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<博物館での活動> | |
ジーンファームの温室 | ジーンファームのガラス室内 |
兵庫県版レッドリストでは、809種もの維管束植物が掲載され、それらの多くが絶滅の危機に瀕しております。当館では、生物多様性保全の観点から、絶滅危惧種を中心とした植物の保全を目的としたジーンバンク事業を進めております。ジーンファームでは400種を超える植物種の生きた個体を栽培管理しており、植物の緊急避難、危険回避、増殖、復元・再生、創出に取り組んでいます。
中等~高等教育を中心とした生物多様性の普及啓発
中等~高等教育においては、「子供たちの自然離れ」がしばしば指摘されています。そこで多くの子供たちに生物多様性や自然に興味関心を抱いていただくように、オンラインやゲスト講義、大学院における学生指導などを積極的に展開しております。
<研究活動>
人の手によって維持される半自然草原 | ウンラン(兵庫県版レッドリストAランク) |
遺伝情報やフィールドワークに基づく絶滅危惧種の保全生態学的研究
現在の自然環境の急速な悪化に伴い、多くの生物が絶滅の危機に瀕しております。そこで、草原、里山、森林、海浜など様々な環境に生息する昆虫や植物を中心に、絶滅危惧種の保全生態学的研究を展開しております。
ウスイロヒョウモンモドキ (国内希少野生動植物種) |
生物標本が内包する遺伝情報の利用可能性の検証
生物標本には、その生物が生きていた当時の遺伝情報が内包されています。こうした生物標本の遺伝情報は時間の経過に伴って劣化が進行しているため、これまで利用は困難でした。そこで、標本中のDNAの劣化を抑制する方法の開発や、劣化したDNAからの解析手法の検討を実施しています。
その他、研究テーマの詳細はこちらから→ 研究員の個人サイト:https://naoyukinkhm.wixsite.com/mysite
<研究者情報>
リサーチマップ
<研究開発>
1. 調査研究
■特別課題研究(個人研究)
1. 半自然生態系に生息する絶滅危惧種の減少要因の解明
2. 集団遺伝学的・系統地理学的アプローチによる生物の保全単位の設定
3. 絶滅危惧種の遺伝構造に配慮した個体数, 遺伝的多様性の回復手法の開発
4. 国内希少野生動植物種の保全ゲノミクス
5. ニホンジカ増加による生態系変化とその対策による回復効果の解明
6. 標本DNAからの遺伝情報の復元手法の開発
■論文・著書
Nakahama, N., Okano, R., Nishimoto, Y., Nakatani, Y., Noishiki, A. and Ogawa N. (2023) The second phantom aquatic leaf beetle in Japan: Macroplea mutica rediscovery in the wetlands (Coleoptera: Chrysomelidae). Entomological Science, 26, e12545.
Nakahama, N., Kurata, S. and Ushimaru, A. (2023) Contribution of genetic analyses to semi-natural grassland biodiversity conservation in Japan. Plant Species Biology, 38, 158-170.
黒田有寿茂・中濵直之・早坂大亮・玉置雅紀・花井隆晃(2023)干潟に生育する大型草本スパルティナ・アルテルニフロラSpartina alterniflora:生態特性と山口県下関市における侵入.保全生態学研究,28,199-212.
Mochizuki, K. and Nakahama, N. (2023) Vincetoxicum pycnostelma Kitag. × V. glabrum (Nakai) Kitag.: A New Natural Hybrid From Hyogo Prefecture, Japan.The Journal of Japanese Botany, 98, 227-232.
Taichi, N., Nakahama, N., Ohmido, N. and Ushimaru, A.(2024) Habitat diversification associated with urban development has little effect on genetic structure in the annual native plant Commelina communis in an East Asian megacity. Ecology and Evolution, 14, e10975.
石田弘明・黒田有寿茂・中濱直之・一町裕子(2024)人と自然の博物館における希少植物保全のための 生息域外保全の取り組み.兵庫ワイルドライフモノグラフ,16,50-58.
