2000年2月〜3月と5月〜6月に、神戸市北区の造成地でサイの化石が人と自然の博物館とボランティアの方々の手によって発掘されました。この化石は神戸層群と呼ばれる約3700万年前の地層から一部顔を出しているところを、1999年3月に館員によって発見されたものです。神戸層郡は、大昔に河川で運ばれた土砂が平野部にたまってできた地層で、植物(葉や木)の化石が豊富に含まれることで有名です。しかし、哺乳動物(けもの)の化石が神戸層郡から発掘されたのは今回が始めてです。
今回発掘された化石は、歯の特徴からザイサンアミノドンという種類であることがわかりました。ザイサンアミノドンは体長が5m近い大型のアミノドン類(絶滅したサイの仲間)で、現在のカバのように河川やその周辺で生活していたと推定されます。アミノドン類はサイの仲間ですが、角がありません。サイというと角を連想しますが実は絶滅したサイの仲間の大多数には角はなかったのです。
発掘作業の様子。中央に歯の化石が入ったブロックが見える。 化石はもろいにで、地層から取り出す前に石膏でカバーをかけます。 (右手の2つの白いかたまり) |
並んで出てきた下顎の頬歯(奥歯)と犬歯(牙) |
今回の発掘では、互いに近接した2箇所から、少なくとも4頭分のザイサンアミノドンの化石が植物の化石と一緒に産出しました。約3700万年前、神戸周辺は現在よりも温かく、森林の間を流れる河川にはザイサンアミノドンが群棲していたことでしょう。
ザイサンアミノドンは、様々な哺乳動物の化石と一緒に、カザフスタンやモンゴルなどの中央アジアの化石産地からも発見されています。約3700万年前には日本海はまだなく、当時の日本と中央アジアは完全な陸続きでした。ですから、中央アジアの化石産地と同様に、神戸層郡からもザイサンアミノドン以外の様々な動物が見つかる可能性があります。太古の神戸の森にはどんな動物がすんでいたのか、その探求は今始まったばかりなのです。
ザイサンアミノドン(松原尚志 作画) カザフスタンとモンゴル産の標本を元に復元 |
(地球科学研究部 三枝春生)
Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities,
Hyogo
Revised 2000/09/20