杉原川にて実施した 水温の一斉調査の結果 |
日本野鳥の会の方々と ねぐらを探す子どもたち (尼崎地域) |
身近な自然を調べてみると、これまで気づかなかったような発見があるものです。
一口に身近な自然と言っても、森や水辺もあれば、街の中の緑もあり、そこには多様な
生物が暮らしています。そこで、自然の調べ方とその注目点を博物館の研究員が解説し
普段の生活では見過ごしがちな自然環境の実態を、地域の方々と一緒に調査するのが
「ひょうごリサーチプロジェクト」です。今年度は、人博キャラバン事業の一環として県内
10地域を巡回し、地域の方々の協力をもとに様々な調査を実施することができました。
調査した内容は各地で異なり、地域ごとの特色が反映されています。例えば、宝塚地
域では、各小学校ごとに校庭の気温を測定して、ヒートアイランド現象を調べてみました。
距離的には離れていなくても、山際と都市部では明瞭な気温差があることなどがわかり
ました。
加古川水系の杉原川と千種川では、川の水温に着目しました。川の水温の重要性は、
意外に知られていないのですが、夏場の水温を測定することで、冷たい水を好む生物が
生息できる範囲が分かります。水温がいつも30℃を越すような場所では、ゲンジボタル
やアユの生活が困難になることは容易に想像できるでしょう。
杉原川での測定結果はとても明瞭で、西脇市付近の下流部になるとすっかり水温が
上昇してしまいます(右上図を参照)。ゲンジボタルの分布と重ねてみると面白いかも
知れません。
また、千種川では上流域にも関わらず、30℃を超える場所が多いことがわかりました。
調査に参加して頂いた方からは、「川の水がこんなにも温いとは思わなかった」、「水温
の上昇を防ぐためにも川沿いの樹木が重要だと感じた」などの感想を聞くことができました。
尼崎地域では、日本野鳥の会兵庫県支部の方と地元の小学校に協力していただき、
鳥のねぐらの分布を調査しました。市街地が広がる中、オアシスのように残存する緑地
とねぐらの分布を地図上で重ねる事で、両者の関連性を検討しようと言う訳です。
まさしく鳥の視点で自然を捉える試みで、結果を眺めると公園、河川敷、学校の緑が
重要な役割を担っているようです。
このほかにも、ブラックバスや水生生物調査、六甲山のイノシシ目撃マップ作成、
竹野町猫崎半島の植物調査、ミヤマアカネの分布調査などが行われました。
調べた結果は、誰もが分かり易いように地図などを使って整理し、 ホームページを
通じて公表 しております。
どれもユニークな内容ですので、ぜひともご覧頂き、情報や感想を寄せて頂ければと
思います。
みつはし ひろむね/流域生態研究グループ
Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 2002/12/28