2013年6月アーカイブ
今日、大阪府立大学 生命環境化学部の学生の皆さんが御来館されました。
「博物館の資料と情報処理」と題した特注セミナーの中で、博物館の資料はどういうものがあるのか、どのように活用されているのかを学ぶため、講義後、実際に収蔵庫なども見学されました。
収蔵庫に入る前にコブラとマングースの標本片手に説明
収蔵庫の中は、収蔵品を害虫等から守るため、ナフタレンの臭いに包まれています。
植物標本を片手に、種類よりも「いつ、どこで、だれが採取したか」が重要だと説明されていました。
大学生相手に、より専門的説明をされる鈴木研究員
他にも、昨年10月オープンした「ひとはく多様性フロア~魅せる収蔵庫トライアル~」(本館2階)なども研究員の説明を加えて見学されました。 ここは随時見学できますのでお気軽に御来館ください。お待ちしています。
情報管理課 阪上勝彦
ユニバーサル・ミュージアムをめざして31
三谷 雅純(みたに まさずみ)
幼い子どもが最初に思い込む「素朴概念(そぼく・がいねん)」では、大地は平らなものですが、本当の地球は球体です。NASAが公表したアポロ宇宙船からの映像
一般に、「思い込み」はあまり科学的な態度(たいど)ではありません。中立的な物の見方(みかた)から、はずれてしまう事が多いからです。冷静な判断は「思い込み」を棄(す)てて初めて可能になると言われています。第一、思い込みが強すぎては、人との付き合いもギクシャクしてしまいます。思い込みは偏見を産むからです。相手の人は、その偏見に腹を立てるでしょう。
でも、物事はグループに分けた方が理解しやすいというのも事実です。雑多な物、さまざまな個別の物を、それぞれ別べつに憶えておくのは大変です。とても憶えきれません。そこで、わたしたちは物事をグループに分けることを試みるのです。こうして世界を体系的に理解し始めます。
ただし、変な話に思えるのかもしれませんが、グループに分ける事は、「思い込み」がなければできません。つまり、「偏見」は「理解」につながるのです。
子どもが生まれて初めて果物(くだもの)を見て、グループに分ける時の事を想像してみて下さい。黄色の果物(くだもの)、赤い果物(くだもの)、緑の果物(くだもの)といった具合に、見た目の色で分けていくかも知れません。しかし、現実にリンゴやブドウが食卓に出た時に、その子は戸惑(とまど)ってしまうかも知れないのです。なぜかと言うと、リンゴやブドウの色は、特定の色に決まっているわけではないからです。リンゴは赤と決まっているわけではありませんし、ブドウも紫(むらさき)ばかりではありません。緑のものがあります。
幼い子どもは、見た目で判断しがちなようです。黄色いリンゴは黄色いバナナの仲間なのです。この態度は科学的とは言えません。でも、仮に分けておくのは大切なことです。どうグループ分けしたらいいのか、よくわからないのなら、取りあえず分けておく。そうすれば、後でもっと別の規準で分けることができるからです。果物(くだもの)の場合なら、食べてみることです。黄色いリンゴと黄色いバナナは別物で、どちらかというと、黄色いリンゴは赤いリンゴと同じ味がすることに、食べてみて、初めて気が付くのです。
こんな子どもの理解の仕方(しかた)を、教育学や認知(にんち)科学の世界では「素朴概念(そぼく・がいねん)」と呼ぶのだそうです。「無邪気(むじゃき)な思い込み」とでも言い直せばいいのでしょうか? 人間が、日常生活で、自然に身に付けた知識のことだそうです。ですから、学校で習う理科とか社会、算数や国語の知識とは異なっていることが普通(ふつう)です。
学校現場では、「素朴概念を、学校で教えていく科学的概念に直す方法」といった教え方が、よく研究されたと言う事です。なぜかというと、「素朴概念」は専門家の考え方とは異なりますし、その上、案外、多くの人が疑わずに信じていて、簡単(かんたん)には誤解が解けないからだそうです (1)。学校教育で教える理科とか社会では、誤解を解いて、もう一度、子どもたちに教え直す必要があるのです。
「素朴概念」を学校教育で教える知識の体系に直すのは重要です。「素朴概念」だけでは、複雑な現代社会が理解できないからです。たとえば「わたしたちが住むこの地球は、水平な板ではなく、丸い星のひとつ」だとか、「民主主義では多数の意見を尊重しなければならないが、少数者の意見を無視しても社会が成り立たない」といった事は、「無邪気(むじゃき)な思い込み」では理解できません。「大地が丸まっていないように見える」のは地球が大きすぎるからですし、少数者の意見も大切にするから、多様な未来の可能性が開けるのです。
このように、学校教育で教える知識の体系は子どもたちの将来にとって大切です。しかし、わたしは霊長類学の研究者ですから、教育現場にいる先生がたとは、ちょっと捉(とら)え方の違うところがあるのです。
今の教育システムからは、はずれるのかも知れません。でも、幼い子どもがどう世界を理解するのかは、ひょっとするとヒトのたどってきた進化のプロセスから見直すと必要な事だったという事はないのでしょうか?
