9月2〜3日にかけて降り続けた雨で、紀伊半島の南部では大変な水害が起こりました。
この洪水で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
さて、兵庫県の川でも、この雨で水位があがり、川はとても危ない状況になりました。
川の観察会や川遊びをされる方は、雨の状況に十分に注意して頂ければと思います。
とは言っても、雨がたくさん降ると川がどんな感じになるのか、実際に眼でたしかめた方は少ないと思います。普通のひとは、雨だと屋内にいて、川の近くに様子を見に行くことがないからです。
今回は、武庫川の上流で観察会が予定されていたのですが、中止となったので、各地の写真を撮ったり、集めてみました。実際の様子をご覧ください。
まず最初は、円山川水系の八木川です。9月3日の夜には満水近くまでになりました。
普段は、きれいな川なんですが、雨が降るとこんな感じになります。
次は、六甲山系の芦屋川です。
増水すると、流速がとてもはやく、恐ろしい状態になります。
この川の洪水の様子は、NPO法人さんぴぃすさん が撮影してくれました。
こちらのホームページには、動画もあります。 【こちらをクリック】
さんぴぃすの大脇さん、河口さんありがとうございます。
普段は水がちょっと少ないぐらいで、堰堤の下で川遊びする子ども達が良く見られます。
(堰堤の下から堤防の上に逃げようと思うと、登り口まで結構距離があります)
大雨が降ると、一気に水かさが増えるので、川で遊ぶ方は逃げる場所もよく考えて、おりてください。
次は矢田川です。川の瀬と淵がきれいにできあがった場所が多く、セミナーでもよく使う写真です。
川の流路幅が十分あって蛇行部分の岩が残されている自然度の高いところです。
一面が川になってしまいますが、よく見ると、所々に流れが緩いところもあります。こういった場所に大きな礫が溜まったりします。ちょっと戸惑うかも知れませんが、こうした洪水があるおかげで、瀬や淵が維持されています。上流側にダムができて、洪水が弱くなると、瀬や淵は形成されにくくなります。
最後に三田市で博物館から最も近い川、池尻川です。
普段は、ほとんど水が流れておらず、水よりもアオミドロの方が良く流れているぐらいの川です。
ですが、洪水になると川の勾配がきついために、水の勢いは強くなります。
これも池尻川の写真です。こうした洪水のときには、水生昆虫は川底や周りの植物の根元などにもぐりこんで逃げるのですが、川底が3面張りで逃げ場がないので、多くの水生動物は流されていまいます。特に、泳ぐことができない、カワニナなどは、ひとたまりもありません。
この状況を軽減するために、『水辺のフィールドミュージアム研究会』のみなさんと一緒に、写真にあるような『障害物』を設置しています。おかげで、写真にもあるように、水の流れが左右に振れて、ブロックの裏側には流れが緩いところが出来上がっています。
*詳しくは、久加ら(2010)をご覧下さい。
川の生物のことを考えるときに、水の汚れだけに関心が行きがちですが、川の生物の観点からも、川で遊び人々の観点からも、洪水のときに、速やかに逃げる場所があるか、ということも重要な点になります。
一方で、こんな増水でも、全然、水が穏やかで、まるで池のような川面のところもあります。そこはどこでしょうか?
円山川水系出石川の加陽地区です。本流との合流点に近いうえ、勾配が極めて緩く、潮位の影響をうけるために、流れが全然ありません。通常で潮位が低いときのほうが流れがあるぐらいです。
ここは、12匹のコウノトリとおばさんと牛が映っているポスターの写真が撮られた場所としても有名で、コウノトリもよく餌を食べにきます。周りは大洪水にも関わらず、カモが悠々と泳いでいます。サギたちも、逃げてきた魚を狙って大集合しています。
このように合流点近くでは、水の流れが複雑になって、ところどころで沼のような場所や逆に流れが速い場所ができあがり、すんでいる生物の多様性が局所的に高くなります。こうした川の仕組みを良く理解して、自然再生事業に取り組むことがとても重要なります。
*詳しくは、Osawa. Mitsuhashi,Niwa,Ushimaru(2011)をご覧ください。
これからも台風がいくつかやってくると思いますが、安全なところから洪水のときの川の様子をみると、その川の特長が良く分かります。
最後に、しつこいようですが、雨が降り始めたり、山のほうに雨雲がかかっていたら、川遊びや観察はやめて、安全なところに避難してください。川の洪水は、とっても危険です。
【参考】
*兵庫県地域の風水害対策情報のページ
*防災学習(洪水編)
(みつはしひろむね)