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フォギング

2009年5月26日
 日本ゾウムシ情報ネットワークの「地域ファウナ調査会」が5月15日から25日まで京都大学の芦生研究林(京都府丹南市)で行われ,幹事業務を兼ねて参加しました.

 11日の期間のうち参加メンバー20名が集中的に採集するのは23〜24日で,天気が悪く気温も上がらず,虫の動きは低調でした.天気の様子や季節の進み具合を見て臨機応変に採集方法を使い分け,採集対象をきりかえるのも技のうち.ビーティングを中心に,捕虫網でのスウィーピング,樹幹を刷毛で払う方法(名称不明)など,それぞれに工夫して採集しておられました.

 これらの通常採集のほかパントラップやFIT(フライト・インターセプト・トラップ),マレーゼトラップなども設置しました.パントラップやFITは歩きながら良さげ場所に次々と仕掛けていくだけで,ときどきザルで回収して回るだけの手軽な方法です.マレーゼトラップは設置には手間がかかりますが,一旦設置すると,定期的に回収に行くだけです.

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パントラップ,FITと回収用具

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マレーゼトラップ

 興味深かったのは東京農業大学の方々が4人掛かりで行っていた「フォギング」です.狙った木の下に受け皿を設置し,エンジン付きの噴霧器で巨大蚊取り線香を焚きます.霧に当たって落ちてくる虫は漏斗状の受け皿の底の瓶に回収されます.
 目的の枝に正確に十分に霧を当てるためには,時間帯を選んだり,空気の流れを読んで噴射する位置どりを変えたり,けっこうコツが要る作業のようです.
 もちろん受け皿の設置にも手間と時間が掛かります,今回は朝方の風の弱い時間帯に噴霧するため,逆算して起床は4時起きだったようです.噴霧完了後の落下待ち時間は約2時間.回収が完了したあとの撤収にもそれなりに時間が必要です.

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フォギング

 昆虫の採集方法は割と単純で機動的なものが多いのですが,その中でこのフォギングはきわめて大掛かりなものです.こういうのもあるんだなぁ,というのが感想です.

昆虫共生・沢田佳久

丹波の植物を調べる

2009年5月24日

植物リサーチクラブ専修科の有志の方達と丹波の植物を調べに篠山市に行きました。その中には地域研究員の方が3人いらっしゃいました。今回の調査はセミナーではありませんでしたが、リサーチクラブ共通のテーマで、希望者と丹波地域の植物を調査するというものです。

まず篠山口IC近くに集合し、どこに調査に行くかを決めました。そして、沢沿いに2箇所で調査しました。沢沿いのせいもあってか涼しく、フジやヤマブキがまだ咲き残っていました。天気はあまり良くなくて、午後から雨が降り出しましたが、なかなか良い調査だったと思います。

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夏頃にはまた違った植物に会えそうです。

山本伸子(自然・環境評価研究部

本日(5月24日)開催のオープンセミナー「身近な植物を顕微鏡で観察しよう」の準備のため、博物館のすぐそばにある深田公園でモチツツジの花を採集しようとしていたら、ブーンと大きな羽音が。。ハチかと思いきや、スズメガの仲間でした。野外に行くときは何を見つけるか分からないので、いつもデジカメを持参しています。これはシャッターチャンス!と思い、カメラを構えました(写真)。博物館に帰って、昆虫が専門の八木研究員に写真を見せたところ、スカシバというスズメガであることが判明しました。 羽が透けているところから「透かし羽」という名前になったとか。

その後八木氏から、このスカシバはオオスカシバであるというコメントが寄せられましたので、ご報告します。

 

高野温子 (自然・環境評価研究部)   sukashibaweb.jpg

岩槻邦男のコラム4

2009年5月23日

 ひとはくの新展開は成功しつつあると、多少独断的に自己評価します。根拠はいろいろありますが、計画の方針が妥当で、その結果さまざまないい現象が現れていると見るのもその理由の一つです。

 ひとはくの事務部には総務課、生涯学習課、情報管理課の3課があり、研究部は複数の部門で構成されており、最近は大学院生も所属しています。他に、委託で派遣されている管理や清掃の関係者もあります。ひとはく関係者は大学籍を含めて常勤職員は50余名(定員不補充などで、定員と定数は一致していません)ですが、大学院生、派遣職員や私のようなパートタイマーを加えると、広い意味の館員は100名近い規模になります。

 新展開が始まった時、県の職制とは別に、博物館独自の事業部組織がつくられました。と同時に、事業部員の座る席が設けられましたから、大学籍の教員も、指導主事も、事務職員も、職制で区別されることなく、館員の間の情報交流はスムースに行われ、恊働が円滑に進むようになりました。

