ヒメボタルは、日本固有の陸生のホタルです。丹波市山南町には、ヒメボタルの生息地が多数あります。
昨夜(2014年6月25日)、「猪名川流域ひめぼたるネットワーク」のみなさんと、山南のヒメボタルを見に行きました。
20時頃からいっせいに湧き出してきて、暗闇の中で多くの個体が同調して光るようすは、とてもすばらしいです。
いっしょに行った伊丹市昆虫館の長島さんは「ホタルの光で山の形がわかりますね」と言ってました。
みなさん、この意味、わかりますか?
ヒメボタルのメスは飛べないため、メスを探して飛ぶオスは地表近くの低空を飛翔します。飛ぶ高さはだいたい決まっているので、地形に沿って飛んでいることになります。ヒメボタルのオスが数十匹いやそれ以上の個体数、0.5秒間隔ほどの黄色いフラッシュ光で同調して光ると、いっせいに光った瞬間を見渡したとき、光の集合が、そこの地形、山の形になる、ということです。
そのようすは、写真ではとても表現できませんが、昨夜の写真をご紹介しておきます。
この機会に、みなさんも、ぜひいらしてください。
【集合場所】6月28日(土)薬草薬樹公園リフレッシュ館駐車場/7月12日(土)丹波市役所山南支所(やまなみホール)前
【受付時間】午後6時30分~午後8時 順次、現地へ出発
【参加費】中学生以上500円・小学生300円・未就学児以下無料(申込不要)
【注意】当日は靴で参加下さい。
※ ヒメボタルは野生の生き物ですので、当日の気象条件等により見られなかったり数が少ないこともあります。
本件へのお問い合わせは、姫ボタルまつり実行委員会(薬草薬樹公園リフレッシュ館:0795-76-2121)まで。
- - - - - - - - - もう一つの見どころ! - - - - - - - - -
ヒメボタルは本州北端から九州南端まで各地に生息していますが、このような「祭り」が継続的に開催されているところは、そんなにありません。
まず、ヒメボタルの生息地を発見するのは簡単ではありません。限られた時期、時刻に、暗い森の中の、地道な調査が必要です。
ヒメボタルが生息していて、かつ、多くの人が安全、快適に観察できる場所となると、一気に限定されます。広々とした明るい空間に、ヒメボタルはあまりいません。
ここまでは物理的な環境条件ですが、さらに重要な条件は、地元のみなさんです。
わかる人にはわかると思いますが、地元の方々の温かい「おもてなし」、しかも継続的に、となると、そんなに簡単なことではありません。
姫ボタルまつりのスタッフの方々のみならず、観察地の近くにいらっしゃる地元のみなさんも、とてもいい雰囲気です。
昨夜も、ヒメボタルを見に来られてる地元の方々に何人もお会いしました。
いい雰囲気は来場者にも伝わりますので、全体の雰囲気がよくなるんですよね・・・
ぜひ、そんな空気を、感じていただければと思います。
(八木 剛 記)
梅雨真っ只中、じめじめと蒸し暑い日が続きますがみなさんいかがお過ごしでしょうか?
4月から、フロアスタッフに新メンバーが加わったことをみなさまご存じでしょうか?
今日はその新メンバーをご紹介したいと思います!
北谷沙也乃さんです♪
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初めまして!フロアスタッフの北谷です^^!
まだまだ新米ですが、先輩方に支えられながら頑張っています!
「ひとはく」は研究員の先生方、フロアスタッフをはじめ楽しく、魅力的な方ばかりです。
ぜひ、会いにきてください^^!
▼ ひとはく探検隊でのひとコマ!とってもたのしそうですねぇ![]() |
![]() ▲ 鹿のツノ(結構重い!)を掲げてみせる オチャメな北谷さん |
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明るく天真爛漫な北谷さんの周りは、いつも笑いが絶えません!
また、しっかり者で頼もしい存在でもあります^^
8月の『うきうきワークショップ』に向けて、何やら楽しいイベントを企画中の様ですので
北谷さんに会いに、みなさま是非ひとはくへいらしてくださいね!
フロアスタッフ一同お待ちしております♪
★7月の『うきうきワークショップ』のポスターはこちら★
また、ひとはくへ遊びに来られる際はぜひ『うきうきカレンダー』をチェックして来てくださいね!
