まえに戻る 目次へ つぎへ進む  


☆海外の調査から☆

 平成2年度の準備室では海外出張が4件あり、海外の博物館や諸施設の見学・調査を行いました。そのうち2件の報告をここで紹介します。残りの2名の氏名・日程・出張先は次のとおりです。
・中西明徳 8月18日〜9月3日 インドネシア・シンガポール・マレーシア
・服部 保 8月 6日〜9月3日 タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール


アメリカ博物館の印象

主任指導主事 永吉 照人

 昨年10月8日〜10月30日の23日間アメリカ合衆国のいくつかの博物館と国立種子貯蔵センターを調査する機会を与えられました。開館後の協力を要請すると共に研究組織、普及教育、ボランティアの組織、活動、貴重植物の保全状況等の聞き取りに力を注ぎましたが、その中で印象に残ったのが次の4つです。
1 スミソニアン自然史博物館のF.H.タルボット館長との懇談の中で、我々の博物館が自然誌の研究者に環境計画の研究者を加え、人間の居住環境と自然環境の調和について提言していく計画のあることを話したところ、この構想に興味を示し、すばらしい博物館を建設して下さいと激励してくれました。
2 アメリカの博物館は普及・教育に非常に力を入れています。シカゴのフィールド博物館を例にとると、学校教育を補完するために8千余のテーマを設けて、各々のテーマに関する資料、スライド、教師用の参考資料等をまとめ、段ボールのケースに整理していました。学校等の団体は博物館がチャーターした無料バスで来館し、博物館の普及室で資料の利用ができます。また、学校等への無料貸し出しも行っていました。
3 アメリカの博物館ではボランティアの活動が盛んでした。いずれの博物館でも、受付事務・普及活動・収集品の整理等を無料奉仕で行っています。前記タルボット氏は、「どのようにボランティアを組織し、援助をうまく引き出すか否かが、あなたがたの博物館運営のかぎを握るでしょう」と助言してくれました。
4 貴重遺伝子資源の保全については農務省を中心に、作物とその近縁種についてはすでに世界各地より種子を集めて貯蔵しており、それらのデータベース化が進められていました。野生植物については、組織的にはほとんど手がつけられていませんが、現在ミズーリ植物園を中心にアメリカ国内はもとより世界各地の重要野生植物を集める計画をしており、我々の博物館にも協力を要請されました。我々の計画している自然系博物館の規模はアメリカの博物館に比べて決してひけをとりません。開館後は生涯教育の一つの場として、今後ますます多様化すると思われる来館者のニーズに対応出来る博物館として、質を高めていくことが我々の義務であると思われます。

   <写真:スミソニアン自然博物館の建物外観>

まえに戻る 目次へ つぎへ進む  



Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/27