たとえば「素朴概念(そぼく・がいねん)」を、〈ことば〉と同じようなものだとは捉(とら)えられないのでしょうか? 〈ことば〉は、赤ん坊であれば、何の苦労のなく憶えられます。多くの子どもは、こうして母語を覚えます。ちょうどそれと同じように、「素朴概念」、つまり「無邪気(むじゃき)な思い込み」を抱く事には、何か科学的な合理主義とはまったく別の価値があるのではないか。ただ単に「子どもの誤解」した「間違いを正す」というだけのものとは違うのではないか。ふと、そんな気がしたのです。
教育現場にいる先生にとっては、子どもの将来が大切です。ですから、現代社会に沿ったものの考え方が大事だと思います。しかし、わたしにとっては、現代社会の価値観を超えた、人(=ヒト)の本質を考えていく作業が、自分の仕事だと思っています。そこでは、変に聞こえる事も言ってしまいます。
本当に不思議な事ですが、わたしたちは、何か物事を分かろうとする時には、おとなになっても「思い込み」で分けていくしかありません。そうする事によって「理解した」と思い込むのです。また、そうしなければ、後のちの理解はできないのです。わたしはこの事に、つい最近、気が付きました。
たとえば、世の中に無数にいる「他人」、つまり「自分以外の人」です。もちろん、お一人おひとりは個別の人間ですから、笑いもし、怒りもします。でも、「他人」を理解しようとすると、個別の人ではなく、「よく笑う人」とか「怒りっぽい人」といったふうに、人をいくつかのグループに分けて理解しようとしていることに気が付きます。その「グループ」とは、よく考えてみると、ただの「思い込み」で分けたに過ぎません。その人が、本当にほがらかで、よく笑っているかどうかはわからないし、いつも不機嫌に怒っているように見えるが、もともと、あまり表情を作らないだけかも知れません。無理やりグループに入れないですむのは、「自分」だけではないでしょうか?
人を理解する前に、まず、その人をグループに当てはめてみる。考えてみれば、これは恐ろしい事です。わたしたちには、人に偏見を貼り付ける下地(したじ)が常にあるということです。でも、ヒトは誰でも、人をグループに分けてみなければ、世の中の仕組みは分からない。仕組みは、科学的な事実のはずです。
明らかに矛盾しています。幼い子どもと同じように、いつか「黄色いリンゴと黄色いバナナは別物で、実際に食べてみれば黄色いリンゴは赤いリンゴと同じ味がする」ことに気が付くのでしょうか?
そもそも、科学の知識自体が「時代の空気」や「時代の要請」といった偏(かたよ)りに根ざして広がっているのですから、本当に冷静で中立的な物の見方(みかた)など、存在するかなと思ってしまいます。どうなんでしょうか?
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(1) Chinn,C.&Brewer,W.(1993)The role anomalous data in knowledge acquisition:Atheoretical framework and implications for science instruction. Review of Educational Research,63,1-49.に載っているそうです。山縣宏美さんが2001年にお書きになった「理科学習における概念変化のプロセスとその要因」(京都大学大学院教育学研究科紀要, 47: 356-366)
http://hdl.handle.net/2433/57399
からの孫引きです。
三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館
みなさま、こんにちは。
日に日に暑くなってきましたね。
ひとはくでは、そんな暑さも忘れる楽しいイベントをたくさんご用意しております!
