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7月7日(土)、8日(日)のフロアスタッフとあそぼう画はくの日「カニを描こう」でした。

カニの目は昆虫と同じ。六角形の小さな単眼がたくさん集まった複眼です。
カニは魚と同じ。えら呼吸。水を取り入れてその中の酸素を吸います。知ってたかな?

クイズでカニのことをくわしくなったところで、いよいよお絵かきです。
透明のプラスティック樹脂に包まれた封入標本や、ビンの中で液体に浸かっている液浸(えきしん)標本を観察しながら、鉛筆や色鉛筆でスケッチしました。

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よ~く見てるね!からだの細かいデコボコ、足のつき方。いろんな角度から観察して描いてくださったお友だちもいました。
 
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仕上がった絵は4階ひとはくサロンの休憩コーナーに展示しています。
素敵な絵がいっぱいです。必見!みなさまどうぞご覧くださいね。

8日(日)大雨警報のため延期になった「ひとはく収蔵資料スペシャル企画 標本のミカタVol.2海の無脊椎動物たち~イカタコエビカニ~」は22日(日)に開催。(クリック!)
こちらもどうぞお楽しみに!
みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

フロアスタッフいしくら

みなさん、「但馬牛博物館」って、ご存じですか?
但馬牧場公園の中にあります。今年4月、リニューアルオープンしました。人と自然の博物館も、お手伝いしましたよ。
そんなご縁で、この夏、初のコラボ企画を実施します。

夏休み自由研究特集 むし・いし・うし!

人と自然の博物館・牧場公園の専門家と、楽しく遊んで自由研究もできるスペシャルイベントを用意しました。
いっぱい体験して学んでくださいね!

日時 平成30年8月19日(日)10:00~15:00
場所 兵庫県立但馬牧場公園
   兵庫県美方郡新温泉町丹土1033 TEL: 0796-92-2641
   「湯村温泉」から車で15分くらいです。
参加費:無料、申込:不要
※ ただし、定員があるイベントは、当日9:00〜現地で受付、先着順とします。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 内 容 〜 〜 〜 〜 〜 〜

むし! 昆虫大捜査線
自由に虫とりをし、つかまえた虫をその場で展示。牧場公園にどんな虫がいるのか、みんなで調べてみよう!
対象 幼児〜小学生
定員 なし
時間 10:00〜15:00自由参加
講師 人と自然の博物館 主任研究員 八木 剛
持ち物 虫とりアミ、虫かごなど
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いし! 化石さがし体験
新温泉町産の石をかなづちで割って、植物や昆虫の化石を探してみよう!
対象 小学生以上(低学年は保護者同伴)
定員 80名
時間 ①10:00~ ②11:00~ ③13:00~ ④14:00~(各回20名)
講師 人と自然の博物館 主任研究員 半田久美子
持ち物 特になし
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うし! 牛のお医者さん体験
牧場公園の牛の胸の音を聞いたり、体重をはかったりして牛のお医者さんになってみよう!
対象 小学生以上(低学年は保護者同伴)
定員 40名
時間 ①10:30~ ②13:30~(各回20名)
講師 但馬牧場公園 獣医師 田原和彦
持ち物 タオル、軍手、長靴
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移動博物館車「ゆめはく」も、出動します!
内容は、定番の「むしむしみっけ」です。
対象 どなたでも
時間 10:00〜15:00
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bokujokoen2018leaf.jpg ← このチラシをダウンロード

お問合せ
むし・いし・ゆめはく → ひとはく
うし → 但馬牧場公園 TEL: 0796-92-2641(木曜休園)


(八木 剛)

夏の特別企画,江田コレクション展2018 「美しき蝶たちとの出会い」が7月7日から,始まりました.
 残念なことに,人博には,たくさんの標本を並べられる特別展示室などがないので,本館の色々な場所に,200種を超える世界の美麗な蝶や希少な蝶,変わった形の蝶などを,所狭しと,お洒落に展示してみました.開館以降,最大規模のコレクション展です.空飛ぶ宝石と呼ばれるモルフォ蝶を眺めながら,休息していただけるコーナーもあります.是非,今年の夏は,博物館で涼を取り,美しき多様性の世界に浸るひと時を,お過ごしください.お待ちしております(系統・昆虫研 橋本佳明 山内健生)

