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2015年3月アーカイブ

ユニバーサル・ミュージアムをめざして66

 

さまざまな人が創る社会-2

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

H26_poster (elder).jpg平成26年度「障害者週間のポスター」最優秀賞(中学生の部) 
埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園中学部三年 石渡 智樹 くん(埼玉県)

 新しい「障害者差別解消法」は2016年(平成28年)4月から施行される予定です.すべての障がい者の尊厳と権利を保障する法律です.国際連合(国連)の「障害者の権利に関する条約」や2011年に改正された「障害者基本法」が基(もと)になっています.

 

 「障害者基本法」の改正や「障害者差別解消法」の成立では,一般の方には耳に新しい考え方が取り入れられています.それは「障がいの社会モデル」「環境配慮」にプラスした個別の「合理的配慮」です.難しい言葉(ことば)ばかりなので,まず,それぞれどういう考え方かを説明しておきます.

 

 「社会モデル」は,「個人モデル」とか「医療モデル」と呼ばれる考え方と対比して示されます.「個人モデル」も「医療モデル」も同じ考え方です.例えば交通事故にあって手や足を失ったり,頭に外傷を負ったりすれば,手術やリハビリテーションが必要です.そして事故に遭(あ)ったのは運が悪かったのだとか,あるいは自分が不注意だっただけだと,わたしたちは考えてしまいます.これが「個人モデル」とか「医療モデル」と呼ばれる考え方です.

 

 右や左をよく確認してから道を渡れば事故には遭わなかったのに,ぼんやりしていた自分が悪い.自分の不注意で事故に遭い,病院に入院してお金が要り,その上,人生が変わってしまったのだ.誰か文句を言う筋合いのものではない.わたしたちは,つい,そんなふうに考えてしまいます.

 

 でも現実には「事故がよく起こる曲がり角」が存在します.少なくとも誰もがそう信じている場所があります.そこでは,人間なら誰でもうっかりしてしまう何かがあるのではないでしょうか.いわゆる「ヒューマン・ファクター」です.「事故が起こったのが社会の責任だ」――「事故の多い曲がり角」を作ったという意味で――というのは,いくら何でも言い過ぎですが,事故にあった不幸を,全部ひとりで背負うべきだと,わたしは決して思いません.ましてや遺伝的な変異やお母さんが妊娠していた時の事故で障がい者になったのなら,まったく当人の責任ではないのです.「障がい」というのは,望まない事故や病気,遺伝的な変異の結果をそう呼んでいるだけなのですから.

 

 「障がい者」も市民であることは間違いないのですから,市民社会の一員として,社会の主流にいる人たちと同じだけの義務と権利を持つはずだ.そういう考え方が「社会モデル」です.現在,世界の主な考え方は「社会モデル」になりました.

 

 「環境配慮」とは,今までにあったバリアフリー・デザインやユニバーサル・デザインのことです.できるだけ多くの人が活動しやすくなるような 心づかい を言います.ただ「多くの人に認識されていないけれども不便なこと」というのが現にあります.例えば,今,流行りのタッチパネルは視覚以外の手がかりがありませんから,視覚を使わない人の役には立たないでしょう.それに,マニュアルに頼った「ユニバーサル・デザイン」ふうの施設も,人によっては,かえって活動し難(にく)くなることがあります.

 そんな時,むちゃな要求でないのなら,個人個人の不自由さから出てきた要求であっても,ちゃんと応じるべきだという考え方が「合理的配慮」です.この考え方なら,困ったときには「困っている」と言えるのです.国や地方公共団体は,そんな要求に誠実に対応する義務があります.民間企業でも努力しなければなりません.公共財を作り,管理する公共団体が,市民――国民ではありません.日本の国籍は持たなくても,納税の義務を果たし,要求する当然の権利を持つ市民――から出た個別の,しかし,その人の身になってみたら当たり前の要求には,誠意をもって応えるのが当然です.

 

 学校教育で行われているインクルーシブ教育は,すでに「個別の要求に合った対応」がなされている例です.手話や点字は勉強をするために大切ですし,時間のかかる人には時間をかけて課題――例えばテストなど――に取り組むことが認められます.ついでに言えば,このような配慮は「障がい者」ばかりでなく,いろいろな社会的マイノリティにも認められなければなりません.

