田市立有馬富士自然学習センターさんとひとはくのセミナーをジョイントして、まるごと一日かけて水生生物を観察してみました。水生昆虫体験がはじめてのお母さんも、名前は覚えれないけど、全部【小さな虫】だったのが、違いが分かるようになったとのことでした。
オープンセミナーは、このあと水生昆虫は3/24までありませんが、魚の調べ方のオープンセミナーは、8/18に開催が予定されています。関心のあるかたは、ぜひ博物館までお越しください。

(みつはし ひろむね)

aogaki_sajigawa_saisyu.jpg7月21日は生物多様性について、朝から夕方まで楽しくみんなで学ぶ日でした。

午前の部は、丹波市立青垣いきものふれあいの里で、丹波地域の貴重な生き物の保全に取り組んでおられる5つの団体の方からお話を伺い、参加者と意見交流のワークショップを行いました。サギソウクリンソウバイカモホトケドジョウオオムラサキとそれぞれの方が工夫と地道な努力を重ねて、地域生態系の保全に取り組んでおられる内容はとても実践的です。子どもから大人まで、模造紙に意見を書いたり、資料や生きた蝶を片手に意見交流が行われました。

ikimonofureai0460.jpg ikimonofureai0451.jpgikimono0449.jpg

上の写真のような感じです。ぐるぐるとテーブルをみながローテションします。
親子のチームもあれば、おじさんだけのチームも。多世代交流で、丹波地域の貴重な地域資源について取り組みや課題を共有しました。このワークショップは、兵庫県丹波県民局さんが中心となってとりまとめて下さりました。

このあと現地へと移動ですが、参加者のかたは展示を観覧。現在、青垣いきものふれあいの里では、『淡水魚展』を開催されています。7月7日から8月31日までとなっています。加古川水系の魚たちが勢揃い、これは超お勧めです。夏休みは丹波にでかけて、展示をみて、そして川遊びを!このほかにも、さまざまなイベントが企画されています(樹脂封入標本づくりもあります)。

ikimonofureai0464.jpg
そして川へと移動します。
観察会の場所は、丹波市青垣町芦田地区の佐治川です。
午後からの参加者も多く、約80名ほどの大所帯に。
ikimonofureai3047.jpg観察会は、丹波県民局、丹波市、青垣いきものふれあいの里のスタッフ&友の会の皆さんがテントの設営や道具の準備をすすめて下さいました。今回は、ライフジャケットも用意して、安全対策もばっちり。昨夜までの雨もあがり、水位も低下して、天気も晴れて観察日和となりました。青垣いきものふれあいの里の松井施設長が進行をつとめて下りました。

ikimonofureai3052.jpg ikimonofureai3065.jpg

テーブルを川のなかにおいて、採れた生物を集めてゆきます。みんなで採った水生生物を観察できるように並べます。こうすることで1匹しか採れなかった種類、小さいけど貴重な種類も、みんなが見ることができます。さらに、川のなかで、写真にあるようにブラックボードにイラストを描いて、生物の特徴を解説。トビケラのからだの特徴について生ものを使って、手にとってじっくり観察することができます。これが、"LIVE"ならではの良さですね。ちなみに右の写真のビデオカメラはテレビの取材です。参加者の皆さんはテレビに映るかも?

ikimonofureai_observe.jpg    ikimonofureai3087cut.jpg

採れた生物のリストを作成しつつ、探せていない種類や生息環境についてレクチャーして、より多くの種類をあつめるために、みんなに協力を求めます。ちょっと早い流れにも親子でアタック。こんな感じで観察会を約2時間ほど開催しました。リストにとりまとめたところ、およそ50種類の魚類や水生昆虫などが採集できました。さすがにたくさんの”眼”があることで、種類が集まります。特に、調査に長けている『青垣いきものふれあいの里・友の会』の皆さんがお手伝い下さっていることがなによりも大きいです。安全管理や準備もふくめて、いつもありがとうございます。この生物リストは、県の環境調査として記録されます。標本の一部は、ひとはくと青垣いきものふれあいの里で保管され、環境学習や研究などで活用されます。

  丹波地域の生物多様性に関する取り組みや佐治川の多様な生き物を実感ができるスペシャルな一日でした。夏休みには、ぜひ丹波におでかけください。青垣いきものふれあいの里で勉強して、きれいな川で水遊びや生き物観察を体験してみてはいかがでしょうか。このほか、観光情報はこちらです(ちなみに丹波市立植野記念美術館ではちびまる子ちゃん展やってますよ!)。

  阪神間からお出かけされる方には、途中には『丹波の恐竜化石発掘地』や恐竜展示がある『ちーたんの館』、もちろん『人と自然の博物館』にもお立ち寄りいただければと思います。

  (みつはし ひろむね)

aqatic_ins_card0.jpg

昨日、3月10日は「水生昆虫を顕微鏡で観察してみよう」のオープンセミナーを開催しました。
やることは、水生昆虫ブロマイドを自力でつくること。たくさんの封入標本を用意して、参加者に好みのものを選んでもらい、顕微鏡で観察。気に入れば顕微鏡に接続したデジカメで、「ぱしゃり」と撮影する。
撮影したものをそのまま小さなプリンターで出力して、ラミネートしてできあがり。顕微鏡下で撮影するだけでなく、水生昆虫(ベントス)とのシンクロ、一体化をはかり方には、封入標本が透明であることを活かした「封入標本プリクラ」も撮影してプレゼント。標本の後ろ側に顔をおいて撮影するだけ。
これで生き物への親近感が湧きます(きっと!)。

aqatic_card1.jpg


aqatic_card5.jpg aqatic_card3.jpg

こんな感じで子どもたちは大変喜んでくれているようです。以前には、顔いりのカードを持って、野外観察会に来てくれた人もいました(ありがとう〜!)。
来年も博物館のオープンセミナーでは、こうしたイベントを開催しておりますので、ぜひお越し下さい。

(みつはしひろむね)

toujyou20120306_all.jpgいつもこの時期になると、加東市立東条東小学校で年間の総決算となる授業に出向きます。10年前からのお付き合いで、最初は博物館の川の観察会に当時の小学校の先生が参加されたのがきっかけで、川の学習プログラムづくりと実施を一緒にすすめて来ました。学校のすぐ横を東条川が流れており、環境学習にはこれ以上ない立地にあります。この土地の利を活かして、毎年4年生が1年を通じて川について学びます。
川で何度も観察や採集をおこない、季節ごとの違いや、多かった生物、台風のあとに減った生物、増えた生物などを観察します。気軽に川へと行けるので、おさらいが簡単です。このあと、採集した生物を封入標本や液浸標本として理科室に蓄積されています。

   toujyouhigash_kawa.jpg   toujyouhigashi_origuti.jpg  
 
左が川の景観です。峡谷状になっているので、川には降りにくくなっています。そこで、川にアクセスしやすいように県の土木事務所で階段をつけて下さりました(旧・社土木事務所の皆さん有難うございます!)。社会資本整備の投資分はもとをとっていると思います。


  toujyouhigashi_saisyuu.jpg toujyouhigashi_kenbikyou.jpg

川で色んな生物をとります(これは10月の様子です)。この頃には、すでにかなり慣れたもので、細かい生物まで逃さずにみつけて、バットに入れて学校に持ち帰ります。学校へは徒歩3分程度です。
持ち帰ったら、そのまま顕微鏡と液晶プロジェクターをつないで大きく写します。生きたまま観察できるので、水生昆虫らしい動きや身体の特徴を鮮明に観察することができます。

  IMG_1960.jpg  toujyouhigashi20120306_2.jpg 

川での採集結果などは、校内のかべにたくさん掲示されていて、いつも目にすることが出来るように配慮が行き届いています。しかもレイアウトや展示も美しく仕上がっています。


  toujyouhigashi_tenji2.jpg  toujyouhigashi_funyu.jpg  
一昨年の学習では、学んだことをもとに、川の模型などが製作されています。
また、5年前より、授業のなかで封入標本づくりを行っています。各班ごとに採れた水生昆虫を一目でわかるように、写真にあるような感じで標本をつくります。これらは川の学習を支える教材となります。

  toujyouhigashi_tenji1.jpg
一昨年から、加東市と博物館が連携して実施する移動展示会「まちまるごとミュージアム」を開催しており、この展示会に東条東小学校のこどもたちが、以前に製作した封入標本や模型などを展示しました。ほんものを手にとって観察できることはとても有意義です。2月には、近畿子どもの水辺交流会でも発表していただきました。



  toujyouhigashi20120306_4.jpg toujyouhigashi20120306_1.jpg
 今年の最後の授業は、あいにく雨で川には入れませんでした。しかし、学校のすぐ横が川なんで、別の対応方法があります。雨の日ようのプログラムとして、増水したときの様子を眺めて、水生生物がどのように避難しているのか、洪水でも大丈夫そうな避難場所さがしを行います。
上から観察するだけなんですが、こども達は、これまでの野外活動経験から、実に的確に答えてくれています。きちんと場合分けして、「魚は●●で、水生昆虫は●●で、貝は●●で・・・」といった具合で生き物ごとに個性があることが身体で理解されています。しかも、たずねてもいないのに、水際の草や大きな石がないと隠れられずに流されるから、新しくつくれば良いという意見も。きちんとこれまで体験してきた事に基づいて問題解決的にも思考できています。僕が講義するときの到達点としてのチェックポイントがすべてクリアーされていて驚きました。

 年間を通じて、川での様々な体験学習だけでなく、事後の部屋でのかっちりとした学習、展示の製作や大勢のなかでの発表といった一連の体系立ったプログラムづくりを行われている東条東小学校の諸先生方の努力にあらため敬意を表したいです。授業に行くようになってから10年が経ち、卒業生の中から、そろそろ大学で川のことを研究する生徒が表れるかも知れません。それが楽しみです。

(みつはし ひろむね)

 

QRでいきなり!

2011年12月 7日

 

QR-dgf.gif(トンボの顔面注意)

3DSの本体が更新されましたね.追加されたQRコード読み取り機能(詳細下記)から

インターネットブラウザでアクセスすると,いきなりどどんと立体に見えます.

 

3DSでのQR読み取り:ホームからLかRのボタンを押してカメラを起動すると右下にQR

読み取りのアイコンが出ます.

昆虫共生 沢田

 

3Dスペシャルサイト

2011年10月 4日

特別企画の「昆虫の世界2011」が終了しました.

期間中ぶっ通しで3Dスライドショーをしていた5台の3DSも無事生還.コンテンツの一部は3Dスペシャルサイト,[昆虫の世界3D]に置いてあります.期間の終盤に追加したものもありますので,興味のある方は再度ごらんください.

 

2782_anm.gif

 

0107_anm.gif

オオヤマトンボ(これはプルプル版)

ネットにつながっている3DSからだと,画像を長押しするだけで上画面に3Dで表示されます.検索する場合は[昆虫の世界3D]で見つかります.

昆虫共生:沢田

昆虫の世界2011の3Dスペシャルサイト,[昆虫の世界3D]にトンボの3D生態写真の画像をアップしました.

枚数は多いけど種数はいまひとつ,それに同定に自信がないのもあります.

 

am-1927.gif


↑これはプルプル3D版

ネットにつながっている3DSからだと,画像を長押しするだけで上画面に3Dで表示されます.検索する場合は[昆虫の世界3D]で見つかります.

昆虫共生:沢田

 

昆虫の世界2011の3Dスペシャルサイト,[昆虫の世界3D]にカブトムシ,クワガタなどの3D生態写真の画像をアップしました.

イチオシはカブトでもクワガタでもなく,アオカナブン(↓)ですが.


am6045.gif↑これはプルプル3D版

ネットにつながっている3DSからだと,画像を長押しするだけで上画面に3Dで表示されます.検索する場合は[昆虫の世界3D]で見つかります.

昆虫共生:沢田

今週の最小昆虫

2011年8月22日

この土日月に行った昆虫標本作り実演では,博物館の周りで採った小さな昆虫を標本にしました.

 

t-11.jpg

 

t-13.jpg

 

その中の最小がコレ(上).アザミウマの一種,棒状の翅があるのでこれで成虫です.もう一枚の写真(下)はシャープペンシルの芯です.つまり体長約0.5mm.アザミウマの仲間(アザミウマ目)は一般に小形ですが,そのなかでも小さい方では?

害虫を含むアザミウマの仲間はプレパラートにして調べるのが普通ですが,今回は他の昆虫と同様に紙に貼り付けた標本にしました.

昆虫共生 沢田佳久

原始昆虫出現

2011年8月14日

今日おこなったセミナー[土の中のむし]で,こんな虫が見つかりました.ナガコムシ

の一種(双尾目,コムシ目)です.各地で詳しく探すと珍しくないかもしれませんが,

深田公園の土から出たのは初めてです.

 

138.jpg原始的な昆虫としてはトビムシ類(粘管目,トビムシ目)がポピュラーで,このセミナー

でもよく現れますが,トビムシが[いかにもトビムシ]っぽい独特の姿をしているのに対

し,このナガコムシは[昆虫の基本形]みたいな感じです.ベーシックちゅうかプレーン

っちゅうか(どんな感想や).

 

140.jpg発見したのは講座に参加していたYS君とKB君で,3ミリほどのたぶん成虫と,かなり

小形の個体の計二匹見つかりました.標本はお二人の快諾により館の収蔵品として

登録させていただきました(B1-650996).

イシイナガコムシかなと思いましたが,触角の節数とかを数えるとオヤオヤ?という状

態なので,データベース上は[ナガコムシ属の一種]くらいの同定として登録してありま

す.

 昆虫共生 沢田

昆虫の世界2011の3Dスペシャルサイト,[昆虫の世界3D]にセミの3D生態写真の画像をアップしました.

いまのところツクツクがないのですが,それはオイオイ.

anm-0378.gif
↑これはプルプル3D版ミンミン♂

ネットにつながっている3DSからだと,画像を長押しするだけで上画面に3Dで表示されます.検索する場合は[昆虫の世界3D]で見つかります.

昆虫共生:沢田

今年で3年目になる、JR・阪神元町駅近くのアートホール神戸での夏の昆虫展、「神戸元町・夏の昆虫館2011〜この虫知っとおで。小さな生きものたち〜」が開催中です。

s-P1080021.jpg

                 (JR・阪神元町駅から徒歩1分のアートホール神戸)

s-P1080034.jpg

                   (巨大なオオクワガタ模型のお出迎え)

 

                    s-P1080025.jpg      s-P1080028.jpg

                         (お絵かきコーナー)         (おっきな みんなの むしかご)

 

実物標本を見てお絵かきしたり、生きた虫をさわったりできるよ〜。

なんと、ここで6時間も過ごしてくれる方もいるとか。

 

詳しくは、こちら→ 

http://www.konchukan.net/motomachi/

 

22日(月)まで。ホンマに駅近!入場無料!みんな来て!

                         こばやし みき(生涯学習課)

昆虫の世界2011の[3Dスペシャルサイト]に蝶と蛾の3D生態写真の画像を大量アップしました.

シジミチョウが多いのですが,それはそれで中々可愛いのでは?

 

lepi0112.gif

↑これはプルプル3D版

ネットにつながっている3DSからだと,画像を長押しするだけで上画面に3Dで表示されます.

昆虫共生:沢田

 

でた 3Dコーナー

2011年7月22日

20日からはじまった[昆虫の世界]の3Dコーナーの説明をば少々.

anm-2392.gif

↑まいどレトロなゾウムシの赤青立体写真の標本箱[象量箱].
これまでもキャラバンや各種の行事でときどき登場してました.
全種実物の10倍の大きさですので,容積は1000倍に見えます.

anm-2391.gif

↑パソコンのモニタでの3D.4台のモニタではそれぞれ違う画像を繰り返し流しています.
奥の2台の生態写真は初登場(●)で,モンシロチョウの空中交尾とか,ふだん野外で見えてない瞬間が見えます.
特にお勧めは一番奥のやつで時々出てくるシロスジカミキリの飛翔シーン,必見です.ただし巨大クマバチは怖いかも.

anm-2395.gif

↑3DSが5台収まっている裸眼立体視の標本箱.それぞれ違う画像を繰り返して流しています.
30センチくらいに近づいてみるとモッコリ,ベッコリ3Dに見えます.
5台の3DSにはすれちがいMii(★)↓も常駐しているので,3DSを持ってきた方にあいさつします(▼)ケド,あいさつになってないかも.

anm-0096.gif

なにしろ触角眉毛の昆〜虫〜人間なのさ.
でも水色の盾を破ったり,暗闇に灯をともしたり,王様を助けに行くとき,ちょっとは役に立ちますよ.
映している3D画像の一部は[特製WEB頁]にもアップしていますので,インターネットにつながっている3DSからだと直接3Dを見たりダウンロードしたりできます(◆).

昆虫共生 沢田

 

▼)すれちがい通信による
●)special thanks for むしみずれんた
★)created by 河南堂珍元斎
◆)PCでダウンロード後,3DSにコピーして参照することも可能.

「昆虫少年」とは、昆虫を愛し、虫とりを愛する、少年・少女のことです。

夏休みの初日を、「昆虫少年の日」と定めました。

さあがんばるぞ! と決意を新たにし、この夏休み、虫とりにはげみましょう。 
博物館の会場が、パーティー会場のように、多くのなかまに出会う場にもなればいいなあ、と思います。

みんな、来てくれ!!

日時 2011年7月21日(木)13:00〜受付開始 16:00頃まで
会場 ひとはく本館2階展示室
申込 不要
参加費 無料 ただし、博物館の観覧料は必要です。
内容 
 どんな虫が好きですか、などの簡単なアンケートに答えていただくと、「昆虫少年証」をプレゼントします。

くわしくは、スペシャルサイトで。


八木 剛(自然・環境評価研究部)

トライやる昆虫業務

2011年6月17日

先々週トライやら〜3名で行った博物館周辺での昆虫業務,昆虫採集→標本作成→同定登録の作業が,やっと大物の標本(といってもクビキリギス)も乾いたので,176件をデータベースに登録し,完了しました.

