ハチ類はよく発達した丈夫な4枚の膜質の翅をもっている。 ハチ類の目名,「膜翅目(Hymenoptera)」はこの特徴から名付けれられた。 ハチ類のもう一つの特徴は胸部に腹部第一節が密着していることである。 ハチ類はこうして胸部をひとまわり大きくすることで,他の昆虫よりも 長く太い飛翔筋をもち,昆虫界有数の飛行家となっている。
口器は噛むタイプが基本で、大あごが発達しているが、ハナバチ類では 大あごを発達させたまま、小あごと下唇が長く伸びて1本の管をつくっている ので、花蜜などの液体を吸うことができる。
ハチといえば「刺す」ことを連想するが、ハチの毒針は産卵管の変形し たもので、毒針で刺すハチはハチ類全体では少ない。 まず、広腰亜目のハチたちは毒針に変形する前の植物用産卵管なので、刺せ ない。細腰亜目のうち、寄生バチ類では、他の昆虫の体に産むこむための産 卵管なので、広腰亜目のハチより鋭くなって、一部毒液を分泌するものがい るので、かなりの痛みを与える場合があるが、ごくわずかである。 有剣類になると、産卵管は毒針に変形し、産卵管としては機能せず、卵は毒 針の根元からポロリと出てくる。 一部のアリや一部のハナバチを除いて、すべての毒針は毒液の注射針として 機能するが、単独生活をしているハチたちはつかまないかぎり刺すことはな い。 巣に近づくと積極的に刺しにくるハチはすべて社会(集団)生活をしているハ チである。
こうした産卵管の変形(進化)にともなって、ハチの腹部に変化が生じた。 胸部に広く密着している広腰亜目の腹部は、寄生バチ類では腹部を曲げて獲物 の体に卵を産みこまねばならないので、胸部に密着している腹部第2節が細く なった。細くなると左右にもひねることができる。 有剣類でも獲物を麻酔するために毒針を使うので、腹部第2節は細いほうがいい 。 こうして、細腰亜目のハチでは腹部と胸部の間にくびれた関節構造(腹柄節) をもつようになった。アリ類では,さらに腹部第2節と第3節の間もくびれて, 2つの腹柄節をもつものもいる。
(大谷 剛,橋本佳明 人と自然の博物館)