丹波市より発掘された竜脚類化石(通称"丹波竜")の記載論文の出版について
2014年8月12日
丹波市より発掘された竜脚類化石(通称"丹波竜")の記載論文の出版について
趣旨
平成18年(2006年)に丹波市山南町の篠山川河床に露出する篠山層群から発見された竜脚類(通称"丹波竜")の尾椎、血道弓などの化石は、その後行われた慎重な比較・検討の結果、既知のどの属・種のものとも異なることが判明しました。この研究成果が今回Zootaxa誌に掲載の論文で公表され、その中において丹波竜は新属新種として記載命名されました。
1 新属新種のティタノサウルス形類竜脚類の学名
Tambatitanis amicitiae gen. et sp. nov.
(カタカナ読み:タンバティタニス・アミキティアエ)
属名と種小名の語源:Tambaは「丹波地域」にちなみ、Titanisは「女の巨人」という意味でギリシャ神話に由来する、Amicitiaeはラテン語で「友情」の意味で、二人の発見者(村上 茂・足立 洌)の友情を記念している。
2 執筆者
三枝 春生 主任研究員(県立人と自然の博物館)
池田 忠広 研究員 (県立人と自然の博物館)
3 論文掲載誌
「Zootaxa」(A mega-journal for zoological taxonomists in the world)
(和訳:動物分類学者のための査読付き国際学術雑誌)
4 論文標題
A new titanosauriform sauropod(Dinosauria:Saurischia)from the Lower Cretaceous of Hyogo,JAPAN
(和訳:「日本、兵庫の下部白亜系産出の新種のティタノサウルス形類竜脚類(恐竜類:竜盤類)」)
>> 論文掲載誌「Zootaxa」における該当ページ(外部リンク) (31.1MB)
5 特筆すべき点
・他のいかなる竜脚類においても知られていなかった脳函、尾椎と血道弓の独特な8つの形質(固有派生形質)により明確に標徴づけされる。
・体骨格と頭骨の一部である脳函の両方が発見されている前期白亜紀の竜脚類は世界的に少なく、竜脚類、特にティタノサウルス形類の系統進化を考える上で重要な新たな情報や示唆をもたらしている。また日本産の竜脚類化石では最も情報量が多く最重要。
・今回の論文はオープンアクセス(ネット上で無料閲覧可能)。
6 今後の予定
(1)新属新種記載論文の出版に合わせた臨時展示を行う。 終了しました
展示内容は、ホロタイプ標本などを予定。
場所は人と自然の博物館3階丹波の恐竜化石展示コーナー(予定)。
期間は8月20日(水)~ 10月19日(日)。
(2)クリーニングの完了していない部分がまだあるので、クリーニングを完了させ近い将来それらに関する追加論文を出版する。
7 論文の要旨(和訳)
南西日本、兵庫県の下部白亜系篠山層群から発見された部分骨格をもとにティタノサウルス形類竜脚類の新属新種がたてられた。新分類群はTambatitanis amicitiaeと命名され、以下の尾椎、血道弓、脳函の特徴により標徴づけされる:後関節突起と棘突起の頂上は椎体の後端よりも後ろにある、前位尾椎の棘突起は前に強くカーブし側面観では弓型、棘突起の頂上は膨らんでおり狭く深いSPRF(棘突起前関節突起窩)の後背側への延長によりえぐれた半球状、前位尾椎の横突起は短くL型、前位血道弓は体全体との比率の上では竜脚類の中では最長、前位血道弓の遠位端は棒状、中位血道弓の遠位端は横方向に薄く前後に長いが頭方突起を欠く、後頭頂窓の腹側縁を作る傍後頭骨突起の軸の背側縁は内外に短く後面観ではV字型。系統解析によればTambatitanis amicitiaeは基盤的ティタノサウルス形類であり、東アジア固有のユーヘロプス科に属するかもしれない。系統解析に有用な情報を提供すると期待される形質とともに新分類群の高度に固有な形質を提示するために尾椎と血道弓を詳細に記載した。Tambatitanis amicitiaeの発見は、東アジアの基盤的なティタノサウルス形類は分類群の数の上だけでなく尾部骨格の形態の面でも多様であったことを示唆している。
8 結論(和訳)
1.西南日本の兵庫県に分布する下部白亜系篠山層群より発見された部分骨格に基づきティタノサウルス形類の新属新種Tambatitanis amicitiae gen. et sp. nov.,として記載された。
2. Tambatitanis amicitiae gen. et sp. nov.は脳函、尾椎および血道弓の8つのユニークな形質で標徴される。
3.Tambatitanis amicitiae gen. et sp. nov.は基盤的なティタノサウルス形類竜脚類であり、東アジア固有のユーヘロプス科に属する可能性がある。
4.本論文で詳細に記載された尾椎と血道弓にはこの種に限定される派生形質(固有派生形質)とともに系統解析上重要な情報となりうる形質も見られた。
5.Tambatitanis amicitiae の尾椎の独自性は東アジアのティタノサウルス形類は分類群の数と尾椎の形態の両面において多様であったこと示している。
6.Tambatitanis amicitiae の脳函にはこれまでティタノサウルス類でしか記載されていない形質が見られる。このことは、以下の二つの可能性、これら形質が非ティタノサウルス類ティタノサウルス形類に広く分布する、またはTambatitanisはティタノサウルス類である、のいずれかを示している。