土・日・祝の15:00~から行っているイベント
◆『フロアスタッフとあそぼう』定員はいずれも20名・参加無料
※『うみのカラフルさかな~浮沈子~』のみ有料イベントです。
6日(土)・7日(日)『うきうきおりがみ~恐竜~』場所: 4Fひとはくサロン
13日(土)・14日(日)・15日(月・祝)『きょうりゅうほねパズル』
場所:4Fひとはくサロン
20日(土)・21日(日)『画はくの日~アンモナイト~』
場所:2F生物多様性フロア
<有料イベント>
27日(土)・28日(日) 『うみのカラフルさかな~浮沈子~』
場所: 4F大セミナー室
材料費:100円
10:30~16:00の時間内、いつでも参加できるイベント
◆うきうきワークショップ
15日(月・祝)『ゆめはくペーパークラフト』材料費:100円
20日(土)『恐竜★化石うちわづくり』材料費:100円
場所は、いずれも4Fひとはくサロンです。
◆深田公園うきうき探検隊(ふかたん)
7/28(日)探険テーマは「トカゲを探しにいこう!」
今月の隊長は 池田忠広研究員
時間 14:00~15:00 集合場所:4Fひとはくサロン
※参加費 無料(別途観覧料・必要)
イベントの詳しい内容は「うきうきカレンダー7月号」にのっていますのでチェックしてください。
(うきうきカレンダーはひとはくHPからもご覧いただけます)
みなさまに楽しんでいただけるイベントを毎日ご用意しておりますので、ぜひお越しください!
(フロアスタッフ まつだ)
外は久しぶり雨・・・ですが、本日、ひとはくでは、日本展示学会が開かれています。
ひとはく4階サロン周辺では、工夫を凝らしたさまざまな展示が催されていますので一部を紹介します。
【海の部屋】
3Dスコープを用いてサンゴや魚立体的に見ることができるお部屋です。海の中の気分が味わえます。
【サンゴホテル】
サンゴに住んでいる魚やカニの気分でくつろいでください。とにかく中に入ってみよう!
ヒグマの毛皮の大きさにビックリ!
館外では移動博物館車ゆめはくによる展示があります。タカ類やカラ類を中心に多数の鳥たちの剥製が展示されています。 ◆ただいま終了いたしました◆
「日本に暮らす鳥たちの不思議」と題して布野研究員による「鳥の目の不思議」を解説してくれます。
ひとはく連携活動グループ・アピス同好会による「はちみつ」も手に入れることができますよ!
◆ただいま終了いたしました◆
これらの展示は本日のみ!さあ、ひとはくへ急ぎましょう!
情報管理課 阪上勝彦
6月8日の仙台に引き続き、9日に開催された「こども☆ひかりフェスティバルin ふくしま」にも移動博物館車「ゆめはく」が登場しました。
このフェスティバルは、「こどもひかりプロジェクト」が主催し、全国のいろんなミュージアムが集まり、福島の子どもたちを応援する体験型のイベントです。
福島での会場は福島市子どもの夢を育む施設こむこむ館です。
仙台と同様に、地元の大学の学生さんたちが、ボランティアとして、たくさん参加してくださいました。
▲こむこむ館に到着した「ゆめはく」 ▲みんなで荷物をおろします
「ゆめはく」の中での展示「キラキラなむしさんたち」は、大人から子どもまで、たくさんの方に見ていただきました。
この日は約2,700人もの来場者があったそうです。いろんなミュージアムから様々な分野の16の体験プログラムが実施されました。
▲「キラキラな虫さんたち」の展示では、顕微鏡で拡大したものをモニターでも見れるようになっています
▲会場内の雰囲気
イベント終了後、“かたづけ”と“積み込み”を終了し、「ゆめはく」は会場をあとにします。
▲「じゃあ、またね~」と手を振って「ゆめはく」を見送ります
ひとはくに到着した次の日「ゆめはく」から荷物をおろします。
▲「ゆめはく」から荷物をおろして終了!