三日目に撮った3Dスナップを貼っときます.<3DSブラウザ長押しで3D>

期間中,テントウムシをよく見かけました.サツキにマルハナバチが来ていましたが,これは採れず.

r_h_0053.jpg

コメツキ(サビキコリ)

r_h_0078.jpg

出たてのクビキリギス

r_m_0013.jpg

ナミテントウ

r_m_0060.jpg

マルハナバチ

s_k_0012.jpg

手のりナミテントウ

s_k_0083.jpg

ヒメクロオトシブミ

昆虫共生 沢田

三田市内の方からの持込み珍虫です.


mnha3225.gif

 (↑これは2D)  

mnh_3216.jpg

 (↑3DS:タッチペン長押しで3D表示)  

mnh_3220.jpg  

 (↑3DS:タッチペン長押しで3D表示)  

ハゴロモ類の若虫らしく,ロウ物質で立派なトゲトゲを形成しています.
成虫になれば同定できるだろうと考え引き取ったのですが,羽化せずに死んでしまいました.
B1-650995

昆虫共生 沢田

 

相生市在住の方が、2011年6月3日、住居内で発見され、「サソリではないか?」と心配され、相生市役所に持ち込まれたものです。

これは、「カニムシ」といって、サソリに近い小動物です。
腹端には何もなく、もちろん、毒はありません。
大きなハサミで小動物をつかまえて食べています。

カニムシは、落ち葉の下の小動物を探しているとよく見つかりますが、もっと小さいです。
日本には70種くらいいるらしく、落ち葉の下にいるものだけでなく、樹上性のもの、洞窟に住むもの、海岸にすむものなど、いろんな種があるようです。
このカニムシ、私には種名はわかりませんが、ホームページを検索してみると、樹皮下にすんでいる種に、よく似たものがいるようです。

いずれにせよ、かなり魅力的な「虫」です。集めたくなりますね!

pseudoscorpion_5741.jpg


博物館には、いろんな問合せが来ます。
住民の方が、地元の役所や保健所に問合せ、そこで解決できなかったものが、博物館へ転送されてくることも多いです。それでも解決できないものもありますが、わかるかわからないか、くらいは、ほとんどの場合、すぐにわかります。

みなさんも、どうぞご遠慮なく。


(八木 剛@自然・環境評価研究部)

 2002年に寄贈された『田村コレクション』(2002-0021)はほとんどカミキリで,その主要部分はコブヤハズカミキリの仲間です.各地を巡って自力採集された日本有数のコレクションです.また,標本がきれいに展足してある点も特筆に価します.全個体がビシッと丁寧仕上げの標本なのです.

 

576024.jpg

576024
フジコブヤハズカミキリ
長野県,Tobira Pass

 そのままで,こんな感じのゴツゴツ感満点の標本写真が撮れます.それぞれ数枚撮って深度合成したものです.標本の撮影と合成は匠の技(担当:清水さん,西村さん)で,これも丁寧に進めています.

 次の段階はデータベースの標本データと登録画像データを関連付けです.非常に単純な事ですが,現システムでは一括処理ができないのでストック中です.現状でも一件づつ手入力で関連付けることは可能といえば可能ですが,そんな丁寧仕上げはありえませんし.

 というわけで,セダカコブの勇姿をここにちょっとだけ公開.

 

579862.jpg

579862:セダカコブヤハズカミキリ:奈良県,Mt.Odaigahara

579123.jpg

579123:セダカコブヤハズカミキリ:鳥取県,Mt.Daisen


578965.jpg

578965:セダカコブヤハズカミキリ:徳島県,Mt.Tsurugi


580487.jpg

580487:セダカコブヤハズカミキリ:熊本県,Kikuchi-Suigen

 

580162.jpg

580162:セダカコブヤハズカミキリ:大阪府,Minoo


579366.jpg

579366:セダカコブヤハズカミキリ:島根県,Mt.Makuragisan


579668.jpg

579668:セダカコブヤハズカミキリ:香川県,Mt.Hoshigajo Shodoshima Is.

 やはり地域ごとに違いますねぇ.

 

walk-ys.gif 昆虫共生 沢田


 


FtFp0583.jpg FtFp0592.jpg

ええ感じのネコヤナギの花,虫は少ない

 先日ブログのネタさがし(正直)に深田公園を歩いてたら,あるケヤキの根元に虫が沸いているのに気付きました.ユスリカのスウォームです.小さな虫ですので,羽音がするわけでもありませんが,まさに沸いていました.風の弱い日で昼過ぎ,高さは地面から30センチまでくらいでした.


FtFp0575.jpg

空中にわんわん沸いているユスリカ

一応,標本を残そうと網を一振りして持ち帰ったところ,23匹中,♀が1匹で,他は全部♂でした.

(今回の写真3枚も3DSなどで立体視できます.リンク先の大きい画像の拡張子をMPOに変更してください)

walk-ys.gif 昆虫共生 沢田

 今日はケヤキの(半めくれ)樹皮下で越冬している虫を探してみました.深田公園のケヤキの多くは近年に植栽されたものらしく,かわるがわる,いつも虫だらけです.しかし今回は期待に反してゾウムシがほとんど見られず,モリチャバネゴキブリ(の若虫)を少し見かけた程度.あとはカニグモ(?)の仲間くらい.


MNHA1264.jpg MNHA1289.jpg MNHA1294.jpg

モリチャバネ,カニグモ(?),凹みのヨコヅナサシガメ

 ケヤキの枝の折れた跡などの凹みで,ヨコヅナサシガメの若虫が,かたまっていました.若虫で越冬して春に羽化するのです.
 ヨコヅナサシガメはふだんは全体が黒でチョコッと赤や白いところがある,トガッたデザインなのですが,脱皮直後は大部分が赤色です.特に羽化したての成虫は全身燃えるような赤で,見どころ(?)だとされています.

 

fuse01.jpg

真っ赤状態のヨコヅナサシガメ(4月下旬,布施研究員撮影)

 

 サシガメの仲間は口吻で獲物を刺して吸う虫,肉食のカメムシです.なかでもヨコヅナサシガメは最大級なので,ヒトでも刺されると激痛です.動きはあまり敏捷ではありません.派手な色彩は一種の警告色だろうと考えられます.

 深田公園のケヤキには年によって色んな虫が発生します.ヒロヘリアオイラガは常連の一つで,幼虫はいろんな木の葉を食べますが,ケヤキにも多く,秋になると繭を作るため大枝や幹に降りてきます.成虫は緑と褐色の鮮やかな分断模様,幼虫はウミウシみたいな派手な色彩と,それぞれ美しい虫です.ただし幼虫に毒棘があるのが玉に傷.これも警告色でしょう.

 

MNHA7749.jpg MNHA7743.jpg MNHA7754.jpg

ヒロヘリアオイラガとヨコヅナサシガメ

 で,秋に,ヒロヘリアオイラガが大挙降臨してくる頃,このヨコヅナサシガメが口吻を差し込んで体液をチュウチュウ吸っているのを見かけます.両方とも外来種ですし,ケヤキじたいも植えたものですので,ぜんぜん自然ではないのですが,自然の営みが実感できる光景です.

 今回も3DSで3Dで見られます(真っ赤な成虫の画像を除く).3月3日の場合と同様に,JPGでダウンロードしたうえでMPOに変えて下さい.他のMPO対応3D機器でもたぶん同様に3D視できると思います.(詳しくはコチラを)

walk-ys.gif 昆虫共生 沢田

 ボンボリーニ!

 3月3日から[3D 小さな美麗虫!クチブトゾウムシ]をミニ展示をし
ています.小さいけれどよく見るときれいなクチブトゾウムシの仲間の標
本の3D画像の展示です.

 そもそもゾウムシ類は長い口吻で植物に穴をあけて産卵し,幼虫は植物
の中で育つのが基本です(だからゾウみたいな姿なのです).しかし,穴
を掘らなくなった仲間もいて,そのひとたちの口吻は短いです(まぁ,バ
クかブタっぽいです).幼虫は土の中で根などを食べて育ち,成虫は地上
で様々な植物の葉を食べて生活しています.
 中でもクチブトゾウムシの仲間は体が小型で,特に口吻が太短くなって
います.まさに葉をバリバリ食べまくるのに適した形です(かなりブタっ
ぽいです).
 体は黒っぽい地色ですが,様々な色の鱗片(チョウの鱗粉のようなもの)
に覆われていて,.全体的には緑色や茶色に見えます.拡大してみるとラ
メラメでオシャレです.

 で,博物館では22インチのモニタでみられますが ↓ の画像をクリッ
クして現れる拡大画像を3DSのSDにコピーすると,3Dで見られます
(ためしに三枚だけ)(パソコンではモノラルにしか見えません).

 

MNHA0007.jpg MNHA0026.jpg MNHA0041.jpg

トゲアシクチブトゾウ,クロホシクチブトゾウ,オオクチブトゾウ

□□ 3DSで見る方法 □□
パソコン上で ↑ 画像をクリックすると大きな画像になります.
これをダウンロードしてください.ファイル名が;
MNHA0007.jpg
MNHA0026.jpg
MNHA0041.jpg
となっているはずです.
このファイル名の拡張子"jpg"を"MPO"に変えてください.つまり;
MNHA0007.MPO
MNHA0026.MPO
MNHA0041.MPO
にしてください("mpo"でもいいですけど).
これら3つのファイルを,3DSのSDカードのデジカメ・イメージのフ
ォルダ;
DCIM/100NIN03/
などの中にコピーしてください.
あとはSDカードを3DSに戻し,いつも写真を見ているようにしてくだ
さい.3月2日のところにゾウムシの画像が出てきます.

注意:3DS,SDカード,パソコンの取り扱いについてはそれぞれの説
明書にしたがってください.誤った操作をすると重要なデータを壊す危険
性がありますのでご注意ください.

walk-ys.gif昆虫共生 沢田


クワガタ図鑑出来

2011年2月24日
昨年末に出たクワガタ図鑑がレファレンスルームに登場.
大きい本の棚に配架されてます.重たいわぁ.

0001-r.jpg

昆虫共生・沢田

冬に挑むカマキリ

2011年2月22日

 日本産昆虫の目録(1989年モノ)は本編の厚さが5センチ以上あり,1000頁にわたってびっしり虫の名前が載っています.しかし,その中でカマキリはたった1頁だけです.しかも頁の上半には大きな「カマキリ目」の見出しがあり,下半には大きめの余白があって,実質半頁に2科6属9種が載っているだけです.カマキリは昆虫の中ではごくごく少数派.その割に存在感が大きい不思議な仲間です.

 カマキリは体じたいも大きく,親しみやすい虫ですし,種数も少ないとくれば調べ尽くされている感じがします.でも,まだまだ分かってないことがあります.ヒメカマキリサツマヒメカマキリの関係もその一つだそうです.

 先日,本当はカキリ屋さんの中峰空氏がヒメカキリ類の標本調査に来られました(で,この話題は受け売りです).収蔵品データベースにあたっても,実際に標本をさがしても,博物館所蔵のヒメカマキリ(類)の標本は9匹のみ.ほとんどが県内の昆虫相調査の成果品です.これらの標本をチェックし,ラベルのデータをメモって行かれました.採集月日から判断してサツマらしいのはいないとの話でした.

 九州にはヒメカマとサツマヒメの両方がいて(ということは地域変異とか代替種関係とかではない),交尾器が異なり,そのつもりで見ると他の形態でも区別できるとのこと.なにより両種で周年経過がちがう,特に越冬の仕方がポイントで,ヒメカマは卵で,サツマは幼虫だそうです.なるほどねぇ.だとすると「南のカマキリが北上して”冬”に遭遇」→「二派あり,それぞれに適応」→「別種として同所的に共存」みたいなストーリーが思い描けます.おもしろい話です.たしかにヒメカマの卵鞘はフカフカが少なくて凍えそうです.苦労してるんすねぇ.

 ところが,国内外の記録を探すと従来の同定を100%信頼できる状況ではなく,”冬”がない所にも両種ともいることになっており,分布もちゃんと調べないとはっきりしない状況.さらに昨今はヒトによる分布攪乱が進行している懸念も.げげっ,またしても多様性の破壊?!

 標本を見ていて,以前に撮った写真を思い出しました.この機会に発掘してプルプル化しました.これは沖縄本島で2月に撮ったものです.さぶさぶさぶ.

7228tr.jpg 7260tr.jpg

7240pp3d.gif 7241pp3d.gif 7250pp3d.gif

昆虫共生 沢田

六甲山のご当地昆虫

2011年2月 8日
 以前のブログ(2010/03/07)で標本調査の様子を紹介した西宮市のオサムシグループの研究成果の一つが公表され,プリントを送ってくださいました.「六甲山地におけるクロナガオサムシの生息地について」というタイトルです.

 六甲山は昆虫に関しても古くからよく調査された山ですが,★六甲山ならではの虫★,というのはほとんどありません.最初に六甲山から見つかった虫は,調査がすすむと本州に広くいることが分かってしまいます.名物昆虫,ご当地昆虫,が不在なのです.あえていうなら帰化昆虫のキベリハムシくらいでしょうか,国内では兵庫県南部付近のみに分布,舶来昆虫というのも神戸らしくて良いという意見も.

 オサムシ類は非常にくわしく調べられている虫で,そのスジの人にとってはどの辺りにどんな種がいるか,ココにはコレがいてアレはいない,とかは分かりきった事のようです.六甲山もまるっとお見通し.クロナガオサムシは六甲山の西麓の200〜400mに記録があるだけで,中腹以上にはいない … はずが … 意外な所で採れてしまい.それをきっかけに徹底的な調査が行われたのです.
 結果として,六甲山のクロナガオサムシは今までの常識よりはもっと高い所に産し,分布の中心は600〜700mであって既知の産地はむしろその下端とみなせること,六甲山のクロナガオサムシは近隣のものにくらべて一般に小型であり,その変異も小さく,高標高において小型化する傾向も認められないことが分かったそうです.
 クロナガオサムシは県全域にいる種類で,さほど珍しいわけではないのですが,調べてみると六甲山のものは何やら意味ありげな個体群だとわかってきたわけです.ご当地昆虫の発見というか出現というか登場というか,です.う〜ん,多様性ですねえ!
 ここのクロナガオサはなぜ小さいのか? 低い所の個体が大型化しないのはなぜか? さらに興味は深まるばかり.
 

rokko-am.gif

プルプル地形図 有馬〜六甲〜丹生山 (左が北)

 詳しく知りたい方は掲載誌「きべりはむし」(←キベリハムシにちなんだ誌名)を検索してください.PDFでダウンロードできます.第33巻です.


昆虫共生 沢田

極寒

2011年1月29日

 メンテナンス休館の間は暖房になっている部屋は限られているので,館内は日に日に寒くなっていく感じがします,建物自体が芯から冷えてるというか,熱容量ですねぇ.

 で,中ではこんな事をしています.

展示に出していた昆虫標本の収納作業

 展示特別企画[瀬戸内海vs日本海]で陳列していた標本を収蔵庫に戻しました.収蔵庫に持ち込む際には防黴防虫の処置を施す必要があり,収蔵庫の門前にあるディープフリーザに入れます.なんと-90℃.出した際に霜が降りる(梅雨時など[空気中にこんなに水が!]と驚くほど付きます)ので,フリーザーに入れる前にあらかじめ標本箱を厚いビニール袋にくるみます.で,数時間,普通は念のため一日入れて取り出します.常温に戻るのに1時間ほど.で,やっと袋を脱いで収蔵庫に御帰還です.昆虫標本の場合,標本箱単位で棚に戻せる場合もありますが,一点ごと[召集]された標本はそれぞれのふるさとへ[復員]です.

 

0013-r.jpg 展示すると照明や温度変化による劣化は避けられませんし.慎重に作業しても低い確率で破損は生じます.展示は[見せるだけで減るもんやなし]と思われがちですが,標本管理上,展示はリスクにさらす事であり,ある意味,減るもん,なのです.

これから出す展示物の調整も進行中

 [瀬戸内海vs日本海]で出していた3Dの機材を使いコンテンツを変更したり新作を追加したりして2月からミニ展示します.いちおうタイトルは[3D巨大甲虫出現!]
 モニタが二台に増殖し,しかも一台は縦置きにして虫をさらに大きくしようという計画です.


0014-r.jpg 0015-r.jpg

 横置きのほうは約70コマを12編のアニメに組み,それを6頁のHTMLを順繰りに表示して一周4分,縦置きのほうは22コマを3編,3頁で一周3分 … とチマチマ計算したり.朝夕のオンオフや継続中の節電モードの入り具合を試運転中です.
 ぎっしり甲虫だらけなのでせっかく作った縦横のロゴはボツです.なのでここに貼って宣伝用にします.乞御期待.

184il176.gif 184zx176.gif

ソレ用のモニタで見ないと意味のないロゴ

昆虫共生 沢田

 昆虫標本の撮影は,ポージングに関して,かなり単純です.
 普通はまっすぐ背中から見た「背面図」で,図鑑にもだいたいこれが載っています.しかしグループによっては「側面図」の方が一般的なのもあります,バッタなどがそうです.細かく区別するために「腹面図」が役に立つこともあります.細かく調べる場合は,部分ごとの図で,その部分なり部位が平面的に見える方向から撮影されることになります.

