これまで未確認であった体サイズのダイオウイカ若体(胴長10~30cm)の日本の沿岸域における初めての発見について
2015年10月21日
1 主旨
ダイオウイカは胴体部(外套膜)と頭腕部および本種の特徴となる2本の長い触腕を合わせた全長が10 mを
超える無脊椎動物の中で最大級の生物であり、近年多くの個体が日本の沿岸域で漂着・捕獲されて、世界的にも
注目されているところであります。
今回九州沿岸と日本海南西海域において合計3個体のダイオウイカ若体が発見・採集され、それらの記録や形態
計測データが得られました。それらを基にダイオウイカ若体の形態的特徴や生活様式を推測して報告し、このたび
イギリスの国際学術雑誌「Marine Biodiversity Records」に掲載されました。本研究によりこれまで知られてい
なかった若いダイオウイカの生時の姿形や腕の吸盤数を含めた各体部位の詳細が初めて明らかとなりましたので、
詳細についてお知らせします。
2 記載論文について
雑誌名 Marine Biodiversity Records(イギリスの国際学術雑誌)Volume 8: e153
論文名 First records of small-sized young giant squidArchiteuthis duxfrom the coasts
of Kyushu Island andthe south-western Sea of Japan
和 名 九州沿岸と日本海南西海域から採集された,小さい体サイズのダイオウイカ若体の初記録
著 者 和田 年史 (兵庫県立人と自然の博物館 / 兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
窪寺 恒己 (国立科学博物館・標本資料センター)
山田 守彦 (かごしま水族館・魚類展示係)
寺門 弘悦 (島根県水産技術センター・海洋資源科)
公表日 英国時間 2015年10月20日
3 今回採集されたダイオウイカ若体の情報と記録
ダイオウイカ若体1(図1)
採集場所:鹿児島県肝付町沖内之浦湾(水深約45 m),採集日:2013年4月19日
採集方法:定置網(潮路丸),胴長:140.8 mm,体重:44.81 g,その他の形態計測データは論文に記載.
ダイオウイカ若体2(図2)
採集場所:島根県浜田市沖日本海南西部(水深約120m),採集日:2013年6月14日,
採集方法:巻き網(吉勝丸),胴長:332.0 mm,体重:390.6 g,その他の形態計測データは論文に記載.
ダイオウイカ若体3(図2)
採集場所:島根県浜田市沖日本海南西部(水深約120m),採集日:2013年6月14日,
採集方法:巻き網(吉勝丸),胴長:332.0 mm,体重:357.0 g,その他の形態計測データは論文に記載.
【参考図】
図 1 鹿児島県内之浦湾で採集されたダイオウイカ(採集直後の生時の写真)(撮影:山田守彦)
図 2 a) 島根県浜田市沖で採集されダイオウイカ若体(撮影:寺門弘悦)
b)頭頸部拡大写真
c)外套膜後端にある鰭の拡大写真
4 今後への期待
今後,未解明な本種の初期生活史を解明していく上で役立つと考えられる。
本研究を通して,ダイオウイカ若体についても人々の注目度が高まり,各地域から標本の採集情報等が集まる
ことが期待される。
5 担当
兵庫県立人と自然の博物館 自然・環境マネジメント研究部 主任研究員 和田 年史