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月 の 第1日曜日は 「 ひとはくKids(キッズ)サンデー 」です。
 
7月のKidsサンデーは、晴れのよい天気でした。
 

博物館のエントランスホール近くでは、ネジバナの花が咲きだしています。

 

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▲芝生地に咲いているネジバナの花                                                            


博物館の4階入口近くにあるコシアカツバメの巣のうち、
今年5月中旬にできた巣を7月1日の朝 見ると、なんとスズメが
顔を出しているではありませんか。先週まではコシアカツバメが
出入りをしていたんですが・・・。

 

 

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▲スズメが顔をだしている、元?コシアカツバメの巣(今は、スズメの巣?)

前の週の様子は・・・

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▲スズメが入る前(6月25日)のコシアカツバメの巣  

つぎの6月18日の写真と比べると、6月25日以降の巣は
泥だんご が つぎ足されて、入り口のところが、少しだけ
トックリの細くなった部分のようになっています。
(スズメ対策だったのではないかと思うのですが・・・)

先々週の様子は・・・

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▲スズメが入る前(6月18日)のコシアカツバメの巣


 

Kidsサンデーのプログラムの様子などの報告で~す。

 



午前中は、

まずはじめに 研究員による「サンデーぜみ『アメンボをゲットしよう!』
が行われました。その後『泥だんご をつくろう!』が行われました。


『アメンボをゲットしよう!』では、
研究員からアメンボの捕まえ方や運ぶ時に注意することなどを伝授してもらってから、
みんなで深田公園にでて、水面にいるアメンボをさがしました。

 

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▲研究員からアメンボのことを教わっています

 
みんなで、外に出てアメンボを捕まえます。

 

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  ▲水辺でアメンボを さがしています      ▲ビニールプールにアメンボを入れます
                        (博物館の建物に映ったようす)


みんなで、たくさんのアメンボや、その他、オタマジャクシやマツモムシなど
いろいろな生きものを見つけていましたよ。




『泥だんご を つくろう!』では、
みんなそれぞれ、いろんな大きさの泥だんごをつくっていました。
お父さんのは大きいですねエ~。
(このプログラムは午後も 実施されました)


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   ▲『泥だんご を つくろう!』の様子



 

 

それから フロアスタッフによるプログラムは、
「デジタル紙芝居『丹波の恐竜たんたんのナイトミュージアム』」が上演されたり、
「展示解説『 海の仲間たちツアー ~大きな骨は何の骨?~』」が行われました。



デジタル紙芝居が上演されるシアター内は、 たくさんの人が上演されるのを
待っていました。
 

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▲『丹波の恐竜たんたんのナイトミュージアム』が始まる直前の様子                  





 展示解説では、海の仲間たちのクイズで、ウミガメの仲間のクイズもありましたよ 。
アオウミガメの「アオ」は・・・。




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                ▲『海の仲間たちツアー』の様子

 

 


午後は、
 
ひとはく連携活動グループのrun♪run♪plaza(るんるんプラザ)さんと
研究員がコラボした企画『いしころは おもしろい!』が実施されました。

『いしころは おもしろい!』では、石ころをつないでゆく「いしころコネクト」や
砂を観察する「すなくらべ」、好きな石ころを選ぶ「いしころランキング」など、
いろいろなプログラムが行われていましたよ。

 

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              ▲『いしころは おもしろい!』の様子

 みんな~ たのしかった~?



