(現生動物の種数 絵 橋本佳明 人と自然の博物館) |
ハチとアリのなかま,膜翅目昆虫は学名のついたものは12万種以上知られ, 実数は30万種に達すると考えられています。 日本では,これまでに約4500種が知られています。 体の大きさは,最小の昆虫である体長0.18ミリのアザミウマタマゴバチから 5センチをこえるツチバチ類まで種やグループによって変化に富んでいます。 食性も植物体をたべるものから,ほかの昆虫に寄生するもの,ほかの昆虫を 狩って食料にするもの,花粉・花蜜を採取するもの,キノコを栽培するもの など多様です。 習性は昆虫のなかではもっとも進化しており,アリやミツバチのように人と 変わらないような複雑な社会生活を営むものさえいます。
膜翅目昆虫は,腹部にくびれのない広腰亜目と腹部が細くくびれる 細腰亜目の2つに大きく分類されます。 広腰亜目に属するのはハバチ,キバチ類で,ナギナタハバチ上科,クシ ヒゲヒラタハバチ上科,ハバチ上科,クキバチ上科,キバチ上科,ヤド リキバチ上科の6上科に分けられ,これまでに約1万種が知られています。 細腰亜目のハチは,さらに有錐類と有剣類に区分されます。 有錐類に属するのは寄生バチのなかまで,タマバチ上科,クロバチ上科, ハラビロクロバチ上科,ヒゲナガクロバチ上科,コバチ上科,ヒメバチ上科, カギバラバチ上科,ヤセバチ上科,ツノヤセバチ上科の9上科に分けられます。 有剣類にはアリやミツバチ,スズメバチなどが含まれ,セイボウ上科, スズメバチ上科,ミツバチ上科の3上科に分類されます。
コラム.1 ホロ・タイプ標本(完模式標本、基準標本)とは ホロ・タイプ標本とは、生物の種や亜種名を定義する際にその材料になったオリジナルの標本です。この世に たった一つしかない標本です。他のものに例えると,長さの基準を決めるメートル原器のようなものといえる でしょう。生物の名前を分類学的に決定する場合にはホロ・タイプ標本を常に参照する必要があります。便宜 上、多くの人は種名を決定する際には、信頼の置ける記載(図鑑や検索表など)と比較して、同一と判断された 名を用いますが、これはあくまでも近似的な作業ととらえられます。正確には,実物同士を比較して,ホロ・ タイプ標本,あるいはホロ・タイプ標本と参照して同一と判断された標本-パラ・タイプ標本(副模式標本), レファレンス標本(参照標本)と一致しているかどうかで種名を決めねばなりません。従ってホロ・タイプ標 本やパラ・タイプ標本,レファレンス標本は永久に保存する必要があります。博物館の最も重要な機能の一つ は,この完模式標本を保管管理していくことです。 |