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展示の周辺

兵庫県のミズバショウ(水芭蕉)
〜3F 池沼と海「大屋町のミズバショウ群落」から〜

 春先に白い花を咲かせるミズバショウは、湿地に生えるサトイモのなかまです。ミズバショウのなかまには、花が黄色でアメリカ大陸の太平洋側に分布するアメリカミズバショウと、東シベリアから日本の北部にかけて分布する花が白色のミズバショウの2種類があります。このなかまは、約2万年前の寒冷な時期(氷河期)から生き残ってきた植物です。

 ミズバショウは日本では中部地方から北の涼しい地域に分布しています。群馬県尾瀬ヶ原のミズバショウは有名ですが、兵庫県にもミズバショウが自生することは、あまり知られていません。兵庫県では1970年に大屋町の加保坂(標高620m)で発見されました。それまでは岐阜県の蛭ヶ野高原が生育地の南限でした。蛭ヶ野高原と加保坂は250kmも離れています。このため、栽培していたものが逃げだしたのではと考えられたこともありました。しかし、加保坂のミズバショウが生えている土壌を分析した結果、1万年前の地層からミズバショウ属の花粉が検出されたことから、氷河時代からの生き残りであることが確認されました。加保坂周辺の地質が蛇紋岩でできているので、植物の生育が悪く、小さなミズバショウが生き残ったのでしょう。

 加保坂のミズバショウ自生地は分布の西南限になり、いちじるしい隔離分布をするため、1976年に兵庫県の天然記念物に指定され保護されています。保護地域は公園として、花の咲く4月下旬から5月上旬に公開されています。

 ミズバショウの花びらのように見える白い部分は、中央にある棒状の花の集まりをまもる仏炎苞です。仏炎苞とは、仏像の後ろにある炎に例えたもので、本当の花は米粒ぐらいの大きさです。この小さな花が黄色の棒の表面にぎっしりとついています。



ミズバショウ公園入口
右手には蛇紋岩の崖が見える。
加保坂のミズバショウ
信州以北のミズバショウに比べ、小ぶりで葉に斑が入る


(自然・環境再生研究部 藤井俊夫)








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Revised 2002/02/25