 

☆   ☆

 

 先ほど「市民」と書きました.しかし,「市民」とは誰の事でしょう.

 

 「市民」とは,我われ一人ひとりのことです.ここで言う「市民」は,例えば「市民運動」(=草の根運動:a grass-roots movement)や「市民劇場」(a people's theater)で使う「市民」のことを指します.「神戸市に住む人」という意味で「神戸市民」と言ったりもしますが,ここでは,「特定の行政単位に住む人」という意味ではありません.「個人で自分の意見を持っている人」とか「権利を行使し,義務を果たす人」といった意味です.赤ん坊や幼児,子どもは大人と同じような判断力がなくて「市民」とは認められないという意見もあるでしょうが,ここでは,人権を持った人は誰でも「市民」ということにします.赤ん坊はやがて意見を持ちますし,おじいちゃんもきっと意見を持っていたはずです.よそから来た人にも,当然,意見があります.ですから赤ん坊の△△ちゃんは(まだ税務署で納税はできせんが)「市民」です.認知症の○○のおじいちゃんも,モスレムで日本に来たばかりの□□の奥さんも,みんな「市民」なのです.

 

当然,障がい者も,誰に恥じることのない「市民」です.

 

 (ここからは障がい者に向けて書きます)

 

 「市民」であれば,権利があると同時に義務があります.「権利/義務」は片方だけでも行使できるようにも思いますが,それは誤解です.原理的にできません.「わがまま」な主張は,健全な倫理観から「許されない」のではなく,「主張」として成り立たないのです.例えば,ある人だけに生じた不自由を主張して,施設のどこかを直してもらうとします.それは確かに,最初は個人の要求でした.しかし,行政や企業の担当者が誠実に取り上げて,どうしたらいいのだろうと当事者といっしょに考え始めた時点から,それはすでに「個人の要求」ではなく,「公(おおやけ)の要求」になるのです.なぜなら,同じ不自由を感じている人は誰でも,その不自由さから解放されるからです.社会的に障壁だと気付かなかったことが,ひとりの主張や要求によって皆が気付けるのです.その時,社会がほんの少し変わるでしょう.その人は「権利」を行使するとともに,立派に「義務」を果たしたのです.

 

 障がい者や病人や,見知らぬ土地に来たばかりの人は,その土地に住む人と,あまり大切な話をした経験がありません.どうして大切な話をしないのでしょう? 障がい者の例で言えば,まず第一に,社会的主流にいる人とは主張が異なります――マヒがあって大きな扉(とびら)が開けられない,視覚を使わないので触れなければ理解できない,聴覚を使わないので視覚言語(=手話)や書き文字でなければ理解できない.だから,わたしに変わって扉を開けてほしい,触(さわ)れるようにしてほしい,視覚言語や書き文字を使ってほしい.多くの人にとって,このような要求は奇妙に聞こえるのかもしれません.ですから今までは,大抵の場合,このような要求を主張しても「わがまま」だと言われたり,おだやかに無視されたりしてきました.第二に,社会的主流にいる人の言語,つまり普通のしゃべり言葉(ことば)を使ってご両親や介助者が本人の主張(だと信じていること)を代弁してきたので,その人なりに論理を組み立てる練習ができていないのです.

 

 しかし,いくら説得力があっても,皆に伝わらないのでは主張になりません.「十分な理由」を共通の言葉(ことば)で示すことは,経験のあまりない人にとって大変です――本当に大変です――が,何が言いたいのかが わかるように説明する責任があります.言ってもどうせ「わがままを言うな」と怒鳴られたり,無視されるだけだとあきらめていては,いくら待っても伝わりません.

 

☆   ☆

 

 もう一つ,自分の不自由を主張するときに,ぜひ考えてもらいたいことがあります.それはさまざまな属性を持った他者の存在です.これも障がい者の例で説明しましょう.

 

 世の中には,実にさまざまな障がい者がいます.と言うか「障がいの社会モデル」では,社会の主流にいない人は誰でも,生活をしたり,仕事をする上で,いろいろな不自由を感じています.その不自由さは,別の障がい者にわかる場合もありますが,多くは理解できません.