■その他著作
渡辺恭平・加藤優・中濱直之(2023)ダイセツヒメハナバチの生態についての若干の観察.すがれおい,4,71-79.
中濱直之(2023)レッドリストとは?定義やIUCN・環境省のリストの特徴を詳細解説.朝日新聞SDGs Action!(2023 年6月2日掲載)
中濱直之(2024)<ひとはく研究員だより>中濱直之研究員 生態系と生き物 野外に逃がすのはなぜ駄目?神戸新聞(2024年2月19日掲載).
■研究発表
坂井遥・奥田真実・黒江美紗子・尾関雅章・松尾歩・陶山佳久・安藤温子・中濵直之・小山明日香・内田圭・須賀丈・岩崎貴也(2023)シカ糞DNAメタバーコーディングによる長野県霧ヶ峰高原におけるニホンジカの採食植物の解明.日本植物学会第87回大会,札幌.
岡西政典・中濵直之・藤田敏彦・蛭田眞平(2023)MIG seq 法を用いたニシキクモヒトデ(棘皮動物門:クモヒトデ綱)の遺伝構造解析.日本動物学会第94回大会,山形.
濱野友・陶山佳久・松尾歩・伴光哲・渡部晃平・山崎健史・山田量崇・中濵直之(2023)MIGseq 法に基づいたカブトムシの集団遺伝構造及125び遺伝的撹乱リスクの検証.日本昆虫学会第83 回大会,佐賀.
中濵直之・小長谷達郎・上田昇平・平井規央・矢後勝也・矢井田友暉・丑丸敦史・井鷺裕司(2023)MIG-seq 法を用いた国内希少野生動植物種オガサワラシジミの保全ゲノミクス.日本昆虫学会第83回大会,佐賀.
木下豪太・速水将人・中濵直之・大脇淳・喜田和孝・小山信芳・Chistyakov Yuri(2023)lcWGS 法を用いた古標本を含むアサマシジミの集団遺伝解析.日本昆虫学会第83回大会,佐賀.
山本倫正・山口寛登・藤原日向・宮崎祐子・中田泰地・中濵直之・中田和義・勝原光希(2023)岡山市の都市域-中山間地域における在来一年草ツユクサの集団遺伝学的解析と送粉者調査.第55回種生物学シンポジウム,オンライン.
河上康子・中濵直之・長太伸章(2023)鞘翅に斑紋多型をもつダンダラテントウの集団遺伝構造.関西昆虫学研究会2023年度大会・日本鱗翅学会近畿支部第167回例会,神戸.
中濵直之・濱野友・藤本真里・衛藤彬史(2024)耕作放棄地の但馬牛放牧によるチョウ類及び開花植物の多様性回復効果.「 地域自然史と保全研究発表会」関西自然保護機構2024年度大会,大阪.
中田泰地・中濵直之・近江戸伸子・丑丸敦史(2024)多様な都市生育地環境が植物の形質進化と遺伝構造に与える影響:ツユクサを用いた検証.日本生態学会第71回大会,オンライン.
鈴木結子・中濵直之・矢後勝也・遠藤千晴・井鷺裕司(2024)絶滅が疑われるオガサワラシジミの系統的由来.日本生態学会第71回大会,オンライン.
濱野友・陶山佳久・松尾歩・伴光哲・渡部晃平・山崎健史・山田量崇・中濵直之(2024)カブトムシにおける遺伝的撹乱の懸念:野生個体と販売個体での空間的遺伝構造の違い.日本生態学会第71回大会,オンライン.
尾関雅章・須賀丈・小山明日香・内田圭・中濵直之・岩崎貴也(2024)霧ヶ峰草原における林野火災の火災当年の植生及び訪花昆虫への影響.日本生態学会第71回大会,オンライン.
井鷺裕司・渡辺勝敏・中濵直之(2024)保護増殖事業対象種の状況をゲノム情報でどのように理解するか.シンポジウム「種の保存法に基づく保護増殖事業対象種の保全ゲノミクス」企画者.日本生態学会第71回大会,横浜.