関係者の皆様、お疲れ様でした。また、ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
「ゆめはく」、次はどこに登場するかな?
小舘 誓治(生涯学習推進室/キッズひとはく推進タスクフォース)
6月8日に開催された「こども☆ひかりフェスティバルin せんだい」に移動博物館車「ゆめはく」も参加しました。
このフェスティバルは、「こどもひかりプロジェクト」が主催し、全国のいろんなミュージアムが集まり、仙台の子どもたちを応援する体験型のイベントです。
「ゆめはく」は、6月6日に、ひとはくを出発し、途中の愛知県瀬戸市で粘土(重さ約2トン?)を積んで仙台へ向かいます。
▲出発直前の「ゆめはく」 ▲瀬戸市で粘土の積み込み ▲宿泊先の駐車場へ到着
「ゆめはく」は、6月7日(フェスティバル前日)に会場の仙台市農業園芸センター(宮城県仙台市若林区)に着きました。荷物をおろして準備にかかります。
地元の大学の学生の皆さんが、ボランティアとして前日の準備から、たくさん参加してくださいました。会場としてガラス温室も使われましたが、ボランティアの方々が綺麗に拭き掃除をしてくださいました。
▲地元の大学の学生さんの協力によって、温室が見る見る会場らしくなって行きます。
当日の「ゆめはく」は、「キラキラなむしさんたち」の展示場となりました。
この日は約3,000人もの来場者があったそうです。いろんなミュージアムから16もの体験プログラムが実施されました。
▲8日の朝の「ゆめはく」 ▲たくさんの方に見ていただいた「キラキラな虫さんたちの展示
イベント終了後、“かたづけ”と“積み込み”です。いろんなミュージアムの荷物も「ゆめはく」へ積みます。ゆめはくマネージャーの塚本さんの神業で、無事積み込みが完了し次の会場へ移動です。
次の会場は、福島市子どもの夢を育む施設こむこむ館です。
小舘 誓治(生涯学習推進室/キッズひとはく推進タスクフォース)
もうすっかりおなじみ!?の毎月第一日曜日の『Kidsサンデー』が6月2日、
梅雨らしい曇り空のもと、開催されました。
Kidsサンデーの黄色いのぼりがKidsのみんなをおでむかえ。
「ようこそ~!ひとはくで一日、楽しんでくださいね!」
Kidsサンデーのひとはくでは あちこちで Kidsが楽しめるプログラムに参加できます。
★連携活動グループ NPO法人 人と自然の会
の皆さんによる『浮沈子』は、
ペットボトルをぎゅっとおすと、なかで魚が浮いたり沈んだりしてマジックのよう。
わたしも作ってみたい!という方は、7月27(土),28日(日)の
フロアスタッフとあそぼう『うみのカラフルさかな~浮沈子~』に参加してくださいね!
→くわしくはコチラ
★長谷川特任研究員による
『ニホンジカのホネ・ほね・骨!』では、ホネのお話のあと、
「このホネはだれのホネかわかるかな~?」
いつもはさわれない、本物のシカのホネをパズルのように組み立てました。
「このホネはどこのホネだろう?」 「むっ、むずかしいっ!」
「やったー完成!同じポーズでパチリ!」
★Kidsひとはく推進タスクフォースによる『自然ってすごい!~水をはじく生きもの~』
では かさ にぴったりの葉っぱを探す実験をしました。
「葉っぱに水を落としたら、どんな水玉ができるかな?」
実際に、かさの布を作るときに参考にした葉っぱ、「 ハス」の葉もご紹介。
「葉っぱのおもてにある小さい凸凹が水玉がコロコロするヒミツなんだって!」
このプログラムで使ったハスの葉は博物館の近くの方から、
「子どもたちの体験のためなら!」と、特別に分けていただきました!
本当にありがとうございました!
Kidsサンデーの前日にハスの葉をとらせていただいている様子↓
★ひとはく連携活動グループrun♪run♪plazaによる
run♪run♪Sundayの6月のテーマは『ア・メ・ン・ボ』
深田公園に、アメンボ探しに出発! 「アメンボとれるかな~ドキドキ☆わくわく」
「わーい!やった~!アメンボ つ~かま~えたっ!」
アメンボを取った後は、昆虫博士の八木研究員よりミニレクチャー。
「池のアメンボはどうやってきたんかな?」
「あ!アメンボ とんだ~!」
★石田研究員による『いろいろなタネを観察しよう』
では大きな松ぼっくりなどをご紹介。タネの模型飛ばし実験にも挑戦!