たのしさ2倍になることまちがいなしですよ♪
ユニバーサル・ミュージアムをめざして54
C・W ニコルさんと森を歩く――『アファンの森の物語』書評――
三谷 雅純(みたに まさずみ)
親しくしている方が信州に行ってきたとおっしゃって、本を届けて下さいました。その方とは、もう、長い付き合いです。いつ知り合ったのか記憶をたどると、ニコルさんの穏やかな声に行き当たりました。その方と共に、ニコルさんと談笑した記憶にたどり着いたのです。その方も、わたしがニコルさんと談笑していたことを憶えていたのでしょう。奥さまとお二人、長野県の黒姫(くろひめ)を訪れた際、わたしの為にニコルさんの本を求められたのでした。本の名前は『アファンの森の物語』 (1) といいます。
その方は化学畑の技術者でした。実験室のお仕事が多かったのだと思います。しかし、その職業とは裏腹(うらはら)に、野遊びが大好きです。魚釣りやハイキングといった趣味をお持ちでした。
その方は読書と歴史も好きなのですが――事実、古い歴史のある街(まち)を歩くこともなさるのですが、数多くお持ちの趣味の中で、わたしは野遊びが一番好きだとおっしゃるような気がします。
だからでしょう。十年ほど前から狩猟免許をお持ちです。狩猟免許には種類があって、ライフルや空気銃、罠猟(わなりょう)など、使う猟具に応じた免許が必要なのですが、その方は空気銃の免許をお持ちでした。
狩猟というと鳥や獣(けもの)を殺す残酷な行為だと、頭から毛嫌いする人がいます。理由もなく野生動物を殺すことは慎むべきです。しかし、わたしは野生動物を狩って肉を得ることと、理由もなく殺すこととは、本質的に異なる行為だと思っています。頭から毛嫌いする人は、その区別がつかないのでしょう。
その方は区別がつくのです。キジやカモといった獲物が捕れれば、料理をして、きちんと食べるのだそうです。野にいるキジやカモは、確かに温かい血の通った野生生物です。そして調理をすることによって食物になります。人にとって火のコントロールは象徴的な儀式でもあるのです。人の本質的な行為のひとつだと思います。
☆ ☆
『アファンの森の物語』は、南ウエールズ出身のC・W ニコルさんが日本に出会ってから、長野県北部の黒姫で森の一部を買い取り、手入れをし、いろいろな方と協力して、現在の「アファンの森」ができあがるまでを記録した本です。その歴史にはニコルさんのさまざまな思いが込められているのでしょう。実際、最初の黒姫の森は、「幽霊林」と呼ばれる、人が利用しなくなった荒れ果てた森でした。
「アファン」というのは、ウェールズに住むニコルさんたちケルト人の言葉(ことば)――英語のことではありません。スコットランドやアイルランドと同じように、ウェールズに住むケルト人も他民族に侵略され、英語という強者の言葉(ことば)を強要された民族なのです。ちなみに「アファン」はウェールズ語で「風の通る谷間」という意味だそうです。もともと南ウェールズには、アファン・アルゴード森林公園と名付けた公園があったのだそうです。
先に「さまざまな思い」と書きましたが、ニコルさんの主張は一貫しているようです。それは、「人の手が入らない森は荒れた森だ」という主張です。わたし自身はコンゴ共和国で、ンドキの森という無人の原生林に初めて足跡を記(しる)しました (2) 。その森で、消耗の激しい、全身、泥だらけの調査を経験しました。しかし、ニコルさんは「人の手が入らない森は、荒れた森だ」とおっしゃるのです。ニコルさんとわたしの言うことは、矛盾して聞こえます。なぜなのでしょう?