 

 わたしは右半身のマヒがあり,失語症もあります.ですから,言葉(ことば)の出ない歯がゆさは――自分の内言語では,もちろん何を言うべきかがわかっているだけに.そして,うまく言語化できないと,自分でも考えていたことが思い出せなくなるので――痛いほど感じます.しかし,聴覚を使わない ろう者が太鼓の演奏会で感じる空気の振動感や躍動感は,説明を聞くまで,本当のところはわかりませんでした.ていねいに説明をしてもらったから,空気の振動から音楽を楽しむ術(すべ)がわかったのです.

 

 ろう者が太鼓の演奏会で感じる空気の振動感と同じように,新奇な感覚は社会的な主流に属する人ばかりでなく,ほかの障がい者にもわかりにくいのです.しかし,複数の障がい者が自分の不自由さだけを主張するのでは,聞く方は困ってしまいます.どうしていいかわかりません.そこは心を広く持って,自分以外にもさまざまなことに不自由を感じる人がいるという前提で,共に不自由を感じなくする方法を探るべきです.そうしないと「市民」として「権利/義務」を行使することにはならないと思います.それよりも「共に不自由を感じなくする方法」を探ることで,思いもかけなかったアイデアが湧くものです.

 

 一人ひとりの多様さを,皆で感じ,考えてみることにしませんか? そうして産み出される社会は,今よりも,ほんの少しだけ暮らしやすくなると信じて.

 

 いかがでしょうか?

 

 

 

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館
寒い時期が過ぎ、ようやく暖かい季節がおとずれました。
生き物たちも元気に動きはじめ、自然がにぎやかになってきますね♪

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ひとはくは4月もイベントやセミナーなどで盛りだくさん!!

 新年度を迎えるにあたり、お知らせがございます。この3月をもって3名のフロアスタッフが卒業することになりました。

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フロアスタッフとして活躍されていました、「おの」さんが卒業されます。
フロアスタッフの中で一番長く勤められたベテランです。
いつもニコニコとした明るい笑顔でみなさんとの触れ合いを大切にされ、まるでお母さんの様なあたたかさで見守っていてくれていました。
イベントでは、マツボックリやドングリといった自然を使ったイベントを多くされており、自然との関わり方を上手に教えてくれました。

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今年からフロアスタッフとして活躍されている「いわき」さんです。
笑顔がとても素敵で優しく、いつでも彼女の近くは「春」のようにほがらかな空気でつつまれておりました。
お客さまからもスタッフからも大人気の方です!
お客さまとのコミュニケーションを大事にされ、イベントでも多くのお客様を明るく楽しませ、一緒に働いている私たちにとっても本当に良いお手本となる方でした。

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最後に私、「たなか ひろし」です。

みなさま今まで本当にありがとうございました!

春は別れもありますが、新しい出会いの季節でもあります。
4月からは新しいフロアスタッフが加入し、みなさまをご案内させていただくことになります。

私たちフロアスタッフは博物館を通じて、みなさまに色々な経験と思い出を持って帰ってもらえるように、これからも頑張っていきたいと思います。

今後とも是非、よろしくお願いいたします。

                                フロアスタッフ  たなか ひろし







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3月21日(土)「魅せる標本てん」の設営を行いました。
この展示は、2014年4月から2015年3月にかけて開講した、人と自然の博物館のセミナー「魅せる標本つくり隊−植物と昆虫のすてきな展示づくり−」の、一年間の成果です。
短期間の展示ですが、ぜひごらんください。

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春から秋にかけて、博物館のまわりの深田公園をフィールドに、各自が気に入った植物や昆虫を集め、標本を製作しました。

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冬、何やら工作をしています。「図工の時間」のようです。

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3月21日、いよいよ設営です。

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完成しました! かなり、達成感あります。

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遠目に見ても美しいよう、工夫いたしました!
(展示制作:足立千恵・近藤フミ子・高見咲恵・辰巳淳子・中川貴美子・本田邦視・高橋 晃・八木 剛)

標本は、必ずしも、専門的な研究のためだけのものではありません。
少し努力すれば、どなたでも、このような標本や展示をつくることができます。
やってみようかな!と思う方は、2015年度の本セミナーにご参加ください。
4月開講です。いっしょに達成感を味わいましょう。

(八木 剛)

