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ひととしぜん

昆虫たちの”校門“としての学校ビオトープ


 学校ビオトープは「地域の生態系を理解する学習拠点を目指して学校敷地内に設けられた、生物が生息する空間」と定義され、今日、都市内部の小学校を中心に多くの学校で創られています。そこでは、主にトンボやチョウなどの昆虫を誘い込むため、さまざまな仕掛けをしています。たとえはトンボは水中で産卵するので池や流れなどの水面は絶対必要です。チョウは種によって好む植物が決まっているので(アゲハチョウならミカン属やサンショウ属など、アオスジアゲハならクスノキ科など)、そういった吸蜜植分や植樹・食草を積極的に植えています。

 しかし、昆虫たちが好むものを学校ビオトープのなかに創ったからといって、必ずしも彼らがやってくるとは限りません。図1と図2を見てください。一方は学校ビオトープがコの字型をした校舎のの開口部に創られている小学校Aで、もう一方は校舎に囲まれた位置に学校ビオトープがある中学校Bです。チョウの飛行範囲を比べてみると、小学校Aの方が学校の敷地の内部まで、チョウが進入してきていることが分かります。学校ビオトープそのものの大きさや質の違いも要因としておりますが、チョウの気持ちを考えると、校舎などの構造物がなく、多様な緑が目で見て捉えやすいと感じたから、入ってきたのでしょう。

 しょうがくせいのみなさんはこうもんからがっこうのなかにはいってべんきょうしたりあそんだりしますが、昆虫たちは学校ビオトープから通学してきて、風に乗って遊んだり蜜を吸ったりしています。ある意味,学校ビオトープは昆虫たちにとっての“校門“といってもいいでしょう。これから新たに学校ビオトープを創ろうと考えている学校、あるいは校舎の外側や囲われたところに創っている学校は、ぜひ、コの字型の校舎の開口部に創ってみてください。





(自然・環境マネジメント研究部 嶽山洋志)



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Revised 2001/11/22