「どんなふうに飛ぶのか、よく見てみよう!」
★人と自然の会の皆さんによる『パネルシアター』では「ねずみのよめいり」「とべないホタル」を
上映。今の季節にピッタリのお話をきいて、ホタルが見たくなりました。
★フロアスタッフによるプログラムも大充実でした。
展示室ツアーではひとはくのふしぎをご案内。
「今日は特別にひとはくのふしぎを教えちゃいます!」
フロアスタッフとあそぼう『カタツムリのクイリング』
では紙をくるくる巻いて、かわいいカタツムリが完成!
プログラム盛りだくさんの一日で、
多くのKidsが、いくつかのプログラムをはしごして参加してくれました。
次回のKidsサンデーは7月7日(日)10:00スタート!
おりひめとひこぼしの出会いに負けない、ステキな出会いがきっとある ひとはくで
七夕の一日を楽しんでみませんか?
(「四季の星空案内」もありますよ!)
(生涯学習推進室・Kidsひとはく推進TF 高瀬 優子)
みなさん、お元気ですか?
梅雨に入りましたが、雨が少ない日々がつづいていますね。
ひとはくでは、晴れのときも、雨のときも、毎日イベントを行っていますよ~(^^)/
平日には、「展示室ツアー」「デジタル紙芝居」
「展示室ツアー」は、難しい展示を、クイズをまじえながら、わかりやすく解説しています。
「デジタル紙芝居」は、毎月違う演目で上映しています。
6月は「コウちゃんの60日間」 コウノトリの生態を紹介しています。
土日祝には、「展示室ツアー」「デジタル紙芝居」に加え...
15時より「フロアスタッフとあそぼう」を行っています。
6月15日(土)・16日(日)は「川でさかなつり」参加費:無料・場所:2階展示室
6月22日(土)・23日(日)「リサイクルペーパー工作」参加費:無料・場所:3階展示室
6月29日(土)30日(日)「紙コップでつくる万華鏡」材料費:100円・場所:29日ひとはくサロン・30日大セミナー室
みなさんのご参加を、スタッフ一同、心よりお待ち申し上げます。
笹山由利子(フロアスタッフ)
去る5月30日(木)、「探求入門」の授業の1コマとして、当館太田英利研究部長が「日本
の生物相の成り立ち、生物多様性の現状とその保全-おもに琉球の島々を例として-」の講義を
、兵庫県立長田高等学校視聴覚教室で、1学年40名を対象に行いました。
▲講義に先立ち、特別非常勤講師の委嘱がありました。
同校では、高等学校の特色化の一環として、人文科学・社会科学・自然科学分野を深く積極的
に学ぶ「人文・数理探究類型」が、平成25年度より新たに設置され、大学や研究所、企業や博
物館等の研究に従事している職員を講師として招き、「探求」にかかわる専門的な話を聞く授業
▲講演中の太田先生、スライドによる説明
太田先生は、ご自身が研究者となる経緯についての話から始まり、主に琉球列島で今日まで調
査・研究されてきた内容について、スライドを交え熱っぽく語られました。この地域が非常に生
物多様性が高い地域であるとの説明には、受講者も話に聞き入ってました。
また、話の最後には、現在執筆中の論文の内容にも言及があり、最先端の研究仮説の紹介もあり
▲生物多様性の高い琉球の島々
講義終了後は、十分に時間を取って質疑応答を行いましたが、自分の知識に基づく意見、研究
仮設に対する質問や意見等、質問が途切れることなく、活発な「議論」が繰り広げられました。
▲質疑応答の様子
太田先生の発表を通して、研究や探究についてヒントを得たのではないかと感じました。
この授業の続きとして、この講義の受講者が夏季休業中にひとはくに来館しセミナーを受講し
ます。
このように、今後も機会がありましたら、高等学校の学びを支援していきたいと考えております。
西岡敬三(生涯学習課)
トライやる 今日が最終日!