それから、
 ひとはく連携活動グループの人と自然の会のみなさんによる
パネルシアター(「とべない ほたる」と「たなばた」の お話)が
行われましたが、様子を撮影しようと思ったのですが 間に合わず、
あとかたづけも終わって、みなさん移動されようとしていました。

そこを無理を言って、看板とともに写真を撮らせていただきました。
みなさん笑顔で対応してくださいました。



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▲パネルシアターを上演された人と自然の会のみなさん


パネルシアターの中に でてくるホタルは、きれいにお尻が光っていたそうです。
見たかったな~




午後のフロアスタッフによるプログラムは、
「フロアスタッフとあそぼう『ささ舟をつくってみよう!』」や
「デジタル紙芝居『オランとウ―たんのジャングル探検記』」が 行われました。

 

『ささ舟をつくってみよう!』では、
ササ舟を作ったら、屋外の特設会場(?)に設置された専用の装置(?)で
ササ舟を流して遊んでいましたよ。

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       ▲『ササ舟をつくってみよう!』の様子


ササ舟は、水に うまく浮かんだ かな? 

 

 

午後の研究員によるプログラムは、

『チョウのモビールをつくろう!』や『解説!丹波の恐竜化石』、
「サンデーさーくる『カエルぱっちんをつくろう!』」が行われました。



『チョウのモビールをつくろう!』では、アゲハチョウの成虫と幼虫の標本を観察したり、
それらの写真をみながら、成虫と幼虫の絵に色塗りをします。

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 ▲研究員が標本を使って説明をしています

 

 

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 ▲チョウのモビール、うまくできるかな? ▲できた作品と一緒にハイ、ポーズ!



『解説!丹波の恐竜化石』では、恐竜ラボで、化石をクリーニングするときに
使う道具などの詳しい説明もありました。

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▲『解説!丹波の恐竜化石』の恐竜ラボでの様子



『カエルぱっちんをつくろう!』では、研究員から、身近に見られるカエル類の
話を聞いて、パチンと はねる おもちゃをつくりました。


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                           ▲『カエルぱっちんをつくろう!』の様子 

 

 


 <ちょっとした出来事>
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 博物館の開館時間のすこし前に、4階入口の近くで、
 コシアカツバメの巣の写真を撮っていると・・・

 開館を待っておられる、小さな女の子とそのお母さんが
 いらっしゃいました。

   その女の子の手には、植物が・・・。

 そこで、思わず声をかけてしまいました。


 お母さんによると、
 すこし前に、その植物で遊んでおられたそうで、
 どんな遊びをしていたのか、教えてもらいましたよ。


 女の子は、「ひとはく」(博物館)のことを
 「きょうりゅう」と呼んでいて、
  今日も「きょうりゅう いこう」と言って来館されたようです。
  

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   ▲博物館の入口近くで出会った親子さん

 

 後で、お父さんと合流されて、Kidsサンデーのいろんな
 プログラムを体験してくれていました。
 
 また、ご家族で来てくださいね。

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今回は、関西ユース(大学生のボランティア)のお姉さんお兄さん
(西さん、野坂さん、上中さん、坂田さん、龍見さん、中谷さん、
岸本さん)が 子どもたちのサポートをしてくれました。
お疲れ様でした!




次回の Kidsサンデーは、2018年8月5日(日)に行われます。


 

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 ご家族みんなで、ひとはくへ お越しください!

 
                   Kidsサンデープロジェクト 小舘

ヒトの<こころ>の進化などー1

障がいのあるネアンデルタール人は幸せだったか?ー1

三谷 雅純(みたに まさずみ)


 イラク北部からイラン西部、トルコ南東部にかけては、クルディスタンと呼ばれる地域が広がります。山岳地帯で、「国を持たない最大の民族」であるクルド人が住む地域として有名です。ちなみに「クルディスタン」は「クルド人の土地」という意味です。「アフガニスタン」や「パキスタン」と同じく「-イスタン」という接尾辞が、「~の土地」とか「~の多く住む場所」を表しています。クルディスタンのイラク北部は、とくにクルド人自治区と呼ばれ、一時は観光産業や油田で活発な経済活動をしていたのですが、その後、独立を求めるクルド人自治区の住民投票に対して、見せしめのためでしょうか、イラク政府は今でも経済封鎖をしているそうです。

 そのクルド人自治区のトルコとの国境に近いあたりに、シャニダール洞窟があります。洞窟の中は広く、ウェブで見ると、小さな村ならすっぽり一つ入ってしまうような空間です。このシャニダール洞窟からは、ネアンデルタール人の骨が10体も見つかりました。