 ところがしかし,虫の魅力というのはそういうもんぢゃあない.虫全体の佇まいを表現できる「良い角度」があるようなのです.体に厚みがあり,凸凹が激しい甲虫の場合,背面図や側面図ではかっこよさが表しきれません.
 モノ固有のカッコよく見える角度 … 専門用語がありそうだと思い,ネットで探してみましたが,見つけられませんでした.「フォトジェニックサイド」というのが近いかもしれません.
 下の例はコシロコブゾウムシとタカハシトゲゾウムシです.甲虫は,だいたい斜め前上と,斜め後上ぐらいに良い角度があるようなのですが,グループや種や個体によって,標本の状態によって違います.シリーズで撮り始めても,個体ごとに微妙に違ってしまって統一できません.半球形のガシャ殻を利用して調整台を作れば,微妙な角度が選べますが,凝り始めるとキリないです.

mono0103.jpg

 

mono2011.jpg

0529-t.jpg

昆虫共生 沢田

 日曜日は休みだったので,三木山森林公園に行ってみました.特に目的はなく,うろついていれば何か面白いものがあるかも,という程度でうろついてみたわけです.しかし…

P0191_am.gif 0019z_am.gif

 フライングぎみに咲いているウメが一株,ヒイラギには咲き遅れの花がすこし,赤黒い葉を残しているモチツツジのテッペンにドクガのなかまの幼虫(帰って調べるとゴマフリドクガらしい),アベマキの幹にフユシャクの仲間の♂(帰って調べてみるとクロオビフユナミシャク)がいた程度.

P0193_am.gif 0023_am.gif 

P0189_am.gif

 小鳥(たぶんジョウビタキ)がヘクソカズラの実を食べているらしかったので,撮影しようと近づくと飛び立って近くの枝に止まり,「じゃやますんなや」ていう感じで睨まれました.カモはぜんぜん近寄らせてくれないし.とほほ.

F1654_am.gif F1671_am.gif

 いろいろ居るのですが,コレはっ! という面白いのはであいませんでした,寒いし.立派なオオカマキリの卵鞘があったので,カマキリの季節,ということにしておきましょう.

P0182_am.gif

昆虫共生 沢田

最強の3Dアイテム

2010年12月25日

 青赤メガネは,本の付録についていたり,専用のものが売られていたりしますが,わざわざ入手するのはめんどうだと思います.そこでお勧めは百円ショップにある赤と緑の暗記用シートです.緑のシートは青赤メガネの「青」の代わりだと思ってください.赤と緑のセットになっているやつがお買い得.切リ分ければ数人分になります.105円で一家団欒可


9878.jpg

 

 赤のシートに緑マーカーが付いたセットとか,逆の組み合わせのもあります.赤や緑の下敷きも利用できます.これらだと二色いるので要210円(^^;
 色セロファンもあります.セロファンの場合,青も緑も使える可能性があります.百円で何色も入っていて面積も広いので得な感じですが,色が濃すぎたり薄すぎたりで青赤メガネ用には適してない事が少なくありません.

【フィルタ選びのコツ】

 暗記シートでも色下敷きでも色セロファンでも,一見,明るい方が見やすいように思いますが,実は違います.
 むしろ「見えるべきではない像を消す」ことが重要です.メガネなしで見た場合に二重に見えている像の,片方を確実に消してくれるか? に注意して判断してください.

R-C256.GIF 177rc186.gif

 上の左の図でいうと;

赤フィルタ:黒のrx,白のCが見える
青フィルタ:黒のcx,白のRが見える

ことが目立ちますが,それより;

赤フィルタ:黒のcx,白のRがきちんと消える
青フィルタ:黒のrx,白のCがきちんと消える

ことが重要なのです.二枚重ねることでほぼ消えることもあります.

 品定めの際には,携帯端末等に,実際にこれらの画像を表示して見ると良いでしょう.

【フィルタ材と表示媒体】

 セロファンや暗記シートなど,フィルタ材の良し悪しは単独で決まるものではありません.画像映像の表示装置や,プリントの場合は用紙やインク,照明との組み合わせによって決まる事です.
 あるディスプレイ上でうまく見えた映像を別のディスイプレイに表示しても,同等には見えないことがあります.
 PCのモニタなど光源となるディスプレイと.プリントしたもの,映写したものの見え具合は大きく異なります.状況に応じてその都度,適したフィルタを見つけ出す必要があります.要するにフィルタ材は優劣ではなく適不適なのです.ダメだと思ってもキープしておけば(特に薄いやつ)他と組み合わせて使うと良かったりすることもあります.
 試行錯誤でマイPC専用の青赤メガネを鍛え上げておけば,最強の3Dアイテムとなるはずです.昆虫のマイクロステレオ動画の参照などに役に立ちます.

 本の付録などでも,質のよくないもの(少なくともその印刷物には適していないもの)が付いていることがあります.

 専用の青メガネは赤とシアン(青緑)のフィルターで構成されています.赤はともかく,シアンのフィルターは,一般には入手困難です.水色のセロファン,水色の下敷きなどは使えそうな感じがしますが,風景(つまり店内風景,陳列商品)を透かしてみれば他の色の残存が激しく,フィルタとして機能しえないことが分かります.

昆虫共生 沢田

お正月は3D?

2010年12月25日

 今年は何かと3D関連の製品が登場しました.電気屋さんに3D対応のテレビやらパソコンやら置いてあります.一部のスマートフォンにも3D表示機能が搭載されています.が,しかし,まだまだコンテンツが少ないですし,ハードもソフトも高いしねぇ… それに3Dは見る位置や姿勢が強制されますので,はっきり言って見続けるのはシンドイ.感動巨編,映画一本まるまる3Dなんて無理無理.

 そもそも3Dはチョコッと見て「ヘェーそうなのか」,「ナルホドね」級の軽いコンテンツ向きなのです.そういう目で見ると,ある所にはわりと転がっています.チョコッと見て「をぉ〜 出てる!出てる!」という程度のコンテンツは動画共有サービスで無料(通信費はかかります).しかも3D対応家電など不要.百円(正確には105円)の設備投資でいろいろと視聴できます.

 別項目に詳述しますが,百円の暗記シートを転用するのがお勧めです.今さら青赤メガネ? レトロ? とお思いでしょうが,今こそ「青赤メガネでYouTube」です.

f-sh1.jpg m-sh1.jpg

YouTubeでの3D動画再生状況(アナグリフ)

 YouTubeにある3D動画には「コレは3Dですよ」という情報(タグ)が付いています.それを再生すると,枠の右下に[3D]のメニューが現れます(↑).でも気付きにくいでしょう,何しろ画面自体が変なコトなってますので.
 動画の画面は,普通のPCのモニタでは(特に選択していない場合には)赤/シアンのアナグリフで表示されます.要は「青赤写真」状態です.裸眼で見ると色がにじんだような感じです.き,きしょく悪るぅ… パスしたくなります.でも,これを青赤メガネで見ればモッコリ,ベッコリと3Dに見えるのです(見え方には個人差があります).ですから,PCの前には青赤メガネを.

f-sh2.jpg

YouTubeの3D表示方法オプション

 この[3D]のメニューではアナグリフ(青赤メガネ式)以外も選択できます(↑).交差法裸眼立体視ができる方は裸眼(No glasses)の交差法(Cross-eyed)を指定すれば何もなしで見られます.平行法(Parallel)の方は,幅が広いので慣れた方でも見にくいと思います(小さく表示すればOK).
 「モノラルでええねん」という場合も,裸眼(No glasses)メニューの中で右だけ,左だけが選べるようになっています(↓).裸眼ではにじんだように見えているわけですから,「モノラルでええねん」はもっともな選択です.普通の2D動画が再生されます.きしょく悪くないけど見る価値は高くないです.

m-sh4.jpg

 YouTubeでの3D動画再生状況(裸眼)

 

m-sh3.jpg f-sh3.jpg

YouTubeでの3D動画再生状況(インターリーブ)

 

 PCのモニタが3D用の場合,つまり横縞のインターレース式の3Dモニタで見る場合には,インターリーブ(Interleave)を選択して横縞のスジスジに表示するのが適切です(↑).普通のモニタでも3D用モニタと同じように表示されますが,3D用モニタの場合,円偏光式のメガネ(アバターメガネ)を通して見ることで交互のラインが消えることで両眼に視差のある像が見え,3Dに見えます.
 というふうに,同じ3D動画をそれぞれの再生環境に応じて再生できるわけです.(3Dスマートフォンの場合は縦縞のパララックスバリア方式です.現在のところそれへの変換をおこなう選択肢は見当たりません.アプリでダウンロードしたうえで3D動画として再生することは可能なようです.).

 YouTubeに限らず動画共有サービスには3D動画のほかに,アナグリフ専用に仕立てた動画で,タイトルに「3D」と付けて公開されている場合もあります.これらも青赤メガネで立体的に見ることができます.

 今後すべての画像がステレオ(3D)になるわけではないだろうし,情報源が3Dであっても2Dで見聞きする選択肢が用意されるはずです.現在は3Dむきの分野を模索している段階にすぎません.2月には某ゲーム機が3D化します.表示環境が普及,一般化することで,3Dに向くもの/向かないもの,しだいに住み分けがはっきりしてくるでしょう.

 ともかく,しばらくは青赤表示での3Dが安くてお手軽,PCの前に青赤メガネが必需品なのです.まぁ2011年,1年間は重宝すると思いますよ.今さら青赤メガネ? とお思いでしょうケド…

 

 

ヒラタアブのホバリング

 

昆虫共生 沢田


 博物館の標本も参加(?)しているクワガタ図鑑がいよいよ出るようで,出版宣伝のポスター

とカレンダーが送られてきました.カレンダーは収蔵庫内の標本ダンスでカールとり中です.

0047vga.jpg

磁石のシートで貼り付けて伸ばしてます

 よく見ると[新種]の赤印がついた種が多数あり,人の名前が付いています.有名な”モーレン

カンプオウゴンオニクワガタ”とか”ダールマンツヤクワガタ”みたいな感じで,日本人の名前が付

いたクワガタが新登場しています.

 

0049mos.jpg

0048mos.jpg

クワガタの[新種]が続々登場

 いわゆる献名で,その種の発見などに貢献のあった方の名前が付いているわけです.活躍中

の方も多いですが,何十年も前に亡くなって,コレクション標本が各地の収蔵庫に保存されてい

る,という場合も少なくありません.

 

クワガタに自分の名前が付くなんてステキ♪

 

そう思う方は標本を集めて博物館に寄贈してください.何十年か後にマイ・クワガタとして名前

が付くかもしれません.ただし自分自身がクワガタの研究家になってしまうと,自分には献名し

にくいです.ご注意ください.

 あと,クワガタはかなり研究も採集もされているので,これから新種は出にくいかもしれませ

ん.図鑑じたいが出てないような(出ている図鑑には詳しく載ってないような)マイナーな虫がお

勧めです.名前が分からない虫,小さくて地味な虫こそチャンス大です. なに? そんな虫に

自分の名前つけてほしない,てか.

昆虫共生 沢田佳久

HHZ

2010年12月17日

て,「ひょっこりほっこりゾウムシさん」のことです.ゾウムシ立体写真集(もともとは新聞版)です.

デジタルフォトフレームで覗くようにしたり,プルプル3Dにしたりもしていましたが,今度は動画版

を作ってみました.もちろん静止画の切り替えですけどね.

で,見えるかどうかYouTubeで実験↓.

モニタの前に青赤メガネがあるかが問題ですが…

昆虫共生 沢田

来年の干支の卯にあわせてウサギ関連の資料を展示しています.

ウサギ関連の虫は非常に少ないです.[ツノがある→ウシ]とか[縞々→トラ]とかで名前が

つく虫は多いのですが[耳が長い→ウサギ]に該当するものがいないのです.そもそも虫の

耳て?

で,よ〜く考えてみると,いました,いました,すごいのが! しかも[名前にウサギがつく]

とかと違って本当に生きたウサギがらみ,注目すべき種類がいるのです!

BMP版背面図(2D)↓

copr_bp_s.bmp

アマミノクロウサギの糞にいるマルダイコクコガネという虫です.奄美特産です.本土にいる

ダイコクコガネ(牛馬の飼育方法が変わったため,かなり減ってる)やゴホンダイコク(シカと

ともに増えてる感じ)とかの仲間ですが,翅が短く,飛べません.ふつう糞虫は糞を求めて

飛んで移動しますが,この虫は飛ばないのです.かなり糞密度が高くないとやっていけない

生活です.アマミノクロウサギの生存が危ぶまれている現在,それよりもっと心細いのがこ

の虫です.

しかも,後翅の退化した前のめりの姿がまたすごい.特にオス.ひょっとして日本でいちば

んカッコイイ糞虫かも.アマミノクロウサギの剥製とともに展示してありますので,ぜひ,じっ

くりと見てください.

cop-b.gif

cop-c.gif

 

昆虫共生 沢田佳久

↓MPO形式3D画像(3Dテレビ,Real3Dなど)

01b05.mpo  07b10.mpo  13b17.mpo

↓インターレース方式3D画像(PC用3Dモニタ)

s01b05il.bmp  v07b10il.bmp  s13b17il.bmp

↓アナグリフ方式3D画像(青赤メガネ用)

s01b05ag.bmp  v07b10ag.bmp  s13b17ag.bmp

 

実写版ヤマト(2)

2010年12月 1日

実写版ヤマト第二弾!  こんどはヤマトシジミです.

博物館のまわりにもよくいます.食草はカタバミで,足元をちまちま飛んでいるので目立

ちません.この個体は花から花へと”歩いて”吸蜜中でした.翅の裏は砂色っぽく,表と

いうか内側が薄青で,なかなか美しいです.たしかに貝のシジミを思わせる色あいですね.

P0044_am.gif  P0051_am.gif

  P0053_am.gif

ついでに最近撮った晩秋のシジミチョウを二種ほど.

こちら(↓)は日光浴するムラサキシジミ.食樹は常緑樫.成虫で越冬するそうです.表は

モルフォチョウに匹敵する鮮やかな青紫色です.裏は落ち葉のようなベージュ色.翅をたた

むだけで風景に紛れることができます.

 

P0573_am.gif 

9601_am.gif 9613_am.gif

下のはマメ科の花や実で発生するウラナミシジミ.主に幼虫で越冬するようです.日没前に

見つけたこの個体は花に止まったまま,夕日が当たってもかげってもぜんぜん動きませんで

した.

 

P0483_am.gif 

P0483s_am.gif 9546_am.gif

 

昆虫共生 沢田

 

カマキリの季節

2010年11月24日

カマキリの季節ですね,かなぁ?

虫を探しながら歩いていると,よくカマキリに遭遇します.しかも眼が合うというか,睨まれるというか.今や草むら最強の虫なので堂々たるもの.蟷螂の斧の故事を思い出します.

カマキリのカマは,もちろん前の足,つまり前脚です.前の胸,つまり前胸全体が変形しているので,どの部分か考えてみると,すごさが分かります.たとえばカブトムシの前胸(♂だと小さいほうのツノがある部分)とくらべてみると,カマキリでは前胸全体が細長くなっていることがわかります.
また脚の根元の節,基節が長くなっています.カブトだと半分埋まった感じの部分が,カマキリでは長く,自由に動くのです.次の太くてトゲトゲが多い部分が腿節,その次のカマのように尖った部分が脛節です.その先には目立ちませんがフ節があります.カブトだと鎖っぽくて先にカギヅメが付いている部分です.

 

9429_pr2.gif ys_m9424.jpg 9431_pr2.gif

 

で,カマキリの前脚には模様があり,種ごとに違っています.ここに写真を上げた二匹はそれぞれちょと変わった個体です.
上のコカマキリは草地に多い種類で,たいてい暗い褐色(ちゃいろ)なのですが,この子は明るい緑色です.前脚の模様は褐色型と同じです.

下のハラビロカマキリは樹上に多く,たいてい緑色のなのですが,たま〜に褐色型の子がいます.脚には模様はなく,前翅の明るい色の点模様が目立ちます.これも緑色型と同じです.

 

6902_pr2.gif ys_m6916.jpg 6927_pr2.gif

 

カマキリは,たまご(正確には「卵鞘」,らんしょう)も見どころです.というわけで,カマキリの季節はまだまだ続くのであった.

昆虫共生 沢田

懐かし標本

2010年11月12日

 明日から大阪で甲虫学会の年次大会があります.それに合わせて青森のゾウムシ研究者,

佐藤さんが標本調査に寄られました.

 調査対象は[青森産のゾウムシ上科].ウチの収蔵庫に青森の標本があるかって? ある

んです.寄贈標本の[中村コレクション]には弘前大学に在学中の採集品がかなり含まれて

います.

1275_am.gif

収蔵庫内で調査中の佐藤氏

 その標本を半日がかりでチェック,青森のものを見つけて手持ちの情報に追加していく作業

です.

 中に以前佐藤さんが採集して中村さんに進呈された標本が含まれていました.ひさびさの

ご対面です.

 ラベルを見ただけで,採集時の情景,会話もよみがえるのでしょう.5種のうち4種がペアで,

個体数の多い1種は岩手県産 … 余談になるので早々に青森チェックに戻られましたが.

0251-am.gif

寄贈予定の標本もご持参くださいました

昆虫共生 沢田

顕微鏡ワールド

2010年11月 9日
 一昨日のフェスティバルで"Zoom!Zoom!顕微鏡"なるコーナーをやりました.

02am03.gif
3Dモニタに表示していたロゴ(のプルプル版)

 昨年は申し込み制の人数限定で電顕(走査型電子顕微鏡:SEM)室へご案内,実際に観察している状況を体験してもらったのですが,顕微鏡がモノモノしすぎて皆さん引き気味でした.今回は電顕像は編集して3Dモニタに表示する程度にして,お客さんには双眼実体顕微鏡を操作していろいろ見てもらうことにしました.

ra-am.gif
双眼実体顕微鏡で観察した放散虫

 ネタはいつもの昆虫標本や放散虫,今回あらたに製造年がちがう10円玉も登場.平等院鳳凰堂の崩れ具合から順番を推定したりするわけです.