中濵直之・小長谷達郎・佐藤光彦・上田昇平・平井規央・矢後勝也・矢井田友暉・丑丸敦史・鈴木結子・井鷺裕司(2024)絶滅危惧チョウ類2種の生息域外保全集団における繁殖途絶及び減少プロセス.日本生態学会第71回大会,横浜.
■学会役員等
関西自然保護機構,編集委員
日本生態学会 保全生態学研究,編集委員
日本生態学会,近畿地区会委員
種生物学会,近畿地区幹事
種生物学会,和文誌編集委員
関西自然保護機構 運営委員
日本昆虫学会代議員
日本昆虫学会男女共同参画委員
Biodiversity and Conservation 論文査読(1 回)
Conservation Science and Practice 論文査読(2 回)
Ecological Research 論文査読(4回)
Ecology and Evolution 論文査読(1回)
Entomological Science 論文査読(2回)
Mammal Study 論文査読(2回)
Plant Species Biology 論文査読(2 回)
Zoological Science 論文査読(1回)
■助成を受けた研究
博物館標本の遺伝情報に基づいた絶滅危惧種の保全単位の設定. 日本学術振興会学術研究助成基金助成金若手研究, 研究代表者 (2023年度100万円/総額416万円)
複数の草原性チョウ類の遺伝解析に基づく保全単位の地理構造と保全意義の提示. 日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B), 研究分担者(2023年度100万円/総額1638万円)
遺伝情報・深層学習・GISを用いた博物館標本の時空間情報と遺伝的多様性変化の解明. 日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B), 研究分担者(2023年度25万円/総額1729万円)
保全ゲノミクスによる保護増殖事業対象種の存続可能性評価. 環境研究総合推進費 環境問題対応型研究, 研究分担者 (2023年度418.6万円/総額5822.7万円)
ペットや園芸として人気の高い昆虫および植物における遺伝的攪乱の実態解明.日本学術振興会学術研究助成基金助成金若手研究,研究代表者(2023年度110 万円/総額455万円)
■賞罰
2023.9,日本昆虫学会第83回大会 最優秀ポスター賞(濱野氏の発表)
2024.3,日本生態学会第71回大会ポスター優秀賞(濱野氏の発表)
■整理同定担当資料
植物(ジーンファームの植物の株及び種子)
<事業推進>
1.生涯学習事業
■セミナー
館主催セミナー
中濱直之,2023.4,特注セミナー「DNAから何がわかる?遺伝子が解き明かす生物多様性の不思議」,神戸女学院大学,博物館.(66名)
中濱直之,2023.4,一般セミナー「研究活動支援セミナー~科学論文の読み方入門講座~」,博物館.(8名)
中濱直之,2023.5,一般セミナー「但馬の里山で昆虫探し」,但東町.(31名)
中濱直之,2023.5,特注セミナー「DNAから何がわかる?遺伝子が解き明かす生物多様性の不思議」,京都府立桃山高等学校,博物館.(82名)
中濱直之, 2023.6, 特注セミナー「博物館標本の魅力と意義」三田祥雲館高等学校, 博物館.(34名)
中濱直之・山崎健史,2023.6,オープンセミナー「研究員による研究ばなし~ひとはくが目指す研究の最前線~」,オンライン.(30名)
中濱直之,2023.6,オープンセミナー「写真から見る但馬の自然と生き物たち」,博物館.(8名)
中濱直之,2023.6,特注セミナー「野外安全講習~安全なフィールドワークのため~」,京都府立農芸高等学校,博物館.(12名)
中濱直之,2023.8,特注セミナー「DNAから何がわかる?遺伝子が解き明かす生物多様性の不思議」,香川県立観音寺第一高等学校,博物館.(32名)
中濱直之,2023.8,一般セミナー「ジーンファーム見学会:ジーン(遺伝子)と生物多様性のお話」,博物館.(3名)
中濱直之・フロアスタッフ,2023.9,オープンセミナー「ひとはく探検隊「はかせとムシさがし」,博物館.(19名)
中濱直之,2023.6,オープンセミナー「ハーバリウム標本を間近に観察してみよう・・・OhanaフェスVol.8 コラボ企画」,博物館.(150名)