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きょうのけんちくかの日の様子です。みんな楽しく自分のまちを完成させました。
あすも開催します!
みなさま、ぜひお越しください。

(フロアスタッフ いしくら)

ユニバーサル・ミュージアムをめざして65

 

さまざまな人が創る社会-1

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)

 

 

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平成26年度「障害者週間のポスター」最優秀賞(小学生の部)
玉名市立玉名町小学校四年  両角 藍さん(熊本県)

 

 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」,通称「障害者差別解消法」が2013年(平成25年)に成立しました.この法律には国際連合(=国連)の条約:「障害者の権利に関する条約」をめぐって,ちょっとした歴史があります.この条約はすべての障がい者の尊厳と権利を保障するための人権条約です.国連では2006年に採択され,日本も早く受け入れるつもりだったそうです.ところが日本の批准に対して,日本国内の主要な障害8団体で結成しているJDF(日本障害フォーラム)から待ったがかかりました.それは「日本の法律では,障がい者の権利が、きちんと保障されていない」からでした.批准してこの条約を認めるという前に,ちゃんと国内法を整備しなければいけない.ということは,言い換えれば「『障がい者の権利を保障して,差別を禁止する』日本の世論は十分に高まっていない」と指摘を受けたのです.そこで日本は2011年に「障害者基本法」を改正して,基本的な考え方を整理し直すことにしました.結局,日本の批准は2014年になりました.

 

 「障がい者を差別してはいけない」というのは当然のことです.しかし,何が差別になり,何が障壁(しょうへき)になるのか,たいていの人は戸惑うことがあるでしょう.そんな時は,本当に「障がい」が何だったのかイメージできません.イメージできないから「結果的に差別してしまう」ことがある.ことさら差別する気はないのです.しかし,そのために障がい者は,社会に出て働いたり,自分の立場で意見を言ったりできなくなる.これは大きな社会的損失です.このようなことをなくしましょうということで,「障害者差別解消法」は作られました.これで障がい者の権利を保障する気運は作られました.

 

 もちろん人のこころはさまざまですし,中にはあからさまな差別をする人も,現実に,います.「障がい者の権利を保障する」と言っても,まだ気運が整っただけです.この法律ができたのだから,今すぐ実践すればよさそうですが,なかなかそうはいきません.そのために,皆さんに「障がい者の権利」とか「差別の禁止」とかの意味をよく理解してもらおうと,準備期間を3年ほど設けたのです.施行は2016年(平成28年)4月の予定です.ずいぶん悠長(ゆうちょう)に思えますが,「差別の解消」は,それほど時間をかけなければ実現しないということです.

 

☆   ☆

 

 わたしは失語症の方としゃべっていて,困った顔をされたことがあります.どんなことを言った時かというと,わたしは,

 

「多くの人は『障がい』をネガティブなものと捉えがちです.ところが、見方を変えればポジティブに捉えることもできます.例えば,ろう者は手話で示された多くのジェスチャーを順に覚えて会話をしますが,これはろう者以外にはできません.ろう者にとって手話は母語の人も多いのですから,当たり前といえば当たり前です.聴者(ちょうしゃ:聞こえる人)の発話言語(=音声を発して意味を伝える言語)と同じように,ジェスチャーを覚えなければ手話のコミュニケーションは成り立ちません.

 

盲人も同じです.盲人にとって指先は目のようなものです.ものに触れることで,いろいろなことを認識します.ものの大きさや形,質感,光沢といったものまで認識できるのです.そのイメージの再現力は,目を使う人には及びもつきません.この鋭い指先の触覚があるからこそ,点字で意味を記録し,イメージを伝えることができるのです.

 

失語症者や高次脳機能障がい者は,なかなか言葉が出てきません.しかし,言葉になる前の〈ことば〉,つまり内言語(ない・げんご)では,しっかりものが考えられる人がいます.そうして考えたことの中には,当事者でなければ思いつかなかったことも,きっと多くあるはずです.

 

「障がい」とか,「障がい者」というと悪いイメージばかりを持ちがちですが,わたしも含めて失語症者や高次脳機能障がい者は,「~が足らない」のではなく,「他の人にはない~の長所がある」のだと考えることはできないでしょうか?

 

 これを聞いていた失語症者は困った顔をされました.

