藤井 健博
ぼくが「人と自然の博物館」に来て見てもらいたいモノは、本館2階に展示してあるアケボノゾウです。
アケボノゾウというのは約200万年前から約60万年前まで日本に生息していたステゴドンゾウの一種で、兵庫県では明石市で化石が見つかっています。明石市近辺に分布する地層(大阪層群明石累層)は、アケボノゾウをはじめシフゾウなどの哺乳類化石がたくさん産出しており、これらは明石動物群と呼ばれています。明石動物群とは、大阪層群明石累層(約200〜100万年前の地層)で、さきほど出てきたアケボノゾウやシフゾウ(シカの仲間)などの哺乳類化石が一括され明石動物群と呼ばれています。明石動物群は、現在の日本の哺乳動物相ができはじめた時期を物語っています。
明石市からは明石原人と呼ばれる人骨化石が発見されていますが、これはもっとも新しいナウマンゾウが生息していた時期(数万年前)のものだと考えられています。
話を戻して、アケボノゾウの詳しい説明をします。
アケボノゾウとは、前に書いたとおり約200万年前から60万年前まで、日本に生息していたステゴドンゾウの一種です。約400万年前に中国から日本に渡ってきた巨大なツダンスキーゾウが、約200万年前に小型化してアケボノゾウが種分化した時代には、対馬海峡で日本が大陸から一時的に分断されることがあったと考えられ、アケボノゾウの種分化は日本の大陸からの分断と関係しているかも知れません。
最後に、文の中に何度か出てきたステゴドンの説明をしておきましょう。
ステゴドンとは、約500万年前から20〜30万年前までの期間に生存した長鼻類(ゾウの仲間)です。ステゴドンの分布の中心はアジアですが、アフリカと中近東にも2〜3種類が分布していました。ステゴドンの系統には中国の北部と日本に分布するツダンスキーゾウの仲間、東南アジアを分布の中心とするトリゴノセハルスゾウの仲間、インドを中心とするインシグニスゾウの仲間の3つの系統があり、それぞれの分布には地域性が見られ、アケボノゾウが日本、ツダンスキーゾウが中国、トリゴノセハルスゾウがジャワ、そしてインシグニスゾウがシワリクというような分布になっています。このように、アケボノゾウにはたくさんの種があり、分布も各地さまざまで、住む場所、環境によってさまざまな形や姿をしています。
あなたもぜひ、「人と自然の博物館」に来て、アケボノゾウを見てはどうでしょう?