中濱直之,2023.10,一般セミナー「研究活動支援セミナー~科学論文の書き方入門講座~」,博物館,(4名)
中濱直之,2023.11,一般セミナー「研究活動支援セミナー~科学論文の読み方入門講座~」,博物館.(38名)
中濱直之,2023.10,特注セミナー「秋のお花をさがしにいこう」,芦屋市立岩園保育所,博物館.(41名)
中濱直之, 2023.11,特注セミナー「DNAから何がわかる?遺伝子が解き明かす生物多様性の不思議」,兵庫県立農業高等学校,博物館.(32名)
館外講演
中濱直之,2023.5,はじまりの生態学~研究者のルーツを探る~「標本が語る生物多様性の危機と保全」,オンライン.(78名)
中濱直之,2023.7,「一庫公園夏の昆虫観察会」,県立一庫公園.(30名)
中濱直之,2023.9,「岡山大学生態系合同ゼミ」,岡山大学.(47名)
中濱直之,2023.9,「第38回水圏生態系・古環境談話会」,博物館.(7名)
中濱直之,2023.10,「昆虫の調べ方とまとめ方~今、里山のチョウが危ない!!~」,加東市.(40名)
中濱直之,2024.3,「一庫公園早春の昆虫観察会」,県立一庫公園.(15名)
兵庫県立大学・大学院教育
共生博物学 (分担)
分子生態学特論(主任)
■学校教育支援
トライやるウィーク
2023.6,三田市立八景中学校3名,三田市立ゆりのき台中学校2名.(計5名)
■学校団体対応
2023.4, 神戸女学院大学
2023.5, 京都府立桃山高等学校
2023.6, 三田祥雲館高等学校
2023.7, 兵庫県立三田西稜高校
2023.8, 西宮今津高校
2023.8, 香川県立観音寺第一高等学校
2024.1, 兵庫県立宝塚北高校
■講師派遣
2023.8,「西宮今津高校フィールド実習」,宮津市海と星の見える丘公園.(14名)
2023.7,「研究者のリアル」,兵庫県立三田西稜高校.(8名)
2024.1,「探究基礎講座~論文の読み方・データの解析法~」,兵庫県立宝塚北高校.(42名)
卒論生等
2023.4-2024.3,濱野友(兵庫県立大学大学院環境人間学研究科修士課程2年),, The risk of genetic disturbance in Japanese rhinoceros beetles (Trypoxylus dichotomus) by a phylogeographical approach.主査.
2023.4-2024.3,水谷信彰(兵庫県立大学大学院環境人間学研究科修士課程2年),博物館標本から推定する兵庫県内におけるゲンゴロウブナの分布.副査.
2023.4-2024.3,中田泰地(神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程3年),Trait evolution and genetic structure of a native plant species in diverse urban environments.副査.
■展示
2023. 2-4, ミニ企画展「ひとはく研究員展2023」, 博物館, 分担者.
2024. 2‒4, ミニ企画展「ひとはく研究員展2024」, 博物館, 分担者.
2.シンクタンク事業
■収蔵庫・ジーンファームの公開
ジーンファームの案内, 2回, 5名.
■行政等支援
委員会等(計2件)
2021.10-, 中国山地草原性希少昆虫保護増殖事業検討会, 委員, 環境省自然環境局.
2022.4-, 加東市ノーベル大賞審査委員, 兵庫県加東市
2023.6-,令和5年度ライチョウ遺伝子解析ワーキンググループ委員.
相談・指導助言
来訪者10件,15名.電話・FAX 10件.メール75件.
視察対応
2023.8,石川県自然史センター,3名.
2023.11,長野県環境保全研究所,1名.
2023.11,静岡県立ふじのくに地球環境史ミュージアム,1名.
■学会開催等支援
2023.9,日本昆虫学会第83回大会公募シンポジウム「昆虫の集団ゲノミクスへの招待」,企画者.
2024.3,日本生態学会第71回大会シンポジウム「種の保存法に基づく保護増殖事業対象種の保全ゲノミクス」,企画者.