 

「失語症の長所って何ですか?」

「私は失語症でよかったと感じたことは一度もありません」

 

このように,おっしゃったのです.わたしは,そんなネガティブに考えなくてもいいのではないかと思いましたが,ポジティブに評価する理屈は,残念ながら,とっさには思いつきませんでした.でも絶対に,どこかいいところがあるはずです.でなければ,人間として価値があるのは,人生の盛りである「若者」の一時期だけということになりかねません.「若者」以外の大部分の人は,全員,どこかが欠けた人です.

 

 でもちょっと待って下さい.若者だけが完全な人間ではありませんよね.そんなことは当たり前です.赤ん坊には赤ん坊の才能があり――事実,赤ん坊には共感覚や写真のような記憶能力があるのだが,〈ことば〉の獲得とか象徴性の獲得とともにその能力を失うという話があります――,思春期の少年・少女には,おとなには見えない「過去」や「未来」がチラチラと見えてしまうというのは,都市伝説に過ぎなかったとしても,よく聞く話です.高齢者が互いに矛盾したことを共に認める能力がある――「清濁併せ呑む」――のは,長い人生の結果だと思います.だとすると失語症者や高次脳機能障がい者も,少し視点を変えただけで見え方ががらりと変わり,ポジティブな資質になるということが,きっとあるに違いありません.先ほど挙げた「内言語の沈思」はポジティブな資質ではないでしょうか.だとしたら,後は当事者の出した結論を聞き取り,普通の〈ことば〉に直す才能を持った「翻訳家」がいたら,「内言語の沈思」の結果は社会でおおいに役立つでしょう.

 

☆   ☆

 

 ひとはくを始めとする多くの公共施設は,バリアフリー・デザインやユニバーサル・デザインに取り組んできました.法律では,このような工夫を「環境整備」と呼んでいます.バリアフリー・デザインでは,目に付いた欠陥を直すことで,さまざまな人がスムーズに活動できるようにします.例えば段差があるときは,ゆるやかなスロープを渡すとかの工夫があると,たいていの車イス利用者や足もとが不安定な高齢者も安心して上り下りができます.ユニバーサル・デザインは,バリアフリー・デザインよりも,もっと多くの人が利用しやすい工夫を言います.理想としては,すべての人が使いやすくできれば,それに越したことはありません.

 

 それにしても「すべての人が使いやすい」デザインって,いったいどんなデザインなのでしょう? そんなことがありえるのでしょうか?

 

 わたしは,厳密にはありえないと思っています.しかし,ひとはくを始め,多くの公共施設が,現にユニバーサル・デザインを取り入れてきました.その理由は,ユニバーサル・デザインなら誰にでも「平等」に設計できるからです.公共施設では,何よりも見かけの「平等」が大切です.だから,そうしてきたという背景があると思います.法律で規準が決められたバリアフリー・デザインや,マニュアルに従ったユニバーサル・デザインです.現実にそれを使う障がい者には,どういうわけか計画に意見を言ったり,実地に使って確かめてみたりといった機会が,あまりないように思います.意見も聞かない,確かめてみることもしないために,公共施設では,使いたくても使えないといったことが,実は,よくあります.

 

 それは「体のいい差別」だと感じています.「バリアフリー」とか「ユニバーサル」とか言っているだけに,よけい質(たち)が悪く感じられます.

 

 さまざまな立場の人が集まって意見を出し合い,互いに自分以外の人の主張を尊重しあって,少しずつ,ひとつのものを創り上げていく.それは元来,すてきなことですが,手間もお金もかかります.しかし,今までそうした手間やお金をかけてこなかったことの方が不思議です.必要なことにまで手間とお金を惜しむのは本末転倒です.新しい「障害者差別解消法」は,障がい者の人権を守り,障がい者の権利を保障するための法律です.それは「さまざまな立場の人が集まって意見を出し合い,互いに自分以外の人の主張を尊重しあって,少しずつ,ひとつのものを創り上げていく」ことの保障でもあるのです.

 

 新しく何かを公共財として創り出す.その試みに,わくわくしませんか?

 

 この稿は続きます.次は障がい者の側の責任について書こうと思います.

