毎年やっている深田公園でのオトシブミ観察会を,10日に行いました.結果は全部で5種(揺籃4種,成虫2種)でした.
ヒメクロオトシブミはクヌギの苗木に成虫も揺籃も見られたのですが,切ったり巻いたりしている現場は見られませんでした.例年,作業中の個体が見られるハギルリオトシブミも,今年は成虫が摂食しているだけでした.今年はあらたにエゴツルクビトシブミの揺籃が多数みつかりました.何年も前から目をつけていたエゴノキなのですが,今年突然降って湧いたように出現,しばらく成虫を探したのですが,結局見つからず,
深田公園はちょうどモチツツジの季節です.
モチツツジはコバノミツバツツジより数週間遅れて咲きます.柔らかな色で,花も大きいのですが,あまり人気がないように思います.たぶん奇麗に咲いていないからでしょう.たいていはどこか傷があったり,複数の花がグシャッとかたまっていたりします.近づいてみると蕾や萼がネトネトで虫がへばりついています.要するに,きちゃない.
虫目線で見ると,モチツツジの蕾はかなり魅力的,有用な資源に映る(たぶん匂いで)らしく,いろんな虫が魅せられ引き寄せられます.その食害を防ぐためにモチツツジは(「おいしそう」はそのままに)このトリモチ戦術を発達させたのでしょう.殺生な,とはこの事です.その結果,実に様々な虫が捕まって死んでいます,粘着した半死の虫を吸血して回るサシガメなども存在します.地獄絵図です.
しかし,トリモチ戦術も完璧ではありません.ツツジトゲムネサルゾウムシは,これに適応した虫です.この虫はモチツツジの蕾に穴をあけ,産卵するのです.もっともネトネト度が高い(?)蕾の表面でさえ,ゆっくりですが掻き分けるように歩くことができます.
共進化の観点からいうと,モチツツジをモチツツジにしたのは,たぶんこの虫です.と同時に,ツツジトゲムネサルゾウムシをツツジトゲムネサルゾウムシにしたのも,たぶんこの木です.そして果てしないネトネト化競争は今も続いているのでしょう.
昆虫共生・沢田佳久