 さらに、毎月1回、第2金曜の朝30分間、全館員が集まって月例報告会を開きます。新展開では、さまざまな項目に数値目標が設定されています。前の月に、その数字がどう動いたかを取りまとめ、厳密な内部評価を行う会合です。数字を見るだけだったら、全員が集まるまでもないのですが、この種の統計では、数字がしばしば一人歩きして、勝手な解釈につながることがありますので、報告会で問題になりそうな数字を検証し、問題のある項目についてはよりよい成果に結びつけるような方策が模索されます。短時間ですが、ここでも職制を超えて館員の意思疎通が円滑に進みます。

 わたしは、ひとはくに関与するまで、所属は一貫して高等教育機関でしたが、京大、東大、立教大、放送大と少しずつ違った4つの大学に勤務しました。しかし、どこでも、研究者側と事務側に考え方の相違があり、その間の意思の疎通が何らかの障壁に遮られているのを感じていました。

 東京大学では植物園という多少特異な性格の部署にいました。もとの国立大学では、教育研究を支えているのは教官だと考える雰囲気が強く、技官、事務官は教育研究支援要員と呼ばれたりしていました。だから、大学ではすべてを教官が決めようとし、教官は会議に時間を取られていました。植物園には優れた能力を備えた技官もいました。教官のもっとも大切な役割が研究教育にあることはいうまでもないことで、わたしも植物園在任中には、いいスタッフにも恵まれ、研究や教育にそれなりの成果をあげてきたと自信をもっていますが、さらに優れた技官との恊働にも積極的に取り組みました。技官の貢献をもとに、スエーデンの王立科学院が発行している雑誌AMBIOに共著の論文を出したりもしました。ことほど然様に、大学のような機関でも、教官、事務官、技官が三位一体で活動し、研究教育に貢献するのが本来のすがただと考え、そういう雰囲気づくりに努めました。

 日本の大学等機関では、残念ながら、一般的に、研究者と事務職員の間の意思の疎通には埋めがたい断絶があるのが現実です。そういう現実を見続けてきた目でみれば、ひとはくの事業部組織が、館員の意思疎通を円滑にする器となっており、恊働の精神を実体として構築しているのを見るのはたいへん心強いことです。恊働が実行されることによって、ひとはくは実際に実力(人員数でも個々人の能力でも)以上の成果を挙げているといえるのだと見ています。

 日本では大きい方だとはいえ、ひとはくの規模は欧米の主要な博物館等施設に比べるとずいぶん小さなものです。ですから、活動には規模に掣肘されるさまざまな制約があります。しかし、それにもかかわらず、最近のひとはくは、生涯学習支援、シンクタンク機能発揮に具体的な成果を描き始めています。まず、博物館内で、前向きの意思統一が進んでいることが原動力になっているためでしょう。

 

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

明石市立朝霧小学校のすぐそばに「朝霧山」という林があります。3年生のみなさんは、年に何回か朝霧山で虫調べをしています。

ひとはくの研究員が、児童生徒のみなさんといっしょに野外に行ってアドバイスできればいいのですが、なかなかむずかしいことも多いです。そんなときは、こんな方法もあります。

児童のみなさんや先生方に、野外での体験学習のときにつかまえた虫を、デジカメで撮影してもらいます。それを、電子メールやCDで、あらかじめ、ひとはくに送ってもらいます。

少々ピンボケの写真でもわかりますから、だいじょうぶ! プロですから。
たとえば・・・

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これくらいきれいに写っていたら、じゅうぶん鑑定できます。
ヤマトシジミというチョウです。目立たないですが、たぶん、どんな学校にもいると思います。このチョウの幼虫は、校庭の片隅に生えているカタバミという植物を食べます。

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これくらいボケた写真でもだいじょうぶ。
これはツマグロヒョウモンというチョウの幼虫です。たぶん、学校にパンジーを植えてあるので、そこに幼虫がついています。さなぎになるときに、パンジーから離れて、地面を歩いていることがあります。そんな幼虫を見つけたら、教室に連れて帰ると、すぐにさなぎになりますよ。さなぎには、幼虫の姿からは想像できない、金色の斑点がついています。チョウになるとこんなにきれいです!(写真略)

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ノコギリカミキリです。
朝霧小学校は、住宅地の中ですが、こんなに大きなカミキリムシもいるのですね。朝霧山のおかげです。

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カシワマイマイという蛾の幼虫です。巨大なケムシ。
ケムシはたいていさわってもだいじょうぶだけれど、これはあまりさわらない方がいいね。

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フタホシスジバネゴミムシです。
長い名前だからおぼえられないと思いますが、斑点が二つあって(フタホシ)、はねにスジがある(スジバネ)ゴミムシの仲間という意味です。ほーら、わかりやすいでしょう。

というような話を、児童のみなさんにすることができました。


(八木 剛@自然・環境評価研究部)
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