 

 

 

 

三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館

梅の花も咲き、本格的な春が近づいてきました。
進学、卒業、就職など、生活環境が変わるかたは
新生活の準備はいかがでしょうか。


さて、3/14、15にフロアスタッフとあそうぼう

「モールでダンゴムシをつくろう!」を行いました!
水色、黄緑、ピンク、オレンジ、全部で4色。
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まずはダンゴムシのお話から。
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みんなが見たことがある、ダンゴムシ。
そんな身近な生き物の豆知識をご紹介しました!


作り方を説明後、早速作業開始!

少し難しい、足をつける作業は、お父さん、お母さんと。
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うまくできるかな?


本物のようにまるみをつけて、完成!
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カラフルなダンゴムシができました!
とっても可愛いですね(*^^*)♪

ご参加くださいましたみなさま
ありがとうございました!


次回のフロアスタッフとあそぼうは、
3/21、22の「けんちくかの日」です!
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自分のお家を作って、町を完成させましょう!

みなさんのご参加、お待ちしております!

 

フロアスタッフ きただにさやの

 

■■■ 4月開講セミナー ■■■
 2015年度一般セミナーの申し込み受付はもう始まっていますが、4月に実施予定のセミナーの〆切はもう目の前!!
 一般セミナーはいずれも先着順ではありませんが、お早い目にお申し込みください。定員を超えた講座につきましては抽選により受講者を決定します。
 申し込み〆切日を過ぎても定員に満たない場合は、お申し込みを受け付けることがあります。詳しくはお問い合わせください。
 なお、お電話でのお申し込みはできません。

    http://www.hitohaku.jp/musepub/SeminarTop.aspx

 下の表からセミナーのタイトルを選ぶと詳細が確認できます。またそのままWebから受講のお申し込みもできます。
 ぜひ、お申し込みください。

 ※館外で実施するセミナーの場合、詳しい集合場所や時刻、持ち物、天候による実施の有無等については、受講が決定された方あての受講証にてお知らせしております。

2015年4月実施のセミナー

開催日 セミナータイトル ジャンル
2015/4/3(金) J01 タネから育てる希少山野草 体験する講座
2015/4/4(土) E01 都市の歩き方・名所編 大阪市天下茶屋・北畠界隈を歩く 体験する講座
2015/4/5(日) A01 水を訪ねる 見る講座
2015/4/5(日) B01 タンポポを調べる(全4回) 体験する講座
2015/4/9(木) B02 日本一の里山、北摂地域の早春を観察しよう! 見る講座
2015/4/11(土) F01 虫や花のたのしい展示づくり 考える講座
2015/4/18(土) E02 都市の歩き方・名所編 大阪市玉造・深江界隈を歩く 体験する講座
2015/4/18(土) J02 愛蜂家基礎講座・上級(全4回) 体験する講座
2015/4/22(水) D01 カラスによるゴミ被害を解決しよう! 考える講座
2015/4/22(水) B03 一庫公園の里山の植物を調べよう(全5回) 体験する講座
2015/4/25(土) B04 芦屋市奥山地域で植物観察の方法を学ぶ 体験する講座
2015/4/26(日) B05 マツバラン観察会 体験する講座
2015/4/26(日) B06 植物多様性講座-植物の形を調べる(全9回) 考える講座
2015/4/26(日) C01 ユース昆虫研究室(全12回) 体験する講座
2015/4/28(火) D02 セアカゴケグモの生態と被害対策 基礎講座
2015/4/29(水) D03 春の川は水生昆虫だらけ:生田川編 体験する講座

是非ご参加ください。
生涯学習課
大変長らくお待たせをしておりましたが、2015年度の一般セミナーのお申し込みを受付させていただいております。


 下記のページからセミナーの一覧をご確認ください。
     http://www.hitohaku.jp/musepub/SeminarTop.aspx

 月ごと 分野ごと 講師ごと に見ていただくこともできます。

 また、お手元に印刷して残しておかれたい場合は、セミナーガイド2015のPDF版をダウンロードしていただくこともできますので、こちらもご活用ください。ファイルサイズは約2.6MBです。

    http://www.hitohaku.jp/seminar/files/2015seminar_guide.pdf

 年度の途中でセミナーが追加されることもございますので、時折ホームページのセミナー情報をチェックしてみてくださいね(o^^o)



