140万年前のホモ属の卓越した技術を解明―エチオピア、コンソ遺跡出土の骨製ハンドアックスを詳細分析
140万年前のホモ属の卓越した技術を解明
―エチオピア、コンソ遺跡出土の骨製ハンドアックスを詳細分析
エチオピア、コンソ遺跡から出土した140万年前の骨製ハンドアックス(撮影・提供:Berhane Asfaw博士)
1.発表のポイント
- エチオピアと日本(東北大学・東京大学・兵庫県立人と自然の博物館)の共同研究チームが、エチオピア南部のコンソ遺跡から140万年前に遡る骨製のハンドアックスを発見。
- 本化石資料は、入念な剥離加工が骨の両面に施されており、100万年前以前に骨製ハンドアックスが製作されていたことを裏付ける。
- 体系的な使用痕分析の結果、刃部には動物解体のようにモノを切断する時にできる痕跡が残されていることが判明。
- 100万年前以前のアフリカのホモ属の技術が、この時期に洗練化されていったことを示す重要な証拠。
2.概要
エチオピアと日本の共同研究チームは、エチオピアのコンソ遺跡から140万年前に遡る骨製のハンドアックスを発見しました。これまでに100万年前を遡る骨製ハンドアックスは、タンザニアのオルドヴァイ渓谷で発見された一例しか知られていません。しかし、オルドヴァイの骨製ハンドアックスは単純な作りをしており、この一例のみで当時のホモ属が石以外の素材を用いて意図的にハンドアックスを製作していたとは言い切れませんでした。これに対してコンソ遺跡の骨製ハンドアックスは、カバの大腿骨の破片の両面に数多くの剥離加工が施されており、ヒトの手によって入念に製作されたことが示唆されます。さらに体系的な使用痕分析を行ったところ、刃部には微小剥離、摩滅、磨耗光沢、線状痕が認められ、それらの分布パターンは切断や鋸引き時に発生するものと類似しています。これらのことから、この骨製ハンドアックスは、石製ハンドアックスと同様に、動物解体等の作業に使われていたと考えられます。今回の発見は、精巧な作りをした骨製ハンドアックスが前期更新世にも作られていたことを示し、当時のアフリカのホモ属が、石だけでなく、骨でも精巧な作りの道具を製作できる卓越した技術を獲得していたことを示す、貴重な証拠となります。
3.詳細
発表の詳細については、下記の2つのリンク先を参照ください。
・東北大学東北アジア研究センター
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/07/press20200714-01-handaxe.html
・東京大学総合研究博物館
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/information/news_20200714.html
(1) 論文タイトル
A 1.4-million-year-old bone handaxe from Konso, Ethiopia, shows advanced tool technology in the early Acheulean
(初期アシュ―リアン石器文化における技術発展を示すエチオピア、コンソ遺跡で発見された140万年前の骨製ハンドアックス)
(2) 著者
Katsuhiro Sano, Yonas Beyene, Shigehiro Katoh, Daisuke Koyabu, Hideki Endo, Tomohiko Sasaki, Berhane Asfaw, and Gen Suwa
(3) 雑誌・号・DOI
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)
DOI:10.1073/pnas.2006370117
5.問合せ先
・加藤茂弘(兵庫県立人と自然の博物館 主任研究員)
電話:079-559-2001
※骨製ハンドアックスの発見や分析内容の詳細については、下記にお願いします。
・諏訪 元(東京大学名誉教授,東京大学総合研究博物館特招研究員)
電話:03-5841-2836
・佐野勝宏(東北大学東北アジア研究センター・教授)
電話:022-795-7692