双眼実体顕微鏡で観察した10円玉

 難しかったのは小さなの生き虫の観察です.加古川の河原で寄生植物アメリカネナシカズラにマダラケシツブゾウムシの虫コブ(ネナシカズラコブフシ)が沢山できていました(この虫の生態に関しては[こちら]を)ので,出てきた成虫(2ミリ程度)といっしょに観察しようと考えました.ところが容器に対して小さすぎ,アメリカネナシカズラのジャングルに紛れてなかなか見つかりません.顕微鏡ワールドは想定外の広さでした.

000093am.gif
いろんな寄主植物にまとわりついているアメリカネナシカズラ

000099am.gif
虫コブ,ネナシカズラコブフシ

e2-am.gif
マダラケシツブゾウムシ

昆虫共生 沢田

実写版ヤマト

2010年10月28日

 企画展示室でおこなわれている[ひょうごの生物多様性〜瀬戸内海vs日本海]にヤマト

マダラバッタの標本と10倍の模型が展示されています.砂模様のバッタです.うすい植生

がある広い砂浜にしかいない種類です.ちょっと小型の”ヤマト”がつかないマダラバッタ

は砂浜にも住め,こっちが伸してきています.

 

ys-f9090.jpg ys-m8990.jpg

 

 今年の発生時期も終わりなので,発生状況の確認がてら写真を撮影してきました.3D

でも撮りましたので,ちょっと加工して立体写真関連の行事にも使おうかと.

 

9004_am.gif 8938_am.gif 8965_am.gif 9052_am.gif

実写版ヤマト,プルプル3D

8917_am.gif

隣の浜にいたマダラバッタ

 

昆虫共生 沢田

 

オオスカシバの黒いの

2010年10月26日

 博物館の前のクチナシの生垣にコロコロと黒いものが.毎年見かけるオオスカシバの幼虫の糞です.

 

8915rs.jpg 8916rs.jpg

 

 通るたびに見ていると次第に大きくなっていくのが分かります,糞が,です.もちろん幼虫もだんだん大きくなっているはずで,そろそろMAXかなと思って探してみました.
 うまく擬態しているのでなかなか面白いです.慣れてくると,どんどん見つかります.
 今年は激しい色彩変異があることに気付きました.明るい緑色のものばかりだと思っていましたが,今年は腹側が黒いやつや,全体が黒い子もいます.これはこれでなかなかカッコイイですね.

 

8907tr.jpg 8890tr.jpg

 

オオスカシバの幼虫の色彩は密度,特に一齢幼虫期の密度が強く影響するらしく,高密度だと黒くなるのだそうです.

 

8913b_am.gif  8879_am.gif

8899b_am.gif  8910b_am.gif

昆虫共生 沢田


標本みてナンボ

2010年10月21日
 9月14日に「標本帰着」として書いたオサムシの件,近々印刷物になりますとも書いて
いましたが,その雑誌が届きました;

井村有希,2010.日本産とされるミヤマカタビロオサムシの標本について,
月刊むし(477):26-29.

です.詳細はこれ ↑ をお読みください.

0012t.gif

 日本からも採集記録があるのにその後,採れていない謎のオサムシ.記録の元になった
標本も所在も不明でした.西宮市自然保護協会の方々が別の調査で来館された際,所蔵の
江田コレクションを見てもらったところ,その中の一つがまさにその個体だと指摘いただ
きました.で,井村氏に精査と公表ををお願いしていたのです.
 この『幻の日本産種』.たぶん,オサムシ研究者の間では「何かの間違いではないか」
「たぶん何かにまぎれて来たのでは」と考えられていたと思われます.でも,たとえば日
本産のオサムシのリストから除外する,という処置さえ困難です.しかし,今回公表され
たような,現物の標本はコレコレこうである,という事実が分かれば,自分はこう考える,
と判断できるのです.

 否定するにも肯定するにも標本みてナンボなのです.

昆虫共生 沢田

 特に目的なしに島根半島へ行ってみました.

 ヒヨドリバナにアサギマダラが沢山いたので,花に集まる虫をめでつつ,マーク個体を探し

てみることにしました.

 

8630am.gif 8632am.gif

 

 アサギマダラは渡りをする大型の蝶で,この時期には南下というか南西へ移動していきま

す.渡りの実態を解明するために各地でマーキングが施されています.そのような個体を見

つけることができれば調査に協力できるわけです.

 アサギマダラはハンカチをくるくると回すと寄ってきます.白い色がチラチラしていると同種

個体に見えるのでしょう.有毒蝶なので飛び方は緩やかです.個体にマークがあればネット

で捕らえるか,撮影すればいいのです.今回は残念ながらそのような個体を見つけられませ

んでした.

 

8642am.gif  8736am.gif

 

  花にはクモガタヒョウモンやテングチョウもいました.驚いたのはイチガケチョウです.イシガ

ケチョウは”石崖”模様の蝶で,もともと南方系の蝶です.ペタンと止まる特徴のある種なの

で,見つけるとうれしいかも.それにこんなところで見かけるとは!

 

8604-t.jpg あとで調べてみると,最近は山陰でも珍しくないようです.温暖化おそるべし.

昆虫共生 沢田

101010-10

2010年10月 6日

 10年10月10日[デジタルの日]のオープンセミナー[デジタルの虫で遊ぼう]の話の2(二進数

で10)です.

 ↓はみんなでやってみようと思っているオリジナルの虫系ソフト,SPXの画面です.

spx-w.gif

 迷彩色っぽい画面の中に蛾が止まっています.これを見つけて(食べて)いきます.すでに

2匹見つけていて右上に表示されています.

 必ず斜めに止まっているので,コツ↓がわかれば簡単です.

spx_4am.gif

 でも,良い感じでどんどん見つけていくと,残った蛾が繁殖するので,だんだん見つけにくく

なるというシカケ.

 下の外部頁のJAVAアプレットでもお試しいただけます.

 

【別ウインドウでSPXJ】

昆虫共生 沢田

 

 

アカトンボの季節です

2010年10月 6日
今年の夏は暑かったですが、近頃はずいぶん秋らしくなってきました。
博物館のまわりでも、アカトンボが増えてきました。これからしばらくが、見頃です。

IMG_1657.jpg
ナツアカネです。オスは顔まで真っ赤になります。

IMG_1663.jpg
こっちは女の子。あまり赤くなりません。体型はちょっと太め。

IMG_1670.jpg
アカトンボは、枯れ枝が大好きです。
エントランスホール横のサクラの木には、ナツアカネが2匹と、アキアカネが1匹とまっていました。わかりますか?

アカトンボの多くは6、7月にトンボになり、いったん水辺を離れて、秋になると田んぼや池に戻ってきます。深田公園の芝生広場では、水たまりに産卵に来るアキアカネやナツアカネを見ることができます。深田公園では、ほかにも、3、4種のアカトンボを見ることができます。

(八木 剛@自然・環境評価研究部)

 お昼に博物館の外に出るとエノキの幹に来ている大きなハチに眼が止まりました.


 どうやら産卵中のおいしいシーンだと思ってカメラを取ってきたら,さっきより
見やすい位置に移動してまだ産卵中でした(これが実は間違い).

  8469-t.jpg 刺激しないように数コマ撮っても,ハチは全く動じる様子がなく,産卵を続けて
います.近づいても逃げないようです.腹の下の湾曲した長い産卵管も目視できま
す.腹端にはアリがたかっていますが,それも気にせず産卵に集中しているようで
す.色んなアングルで撮っても無反応.なんと一生懸命な(これらが実は全部思い
込み).

8494-am.gif 8511-am.gif 

 あと,産卵管を抜くところを撮影して採集しようと考え,産卵の完了を待つこと
にしました.その間,携帯で調べてみるとキバチの類いらしいことが分かりました.
ハチの大谷先生にも連絡して来てもらいました.

 で,二人で見ていても,なかなか変化がありません.そのうち大谷先生がアリが
来ているが,普通このような事はないと言い出しました.さらに見ているとアリは
何か持ち帰っているようです.私は[何か染み込んだ樹皮のカケラだろう]と思い
ましたが…

 

8513-am.gif

 

 じつはこのハチ,産卵管を突き立てたまま死んでいました.引っ張っても産卵管
は抜けず,折れてしまいました.体はまだ柔らかでしたが腹部は膜質の部分が食い
破られていて,中身をアリがせっせと搬出中だったようです.

 これを30分くらい見ていたわけです.とほほ.

 あとで調べると,このハチはヒラアシキバチらしく,産卵管を差し込むだけで燃
え尽き,産卵するとそのままの姿で死ぬのが普通なようです.

昆虫共生 沢田

 

標本帰還

2010年9月14日
 専門家に精査をお願いしていたオサムシの標本が帰ってきました.そのスジ
では長年の問題だった事(の大部分)がこれで解決するようです.

 ご苦労様 > 標本

昆虫共生 沢田

 と,写真も出さず(写真なしのブログ記事て珍しいと思う)に思わせぶりに
書いていたら「どういうこと?」とのご質問.近々,印刷物なりますので,そ
の時にあらためて紹介します.

 昨年の8月25日にも書いたハイイロチョキリが,今年もドングリの枝切りを始めています.

7941.jpg  7893.jpg

 落ちている枝じたいはクヌギのものが目立ちますが,虫をさがすとコナラでよく見かけます.ハラビロカマキリも成虫になってました.

7915-am.gif  7930-am.gif  7939-am.gif

昆虫共生 沢田佳久

ひとはく共催事業「神戸元町・夏の昆虫館」。今年も実施します。
会場はJR・阪神元町駅からすぐの「アートホール神戸」です。8月12日(木)から23日(金)、会期中無休。10時から18時。入場無料です。

展示内容などのくわしくはホームページを、日々のようすはブログをごらんください。

ひとはくからは、昨年に引き続き、キベリハムシ拡大模型、モルフォチョウ標本などを持参しています。定番ですね。
IMG_4639.jpg
IMG_4635.jpg

いろんな昆虫にさわって遊べるのが人気です。
f0177529_8342771.jpg

お絵かきもできます。
IMG_4650.jpg

昆虫少年による、標本づくりデモもあります。
f0177529_841336.jpg

小さいお子さんに特におすすめです。ぜひご来場下さい。

八木 剛(自然・環境評価研究部)

トサカフトメイガ

2010年8月10日

深田公園にも樹液出ているコナラがちょっとだけあります.ときどき見に行ってますが,

大物は来てませんね.

7865-am.gif 7862-am.gif  7861-am.gif

 

それより気になるのがシナサワグルミの木です.

IMGP7845.JPG

テントを作る毛虫に食われてほとんど丸坊主に.葉っぱがないので本当にシナサワグル

ミだったか自信がありません.毛虫のほうはトサカフトメイガのようです.葉を食い尽くして

飢えてるのか,十分食い終えたのか,幹を這ってたり地面に転がってたりします.アミメ

アリに捕まってる子もいるし,たぶんアシナガバチにもやられてるでしょう.

7851-am.gif 7868-am.gif

凄まじいです.

昆虫共生 沢田佳久

昼の蛾

2010年7月27日

[夜の蝶]という言葉はありますが,[昼の蛾]て,聞きませんね.

最近撮った写真から[昼の蛾]をば数点.

 

7695-am.gif

モモブトスカシバ:遠目には毛虫の死骸(^^;

7610-am.gif

シロテンクロマイコガ:後脚で[セーフ!]て,一塁コーチャーか!?

7804-am.gif

キンモンガ:イカリモンガと並ぶ蝶っぽい蛾の双璧.

6682-am.gif

サラサリンガ:足の模様が偽装されてて,どっちが前やねん.

 

昆虫共生 沢田佳久

 

インパクトのある虫

2010年7月13日

 ヒラズゲンセイがその生息域を北へ広げているらしく,この十年ほどは近畿中部はその最前線です(こちらの頁参照).写真は当館に持ち込まれた今年某市で見つかった♂です(データは専門家に通報済).発見者から預かって展足して乾燥したのですが,翅が丸まってしまいました.それに色もちょっと悪くなってます.すみません.

gensei-m.jpg

 生きている時は真っ赤な姿に黒い強大なアゴを具え,存在感満点です(こちらのブログに生前の姿).時々見かける虫なら,そうでもないのでしょうが,初めて見たら[なんじゃこりゃ?]となります.相当なインパクトです.[クワガタに似ている]と思う人と[ぜんぜんちがう]と思う人とがいるようですが,これはクワガタ自体のイメージの違いなのでしょう.
 また,生態も変わっています.クマバチに寄生するようです.あと,有毒です.カンタリジン(通称[はんみょうの毒]と呼ばれるのはこれらしい)を持っています.これはアオカミキリモドキなどと同じ物質です.

 分布上は要注意で,顕著(他種との区別が容易)な種なので,絶滅危惧とは別の観点からレッドデータにリストされていたりします(兵庫県では[Cランク]). 見つけたら最寄の博物館,昆虫館などにお知らせください.

昆虫共生 沢田佳久

 26日,島根大の端山さんと神戸大の藤原さんが浜辺にいる陸生ガムシの標本
調査に来られました.
 ガムシというと,ゲンゴロウ並に存在感のある淡水性のガムシを思い浮かべ
ますが,小型で陸生のものも多く,一分には海浜性のものもいるそうです.

1030-am.gif 1030-il.gif
(プルプル3D版と偏光板方式PC版)

 当館収蔵ガムシの標本箱は三箱.見ていただいたところ,対象種(三種いる
らしい)が何個体か含まれているようです.多くは故高橋寿郎先生の収集品で,
ラベルに書かれた採集地名が山陽電車の古い駅名だったりします.その場で同
定しつつ,採集データをPCに入力して居られました.

昆虫共生 沢田佳久

 今週月曜日(6月21日)は夏至でした。北半球では昼が最も長く、夜が最も身近い日だそうです。二十四節季の一つで、祭礼の儀式などが行われるところもあるようです。

 この日を過ぎると夏本番!とはいうものの、まだまだ梅雨の真っ最中です。そんな時期ですが、今日雨のあがった後、ひとはくのまわりを歩いていてこんな生きものを見つけましたよ。

 

ラミーカミキリ カミキリムシの仲間(フロアスタッフのブログにもありました)のようです。さて何でしょう?昆虫図鑑が手元にあればすぐに調べられるかも?! 

模様が面白い!!続いては小さいムシです。子どもの大好きなダンゴムシです。でもよく見かける灰色のものと事なり、色が薄いんです。どうしてかなぁ?色素が抜けてしまったのでしょうか?まだ成虫じゃないのでしょうか?ワラジムシかも知れませんよ

ダンゴムシ     

 そして次はかわいいかわいいカタツムリ(多分赤ちゃんだと思います)です。小指の爪より小さかったです。見落としそうですけど、ゆっくり見ていると見つけられます。

7,8mmほどのかわいいカタツムリ  雨で外出がおっくうになりがちですが、気分転換に外に出てみれば、思わぬ発見があるかもデス。もちろんひとはくは雨降りでも開いてますよ!!

 

 

 

トライやる収集虫

2010年6月18日
先週のトライやるウィークで採集した昆虫標本を,収蔵資料データベースへ
の登録が完了しました.

虫を採集して台紙に貼りつけたり針をさしたり,データラベルを付けたり,
こうった作業は八尾さんのレポート↓にもあるとおりです.あのあと,図鑑
を見ながらわかる範囲で同定し(分からないものは「目」までなどラフな同
定),表計算ソフトに打ち込むところまではトライやる中に皆で済ませてい
ました.
で,昨日,乾燥待ちだった標本の処理をし,データベースへの一括登録を行
って作業完了となりました.

トライやるの作業として毎年,深田公園で採集しています.記録上特筆すべ
き標本や,展示に適した美麗種が採れるわけではありません.いわば初心者
のトライやらーが採る標本として,むしろ普通種を標本にして保存するとこ
ろに意義があります.標本作りも技術的に上手くはありませんし,成果品も
万全の同定がなされているわけではありません.たぶん誤同定も含まれてい
るでしょう.しかし標本は残ります.何十年か後に,今年と同じ種が,同じ
ように居るかどうか? それを検証するための証拠品として未来に贈ること
に意義があるのです.今,レッドデータの危ないランクに位置づけられてい
る種も,何十年か前には普通に居たのです.「今の普通種をちゃんと残す」
が大切です(おぉ久々に熱弁!).

toroku.jpg

今回はトライやるの成果品として185件のほかに,出勤?途中の電車で拾っ
たチビクワガタ(誰かに踏まれてたけど)というのがあり,これは「館員収
集(雑)」分の一件として単品で登録しました(物々しい登録画面↑(Java)).

昆虫共生 沢田佳久

昆虫は好きですか?
虫をつかまえたことはありますか? それはカブトムシやクワガタ、バッタとかカマキリですか?

6月5日・6日のイベント「フロアスタッフとあそぼう!」では「昆虫標本づくり」を行いました。標本にした昆虫は・・・ラミーカミキリ!!

puru.gif

黒と緑の模様がとってもきれいでしょう? 体長10〜20mmの小さな昆虫です。
この模様・・・何かに似ていませんか?(礼服を着たガチャピン・・・パンダ。。。)

さて、標本づくりは、

pin.JPG

てのひらにのせたラミーカミキリを、ピンセットを使って足や触角の形をととのえています・・・虫ピンを刺すところはどこがいいのかな? 

mushi1.JPG  mushi2.JPG  mushi3.JPG

みんな集中しています・・・

mi_01.JPG  mi_02.JPG

採集場所、採集した日付などのラベルをつけてケースに入れて完成です!

kansei.JPG

今回は昆虫博士の沢田研究員にご指導いただきました。(ラミーカミキリのプルプル写真も沢田研究員作成です!)

sawada01.JPG

研究員による昆虫標本づくりのセミナーもございます。
詳しくはひとはく手帖をご覧ください・・・(http://hitohaku.jp/education/main.html)。


フロアスタッフ ありむら むつこ

消える虫

2010年6月 8日
緑色の美しいハエがいるので接写を試みる.
「とばないでね〜」と念じつつ十分に近づき
ピントも合わせてシャッターを切る.
ハエは動かず.やった!撮影成功.
…のはずが,写ってない!?
止まっている葉っぱはちゃんと写っているのにハエだけが写ってない!?
おかしいと思いながら,再度挑戦,
今度こそ成功.
…のはずがやはり写っていない.
まだ葉っぱの上にいる,この緑のハエが…

そんなのが「消える虫」です.