 広場のような洞窟で見つかった何体ものネアンデルタール人です。今は滅びてしまったネアンデルタール人の生活や価値観――何を大切に思い、どのように扱ったのか――、そして運がよければ、ネアンデルタール人の価値を象徴するもの――例えば現生人類のお墓で言えばマンモスの牙で作ったビーズや、東アジアの例ですが埴輪(はにわ)などの人形、太刀など――が見つかるかもしれません。ビーズや埴輪(はにわ)は、それがあるからといって生命を長らえさせるものではありません。しかし、わたし達と同じようにネアンデルタール人にも、抱くイメージ、つまり象徴性があるのならば、役には立たないけれど、それでも大切にしたかった何かが見つかるのではないか? そんな期待が膨らみます。

    *

 ネアンデルタール人の遺骨のまわりの土からは花粉が見つかりました。

 思考をめぐらせた研究者は、最初、この花粉は死者に供えられた花束からこぼれたのではないかと考えました。現代の葬式のように、ネアンデルタール人も死者を送る儀式を行ったのかもしれない。ということは「花束」が死者とその死を悼(いた)む象徴物ということになります。そればかりではありません。「死後の世界」さえも信じていたのかもしれない。わたし達は、豊かな精神性は我われだけのものだと思い込んでいます。しかし、ネアンデルタール人が死者を悼(いた)むのなら、彼らの精神性は我われと同じではないのでしょうか。そう思えてきます。

 でも本当でしょうか?

 実は、その後、いろいろ異論が出てきました。ある研究者は、風に運ばれた花粉が土に混ざっただけだと言い、また別の研究者は、ネズミか何かの小動物が集めてきた果実や花に付いていた花粉だと主張しました。つまり、ネアンデルタール人の精神性を、必要以上に高く見積もらなくてもいいと主張したのです。

 わたしは「埋葬と花束」の議論よりも、ずっと気になっていたことがありました。それは研究者にシャニダール1と呼ばれている高齢男性の遺骨のことです。シャニダール1の年齢は40歳から50歳と見積もられているそうです。

 「40歳から50歳」で高齢とは、おかしなこと言っていると思うでしょうか? わたしはアフリカ中央部のコンゴ共和国で、友だちの40歳の誕生日を祝う集いに参加したことがあります。その人は男性の外交官で、地方の村に住むのではなく、ブラザビルに家を持っていました。ブラザビルに住む人は栄養も良く、医療も整っています。男性の生活は、わたしの生活と同じように思えました。そのお祝いの席で挨拶に立った男性が「40歳まで生きる幸運は誰にでもあることではない」と言ったのです。それを聞いてわたしは、コンゴ共和国では人生のとらえ方が違うのだと思い知りました。

 日本人の平均寿命は、今や男女とも80歳を越えたそうです。当時のコンゴ共和国ではもっと短かったでしょう。しかし、生きた生物は、いつか必ず死にます。長く生きた人と早く生涯を終えた人のどちらが偉いというわけではありません。寿命が長いか短いかは本質的な問題ではありません。寿命の長さは相対的にしか測りようがないのです。

 実のところ、ネアンデルタール人の「40歳から50歳」は、十分に長寿だと思います。そして何よりもわたしが驚いたのは、シャニダール1には片手がなく、片目が見えず、うまく歩けなかった上に、聴力にまで障がいがあったということが分かったのですTrinkaus and Villotte, 2017 in PLOS One)(1)

    *

 ネアンデルタール人は狩猟や採集を生業(なりわい)とします。山岳地の狩猟では、丈夫な足腰とつよい体幹が求められるでしょう。そのような環境で障がい者が何かの役に立ったでしょうか? 通常は、何の役にも立たないでしょう。しかし、シャニダール1は飛び抜けて長寿だったのです。重度の障がいを負いながらです。ネアンデルタール人の間には、無償のケアが成立していたとでも言うのでしょうか?

