ハチ北観光協会との協力関係のもと,ひとはくがハチ北高原(香美町)で実施している総合共同研究があります.
 宿泊客からの要望に応え,身近な動・植物についての案内ができるよう,あるいは地元ならでは自然を観光資源として活用し,スキーシーズン以外にもたくさんの方々にハチ北を訪れていただく方策を探ろうとするものです.その活動の一環として,植物観察会が10月8日に開かれました.今回は初めての試みとしてのキノコ観察会です.

 ハチ北では夏の間あまり雨が降らず,例年よりもキノコの発生量は少ないとのことでしたが,それでも大池周辺など各地に点在する自然林内や道路沿いの斜面には,たくさんの種類のキノコが生えていました.その中で特に目立つものを紹介します.


写真1 カエンタケ

 まず,昨年誤った食べた方が亡くなられて一躍有名になってしまったカエンタケです(写真1).いかにも近寄ると危ない雰囲気を醸しだす色と形です.汁が皮膚につくとひどい炎症をおこすという報告がありますから,素手では触らない方がいいでしょう.



写真2 ホコリタケの仲間

 次はホコリタケの仲間(写真2).ホコリタケの仲間は地面から生えているのが普通ですが,今回ハチ北で見つけたのは倒木の幹にしっかりとついていて,直径が8cmほどもある大型のものでした.中を割ってみるとまだ真っ白ですが,胞子が熟す時には真っ黒になります.キノコの図鑑にも載っていないもので,残念ながら種名がわかりません.



写真3 ヒトヨタケの仲間

 この白い綿毛でおおわれたキノコは,ザラエノヒトヨタケあるいはコツブザラエノヒトヨタケというヒトヨタケの仲間です(写真3).「一夜茸」とは,傘が開いてしばらくすると,まるでインクのように真っ黒に溶けてしまう不思議な様子を表したもので,このキノコも採集したサンプルを見ると夕方には黒ずんでいました.図鑑によるとアンモニア菌の仲間だそうですから,もしかするとこの場所で動物がおしっこをしたのか,あるいは死体があったのかもしれません.



写真4 キノコ鍋の宴

 おいしく食べられるキノコとしては,アミタケ,ヌメリイグチ,オウギタケ,ハタケシメジ,オニナラタケ(ナラタケとは違って地面から生える.地元では「もとあし」と呼んでいる),アマタケなどが採れ,最後はキノコ鍋にして食べました(写真4).
 ハチ北観光協会の事務所がある大笹の集落では,アミタケを食べる習慣がないそうで,今回初めて食用キノコと知って,鍋の中でみるみる赤紫色に変色してゆく様子に驚くとともに,そのおいしさに感動されていました.

(自然環境評価研究部 秋山弘之)

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