先日,氷ノ山で奇妙なものをみました.
写真でわかるように,アケビコノハの幼虫です.ただしその背中に
なにやら華麗な装飾が!? …よく見ると,トゲトゲのそれぞれが虫
で,たぶん蜂の幼虫です.
このテの光景で思い出すのは,ケムシやイモムシの体から蜂の幼虫
が一斉に出てきて小さな繭を作る,という状況です.コマユバチによ
る寄生です.出てくる現場に出くわすことは稀ですが,廃墟となった
ケムシの近くに小さな繭が鈴なりになっている状況はよく目にします.
で,問題のシーンはというと,一斉に出てきたとすると,寄生虫が
一カ所にかたまりすぎてます.同じ穴から出てきたためでしょうか?
そうではなく,シッポを外にして.頭がイモムシに食い込んでいる
のです.
とても派手な事態なので,そのスジ(寄生蜂屋さんとかイモムシ
好きとかアケビコノハ愛好家とかアケビ愛好家とか)の間では知られ
ているんだろうなと,現場では思って,撮影だけして持ち帰りません
でした.
ネット上で検索(「アケビコノハ」と「コマユバチ」)してみると,
似た状態を撮影された方がありました(しかも最近,西宮の甲山),
その方の観察は,アケビコノハの幼虫の背中に大量の卵(?)が産み
つけられていて,それが孵って成長し始めるところだったようです.
連絡してみると,そのアケビコノハ幼虫は死んでしまったらしく,背
中の虫の正体は不明のままとの事.
写真を比較してみると甲山の例は私が氷ノ山で見た状態よりは少し
前の段階のようです.要するに,この虫は外部寄生性,多寄生性の,
たぶん蜂の幼虫だろうということしか,わかりません.
一方,蜂好きの方々に伺いを立てておいたら,ある方からヒメコ
バチ科の Euplectrus属あたりに似た生態のものがあり,同属には
アケビコノハの天敵であるアケビコノハヒメコバチという種がいる,
という事を教えて頂きました.関連文献には同属の種の幼虫がアワ
ヨトウに取り付いている写真があり,似た雰囲気です.
ただ,氷ノ山の体のサイズがヒメコバチとしては大きすぎ,もち
ろんアケビコノハヒメコバチかどうかは即断できません,
やはり採集しとかなあきませんね.
昆虫共生・沢田佳久