本物の原生林は、そうおいそれとあるものではありません。ンドキの森にしたところで、わたし達の侵入を阻んだ沼地には、驚くほど昔――数十年前――のアブラヤシの種がひとつ、腐らずに残っていたのです。アフリカでアブラヤシは大昔から栽培されていました。多分、新しい森を求めた進取の気性に富むピグミーの若者がンドキの森に入り込み、森に歩道のように伸びたゾウ道をたどって、アブラヤシをかじり、捨てたのだと思います。そのような森に少しばかり人が入ったとしても、森は何事もなかったかのように振る舞います。しかし、大昔から人が生活に使い、利用してきた森では、人が使わなくなると、とたんにツルがはびこり、空間がふさがれて、簡単には入れなくなるのです。ウェールズも日本も、すでに本当の原生林はありません。どこまでも人の痕跡が続くのです。そのようなところでは、積極的に利用することが、美しい森を維持するためには、とても大切なのです。ニコルさんとわたしの言うことは、何も矛盾していません。
ニコルさんも自分用の狩猟免許を手に入れ、地元の猟友会に参加しました。猟師こそが、もっともよく森を知り、伝統的に自然に親しんできた人びとだからです。もちろん今では、元来の意味で猟師はいません。つまり、「狩猟だけで生計を立てている人はいない」という意味です。にも関わらず現在でも信州の「猟師」は、雪の中で火を起こし、クマを狩ることができるのです。
☆ ☆
ウェールズのアファンの谷は、炭坑で栄えた地域にあったのだそうです。ニコルさんが少年の頃は、石炭を掘る時に出る土砂や石でできたボタ山が、あちこちにあったようです。その時、アファン・アルゴードに森はすでになく、炭坑で働く人びとは、ずらりと並んだ集合住宅で暮らしていたということです。
ところがエネルギー源が石炭から石油に変わると、ウェールズの鉱業地帯はさびれてしまいます。アファン・アルゴードでは、風雨にさらされたボタ山から有毒物質が流れ出したということです。
そのアファン・アルゴードのボタ山に緑がよみがえりました。ウェールズの人びとは、ボタ山に緑を再生したのです。最初は根で土砂を留(と)めるために草を生やし、次に土を豊かにするカバやポプラ、カラマツといった木を生やす。このような樹種は空中窒素を固定して土を肥やします。そうしている内に、やがてハリネズミやキツネ、イタチ、リス、シカなどの動物がもどってきます。森は少しずつにぎやかさになるのです。こうした努力の結果が、アファン・アルゴード森林公園として結実しました。
ニコルさんは石炭採掘のボタ山で荒れたウェールズと、人の介入で豊かに森が再生したウェールズのふたつを間近で見ました。この経験があるからこそ、信州の黒姫でも「幽霊林」を「アファンの森」と名付け、人為的によみがえらせる努力をしてきたのだと思います。
わたしが『アファンの森の物語』からイメージしたのは、産業革命以前のウェールズの豊かな森と人びとの暮らしでした。ニコルさんはそこに、自然と人のよりよい(とニコルさんが信じる)関係を見つけたのではないでしょうか。黒姫の「幽霊林」を「アファンの森」と名付けたのも、人の努力によって、自然と人はよい関係を再生できると信じているからだと思います。
☆ ☆
ニコルさんには、『アファンの森の物語』以外にも、『勇魚(いさな)』 (3) という小説があります。幕末の紀州・太地浦とカナダの話です。片腕を失ったクジラ捕りが軸になって展開する歴史物語です。捕鯨は非難されがちです。希少生物の保全という見方は肯けます。しかし、伝統的な猟法で捕る捕鯨も残るべきだという気がします。捕鯨が、みさかいもなく市場経済と結び付くことがいけないのだと思うのです――市場経済は現実の経済システムですから、否定するべきものではありません。ここでは、市場経済の枠では括(くく)れない事実も、現実に存在すると言っているのです。
ニコルさんは、基本的にはクマを守りますが、クマ狩りもします。やみくもな保護ではなく、関係を維持したいという保全の発想です。クマは森の一部です。クマは人も含めた循環のサイクルを作り出します。ニコルさんにとって、人とは、重要な循環を形作るはずの自然の一部なのでしょう。
今回は、あまり「ユニバーサル・ミュージアムをめざして」にふさわしい内容ではなかったかもしれません。
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(1) 『アファンの森の物語』(C・W ニコル 著、アートデイズ、1,400円+税)
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB12379705
(2) 『ンドキの森』(三谷雅純 著、どうぶつ社、絶版) 残念ながら絶版になっていますが、古本では、まだ、きれいな物が手に入ります。この本の出版の後、ンドキの森は世界遺産に登録されました。
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN15594185
http://kodomonohon.com/bul/314/314_w.html
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/forest-elephant/aj011_3.html
(3) 『勇魚』 上・下(C・W ニコル 著、文春文庫、絶版)