博物館情報に期待して

神戸大教授  桜井節也



 近ごろ、自然系の博物館の建設やチョウの温室開設の話等を何度も耳にします。これは、近ごろ盛んに叫ばれている「地球の環境を汚すな」「熱帯雨林を守れ」等のスローガンに刺激された人間の焦りの裏返しのようにも感じられます。しかし、ブームに乗りやすい日本人のことです。安易な博物館建設に走らなければよいと懸念するのは私だけでしょうか。
 昨年の今ごろ開館した千葉県の中央博物館は、研究を重視した大型博物館として注目され、各地の博物館の手本となるのではないかと期待されています。兵庫県でも種々の面で参考にしておられ、研究体制や人員も千葉に優るとも劣らないものができるに違いありません。
 特に、兵庫県の博物館には今までの博物館に見られないいくつかの機能が計画されています。その一つ、この自然系博物館に設けられる「情報部門」は、私が構想当時から主張もし、他の委員の先生方からも賛同して頂いたものです。これからの博物館に必要な考え方の一つは、「ストックアンドフロー」「情報センターの」の発想だと思います。
 「博情館」というのは、建築家の黒川紀章さん、国立民族学博物館長の梅棹忠夫さん、国立教育研究所の及川昭文さんらが使った言葉です。博物館の「物」を用いないで情報の「情」を置き換えています。
 兵庫県の自然系博物館はぜひそうした「博物情報館」になっていただきたいと思います。地球の歴史と生物の歴史、そして現代の地球上の土壌・鉱物・生物・人間社会、さらに人間の未来まで見すえていく、というスケールの大きなテーマに取り組んでいくのですから、博物情報館にならざるをえないはずです。
県民に開かれた情報センターになることこそが新しい博物館の生きる道ですし、「博物情報館」と聞いてすぐに「情報発信基地としての博物館」を連想するような地域住民のバックアップがそれを支えていくでしょう。
 準備室の皆さんが日々苦労されていることを聞いていますが、そうした苦労が博物情報館に集約されることを期待して、開館後の博物館をまぶたに描いています。

(自然系博物館展示委員会議長)   


まえに戻る 目次へ つぎへ進む  


Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/27