森のシカは、夏は落ち葉を、冬は嫌いな植物を食べて生きぬく-シカ糞の遺伝情報から、シカの食べる植物の季節変化を解明-
森のシカは、夏は落ち葉を、冬は嫌いな植物を食べて生きぬく
-シカ糞の遺伝情報から、シカの食べる植物の季節変化を解明-
1 概要
中濱直之 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所兼兵庫県立人と自然の博物館)、古田智博 (元京都大学)、安藤温子 (国立環境研究所)、鈴木節子 (森林総合研究所)、高柳敦 (京都大学)、井鷺裕司 (京都大学) らの研究グループは、シカ糞の遺伝情報から、森林に生息するシカが食べる植物が季節によって異なることを明らかにしました。
近年、ニホンジカが全国的に増加するに伴って森林の植生が破壊され、生物多様性の衰退、土壌侵食など様々な影響が報告されています。シカの増加した森林では、林床に生える、シカの好む植物は食べられてほとんど無くなっていますが、シカは、そうなっても森林内で生息することが可能となっています。このようにシカの餌資源が乏しいにも関わらず、なぜシカがこうした森林内で生息できるのかは長らく謎に包まれていました。本研究ではシカ糞を季節別に集めて、それらに含まれる植物のDNAを調べて、シカが餌食している植物の種を明らかにしました。その結果、シカは冬から春にかけて、シカが好まない常緑樹 (スギなど) や草本植物を食べる割合が増加している一方で、夏から秋には、シカが好む落葉広葉樹 (落枝落葉など) を食べていることが分かりました。このように季節によって食物構成を変化させることで、一見して餌がほとんどない森林でもシカが生き延びていることが分かりました。
本研究は、シカの食物構成の詳細な解明だけでなく、植生が衰退した森林においてシカが生息できるメカニズムの一端を明らかにした重要な成果といえます。今後のシカの個体数管理や森林の植生を再生させるための知見として活用されることが期待されます。本研究成果は2020年10月15日9時に、国際科学誌「Forest Ecology and Management」の電子版に掲載されます。
2 詳細
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3 論文情報
(1) タイトル
DNA meta-barcoding revealed that sika deer foraging strategies vary with season in a forest with degraded understory vegetation
(植生の衰退した森林では、シカは季節によって採食戦略を変えていることがDNAメタバーコーディングにより明らかとなった)
(2) 著者
Naoyuki Nakahama, Tomohiro Furuta, Haruko Ando, Suzuki Setsuko, Atsushi Takayanagi, Yuji Isagi
(中濱直之、古田智博、安藤温子、鈴木節子、高柳敦、井鷺裕司)
(3) 雑誌・号・doi
雑誌:Forest Ecology and Management
号:電子出版のため未定
doi:未定
4 問い合わせ先
兵庫県立大学自然・環境科学研究所 講師
兵庫県立人と自然の博物館 研究員
中濱直之
電話:079-559-2001