 
  今回は一般セミナーのうち、じっくり学びたいという方を対象に、複数回(2回~12回)にわたり開催し、より深く専門分野を学んでいただける「じっくりセミナー」を設定(12講座)しています。

じっくりセミナー

初回開催日 セミナータイトル ジャンル
2015/4/5(日) B01 タンポポを調べる(全4回) じっくり
2015/4/11(土) F01 虫や花のたのしい展示づくり じっくり
2015/4/22(水) B03 一庫公園の里山の植物を調べよう(全5回) じっくり
2015/4/26(日) B06 植物多様性講座-植物の形を調べる(全9回) じっくり
2015/4/26(日) C01 ユース昆虫研究室(全12回) じっくり
2015/5/22(金) D04 生態学基礎講座 じっくり
2015/6/27(土) F04 多様性生物学リサーチ・トレーニング じっくり
2015/8/23(日) A11 火山灰を調べる(全5回) じっくり
2015/8/29(土) B21 きれいな植物標本をつくろう(全2回) じっくり
2015/10/3(土) B26 植物画を描こう(全2回) じっくり
2015/12/12(土) D15 センサーカメラを使った動物の撮影調査(全2回) じっくり
2016/2/27(土) A13 顕微鏡で花粉化石を調べる じっくり

タイトルをクリックすると詳細が見られます。
受講申込も続けてホームページ上でできます。是非ご参加ください!!
生涯学習課

 ミニマムムーン

2015年3月 7日
3月6日(金)の満月は「ミニマムムーン」というらしい....

 地球と月の軌道は楕円を描いていて、月と地球の距離は近づいたり離れたり・・・・・・・
 そして今回一番離れたところに

 なので、見かけ上、最も小さく見える=ミニマム という言い方になっているようです。
        そういえばスーパームーンというのもありますね(^^)
 



 ちなみに、次の満月 平成27年4月4日(土) は皆既月食です!! また赤い満月が見えるかも!?

   2014/10/8の皆既月食 →  http://www.hitohaku.jp/blog/2014/10/post_1926/
生涯学習課 八尾

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3月もたのしいイベントがたくさんありますよ!
 

1日中あそべる「うきうきワークショップ」は、小さなお子様でも気軽にご参加いただけるイベントです。

3/24(火)・25(水)・26(木)「とっても簡単!化石のレプリカづくり」
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3/27(金)「ちょうちょ・ペーパークラフト」
3/31(火)「ミニチュアジャングルをつくろう!」

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いずれも、

時間 10:30~11:30 / 13:00~16:00 

場所 4階ひとはくサロン

時間内はいつでも参加OKで、材料がなくなりしだい終了となります。

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▲くわしくは、こちらをクリックしてください。

  2015年のうきうきワークショップ年間予定 

▲くわしくは、こちらをクリックしてください。

                                        (フロアスタッフ まつだ)

3月1日、朝からちょっぴり冷たい春の雨が降るなか、Kidsサンデーがおこなわれました。

◆『小さな化石☆ラボ』
 化石博士と一緒に石ころ調べや化石のレプリカづくりを楽しみました。
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◆『か・せ・き☆プレイルーム』
 本物の化石を触って、小さな化石は顕微鏡で見て、触ったり見たりした化石のぬりえをしました。
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◆展示『しゅくがわダイナソー』
 西宮市立夙川幼稚園の皆さんが制作した恐竜をテーマにした絵画や、立体作品『タンタンすべりだい』を展示しました。
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『タンタンすべりだい』は大人気!
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『デジタル紙芝居』も「丹波の恐竜タンタン」のお話で、満員御礼でした☆
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他にも『パネルシアター』など館内では多数のプログラムが実施されました。
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雨のなか、お越しくださった皆さん、本当にありがとうございました。
そうそう、この時季に降る雨は「木の芽起こし」と呼ばれるそうです。
木の芽の目覚めさがし、楽しいかもしれませんね(*^^*)
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新年度のKidsサンデーは5月3日(日)からスタートです。

3月、4月の別れと出会いの季節をこえて、またひとつ大きくなった
キッズの皆さんに会えるのを楽しみにしています。
     
          (たかせ ゆうこ/キッズひとはく推進プロジェクト)

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