6114_am.gif 6118_am.gif
深田公園で太陽光撮影したアシナガキンバエの♀

このように撮影すると消える事で知られる虫がいます.アシナガキンバエやマダラアシナガバエなどアヒナガバエの仲間がそうで,消えるのはストロボを使って接写している場合に限られます.
種明かしをすると,これはストロボのプレ発光を感じて飛び立つことによって起こる現象です.本発光(撮影)時には写野から外れた場所まで離れているのです.しかも,ふたたび同じ位置に戻ってきて着地するので.撮影者にとっては「じっとしているハエが映ってない」ように思えるのです.

似た現象はセセリチョウの仲間でも起こるらしく,翅を動かしている状態で写ってしまうそうです.つまり,本発光の時点では既に翅は動きはじめているけれども,体はほとんど移動していないわけです.生き物ごとに時間の進み具合がちがうんですねぇ.

昆虫共生 沢田

手乗りゾウムシ

2010年5月26日

 深田公園のまわりにはハギの仲間がよく生えています.生えているのか植わっているのか,刈られても刈られても元気に復活してきます.コレに居るのがシロコブゾウムシです.葉っぱや茎にしがみついています.
 1センチ以上ある存在感のある虫で,館での観察イベントでは手乗り虫として活躍(?)しています.飛ばないし,動きも鈍いので手にとって観察しやすいからです.虫にさわれない人はこの虫でためしてみましょう.
sir-0_am.gif sir_1_am.gif
手乗り虫に最適 シロコブゾウムシ

 ハギにはこのほかに,一回り小さいスグリゾウムシやヒレルクチブトゾウムシ,チビメナガゾウムシ,コフキゾウムシがいます.ゾウムシだけでも5種類.何だかとっても多様性.
sug_2_am.gif sug_0_am.gif
一回り小さい スグリゾウムシ(5mm内外)


昆虫共生 沢田

多様な多様性

2010年5月21日
2010年は国際生物多様性年で,5月22日は生物多様性の日だということで,博物館も何かと多様性業務です.

乱発気味の「多様性」,[象徴種]を並べてお茶を濁すテもありますが,せっかくですの多少は本来の概念そのものについても説明する努力をし,できれば多様性の本質に対する理解を普及する機会にせねば…とも思うわけです.そこで,PP用に作った図(一部はGIFアニメ化)がコレ↓です.
002-C1a.gif 002-C2a.gif 002-C3a.gif 002-C4a.GIF
1.風の森,2.星の森,3.空の森,4.花の森

Kチュウ(”甲虫”ならぬ”ケイチュウ”)がたくさんいる森が4つあり,同じようにKブトムシ(”カブトムシ♂”みたいですが,あくまで”Kブトムシ”)がいます.ほかにもいろんなKワガタやKナブンもいます.

これらを比べてみようというわけです.まず個体数は…
1.風の森:15匹△
2.星の森:12匹
3.空の森:13匹
4.花の森:17匹★

です.
種多様性の観点から,何種類いるかを調べ,多様度指数(シンプソンD,全数扱い)を出すと;

002-C1m.gif 002-C2m.gif 002-C3m.gif 002-C4m.gif

1.風の森:5種,0.756
2.星の森:5種,0.792 △
3.空の森:8種,0.852 ★
4.花の森:3種,0.305
です.[風の森]より個体数の少ない[星の森]が△なのは均衡性が高いからです.

Kナブン一種類だけに注目すると;

002-D1m.gif 002-D2m.gif 002-D3m.gif 002-D4m.gif

1.風の森:三色いる◎
2.星の森:三色いる◎
3.空の森:一色しかいない
4.花の森:ぜんぜんいない
種内変異という観点もあるわけです.

OKワガタがいるかどうか,それだけに注目するというのも,分かりやすいといえば分かりやすいですが… 多様性というのは,そういうことではありません.

みたいな話に使おうかと.

昆虫共生・沢田

先日,むし社のクワガタ図鑑編集者の方々が来館されました.証拠標本の調査です.


0914_anm.gif
博物館の収蔵庫には過去の研究の拠り所となった標本(タイプ標本やその他の証拠標本)が多数保存されています.私たちが普段使っている図鑑などの記述も,元をたどれば誰かの研究や,その研究の根拠となる標本に基づいています.
収蔵庫に保管されている標本は,展示などの形では活躍していませんが,多くの出版物や二次的な情報の基礎を支えている点で,役に立っているのです.図鑑で名前を調べたとき,その種類は誰が,いつごろ名前を付け,そのとき見た標本がどこに保存されているか想像してみてください.学名あとに書いてある命名者(書いてない図鑑もあります)の名前がヒントになります.

日本のミヤマクワガタだと;
Lucanus maculifemoratus Motschulsky
と出ています.さいごの"Motschulsky"さんという人が名前をつけたらしいぞ,と分かります.どこの国の人で,いつ頃? その標本は今どこに?

クワガタ図鑑調査の成果については図鑑の出版をお楽しみに.

昆虫共生 沢田佳久



 高槻市の「あくあぴあ芥川」での春の昆虫観察会,写真家の安田守さんにも来ていただいて,天気にも恵まれ大盛況でした.オトシブミをメインに観察したいと思っていたのですが,やはり時期的にはちょっと早かったです.小型の種類が動き始めたかな?という程度.しかし,予想外の珍虫も採れ,大成果でした.
 一番良かったのはセモンジンガサハムシです.開いたばかりのサクラの葉は光がよく透き通ります.それを見上げて探すと「逆さミッキー」みたいな独特のシルエットの虫が見つかります.そのつもりで探すとたくさんました.本当は丸くて平たいのですが,体が透き通っていて違う形に見えるのです.背中には金ピカの紋があって突起つき.「背紋陣笠葉虫」ですから.
 手にとってルーペでのぞくと自然の造形に感激です.標本にすると金ピカは消えますので,この時期に野外で見るのが正しい鑑賞法でしょう.深田公園でも見かけたことがあります.探してみてください.

昆虫共生 沢田佳久
<「続き」>

 だいぶ前の別の場所のですが,プルプル3Dをば.

1804_am.gif 1800_am.gif 1795_am.gif 1792_am.gif

 本文の説明とはちがって,かなりチョコマカ中.


 だいぶ前の別の場所のですが,プルプル3Dをば.

1804_am.gif 1800_am.gif 1795_am.gif 1792_am.gif

 本文の説明とはちがって,かなりチョコマカ中.

オトシブミの裏側

2010年3月24日
風は吹くわ 雨は降るわ さぶいやら ぬくいやら

でも,だんだん春になってきていて,オトシブミの展示をやっている
槻の「あくあぴあ芥川」でもそろそろ桜が咲きはじめる頃かもしれませ
ん.行くのなら花見も兼ねて,ですよ(勧誘).虫が動き始めたら,生
き虫も置きますので,その頃に行くのもいいですけど(勧誘).入場料
は無料ですし(勧誘).

で,オトシブミの話の続きをば.

オトシブミといえば,子供のために葉っぱを巻く虫という事で

『まじめでほのぼの』

のイメージですが,それは真実の半分でしかありません.母親オトシブ
ミは確かにそうなのですが,おやじオトシブミときた日には,ふだんは
ロクに働きもせずブラブラしてるかと思えば,いきなり凶暴で好戦的な
虫に豹変する恐ろしい動物なのです(ちょっと悪く言い過ぎてますが).

そもそも,オトシブミの仲間は大型の種類ではオスの体がグワッと変な
形になっています.前足がやたらと長いとか,口が長いとか,胸から首
にかけて長いとか,です.その代表は,日本産の種ではヒゲナガオトシ
ミです.この種類は雄の前胸が長く,さらに首が長く,さらに触角も長
くなっています.それらはたぶん背比べ(というか触角の先までのルー
ル)をするためです.

4355-am.gif

キリンオトシブミの♂(奥左)と♀(奥右)
ヒゲナガオトシブミ♂(手前左)
ロクロクビオトシブミの一種の♂(手前右)

ヒゲナガのヒゲ比べはまだエレガントなほうで,カシルリオトシブミは
前足を使ってレスリング状態になりますし,ルイスアシナガオトシブミ
は前脚で殴り合いをするようです.

世界的には,マダガスカル産で世界一大きいオトシブミとされている,
キリンオトシブミ(Trachelophorus giraffa)というのがいて,
これも大型のオス個体では首が長くなっています.触角に防御装備があ
りますので口の先までを比べるのではないでしょうか?

また,フィリピンのロクロクビオトシブミ類(Trachelismus spp.
は,体は小さいのに雄の首は長大です.妖怪の「轆轤首(ろくろくび)」
みたいに首がうにょうにょ曲がるわけではありあません.付け根のと
ころ,つまり頭部と前胸の間で曲がるだけ.これでどうやって餌を摂る
のか心配になります.たぶん無理では? とにかく不健康な長さです.
珍しい虫なので今のところ戦い方は不明です.

4371-am.gif

4375-am.gif

ロクロクビオトシブミの一種の♂

このような「オトシブミの裏側」はそのつもりでいると観察の機会は
少なくありません.もっとも身近なカシルリオトシブミでも,多くの
個体が活動しているところでみていると,一匹の♂が飛んできていき
なりバトルが始まります.ふつうは継続時間が短いので要注意.

昆虫共生・沢田佳久

ヘコミ系の昆虫調査

2010年3月 9日
 西宮市自然保護協会の方々が収蔵庫でオサムシの標本調査をされました.市域に分布するオサムシを中心に,武庫川,猪名川流域のものも含めて徹底的な調査のようです.

 トラップなどによる野外調査も精力的に行っておられますが,今回の標本調査も慎重で丁寧なものでした.館としてはオサムシ科(広義の)の標本が置いてある場所をお教えすることくらいのお手伝いしかできません.それらの棚にある標本箱を順番にスキャンしていき,各個体のラベルを読んで関連の調査対象の標本であればデータを記録していくという,地道な作業です.まるまる3日×8時間×2〜4人でリストアップして居られました.

 [昆虫調査]というと,野外での採集調査を思い浮かべますが,公共の収蔵庫や個人コレクションでの標本調査も重要な意味を持ちます.採集では新規に記録される種があるわけですが,標本調査では過去の記録の再確認や,自らが行った採集調査の裏づけ的な意味合いが強いです.
 野外の調査は[やった!こんなのが採れた!初記録!]といった盛り上り系なのに対し,庫内では[やはりあの記録は間違いであったか…]とか[自分たちは採集できなかったが,やはり居ることは居るみたい.]逆に[これだけ探して採れてないということは,やはり生息していないのだろう.]といった,どっちにしてもため息の出る,ヘコミ系の成果が得られます.してその両方とも重要なのです.

 まぁ,和気あいあいで作業しておられましたが,ほんとうに頭がさがる思いです.


今日のプルプル3D

toma-am.gif

Tomapoderus ruficollis
セアオオトシブミ(沿海州産)

昆虫共生 沢田佳久

高槻でオトシブミ展

2010年3月 6日
 大阪府高槻市の「あくあぴあ芥川」で今日3月5日から企画展
「安田守昆虫展 不思議なムシ オトシブミ」を行なっています.
くわしくはこちら(↓)をごらんください


 で,5日の設営はこんな感じ(↓).いろいろと盛り沢山です.

0798tr_a.gif
 0794tr_a.gif 0797tr_a.gif 0796tr_a.gif

 ユニークなのはオトシブミをまねて葉を巻く体験コーナー.
難しいけど,揺籃の折り紙的な仕組みがよくわかります.

本日のおまけプルプル3D
001hf-am.gif
芥川と摂津峡の図

昆虫共生・沢田佳久

他館で開催するオトシブミの企画展の準備をはじめました.

 … すこし変わった姿で,葉を巻く習性のあるムシ,オトシブミ …

確かにそうなのですが,説明や解説するときにいつも困る事があります.

7238-p3d.gif 1657-p3d.gif

括れ型のヒメクロと象鼻虫型のアシナガ

一つは「くびれた首」の事です.オトシブミというと,複眼の後ろの方
で細くなった独特の形の首を思い浮かべますが,オトシブミ類のすべて
が「括れ型」というわけではないのです.日本産のものでもアシナガオ
トシブミなどはゾウムシ的な口吻が伸びた形をしています.さらにルリ
オトシブミの仲間は首が短く,口吻も短く平たく,下向きです.

ここらへんから,説明が「ベン図」の世界へ突入.オトシブミのややこ
しさは集合の問題なのです.

benzu.gif
こんな図を頭に描きつつ

つぎに「オトシブミ」と「非オトシブミ」のさかいめです.どこまでオ
トシブミと呼ぶか?という問題.具体的にはハマキチョッキリの仲間を
オトシブミに含めるかどうかです,ハマキチョッキリの仲間は立派な揺
籃(ゆりかご,ヨウラン)を作るし,なにより体がピカピカして美しい
ので,オトシブミを語る上で無視できない存在です.

系統発生上,オトシブミ類とチョッキリ類は古く分かれた系統と考えら
れており,類学的には研究者によって別の科としたり,同科の別亜科に
したりといった扱いの違いがある程度です.「ハマキチョッキリはオト
シブミではない!」と言ってしまえばそれまでなのですが,そうすると
「オトシブミとチョッキリはどう違うの?」,「形態による分類と葉を
巻く行動との対応は?」と,話がどんどん逸れていってしまいます.

オトシブミを扱うたいていの書物や展示において,本来提示したいテー
マは「それぞれの巧妙な適応」なので,「葉を巻くチョッキリ亜科をオ
トシブミとします!」と宣言することこそ,著者も編集者も,なにより
読者も,あるいは観覧者も展示担当者もハッピーな選択なのです.

ただ,チョッキリもオトシブミだと認めてしまうと,葉を巻かないチョ
ッキリが視野に入ってきます.チョッキリのなかには,花芽に穴をあけ
るだけ,とか,葉っぱを半分切るだけとか,実を切り落とすとか,いろ
んなのがいます.

次の難関は「葉を巻くとは?」です,これが定義できません.

実際の虫の動きを見ると,6本の脚で締め付けたり,逆に引き寄せたり,
口吻で押し込んだり,種によって異なる動きをしており,その結果,葉
が巻いたような状態になります.きわどいのは葉を切ると重力で垂れ下
がって,巻いた感じになるやつ(オイオイ).
で,虫の活動によって結果的に葉が巻いた状態になったら,それは虫が
巻いた事にしよう,というのが皆がハッピーな選択です.

2083-p3d.gif
実を切り落とすモモチョッキリ

というわけで,オトシブミの本なり展示なりには,自動的にチョッキリ
も参加することになります.整然としたオトシブミの揺籃作りに対し,
チョッキリの産卵加工は多様です.
樽型の揺籃に代表されるオトシブミの揺籃作りは,それを主峰として,
幾つもの峰々を従え,さらに広大な裾野を持っています.そういう全体
像も見える,というのが理想なんですけどねぇ.


3588-p3d.gif 3656-p3d.gif
おまけプルプル
ヒゲナガオトシブミの♀と♂

昆虫共生・沢田佳久

米紋のキンカメムシ

2010年2月 9日
 休日に沖縄に行ってきました.ところが,低温で断続的に雨が降り風も強いと
いう最悪の天気 (ToT).しかも帰る直前に回復するという意地の悪さ (;¬_¬) 

 しかしけっこう幸運にも恵まれました.金武町の畑地をうろついていると路傍
に見た事のない美しいキンカメムシを発見.ノソノソした動きでしたので採集す
るまえに余裕で撮影もできました.そのときには風も弱まっていました.
 模様はある種のタマムシやフィリピンのカタゾウムシ類を彷彿させるデザイン
です.美しい.周りを探しましたが一匹だけでした.

4307tr.jpg
 キンカメムシは一般に大型で美麗,しかも日本でというか沖縄で見られる種類
はナナホシキンカメやアカギカメムシなどに限られていますので,カメムシのフ
ァンでなくても,知らない種なら「これはっ!」と思うのです.

 で,帰ってから正体を調べてみると,やはり日本のカメムシの図鑑には載って
ないやつです.ウェブで探すと,ありました.掲示板にありました.たぶん;

Scutellera amethystina

という種です.東洋区産で台湾にもいて漢字では「米字長盾椿象」と書くようで
す,「米」字模様のキンカメです.そういうふうにも見えなくはありませんが.

 掲示板での記述によると,2006年末に沖縄本島の名護岳と首里で相次いで発見
され,撮影されています.それ以降の続報はないようです.そのときの標本は残
ってないようなので,ひょっとしたらコレが日本初の標本かもしれません.

 もちろん,たぶん侵入種だと思われます.ヤンバルテナガコガネではあるまい
し,こんなに目立つ種が昔から棲息していて,人間がいままで気付かかずにいた
とは考えにくいからです.(キンカメムシには大移動して越冬する種もいるので,
自然分布や迷椿象の可能性もないではない)
 2006年(またはそれ以前)から継続して発生しているのか? すでに定着して
いるのか? そういった事が気になりますが,それもこれも,こういう「分かり
やすい種」での話です.誰も気付かないうちに侵入てしている地味な種が何百何
千倍もいて,それぞれ違った状況で「事態が進行」,ある割合で定着,蔓延して
いることが想像できます.