<化石発見!>
かつて温泉町で採取された岩石をさらに細かく割って化石を見つけ出します。
思ったよりたくさんの化石を見つけ出すことができました。採れた化石は学校への
お土産として渡しました。生徒たちは、トライやるをまとめた新聞として記事に載せるそうです。
<里山管理>
博物館が提唱する三田方式による里山管理を手伝ってくれました。場所は博物館西側の里山。
樹木の根本に発生するヒコバエや下草(ササ類)を刈ってもらっています。
低・中木の常緑樹等を間引きすることによって地面に光が差し込んでいます。これにより様々な
植物が生育し花を咲かせるまでになっています。右側は対照区として手をつけず放置した状態です。
<トライやる終了の挨拶>
ついにトライやるウィークも終了。最後に一人一人あいさつと感想をそれぞれ述べてくれました。
博物館の印象について→「いろんな担当の人が、地味ながら努力している」(1人の中学生談)
この1週間、研究員やSTAFFの方々と接して博物館の裏側や働くことについて印象が変わったと思います。
来週からの学校生活でも、この1週間取り組んだように頑張っていってください。
情報管理課 阪上勝彦
蒸し暑い1日となりました。その中で中学生たちは館内、館外でも熱心に活動してくれたようです。
<ひとはく探検>
午前中は初日と同じく郵送物の発送準備。午後にはひとはく収蔵庫を覗きに行きました。
扉の向こうは普段は入れない未知の場所です!
期待も膨らみます。写真は日本産最後のコウノトリです。
<展示準備>
新たな展示棚の設置を協力して行っています。その後、岩石の展示物をレイアウト。
展示物とネームプレートの確認。展示物を隠さず見やすい位置を考慮して配置しました。
<1日の終わり>
最後には各班が合流します。待っている間に1日の仕事内容を日誌にまとめています。
明日はいよいよ最終日。いろいろな人たちとコミュニケーションをとり積極的に行動していこう!
情報管理課 阪上勝彦
ひとはく2日目。3班に分かれて様々なことを体験しています!
<フロアスタッフのお仕事>
朝のミーティングに参加。本日の予定を確認します。午前中は、団体客の対応です。
いよいよボルネオ・ジャングルジャングルツアーに出発です。
ツアーに参加するにあたって先輩ガイドより諸注意ならびに説明を受けています。
デジタル紙芝居「コウちゃんの60日間」に向け練習を行いました。いよいよ本番が近づいてきました。
館内放送も経験しました。 次は入場するお客様のお出迎えです。
3人協力して台本を読みました。最後には、コウノトリとシュバシコウ、ツルの違いを説明しました。
最後には、お客様よりたくさんの拍手をいただきました。
<鋳型づくり>
本物のアンモナイトの化石を用いて、化石のレプリカづくりで使用する鋳型を作っています。
下層に粘土、化石を半分埋め込んで上層にシリコンラバー(樹脂)を流し込みます。
気温が高いので、早く固まってしまうので要注意!とのことですが、完成したこれらを
利用して化石のレプリカづくりが行われます。
<ペーパークラフト材料づくり>
夏のキャラバンやオープンセミナーで使用するペーパークラフトの材料を作っています。
モルフォチョウとトリバネアゲハのそれぞれの部位を各人が協力して作ってくれています。
細かい作業ですが時間いっぱいまで作ってくれました。
明日のトライやるもお楽しみに!
情報管理課 阪上勝彦
ひとはくでは、トライやる・ウィークが3週目に入りました。
今週は三田市立八景中学校、富士中学校、長坂中学校、ゆりのき台中学校、神戸市立有馬中学校、丹波市立山南中学校、篠山市立篠山中学校、丹南中学校から合計14名の中学生を受け入れています。
<挨拶・自己紹介>
職員の前ではじめに自己紹介 応援しています!
<発送準備>
夏のイベント等を案内を封筒に入れ、発送準備を手伝ってもらいました。
「教職員・指導者セミナー」「しぜんかわらばん」などの案内などが入っています。
今年もみなさんからの申し込みをお待ちしています!
