風は吹くわ 雨は降るわ さぶいやら ぬくいやら
でも,だんだん春になってきていて,オトシブミの展示をやっている高
槻の「あくあぴあ芥川」でもそろそろ桜が咲きはじめる頃かもしれませ
ん.行くのなら花見も兼ねて,ですよ(勧誘).虫が動き始めたら,生
き虫も置きますので,その頃に行くのもいいですけど(勧誘).入場料
は無料ですし(勧誘).
で,オトシブミの話の続きをば.
オトシブミといえば,子供のために葉っぱを巻く虫という事で
『まじめでほのぼの』
のイメージですが,それは真実の半分でしかありません.母親オトシブ
ミは確かにそうなのですが,おやじオトシブミときた日には,ふだんは
ロクに働きもせずブラブラしてるかと思えば,いきなり凶暴で好戦的な
虫に豹変する恐ろしい動物なのです(ちょっと悪く言い過ぎてますが).
そもそも,オトシブミの仲間は大型の種類ではオスの体がグワッと変な
形になっています.前足がやたらと長いとか,口が長いとか,胸から首
にかけて長いとか,です.その代表は,日本産の種ではヒゲナガオトシ
ミです.この種類は雄の前胸が長く,さらに首が長く,さらに触角も長
くなっています.それらはたぶん背比べ(というか触角の先までのルー
ル)をするためです.
キリンオトシブミの♂(奥左)と♀(奥右)
ヒゲナガオトシブミ♂(手前左)
ロクロクビオトシブミの一種の♂(手前右)
ヒゲナガのヒゲ比べはまだエレガントなほうで,カシルリオトシブミは
前足を使ってレスリング状態になりますし,ルイスアシナガオトシブミ
は前脚で殴り合いをするようです.
世界的には,マダガスカル産で世界一大きいオトシブミとされている,
キリンオトシブミ(Trachelophorus giraffa)というのがいて,
これも大型のオス個体では首が長くなっています.触角に防御装備があ
りますので口の先までを比べるのではないでしょうか?
また,フィリピンのロクロクビオトシブミ類(Trachelismus spp.)
は,体は小さいのに雄の首は長大です.妖怪の「轆轤首(ろくろくび)」
みたいに首がうにょうにょ曲がるわけではありあません.付け根のと
ころ,つまり頭部と前胸の間で曲がるだけ.これでどうやって餌を摂る
のか心配になります.たぶん無理では? とにかく不健康な長さです.
珍しい虫なので今のところ戦い方は不明です.
ロクロクビオトシブミの一種の♂
このような「オトシブミの裏側」はそのつもりでいると観察の機会は
少なくありません.もっとも身近なカシルリオトシブミでも,多くの
個体が活動しているところでみていると,一匹の♂が飛んできていき
なりバトルが始まります.ふつうは継続時間が短いので要注意.
昆虫共生・沢田佳久