今日のプルプル3D

4293_am.gif 4275_am.gif

問題のキンカメとゲットウにいるヨツメオサゾウムシ

昆虫共生 沢田佳久

河南堂珍元斎でございます。

さて、「フラハチ君の冬越し」のその2の一席でございます。

つづいて、冬編。2010年1月24日。すっかり三田は底冷え。フラワータウンも冷蔵庫状態でございます。冬越しと観察のため、大谷研究員の観察箱に引っ越ししたフラハチ君たち。このきびしい寒さの中どうしているか・・・(以下 フラハチ=フ  珍元斎=珍 大谷研究員=大と表記)

DSCF0001.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フ:「おっ、久しぶりやな。」

 

珍:女王バチさんは、寒さで産卵停止中。働きバチたちは互いによりそいあたためあっています。美しいですね。絆って感じですねえ。

 

DSCF0004.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フ「アホかいな、わしらは、こないでもしとらな生きられへんのんや。女王バチさんが産卵はじめはるまで、なんとかみんなで生き延びていかなあかんさかいなあ。」

 

大:セイヨウミツバチは5千匹はいないと冬越しできないんです。寄り添っても温度の維持ができないんですね。まあ、この観察箱は20度の湯たんぽであったかくしてあるので大丈夫ですが。

 

DSCF0010.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:えさはどうしてるんでしょう?

 

フ:「ちゃんとわしらが蓄えた蜜を食うとんねん。そやけど、これがなくなったらエライこっちゃなあ。あったかい日には蜜とりにいかんとなあ・・・。」

 

DSCF0008.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大:そのとおりです。温度が8度くらいならじっとしていますが、10度を超えると、ハチたちは飛べるので、なんとか蜜を探しにいきます。冬に活動するのはミツバチたちだけです。DSCF0006.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:へえ、寒さにも強いんですね。でも花はあるんですか?

 

 大:2月には梅が咲きます。暖かい日を見つけては、梅の蜜を探しにでかけるはずです。

 

 

DSCF0005.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フ:「ひとはくはメンテナンス休館中らしいな。わしらは年中無休やぞ。」

 

珍:館はメンテナンスですが、僕らは働いてますけど。でも虫なのに、2月から働くんですか。ほんまにハタラキバチですね。見習わないと・・・。

 

 

DSCF0009.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大:あったかくなるとまた増え始めるはずです。今度は、フラハチの外の巣箱に分けた群を見にいきましょう!

 

珍:フラハチ君!無事冬越しすることを祈っています。仲良くあたためって冬を乗り越えるんですよ。あったかくなったら、またきますね。

 

 フ:「おう、まかしときな!また来いよ。」

 

DSCF0003.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、つづきは春のおたのしみ・・・。

 

河南堂珍元斎でございます。

さて、「フラハチ君の冬越し」の一席でございます。フラハチ君については前のブログ、捕獲大作戦!(その1http://hitohaku.jp/blog/2009/09/post446/ その2 http://hitohaku.jp/blog/2009/09/post_449/ )、飼育中(http://www.hitohaku.jp/blog/2009/09/post_464/)をお読みいただき、

今回はその続きで、秋から冬にけてのレポート!

まずは秋編から。捕獲から2カ月たった11月1日。秋も深まり、冬越しと観察のため、大谷研究員の観察箱に引っ越ししたフラハチ君たち。どういてるかなと巣をのぞいてみました。(以下 フラハチ=フ  珍元斎=珍 大谷研究員=大と表記)

DSCF0443.JPG

フ:「あっ、また、へんなおっさんが来たぞ・・・」

珍:女王バチさんは一生懸命1日1,500個の卵をうみ、働きバチたちはそれを喜ぶかのように、女王バチを中心に輪になって踊っています。いや、それとも、お世話をしているのでしょうか?

DSCF0448.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フ「アホかいな、わしらは、女王バチさんのにおいをかがしてもろとんやがな。卵産みはったんを喜んで踊っとうわけでも、お世話しとうわけでもないがな。」

大:そうなんです。ロイヤルコートって呼ばれる行動で、働きバチにとって女王バチのにおいは精神安定剤のような効果があるんです。DSCF0442.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:あっ、働きバチが帰ってきて巣の中へ・・・・

尻ふりダンスです。自分が蜜をとってきた場所を教えているのでしょうか?

 

DSCF0440.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フ:「尻の先はちゃんと蜜をとった方向をさしとうけど、わしら、つい興奮が抑えられず、尻を向けてしまうんやがな。」

 

 大:ダンスは本能的な興奮しての行動で、自分が蜜をとりに行った飛行行動を再現しているように思います。ダンスよりもニオイで伝達されているというほうが現実的かと考えています。

 

DSCF0449.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:よくよく見ると、背番号がついています。野球でもをするんでしょうか。だれがエースで4番なんでしょう?すごいハチたちですね。

 

DSCF0453.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フ「ちゃうがな、貼られたんがな。そのおっさんに。研究やいうて、わしらが生まれたてで、ハリが固まらんうちに、つかんでボンドでつけられるんや。だいぶん慣れたけど、やっぱ邪魔な気するけどなあ。」

 

DSCF0454.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大:はい、刺されないように生まれたての子どもに、1時間で3ミリ×5ミリのゼッケンを50枚くらいつけます。それで、番号別に、ハチの行動を追跡調査して研究しています。

 

 

DSCF0437.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:あっ、これは日本酒。フラハチたちは研究されているだけじゃかわいそうなので、たまには、ごほうびにお酒もらっているんですね。

 

大:いえ、ハチの群をあわせる時に使います。酔ってにおいがわからなくなるんです。観察のためのは数が多すぎたので、フラハチたちの群をわけるため、お酒で酔わせて群の一部を他の群に合流させました。

 

DSCF0438.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍:へえ。どこにいるか酔ってわからなくなるんですか。僕もたまにありますけど・・・。。さあ、うまく冬が越せるかどうか?乞うご期待。

つづく・・・。

甲虫の頭,胸,腹

2010年1月26日
昆虫についての基本的な知識は小学校で習います.

モンシロチョウの飼育などもやって,虫の成長には完全変態/不完全変態の違い
があるとか,触角が二本,はね四枚,足六本,頭+胸+腹,とかです.

ところが,実際にカブトムシなどを見て,どこまでが胸で腹かというと,けっこ
う難しいはずです.カブトムシなど甲虫の背中を見ると後半の大部分は翅鞘,つ
まり堅くなった前翅で覆われています.前翅は中胸から出ていますから,背中の
後半はず〜っと胸なのです.
あれ?と思って考えてみると腹は先っちょにちょっと見えているだけです.

博物館の行事でも「カブトムシの頭,胸,腹」は良いネタになります.足や翅の
のつき方というか生え方から解きほぐして行って,上から見ると胸ばっかりだと
の結論に至るわけで,その過程で,昆虫の体の原則と,特例(ハエは翅が二枚だ
とか,カメムシの翅がこんなだとか)を説明しつつ再確認していくことができま
す,

ただ,こういった説明のときに使う図になかなか苦労していて…


3710.jpg
足は何本? の図

とかを作るだけでも大変苦労します.
いまどきCGでやれば簡単だと思うのですが,なかなか良いモデルがありません.
で,今回,ゾウムシのを作ってみました.粗いものですが,一旦作ると,色もつ
け放題,部分ごとに消したり半透明にしたり,見る角度を変えたりと,大変便利
です.小さなGIFアニメにすると,こんなの↓ができます.

翅鞘と後翅の図

wv2mn-am.gif

体の三区分と脚の分節の図


う〜ん ブリティー.

今日のプルプル3D,

 hhz02-am.gif hhz03-am.gif
hhz04-am.gif hhz05-am.gif hhz06-am.gif
hhz07-am.gif hhz08-am.gif hhz09-am.gif
hhz10-am.gif hhz11-am.gif hhz12-am.gif
hhz13-am.gif hhz14-am.gif

ひとはく新聞(2008/6/30)に掲載した『ひょっこりほっこりゾウムシさん』を
プルプライズしました.説明は新聞を.

昆虫共生・沢田佳久

オオクチキムシの顔

2010年1月13日
マツ枯れのあと,被害木が切り倒され,丸太のまま放置されている状況をよく見
かけます.こういった丸太の樹皮下を探していくと,いろんな虫が見つかります.
小型のキクイゾウムシやキクイサビゾウムシの仲間を狙って探索していると想定
外に大きなカデやオオゴキブリやウバタマコメツキが出現してビビることもあり
ます.


ookuchik.jpg
写真の虫は,こういった採集時に出会う虫の定番ともいえる,オオクチキムシで
す.見つけた瞬間に同定できてしまう,どちらといえばザンネンな虫です.せめ
て「良く似た近似種がいて…」とかいった謎の部分があればねぇ.

でもこの虫の表面の質感はほかの虫にはないものです.艶のないところはビロー
ドコガネ類に似た感じですが,よりしっかりした作りになっています.翅鞘の点
刻列がきちっとしているあたりが端正です.独特の匂いもあります.そういう意
味で冬の採集の風物詩的な感じがある虫です.夏は夏でよく見かけるのですが.


詳しく見るてみると,小アゴのヒゲが思いのほか立派です.先端の節が広がって
いて平たくなっています.味を感じるのか?匂いを嗅ぐのか?とにかくグルメそ
うな顔つきです.

4065m2am.gif
今日のプルプル3D,シロアリ

昆虫共生・沢田佳久
冬らしい寒さが続きました.

今朝も気温が低く,深田公園の水辺のグチョグチョ地帯にも立派な霜柱ができていました.さすがにほとんど虫の気配がありません.

3994res.jpg
冬にはオオタコゾウムシが活動するので,クローバーに食痕でもないか探してみました.するとクローバーではなくキク科植物のロゼットに丸い食痕があるのを見つけました.
葉をめくってみると,ふふふ,やはりヤサイゾウムシの幼虫です.まるっとお見通しだ!
まだ5mmほどの,かなり緑がかった体色い個体です.同じ株でたぶん兄弟の3匹を発見.
飼育は簡単ですが,しばらく泳がすことにして,1匹だけ液浸標本に.

4000res.jpg
4004trm.jpg
ヤサイゾウムシは南米産原産の進入種で,無農薬栽培や家庭菜園では重要害虫です.キク科,セリ科,アブラナ科,ナス科等々広範な植物を加害します.
そもそも和名が[ヤサイ]て! 白菜も小松菜も人参もなんでもOK.鍋の季節に活躍するオールマイティーの野菜食いなのです.玉葱や柿も食べるそうです.

ヤサイゾウムシは,いわゆるゴンドワナ系の系統に属します.日本のゾウムシの中では異色な存在です.成虫の外見的では[角刈り]っぽい前胸背がエキゾチックな雰囲気をかもし出しています.

今回もプルプル3D付き↓.

3993_am.gif
4008_am.gif

昆虫共生・沢田佳久

寅の虫

2009年12月 8日
「トラさんようこそ!」の準備をしております.

今年の「ウシカメムシ」や「ウシヅラヒゲナガゾウムシ」に代わって「トライクビ
チョッキリ」や「トラカミキリ類」や「トラハナムグリ類」が登場の予定です,


dt01_ca.jpg
kam01_ca.jpg

トライクビチョッキリとニイジマトラカミキリの青赤写真

と,思っていたら直前になって「トラフシジミ」という言葉を耳にしてしまいまし
た.たしか撮ったときに「使える!」と思った写真があったはず … 発掘して加
工したのがコレ↓です.

4f-am-25.gif
立体撮影で連写でしたので青赤写真化してアニメ化にしました.

フォトフレーム用タイトルのために作ったCGモデルを青赤GIFアニメにしてみ
たらこんな感じに.
2010-agm.gif
手もとに青赤メガネがない方は,赤緑の暗記シートでも代用できます.

昆虫共生・沢田佳久

ヤツデの虫,盛況

2009年11月25日
今日は老人福祉センターの講義ということで,室内での甲虫の話もそこそこに,
館外で虫を探しました.

この季節でも探せば虫はいます.受講者の方たちが次々といろんな虫を見けられ
るので対応に追われました.

午前中の2年生の組でイラガの幼虫が見られたので,このブログのネタに使える
と思って昼休みに再度,撮影に行ったらすでに姿を消していました,フォトジェ
ニックだったのに残念.

で,その代わりに撮ったのがこれです(まいどプルプル立体写真).ヤツデの花
に集まるハエ,ハエ,ハエ.

3896-am.gif
ミツバチやヒラタアブ,チュウレンジバチ,他のハエもいるようですが,多くは
ツマグロキンバエです.近年は晩秋でもそこらにセイタカアワダチソウの花が残
ってこのテの虫に餌を供給していますが,このヤツデの株の周辺には他の花がな
く,虫が集中して大盛況を呈していました.

昆虫共生・沢田佳久

深田公園の雪虫

2009年11月10日
北海道のやつ(トドノネオオワタムシ)ほどではありませんが,深田公園でも季
節になると雪虫らしきものが飛びます.あまりめだちませんが,たまたま一匹見
つけてさがしてみると,そこここにみつかります.クモの巣にもたくさん掛かっ
ています.
写真を撮るために塩ビのカップで採集しました.空中をとんでいるヤツを静電気
でキャッチ! なかなか変な採り方です.

公園のケヤキの葉には,毎年,ゴール(虫こぶ)ができているので,いま飛んで
いる雪虫はたぶんケヤキフシアブラムシだろうと思います.

昆虫共生・沢田佳久

深田公園の奇面昆虫

2009年10月27日
電子顕微鏡で虫の顔面を観察する! 作戦(11月1日のフェスティバルで実施)
の続きです.

蚊以外の材料を求めて,20日に深田公園で観察用の虫を採集しました.主に水辺
でスウィープしたところ,半翅目(カメムシ目)や双翅目(ハエ目)を中心に小さ
な虫がたくさん入りました.今回も吸虫管で吸ってとりあえず凍結.双眼実体顕微
鏡で眺めながら選定しました.どれもこれもユニークで目移りします.

時間的なこともあって,実際にイベントで観察できるのはせいぜい飼料台一個か二
個の数匹だけです.オーソドックスな口器として甲虫を一匹入れて,あとは吸う口
の代表でカメムシと,変形の著しいハエの仲間を何匹か…どれも捨てがたい奇面っ
ぷりです.で,結局飼料台三個にテンコ盛りになってしまいました.
mix123m.jpg
一日乾燥したあと,蒸着メッキして予備の観察を行い,説明パネル等のために写真
を撮影しました.電顕像は明暗のみのグレースケールというか,モノクロです.た
だ,博物館の電顕のモニタはレトロなブラウン管なのでグリーンで表示されます.
下の写真では色を歪ませて可愛くしてあります(無理か?).
kus03.gif
上の写真(プルプル立体写真)は[クサカゲロウ科の一種の幼虫]です.[アリジ
ゴク(ウスバカゲロウ類の幼虫)の自走式のやつ]みたいな虫でアブラムシなどを
食べています.恐ろしげな風貌,立派な牙(大アゴ)ですねぇ.左右の複眼はそれ
ぞれ6個(7個?)の個眼で構成されているようです.ちなみにクサカゲロウ類の
卵は[優曇華(うどんげ)の花]です.
ata011.gif
この写真は[アタマアブ科の一種]で,頭部を下から見たところです.頭全体がびっ
しり複眼で,細い隙間に触角と口器があります.触角も口器も複雑に変形していま
す.複眼には個眼が整然と並んでいますが,前方だけ大きくなっています.

蚊の顔面

2009年10月 6日
 電子顕微鏡で昆虫の顔面を観察する! ぜひ蚊の顔面を! 作戦の
続きです.博物館の近くで採ったヒトスジシマカで試しに観察用のサ
ンプルを作ってみました.ところが「頭を取って試料台に並べる」と
いうのが事実上不可能な事が判明.蚊の場合,一匹まるまるでも希望
の角度に接着するのが至難なのです.

 試料台に7種の色んな虫の顔を並べて,というのは断念します.適
当に貼付けた上で,見る際に角度を工夫するのが現実的なようです.

MQT-1898.JPG
ヒトスジシマカの横顔

昆虫共生・沢田佳久

ひとはくサロンで2つのミニ企画展展示中です。

ひとつは、暗闇で鳴く虫の世界を体感できる「ぎっちょん君ハウス」。8月30日まで開催していました初夏の鳴く虫と巡回展「ぎっちょん君参上!」からさらにバージョンアップしました。 DSCF0409.JPG    

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗なハウスの中にはいると音が聞こえてきます。この日の虫の演奏家は、カネタタキと謎の講談師河南堂珍元斎の2種。

カネタタキは、家の生け垣などにいる小さなコオロギの仲間で、「チンチンチン・・・」と小さな体のわりには大きな音を奏でます。                                                                                                   kanetataki.JPG  

 

 

 

 

 

 

珍元斎は虫ではありませんが、キリギリスの生態のお話「ノコギリ名人ぎっちょん君参上」を奏でます。

 

IMG_8581.JPG

ぎっちょん君のノコギリでの演奏は、作り話ですが、タンポポの花粉を食べたり、カマキリの赤ちゃんをたべたりする生態は本当です。 真っ暗なハウスの中での鳴く虫と講談mの共演。ぜひ、耳をすまして、体験してみてください。

そして、

 

 

DSCF0410.JPG入口では、ぎっちょん君になっての 記念撮影も・・・。おっと、ちょっと背が届かない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋といえば、鳴く虫です!みなさまも、ぜひ、ぎっちょん君ハウスで虫の声の聞きわけに挑戦してみてください。DSCF0406.JPG

                              

川東丈純             

 

 

 

 

 

 

フラハチ君飼育中!