<化石発掘現場の除草>
三枝主任研究員より三田炭獣アミノドン(小型のサイ上科ほ乳)の足跡の化石の説明を受けました。
ここには、このような足跡の化石ががつながっていることが分かっているそうです。
この化石により、3千数百年前、この地は平野地で土砂が堆積しその後、隆起していったと考えられるそうです。
この化石を守るためにも除草が必要で、除草を怠ると根が化石を傷めてしまいます。
<マメ科の採集>
3種類のマメ科(カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサ)を取っています。しかし、今年は採集の時期が遅すぎたようです。
途中、昔あそびの草笛、葉っぱで音を鳴らすことを教わりました。みんなしっかり音を出すことができています。
梅雨まっただ中ではありますが、6月に入り初夏となりました。暑い1日ではありましたが、明日からも頑張ってください。
情報管理課 阪上勝彦
ユニバーサル・ミュージアムをめざして30
ミュージアムという空間
三谷 雅純(みたに まさずみ)
丹波竜(たんばりゅう)は、兵庫県丹波市にある篠山(ささやま)川河床の篠山層群(ささやま・そうぐん)から2006年に初めて発見されたティタノサウルス形類とされる恐竜の化石です。
アミューズメント・パークは、誰でも訪れやすいサービスや施設の作り方を心がけているそうです。その人にあったサービスは心地よく、評判がいいと聞きます。アミューズメント・パークは娯楽のための商業施設ですから、一度来た人がもう一度来たくなるような仕掛けがあって、人びとに、もう一度来たいと思わせることが大切なのでしょう。「人びと」には、乳幼児や子どもとその母親、高齢者や障がい者が含まれていることは言うまでもありません。生涯学習施設は娯楽施設ではありませんが、博物館や美術館も「万人に開かれている」と言うのなら、アミューズメント・パークを見ならうべきです。わたしはそう感じました。
アミューズメント・パークは日常とは違う時間や空間を提供してくれますが、ある本を読んでいると、博物館や美術館も、〈ケ〉に対する〈ハレ〉の空間だという意味の事 (1) が書いてありました。〈ケ〉と〈ハレ〉というのは、民俗学で使う独特の言葉です。確か柳田国男という人が使い始めたのだと思います。
わたしたちの生活は〈ケ〉と呼ばれる日常――労働と休息や、食事と排便・排尿、睡眠といった生理現象など――の連続で成り立っています。本質的に、生きていくために〈ケ〉は重要ですし、〈ケ〉の連続が人生そのものだと言う人までいます。しかし、〈ケ〉の時間ばかりでは窮屈(きゅうくつ)です。息が詰まります。秋の収穫明けで労働が一段落した時には、祭りのような気がハレる時間が必要です。それがなければ人生は味気がありませんし、辛(つら)い生活ばかりでは病気になってしまいます。我われの心を日常からすくい上げ、また次の日常にもどす。そうしてメリハリのある生活をする。そのために編み出されたのが〈ハレ〉なのです。
〈ハレ〉の典型は結婚式です。新郎・新婦が特別な着物を着て式をあげます。結婚とは、わたしの知る限り、たいていの民族でただのお祭り騒ぎではなく、その民族ごとに決まった儀式を行なうものです。その時、お金がかかる場合もあれば、お金は必要ないという場合もありました。いずれにしても新郎・新婦は儀式を済ませて、始めて、夫婦と認められるというわけです。ただ、そうは言っても結婚式にお祭り騒ぎは付き物です。日本の場合、式の後の披露宴(ひろうえん)が「日常のしがらみに縛(しば)られない時と場所」ということになっています。その意味で普通の感覚からは、披露宴こそ〈ハレ〉の典型と言うべきなのかもしれません。
博物館や美術館が「日常の生活感覚を越えた〈ハレ〉の空間だ」というのは、当たっているようにも気もしますが、でも当たっていない気もします。こう言われても、わたしは複雑な心境でした。
なぜかというと、人と自然の博物館に限らず、多くの博物館はお役所が建てた施設だからです。お役所というと、それこそ〈ケ〉を体現(たいげん)したところだと言えそうです。何となく〈ケ〉のイメージが付きまといます。マジメで堅い場所。そこが〈ハレ〉の空間だとは。何という違和感でしょうか。
