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平成3年度

シルバーパワーが光った「自然との語らい入門講座」



 平成三年上半期に七回の講座を開きました。前年度好評だった野外講義を中心として表1のように構成し、各種の公開講座に受講慣れした受講生に助けられながら、全日程をほぼ計画どおり終了することができました。


     表1.各回のテーマと講師
  1. 6月 1日
    開講式、オリエンテーション
    水をめぐるエコロジー
    講師:西野麻知子 (滋賀県琵琶湖研究所)
    <写真:講座第1回の講演、西野麻知子氏>

  2. 6月16日
    都市近郊の生物のくらし
    講師:三宅 慎也 <神戸市立森林植物園>
       中西 明徳 <自然系博物館設立準備室>
       橋本 光政 <自然系博物館設立準備室>
    <写真:第2回、昼食後、受講生に話をする三宅慎也氏(左端)>

  3. 6月30日
    人と化石との出合い
    講師:堀治 三郎 <兵庫県生物学会>
       古谷  裕 <自然系博物館設立準備室>

  4. 7月14日
    漁業資源を守り育てる
    講師:三宅 和夫 <(財)兵庫県栽培漁業協会>
       田中 哲夫 <自然系博物館設立準備室>
    <写真:第4回、栽培漁業センターへ向かう路上で解説する、三宅和夫氏(自転車)>

  5. 7月28日
    身近にある遺伝資源
    講師:山田 益男 <兵庫県フラワーセンター>
       永吉 照人 <自然系博物館設立準備室>

  6. 8月18日
    風土に育まれた町並み
    講師:上田 博之 <神大大学院工学研究科>
       田原 直樹 <自然系博物館設立準備室>
    <写真:第6回、御影郷の酒蔵に挟まれた路地を歩く受講生>

  7. 8月24日
    自然とともに生きるー生涯学習時代の学び方
    講師:本玉  元 <県教委 社会教育・文化財課>
    座談会、閉講式

 ただ、講義内容に関連性を持たせて十分な学習効果をあげていただくといった配慮をする時間がなかったことが少々惜しまれるところです。そのため、「人と自然の共生を求めて」という大きなテーマにならざるをえませんでしたが、「自然と語らう」きっかけは提供できたように思われます。
 今回の応募者は百二十九名。先着順六十五名で締め切りました。このうち、十八名は昨年度の受講生で、締め切り後申し込まれた十四名を加えますと、昨年度受講生の五二%の方が再び申し込まれています。六十四名の方の希望に添えなかったのは実に残念です。
 今回の受講生の最年少は二十二歳、最年長は昨年と同じ上村光雄さんで七十六歳でした。平均年齢は昨年度より三.六歳高く(五十六.〇歳)、その原因は六十代、七十代の男性が昨年度に比べてずっと多いためでした(表2参照)。男女比もここの突出部分だけ男性が多く、女性は昨年度の四五%から今回は三二%に落ちました(この中から二人の辞退者がでました)。しかし、この六、七十代の三十名の男性は実に熱心で出席率もよく、修了証を受けたのは何と二十九名でした。受講生全体としても修了証獲得率は、昨年度の五六.四%(三十一名)から今回の七六.二%(四十八名)に跳ね上がりました。
 全回出席者は十二名で、ここでも六十代の男性は十名を数え、真夏の暑い野外での受講を考えると、驚くほどお元気であることがわかります。このシルバーパワー、今後も博物館に投入していただきたいものです。

表2:受講生の年齢層
 20代30代40代50代60代70代 計 
男性2444
女性21
合計162965


 今回の野外講義で威力を発揮したのは、昨年度受講生だった山田安さんが無料で貸して下さった聞き取り用トランシーバーです。野外では説明者のすぐそばでないと声が聞き取りにくいのですが、百m以上離れていても聞こえました。受講生に外れてもトランシーバーの提供を申し出て下さった山田さんにスタッフ一同深く感謝しております。
 さて、今回は最後の日にアンケートと感想文を出していただきました。以下にアンケート(回収数四十)の概略をまとめます。
 まず、受講生の職業(退職の方は前職)は、地方公務員十五名、会社員十一名、団体職員一名、パート一名でした。(あとは無記入です)。印象に残っている講座名は三つ書いていただきましたが、表1の順に、十、二十六、十八、十七、十八でした。
 次回も参加するかの問いには、三十八名が参加、一名が不参加でした。有料でも?には、不参加が一名増の二名でした。有料の場合の受講料は、五千円以上一万円未満九名、三千円以上五千円未満七名、数百円三名でした。
 今後学んでみたい講座内容は、植物関係七、地学関係(地質、化石、星座)六、昆虫・野鳥五、文化生活(古代、風土、町並み)四、自然保護三、などが多いところです。
 現在検討中の「友の会」への入会については、三十五名の方が入会するで、入会しないは一名でした。「友の会」の準備会には、参加三十二名、不参加二名でした。
 アンケートと一緒に書いていただいた感想文は二十五名の方から頂きました。紙面の都合で、その中から一つだけ紹介します。著者は、全回出席の二人の女性のうちの一人、田中敏子さん(五十代、元公務員)です。



 文明が進むということは人間の暮らしにとって有り難いことですが、その中にどっぷり浸り、自然の偉大さや恩恵に対し、おろそかにするわけではないにしても便利さの中で無神経になってしまっている面が多くあったことを、今回の講座で思い知らされた感があります。
 うさぎおいしかの山、こぶなつりしかの川…。この山河を次々と開発という名のもとで破壊していった我々の世代のつぐないとして、また本当に自然の大切さを次代の子供たちに知らせるため、自然系博物館の設立に大いに期待しています。また、お手伝い出来ることがあるなら、させていただければ幸せと思っています。多くを学ばせていただきましたことを心よりお礼申し上げます。有難うございました。


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Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/27