 そうかもしれません。カラハリ砂漠に住むサン(ブッシュマン)やアフリカ中央部の熱帯雨林に住むピグミーは、よく「平等な社会」だと言われています。これは狩猟能力に差があっても――狩りのうまい人、へたな人がいるのは当然です――平等に獲物を分けるのです。老人や障がい者も平等です。そしてこれは、「神の前では平等だ」ということを体現しているのです。

 もちろんサンやピグミーに体系化された高等宗教はありません。その上、現生人類とネアンデルタール人は違います。ですから、ネアンデルタール人が平等主義者で、「重度の障がい者にも同じだけの肉や野草を分ける『無償のケア』が成立していた」と言いたいわけではないのです。そうではなくて、あたかも「無償のケア」に見える狩猟採集する民であれば、おのずと一定の価値観があったのではないか。それは現代の狩猟採集民の思考から類推すると「神」の概念が一番ありそうに思えると言いたいのです。

    *

 あるいはいっそ、このネアンデルタール人の集団は、高齢な障がい者に特別な意味を認めていたのだとしたらどうでしょう。例えばネアンデルタール人と彼らの神や精霊をつなぐシャーマンです。

 今は京都精華大学マンガ学部で教え、自分でマンガ『ナチュン』をお描きになっている文化人類学者の都留泰作さんは、京都大学の大学院生時代にピグミーの精霊儀礼を研究されています(都留, 1996; 2014(2), (3)。都留さんによれば、ピグミーは森に住む精霊を信じていて、自分たちと同じように森を移動し、キャンプを作り、儀礼では人に憑依して人を威圧したり、中には道化のように振る舞って踊るのだそうです。

 わたしはこの論文を読んで、日本でもかつて盛んだった正月の「門付け」を連想しました。「門付け」は稲の取り入れが一段落した農民が各地をまわり、言祝(ことほ)ぐための芸能を見せたもののことです。「門付け」から現代の漫才が起こり、また神社のお神楽(かぐら)や、仏教の「説教」もここから起こったそうです。わたしの祖母は子どもの頃、四国の高松に住んでいましたが、村むらをめぐって、面白おかしくお「説教」をするお坊様のことを懐かしく話してくれたものでした。

 ピグミーの精霊は人びとの間の諍(いさか)いや、ギクシャクした仲間関係を修復してくれます。日本の「門付け」は稲作農耕と深い関わりがありますが、ピグミーは農耕が大の苦手です。少なくとも、わたしの知っているピグミーは苦手でした。

 ネアンデルタール人のシャニダール1がシャーマンだとしたら、どんなことしたでしょう? ネアンデルタール人が狩猟や採集を生業(なりわい)とすることを考えれば、シャニダール1はピグミーの子どもたちに愛される道化のような精霊ではなくて、威圧的に振る舞い、時には仲間にとっても危険な存在であるシャーマンだった。そんな気がします (4)。

 次に続きます。

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(1) Trinkaus and Villotte (2017) External auditory exostoses and hearing loss in the Shanidar 1 Neandertal. PLOS One
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0186684
が原典ですが、日本語で書かれた GIZMODO のページ:
https://www.gizmodo.jp/2017/10/neanderthals-with-disabilities-survived.html
も見つけました。

(2) 都留泰作 (1996) バカ・ピグミーの精霊儀礼. アフリカ研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/africa1964/1996/49/1996_49_53/_pdf/-char/en

(3) 都留泰作 (2014) カメルーンの森に踊る精霊. FIELDPLUS
http://repository.tufs.ac.jp/bitstream/10108/78072/1/field-11_p14-15_kai.pdf

(4) 農耕民であるバンツーも精霊の存在は信じています。しかし、それは人に害をなす危険な存在だと見なしています。かつて、わたしがいたカメルーン南西部のカンポに住むバンツーは、精霊をマキザールと呼んでいました。マキザールは自然霊で、悪霊だということでした。それに比べてカメルーン南東部に住むバカ・ピグミーの精霊は、おどろおどろしい悪霊ということは無く、威圧的に振る舞う精霊も出てきますが、たいていは子どもに人気のあるコミカルな精霊です。まるで着ぐるみのようです。




三谷 雅純(みたに まさずみ)
コミュニケーション・デザイン研究グループ
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館

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