2009年9月26日

河南堂珍元斎でございます。

さて、フラハチ君捕獲大作戦!のその後のその後の一席でございます。

9月4日のフラハチ捕獲大作戦!(その1http://hitohaku.jp/blog/2009/09/post446/ 

その2 http://hitohaku.jp/blog/2009/09/post_449/ )から2週間たった9月18日、フラハチ君たち巣がどうなってるのか?と大谷研究員と巣をのぞいてみました。    

DSCF0344.JPG

巣を気に入ってくれたようで、ちゃんといてはりました。 DSCF0347.JPG  ハタラキバチたちが脚に花粉をつけてかえってきていました。

 

「あっ、なんかへんな人間が来たぞ・・・」

 

 

 

さあ、女王バチさんが卵をうんでくれたかどうか?

DSCF0355.JPG  

 

 

そっと巣を引き出します。

「うわっ、なにすんねん。このおっさん。」               

DSCF0352.JPG  

 

うわー!巣はハチだらけでございます。

「うわーええ巣やなあ。この巣は。住みやすいなあ。住めば都やー。」

DSCF0353.JPG ハチノスツヅリガの幼虫も発見!

この虫は巣虫とも呼ばれ、ハチの巣を食べて大きくなります。

 

 「フラハチの敵!」と大谷研究員は「えい!やー!とう!」っと戦い、ブチッとやっつけました。

 

 「うわ、みつかってしもた・・・・ああ、やられたー・・・・」

 

 

DSCF0364.JPG DSCF0370.JPG

 

女王バチ(真ん中の大きなハチ)はちゃんと卵を産んでいたのでございます!素晴らしい!えらい!

「さあさ、がんばって産むわよ。あんたらもせっせと世話しいや!」

巣にはちゃんとふたができ、この中に幼虫がはいっています。

 

 

 

DSCF0376.JPG  

 

大谷研究員はフラハチたちにごほうびに砂糖水をプレゼント。

「うわー、砂糖水やないか。このおっさん、なかなかええやつやないか!ああ、うまいなあ砂糖水・・・。」

さあ、これから何匹増えるか?乞うご期待でございます。

DSCF0384.JPG ところで、となりの箱にニホンミツバチが巣をつくっていました。ほかの巣箱で飼育していたのが、巣が気にいらず引っ越ししてきたようでございます。

「うわ!なんでわしらの巣開けんねん!こら、おっさん!DSCF0387.JPG

 「あんたの巣は、人間くさあて、いややねん・・。わしらこの箱が気に入ったんや。」

 

 

その点フラハチたちセイヨウミツバチは、与えられた巣で機嫌良くはたらき・・・。えらいぞ!フラハチ!がんばれフラハチ。

つづきは、またのお楽しみ・・・。

 

 

注:ななめの文字はハチたちのセリフです。 

 

 

バッタの秋

2009年9月22日
 バッタの季節というと何となく夏のようなイメージですが,秋は大型種の繁殖期にもあたり,派手なバッタが飛び交うのがこの季節です.

 先週,近くの学校のバタリンピックを手伝いました.「バタリンピック」とは,バッタを採って,飛ぶ時間を競う競技のことです.数年前から国内各地で行われており,三田では有馬富士公園で毎年行われています.
 今回のはその校内版として深田公園で実施されたものです.2学級が12チームに分かれて各チーム5回ずつ計測のチャンスがあります,合計60回の計測は責任重大です.見失った時点で着地とみなしますので,長く飛んだ場合には追いかけて計る必要があります.担任の先生のほか教頭先生も計測を担当してくださいました.で,私はバッタの居そうな場所の案内係兼バッタの種類の区別係,ついでに見つかる他の虫のQ&A担当です.
 結果は最高記録がクルマバッタモドキの9秒06でした.深田公園にはトノサマバッタやクルマバッタがいないので,上位はモドキ勢が独占でした.ほかにはショウリョウバッタやオンブバッタがノミネートしていました(今回はイナゴも特別参加).
 バタリンピックは競技の形をとっていますが,じつはバッタの種類の違いや,その生息環境の違い,飛び方の違いを感じとる行事です.
 有馬富士公園での競技を見学させてもらったところ,種類ごとの飛び方の特性として,「平均」だけではなく「分散」も重要なようです.例年,上位にはアベレージヒッターのトノサマが並ぶ中,平均的には非力に思えるモドキの中になぜか一発長打でトノサマを上回る個体が出現,最長記録にはモドキが奪い取るの事が多いのだそうです,
 3フライトの合計ならトノサマ3匹が定石,最高記録で競うならモドキも加えておくべし.飛形点ならクルマも有力か? 単にどの種類が飛ぶという問題ではなく,構成に戦略が必要なのです.ん〜 バタリンピック道 奥深いっす.

 一昨日はバッタを解剖する講座「虫の体を調べよう」を行いました,受講申し込みのあった各組(親子三人とか)に二匹,消化管などの内臓を観察用と口器の外部形態観察用の分が必要です.毎年,その材料の調達に苦心しています.
 解剖にはなるべく大きなバッタを使いたいので,トノサマやクルマがいる公園に目星をつけておいて,講座の直前に行って必要な分のバッタを捕まえます.ところがやはり相手は自然,年によって採れ具合がちがいます.なるべく直前に新鮮なのを調達と思っていたら,台風が来たりします,
 今年は前々日(金曜日)に採集,気温は十分でしたが曇りがちで,なぜか不漁でした.例年ならそこここに大きな♀が鎮座し,その周りを数匹の♂が互いに牽制しつつ飛翔したり,徘徊しているような状況なのですが,今年はバッタがぜんぜん目立ちません.なぜかカエルが多い(?).しかたなくクルマ,トノサマ,モドキ♀,ショウリョウ♀など大型のものを内臓観察用に必要な分だけ確保,頭部観察用は(なぜか今年は多い)マダラバッタとモドキ♂を使う事にしました.
 講座では各組で顕微鏡を使って解剖し,昆虫の体の構造を学びました.頑丈な箱のような中後胸をハサミで切り,中の筋肉のかたまりをピンセットで切っていき,体全体を背側と腹側に切り分け,内臓を観察します,その過程でキラキラ輝く気管やマルピギー管なども見られます.
 細かい作業なのですべて予定通りに行くわけではありませんが,うまく背中側の板に張り付いた心臓(背脈管)が動くところが見られた組もありました.卵巣に並ぶ卵の大きさに驚いていた子もいました,今から埋めたら孵るかな?などと想像したり … 解剖は虫の命を奪う事ですが,虫の命を奪うからこそ,単に理科の学習としてだけではなく,それぞれに生命の存在を実感してくれたのではないかと思います.

mod-m-s.jpg
クルマバッタモドキの♂

昆虫共生・沢田佳久

虫の顔面

2009年9月 8日
 電子顕微鏡で昆虫の顔面を観察する! という企画を考えています,
というより,微化石の企画に乗っからせてもらいました.

 観察前の減圧に時間が掛かるので,一つの試料台に何匹か並べてお
いて,つぎつぎと見る予定です.頭の中には試料台に虫の顔が7つ並
んだ「縁日のお面屋さん」状態の想像図ができあがっています.

 ただ,キャスティングについて思案中.

 昆虫の顔は千差万別ですので,なるべく変わった形のものを見せた
い訳です.

 口だけでも,上唇,大腮(おおあご)小腮…下唇とあって,それぞれ
に折れ曲がる節があってヒゲ状の付属肢があって,と,もともと複雑
な部品構成のものがさらに大改造されてて刺す器官になったり,嘗め
る器官になってたり… 複眼,単眼,触角の形もいろいろだし…

 一つだけ,ぜひ入れたいのは「蚊」です. 身を挺して吸われに行
き,吸虫管で逆襲して,そのまま冷凍&乾燥する作戦.

AD004t.jpg
写真はユアサハナゾウムシの眉間(立体写真)

昆虫共生・沢田佳久

さて、捕獲大作戦!のつづきでございます。

大谷研究員は、ひとはくのハチ飼育場にフラハチ君を連れてかえってきました。 DSCF0330.JPG

そして、入口をあけました。

 

「おー。ここはどこやいな・・・。まあ、日陰やし、ええ感じやないか。ほな、巣の掃除しょうか。」DSCF0333.JPG

 

 

 

とフラハチたちは一生けん命掃除を始めました。 DSCF0336.JPG

 

そして、ハチたちが落ち着くまで、しばらくおいておきました。

・・・それから数時間後。DSCF0337.JPG

巣をあけて、女王バチを探します。もしいなかったら、ほかの巣から幼虫を移すとその幼虫が女王バチに育つそうです。不思議です・・・。

 

 

 

 

 

 

 

なんと、女王バチさんいてはりました。よかった・・・・。写真中央上のちょっと大きめのハチが女王バチさん! 「さあ、子どもたくさん産みまっせえ!」DSCF0340.JPG

 

 

と張り切る女王バチさんですが・・・

さて、この4千匹のフラハチ君たちは、どうなっていくのでしょうか。大谷研究員によると、居心地が悪ければ、どこかへ行ってしまうこともあるようですが、「おそらく、ここで増えていくだろう。」とのこと。

フラハチ君のこれからについては、またのお楽しみ!

 

 

フラハチ君捕獲大作戦!の一席でございました。     謎の講談師 河南堂珍元斎

河南堂珍元斎でございます。本日は「フラハチ君捕獲大作戦!」の一席でございます。

時は、9月4日の午前10時ごろのこと。

旧知の三田市の公園みどり課の生田さんから珍元斎あてに一本の電話がはいりました。

「深田公園でミツバチが大量に地面に群がっています!駆除するのもかわいそうなので、いりませんか?」

そこで、専門の大谷研究員がセミナー中だったので、珍元斎と鈴木研究員で現場に急行! DSCF0246.JPG

なんと、芝生にミツバチがうじゃうじゃ・・・・。市民の通報で、生田さんは立ち入り禁止にしてました。

 

 

 

 

 

 

DSCF0244.JPGすごい数のミツバチで、みんな元気にうごめいています。でも、死んだハチもいるようで、ハタラキバチが群れの外に出しています。 DSCF0243.JPG  

 大谷研究員は「もらいましょうか。」とのことだったので、とりあえず場所の確認をして、あとから、捕獲して三田市に連絡することと相成りました。

 

 

 

 

 

 

 

午前11時半。大谷研究員、鈴木研究員と現場へ。いよいよ捕獲大作戦!でございます。DSCF0251.JPG

 

 

 

 

 

DSCF0253.JPG大谷研究員によるとセイヨウミツバチで4千匹くらい。おそらくスズメバチに襲われて逃げてきたのでは・・・とのこと。でも、ふつうは木の上とかにいて、地面に群がるのは初めて見たそうで、珍しい光景のようで、ございます。

女王バチから巣箱に入れると捕獲しやすいので、女王バチを探しましたが、みつからず、とりあえず、全体を追い込むことに。DSCF0260.JPG

 

 

 

 

 

 

巣箱、ブラシ、煙送風機の3点セットで捕獲スタート!

 

 

まず、煙で群れを追い立てます!

 

「うわ!このおっさん。何すんねん。わしら煙きらいやがな。あーけむー。ゴホゴホ・・・かなんなあ。あっち行こかいな・・・。」

DSCF0271.JPG

ごい!数匹が入口から歩いて入ると、アリの行列のように群れ全体が巣箱に向かって歩き始めました。

 

 

 

 

 

「おお!こんなとこに、ええ巣があったがなあ・・・よかったなあ。」DSCF0266.JPG

 あわせ技で、ほうきとチリトリでごみを入れるようにハチをブラシで段ボールにいれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DSCF0276.JPG

そのうち、飛んで上から入るハチもでてきました。

 

そこに、スズメバチがミツバチの巣をねらって、やってきました

 

「おー、ハチミツたまっとうかなあ。いただきまーす!」

DSCF0286.JPGすると大谷研究員が「パン!」っとブラシで一撃で倒しました。さすが・・・でも、死んだとおもっていても針を刺す能力はあるのでさわってはいけません。

 

 

 「やられたあ・・・。」

 

DSCF0321.JPG門番のハチは、羽を扇風機のようにふるわせ、巣のにおいを外に送り仲間に巣の場所を知らせはじめます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブーン・・・・おーい!こっちがわしらの新しい巣やぞー!はよう帰ってこいよ!」

DSCF0318.JPG巣箱は押し合いへしあい状態でございます。

「うわー、巣やで、やっと住むとこできたがな。よかったがな。」とワーワーいうております。

 

 

 

 

 

掃除を始めるハチもでで参りました。

 DSCF0307.JPG煙でもっと追いこみます。

DSCF0312.JPG

 

 

ほとんどのハチがはいりました。

 

 

 

DSCF0311.JPG100匹ほど残りましたがDSCF0322.JPG・・・・・・・・・

「あれ?はいられへんがな・・・。おーい、あけてくれ!」   

 

 

なかなかはいらないので、締め切り。非情な世界でございます。

いつもそんな感じだそうです。残された子たちの運命はいかに・・。

どこかに飛んでいってしまうようです。

 

箱をしめて、フラハチ君捕獲大作戦は無事終了。フラワータウンにいたハチなので「フラハチ君」と命名しました。

DSCF0325.JPG 

 

 

 

さて、何もなかったようにさっそうと立ち去る大谷研究員でありました。

かっこいい・・・。

 

 つづく・・・

 

 

 三階入り口の入ってすぐのところ,「ナチュラリストの幻郷」にトピック展のブースがあります.ここで10月末までの予定で畑中コレクションを展示しています.標本箱がぎっしり並んでおり,覗き込んでも小さな虫がたくさん並んでいるだけの,いわば地味な展示ですので,ちょっと蘊蓄と宣伝をば.

117.jpg

 畑中煕(はたなか ひろし)氏は,古くは「兵庫昆虫同好会」の設立メンバーとして兵庫県の昆虫相解明に貢献され,現在も「こどもと虫の会」等で活躍しておられます.展示している標本は2005年に当館に寄贈してくださった,ゾウムシ等の甲虫の標本です.インロー箱7箱に560点(800個体あまり)が収納されています.多くは1960〜70年代にご自身で採集または交換等で入手されたもので,畑中氏以外の採集者として辻啓介氏の採集品が多く含まれています.採集地としては兵庫県の他に勤務地や遠征先の山口県,北海道等のもの多く含まれています.
 ご自身が「きべりはむし」誌上などに兵庫県産ゾウムシを記録されており,その証拠標本が多数含まれているのが畑中コレクションの特筆すべき特徴です.

24a_l.jpg

 特にオオマダラヒゲナガゾウムシ(写真)はこれまでに県内から知られる唯一の採集例です.他にも稀な種の標本が多数含まれています.また,当時は未同定であった標本の中には,その後記載された種や,現在の目で見ると兵庫県未記録と見なされるものも含まれています.
 しかし,稀種の標本だけが貴重というわけではありません.これらの標本は当時の図鑑などに基づいて同定され,記録されたわけですが,以後の分類体系の更新などによって,再検討,再同定が必要となる場合があり得ます.したがって,その証拠標本は記録自体の検証可能性を保証するものとして重要な意味を持っているのです.

 現在は受け入れ時の配置に近い状態で元のインロー箱で展示していますが,今後,他のコレクションと同様に個体別に登録,再整理を行ってジェネラルコレクションに統合しますので,コレクションを一覧することはできなくなります.

 なおこの展示の準備には2009年度博物館実習生,大橋佳奈,細見安里,村上達郎,山本遥の協力があったことを付記します.

昆虫共生・沢田佳久

 夏休みももうすぐ終わるという時期,いつものようにクヌギやコナ
ラなどの樹をゴン!と蹴っても,もはやシロテンハナムグリやカナブ
ンが一斉に飛び立ったりすることもなく,カブトムシも終わっており,
クワガタが落ちればラッキーなほうです.
 代わりに小枝が数本パサバサ落ちてきてきます.小さな虫らきモノ
も数個落下して,ポツポツと音をたてて下草の中に.それが(たぶん)
ハイイロチョッキリです.

 深田公園には蹴れるようなポイントもなく,多くの場所で下草も落
葉もなかったりします.21日の夕方に「ふかたん」の下見をしていて,
コナラやクヌギの木の下に落ちている小枝をたくさん見かけました.
それぞれの小枝にはドングリがついています.ハイイロチョッキリが
ドングリに産卵し,枝ごと切り落としたものです.

2512r.jpg
2513r.jpg
 ハイイロチョッキリは灰色というよりは黄土色の虫で,大きい♀で
は9mmに達する,日本産では最大級のチョッキリです.長い口吻が特
徴です.この口吻でドングリの殻斗の縁付近の薄い部分に穿孔して産
卵します.枝の切り落としもこの口吻で行います.
 ただ,低い所で作業していないと,虫そのものを見つけるのは難し
いかもしれません(成虫の写真↓は三田市内の別の場所で撮影).

1825r.jpg
 この時期,クヌギにはクヌギシギゾウムシもいます.ただし,スズ
メバチには気をつけましょう.