しかし、人と自然の博物館で言えば、丹波竜(タンバ・リュウ)という〈ハレ〉の展示があるます。丹波竜というのは、大昔に住んでいた恐竜(きょうりゅう)の仲間で、クビナガリュウ(首長竜)の一種です。今では「丹波地方」と呼ばれる地域に住んでいました。絶滅してしまいましたが、その姿は化石になって残っています。それを掘り出している最中なので、その発掘のようすも含めて展示しているのです。この丹波竜の化石のある部屋は〈ハレ〉の空間そのものです。
ボルネオ島(インドネシアの呼び名はカリマンタン島)の熱帯林を模した展示もあります。東南アジアの熱帯林には、そこを生活空間にしている人もいて、もちろん、その人たちにとっては〈ケ〉そのものの場所ですが、展示を訪れた熱帯林を知らない人にとっては、たちまち〈ハレ〉の空間になってしまいます。〈ハレ〉の空間だからこそ、幹(みき)のように見えるイチジクの巨大な気根(きこん)や、そのイチジクの実をつまむ奇妙なクチバシをした鳥、サイチョウの姿を見て、子どもたちは歓声をあげるのです。
丹波竜(タンバ・リュウ)もボルネオ島の熱帯林も、この世に居場所がないわけではありません。丹波竜は大昔のアジアに生きていた(ただし、今はいない)生き物ですし、ボルネオ島の熱帯林は、今でも、そこに行けばちゃんと存在する生態系(せいたい・けい)です。現実にどこかにある(あった)。しかし、日常的には存在しない。そうしたものを、ヨーロッパの言葉で〈ヘテロトピア〉というのだそうです。日本語では、さしずめ「周辺にある場所」とでもなるのでしょうか。
虹の木 rainbow tree 新宮 晋 Susumu SHINGU 1988
ヘテロトピアという言葉は、ミッシェル・フーコーという哲学者が使ったことで有名になりました (2)。フーコーはヘテロトピアを、お祭りの露天(ろてん)が建つ空き地とか、都市で生活をする人びとが狩猟採集生活を疑似(ぎじ)体験できるキャンプ場のような、まさに〈ハレ〉の空間に近いものと考えました。それと共に、延えんと時間が降りつもって始めて成立する図書館や博物館も、ヘテロトピアだと考えたのです。書物や収蔵物は、時間を超えて集めなければならない智恵(ちえ)や知識(ちしき)の体系だという意味です。
丹波竜(タンバ・リュウ)やボルネオ島の熱帯林を展示した空間は、実のところ、〈ケ〉の生活には、直接、役には立ちません。しかし、それでも人びとの生活には必要なものです。必要だからこそ、人びとは集まるのです。それこそが〈ハレ〉の空間であり、ヘテロトピアです。〈ハレ〉の空間やヘテロトピアは、わたしたちの日常生活を活性化するものなのです。
博物館員としてのわたしの思考法は、あまりにも、現実の都合に流されていたのかもしれません。
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(1) 長谷川裕子さんの『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』(集英社新書)
http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0680-f/
の136ページには、「専門化した芸術言語とコンテクストを逸脱し、アートを高次のコミュニケーション・ツールとして再生する試み、アートを通して個人のポリティクス(ミクロポリティクス)をパブリックに向けて表現していく態度と傾向は、文化多元主義に柔軟に対応するものであり、他の分野とのコラボレーションを促進し、同時にグローバリゼーションによって平準化された《日常生活》の均一性に差異をもたらし、活性化する機能をも果たしている。」という文章がありました。
(2) 浜 日出夫さんの「他者の場所 ヘテロトピアとしての博物館」(三田社会学 7: 5-16)
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=26959
にミッシェル・フーコーとヘテロトピアの事が述べられています。また、『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』の78ページにも、フーコーの言ったヘテロトピアがどんなものだったかが述べられています。またフーコーはフランス人ですから、「ヘテロトピア」もフランス語読みをすれば〈h-〉の音が抜けますから、日本語でも「エテロトピア」と表記することがあります。
三谷 雅純(みたに まさずみ)
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
/人と自然の博物館