昆虫共生・沢田佳久

 相次いで荷物が届きました.一つは象鼻虫の写真集で,タイトルは
「象虫」.超絶的な技術で標本を超精密に撮影してあります.生態写
真ではなく標本です.図鑑ではなく写真集です.
 人が顕微鏡で昆虫の標本を覗くと,じっとしていられません.もっ
と拡大してみたいし,別の部分を見たいし,あっちにこっちにピント
を合わせたいからです.その要望が全部,一枚の写真に写し込まれて
います.
 著者の小檜山賢二先生は「マイクロプレゼンス」を主張している方
です.肉眼では見えないけれども厳然と存在していて,何らかの方法
で見てしまうと驚嘆すべき境地が広がっている,巨大すぎるもの,微
細すぎるもの,早すぎる事,ゆっくりすぎる事,いろんな方面があり
ます.それを開拓していこうというような姿勢だと,私は解釈してい
ます(文中に明確な定義と説明あり).
 人間にとって昆虫は微細側の辺縁に位置します.いる事はわかる,
けど,黒い点にしか見えていないのです,一般の人には.しかし虫好
きの人はこれを標本にして顕微鏡を覗きます.感動的な美しさ奇怪さ
です,で,そういう技術も発達してきているのだから,写真集にして
みんなに見てもらおうではないか!というわけです.

koh-fuji.jpg
写真集”象虫”と3Dカメラ”W1"

 ところで博物館ではこの夏休みも,小さな昆虫を標本にする実演を
行っていますが,苦労するのは,モノが小さい事です.
 以前から作業の様子を拡大表示したりと,ちょっと「マイクロプレ
ゼンス」していましたが,今年は出来上がった(比較的できばえの良
い)標本を3Dのデジタルフォトフレームでお見せしています.
 10〜20倍程度の倍率でも,なかなかの迫力です.小さなゾウムシが
カブトムシ位の大きさに,しかも一体的に見えるので,子供たちは掴
みたくなるようです.

min-818.jpg
標本の3D表示

 さて,もう一つの荷物はW1という立体写真機(3Dカメラ)です.古
くから多様な立体写真機が開発されてきましたし,撮影する方も少な
くなかったのですが,立体写真の見せ方に普遍性がなく,特殊なもの
との見方が一般的でした.
 ところが,昨今の表示装置の急速な発達で一気に一般化しそうな状
況です.この写真機自体は普通の目の幅で撮影するためのものですが,
背面のモニターに,いわば撮影の補助のために付いている液晶が,す
でに3D表示できます.これとは別に本格的に表示専用の装置(デジタ
ルフォトフレーム)が別途発売されているのですが,カメラの背面モ
ニターでさえ,フツーに,3D表示できるのです.
 3D表示できる表示装置が普及すれば,すなわちインフラが整備さ
れれば,コンテンツも3D化します.マイクロプレゼンスも3Dを前提
に展開されるようになるでしょう.

 で,実演の時に見せるために用意したホソクチゾウムシの電子顕微
鏡写真をこのカメラのモニターに表示されるよう,変換してみました.
お持ちの方は下の写真をコピーして,拡張子をjpgからmpoに書き換え
たうえで,W1のSDの写真のフォルダにコピーしてみてください.
(なお,結果および影響は保証しません.既存のファイルはバック
アップをとった上でお試しください)
apion.jpg

昆虫共生・沢田佳久




 先日,氷ノ山で奇妙なものをみました.

 写真でわかるように,アケビコノハの幼虫です.ただしその背中に
なにやら華麗な装飾が!? …よく見ると,トゲトゲのそれぞれが虫
で,たぶん蜂の幼虫です.
1988trm.jpg
このテの光景で思い出すのは,ケムシやイモムシの体から蜂の幼虫
が一斉に出てきて小さな繭を作る,という状況です.コマユバチによ
る寄生です.出てくる現場に出くわすことは稀ですが,廃墟となった
ケムシの近くに小さな繭が鈴なりになっている状況はよく目にします.
 で,問題のシーンはというと,一斉に出てきたとすると,寄生虫が
一カ所にかたまりすぎてます.同じ穴から出てきたためでしょうか?
 そうではなく,シッポを外にして.頭がイモムシに食い込んでいる
のです.

 とても派手な事態なので,そのスジ(寄生蜂屋さんとかイモムシ
好きとかアケビコノハ愛好家とかアケビ愛好家とか)の間では知られ
ているんだろうなと,現場では思って,撮影だけして持ち帰りません
でした.

 ネット上で検索(「アケビコノハ」と「コマユバチ」)してみると,
似た状態を撮影された方がありました(しかも最近,西宮の甲山),
その方の観察は,アケビコノハの幼虫の背中に大量の卵(?)が産み
つけられていて,それが孵って成長し始めるところだったようです.
連絡してみると,そのアケビコノハ幼虫は死んでしまったらしく,背
中の虫の正体は不明のままとの事.
 写真を比較してみると甲山の例は私が氷ノ山で見た状態よりは少し
前の段階のようです.要するに,この虫は外部寄生性,多寄生性の,
たぶん蜂の幼虫だろうということしか,わかりません.

 一方,蜂好きの方々に伺いを立てておいたら,ある方からヒメコ
バチ科の Euplectrus属あたりに似た生態のものがあり,同属には
アケビコノハの天敵であるアケビコノハヒメコバチという種がいる,
という事を教えて頂きました.関連文献には同属の種の幼虫がアワ
ヨトウに取り付いている写真があり,似た雰囲気です.
 ただ,氷ノ山の体のサイズがヒメコバチとしては大きすぎ,もち
ろんアケビコノハヒメコバチかどうかは即断できません,

 やはり採集しとかなあきませんね.

昆虫共生・沢田佳久

今年の主役

2009年7月14日
 12日に「小さな虫の標本作り」の講座を行いました.

 標本にするのは主に5ミリくらいの虫で,天気がよければ博物館の周りで採ります.

 例年はコフキゾウムシがよく採れ,顕微鏡で見るとキラキラと奇麗なので,講師と
しては頼りにしている種類なのですが,今回は草刈り直後で激減(>o<)

021c.jpg
 その代わりに主役になってくれたのが写真のオオクチブトゾウムシでした.深田公
園でもときどき採れた虫ですが.今年はなぜかよく見かけます.コナラの葉などに止
まっていることが多いようです.みんなで探して人数分ゲット!
 他の場所でもそんなに珍しい虫でもないけれども多い種でもなく,割と大きなクチ
ブトゾウなので,どちらかというと採れたら嬉しい虫です.

022c.jpg
 野外では黄色っぽい粉で覆われているのですが,標本にすると茶色い背面と緑の側
面のツートーンです.緑色はコフキゾウと同じように鱗片の色です.

昆虫共生・沢田佳久

キバネツノトンボ

2009年6月23日
 ツノトンボは,名前はツノのあるトンボのようですが,トンボとはぜんぜん違う虫です.翅はトンボに似た細長い透き通った翅なので,標本にすると似ていないこともありませんが,はっきり違うのは,触角が長い事です.蝶の触角に似ています.で,角があるからツノトンボというわけです.

 トンボは不完全変態で,ヤゴから成虫になりますが,ツノトンボはウスバカゲロウなどと同じアミメカゲロウ目(脈翅目)の虫で,完全変態します.幼虫は移動式のアリジゴクみないなもので,蛹になるはずですが,見た事がありません.
 写真は先日,信州で見たキバネツノトンボです.草に止まっている姿はトンボというよりトビケラっぽいですね.記念切手(1987)にもなった事がある美麗昆虫ですが,兵庫県ではレッドデータ種(悲).

昆虫共生・沢田佳久

バッタも3D

2009年6月19日
 サロン付近でほぼ常設化している”DPF3Dシアター”はコンテンツを2〜3月で入れ替えています.
 10日からは「ホッパーズ」を上映中(6/10-8/31).これは「ぎっちょん君 参上!」にあわせてバッタやキリギリギス,コオロギなどの直翅類を満載したものです.これまでののぞき穴方式に加え,青赤写真版も小さなデジタルフォトフレームに上映しています.


 ↑はクルマバッタの若虫と,交尾中のヒョウノセンフキバッタの青赤写真.手許にある方は青赤メガネで見てみてください(ないって!手許には).
 バッタの写真はたくさんあるのですが,なかなか同定が難しく,成虫でも標本がないと名前がわからないものもあります.結局,公開中の写真も多くが「◯◯類の若虫」どまりでお茶を濁す事に.

昆虫共生・沢田佳久

奇虫ウロコチャタテ

2009年6月 9日
 ことしもトライやるの中学生がやってきて,深田公園で昆虫採集をして標本を作りました.時間をつくっては何度も公園内を歩き,虫を探しました.

 なかでも興味深かったものは,公園の上流部にある岩の表面にいたチャタテムシ(たぶんウロコチャタテの仲間)でした.
r0437.jpg
 1〜2ミリほどの虫が岩の表面にたくさん居て,人が覗き込むと一斉に動きます.動くスピードは相当なもので,例えるなら「磯で見かけるフナムシのような素早さ」です.そして一瞬の間にさっと動き,すぐに静止するので,虫の姿が追えません.よく見ると,岩の小さなくぼみに入り込んで静止しています.体全体が岩肌に似た色で,保護色になっています.チャタテかな? とは思いましたが,採集しないと何とも言えません.謎の動物です.
 で,これを採集するのが難しく,指でつまむのは無理.殺虫管に落とし込もうとの試みも失敗の繰り返しで,とうとうその日は諦めることにしました.翌日,吸虫管で再挑戦,数匹をゲットしました.

ch001s.jpg
 顕微鏡で見ると,比較的大型の個体でも翅が伸びていない状態でした.まだ若虫のようです.
 ネット等で調べると,どうやらウロコチャタテの仲間らしい,というのが現段階の結論です.

昆虫共生・沢田佳久

フォギング

2009年5月26日
 日本ゾウムシ情報ネットワークの「地域ファウナ調査会」が5月15日から25日まで京都大学の芦生研究林(京都府丹南市)で行われ,幹事業務を兼ねて参加しました.

 11日の期間のうち参加メンバー20名が集中的に採集するのは23〜24日で,天気が悪く気温も上がらず,虫の動きは低調でした.天気の様子や季節の進み具合を見て臨機応変に採集方法を使い分け,採集対象をきりかえるのも技のうち.ビーティングを中心に,捕虫網でのスウィーピング,樹幹を刷毛で払う方法(名称不明)など,それぞれに工夫して採集しておられました.

 これらの通常採集のほかパントラップやFIT(フライト・インターセプト・トラップ),マレーゼトラップなども設置しました.パントラップやFITは歩きながら良さげ場所に次々と仕掛けていくだけで,ときどきザルで回収して回るだけの手軽な方法です.マレーゼトラップは設置には手間がかかりますが,一旦設置すると,定期的に回収に行くだけです.

1536r02.JPG
パントラップ,FITと回収用具

1535r01.JPG
マレーゼトラップ

 興味深かったのは東京農業大学の方々が4人掛かりで行っていた「フォギング」です.狙った木の下に受け皿を設置し,エンジン付きの噴霧器で巨大蚊取り線香を焚きます.霧に当たって落ちてくる虫は漏斗状の受け皿の底の瓶に回収されます.
 目的の枝に正確に十分に霧を当てるためには,時間帯を選んだり,空気の流れを読んで噴射する位置どりを変えたり,けっこうコツが要る作業のようです.
 もちろん受け皿の設置にも手間と時間が掛かります,今回は朝方の風の弱い時間帯に噴霧するため,逆算して起床は4時起きだったようです.噴霧完了後の落下待ち時間は約2時間.回収が完了したあとの撤収にもそれなりに時間が必要です.

0384.JPG0372.JPG
フォギング

 昆虫の採集方法は割と単純で機動的なものが多いのですが,その中でこのフォギングはきわめて大掛かりなものです.こういうのもあるんだなぁ,というのが感想です.

昆虫共生・沢田佳久

「C05巨大キリギリスをつくろう」5/23(土)の変更のお知らせ

「6/6(土)オープンセミナー:巨大キリギリスをつくろう」に変更します。時間は14〜17時まで。

 

kirigiri001.jpgこの体長約2mの巨大キリギリス「ぎっちょん君」に、みんなで色をぬって完成させましょう。オープンセミナーなので、参加費は無料です。完成したら「ぎっちょん君」は

 

  初夏の鳴く虫と巡回展〜ぎっちょん君参上!(2009.6.6〜8.31)

 

で、ずっと展示されます。

  さぁ、6/6(土)の14時、4階ひとはくサロンに集まってください。楽しい「立体ぬりえ」をしてみませんか。

 

(自然・環境マネジメント研究部  大谷 剛)

 毎年やっている深田公園でのオトシブミ観察会を,10日に行いました.結果は全部で5種(揺籃4種,成虫2種)でした.
 ヒメクロオトシブミはクヌギの苗木に成虫も揺籃も見られたのですが,切ったり巻いたりしている現場は見られませんでした.例年,作業中の個体が見られるハギルリオトシブミも,今年は成虫が摂食しているだけでした.今年はあらたにエゴツルクビトシブミの揺籃が多数みつかりました.何年も前から目をつけていたエゴノキなのですが,今年突然降って湧いたように出現,しばらく成虫を探したのですが,結局見つからず,

 深田公園はちょうどモチツツジの季節です.
 モチツツジはコバノミツバツツジより数週間遅れて咲きます.柔らかな色で,花も大きいのですが,あまり人気がないように思います.たぶん奇麗に咲いていないからでしょう.たいていはどこか傷があったり,複数の花がグシャッとかたまっていたりします.近づいてみると蕾や萼がネトネトで虫がへばりついています.要するに,きちゃない.

 虫目線で見ると,モチツツジの蕾はかなり魅力的,有用な資源に映る(たぶん匂いで)らしく,いろんな虫が魅せられ引き寄せられます.その食害を防ぐためにモチツツジは(「おいしそう」はそのままに)このトリモチ戦術を発達させたのでしょう.殺生な,とはこの事です.その結果,実に様々な虫が捕まって死んでいます,粘着した半死の虫を吸血して回るサシガメなども存在します.地獄絵図です.

 しかし,トリモチ戦術も完璧ではありません.ツツジトゲムネサルゾウムシは,これに適応した虫です.この虫はモチツツジの蕾に穴をあけ,産卵するのです.もっともネトネト度が高い(?)蕾の表面でさえ,ゆっくりですが掻き分けるように歩くことができます.
 共進化の観点からいうと,モチツツジをモチツツジにしたのは,たぶんこの虫です.と同時に,ツツジトゲムネサルゾウムシをツツジトゲムネサルゾウムシにしたのも,たぶんこの木です.そして果てしないネトネト化競争は今も続いているのでしょう.

昆虫共生・沢田佳久

リンゴコフキ!

2009年4月28日
 某先生が大好きなことで一部で有名な「養老虫」,ヒゲボソゾウムシ(Phyllobius属)を見かける季節になりました.細長い胴体に長い脚と長い触角,緑色の輝きの美しい虫です.
 街中の公園にはいない虫ですが,郊外ならちょっとした山でも見かけます.針葉樹と広葉樹が混じったような環境,植林と雑木林の境目あたりにいます.ゾウムシにはめずらしく樹種特異性は低く,いろんな広葉樹を食べるものが多いようです.特定の木で育つよいうより森からわき出す感じの虫です.人に気づくと走って逃げます.脚は速いです.

 くわしい甲虫図鑑には10種ほどが掲載されていますが,さいきん研究が進み,2006年に出たモノグラフには23種も載っています.いちばん良く見かける大型の立派な種(P. armatus)を,以前は「リンゴコフキゾウムシ」と呼んでいました.ところが最近は「ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ」.ぜんぜん違います.
 ヒゲボソゾウ好きの人々(何人いる?)の間ではヒゲボソゾウムシの代表種としてリンゴコフキの呼び名は長く親しまれてきました.もともと「リンゴコフキゾウムシ」という和名じたいは,マメ科に多い「コフキゾウムシ」と似た肌合いの,リンゴの葉を食べる事がある,いわば本来は害虫としての位置づけでした.

9151T.JPG
 でも今や「ヒゲボソゾウムシ」はちょっと注目の虫なので和名の不統一はイカガナモノカ.大改訂を機会に和名が改称されたわけです.この仲間(Phyllobius属)全体を「ヒゲボソゾウムシ」といい,その中で大型で♂の前脚の脛にトゲがあるもの(Odontophyllobius亜属)を「トゲアシヒゲボソゾウムシ」といい,その中で毛深い種類は「ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ」という論理です.美しい階層構造!

 ただ,今年も見つけたときは「リンゴコフキ発見!」とつぶやいてしまうのであった.

昆虫共生・沢田佳久

春の虫

2008年3月29日

春の虫といえばギフチョウです.だいたいソメイヨシノが咲く時期に成虫が現れ
ます。早春限定でみられる事に加え、姿も美しく、それなりの生息環境が保た
れた場所にしか現れない事も人気の理由でしょう。ギフチョウは里山の虫です
が、山奥にも春の虫はいます。

ブナ林の代表的な春の虫は瑞々しいブナやミズナラの葉に見られるルリクワ
ガタの仲間でしょうか。ブナの葉は夏になると硬くて色も濃くなりますが、展開
直後は柔らかく、毛が多くモケモケです。人間が見ても美味しそうだったりしま
す。虫はそのような賞味期限にうまくシンクロして出現します。ノミゾウムシの
仲間も春は早めに現れ、展開しつつある葉に産卵します。
穴場はカエデの花です。あまり目立ちませんがカエデの仲間は大量に花を咲
かせます。遠目には樹全体がほんのり赤く見え、近づいて注目すると、ちゃん
と花が咲いています。そして蜜と花粉目当てに小さな虫がわんわんたかって
います。ハナアブやカメムシ、翅のあるアブラムシ、小型のカミキリ、ヒラタハナ
ムグリなど、虫だらけ。虫を食べる虫も来ています。中には「カエデの花で採れ
るがその他の生態は不明」というような謎の虫もいて、その虫と人類の接点は
今のところ春のカエデの花だけだったりします。

晩春に多い虫もあります。最近は「養老虫」として知られるヒゲボソゾウムシの
仲間がそうです。これもギフチョウなみに環境を選びますが、特定の植物との
つながりは弱く、郊外の針葉樹の混じった広葉樹林ならたいてい何種か見ら
れます。いる所にはワンサカいて、緑色に輝く軽快な姿がそこらじゅうに見られ
ます。
森から湧き出すように現れ、梅雨前には姿を消します。

(自然・環境評価研究部 沢田佳久)

芽吹きを待つカシワノミゾウムシ


比較的ハデなハウチワカエデの花

Copyright © 1995-2015, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo, All Right Reserved.