1998年の夏休みに小学校高学年生30名と一緒に「草木染めに挑戦」しました。このときの作業を基に話を進めたいと思います。
結論を先に述べますと、絹や木綿の布地は、どんな草木を用いても(例えばクチナシの白い花びらでも)染めることが出来ると思います。
「草木染めに挑戦」する前に約40種類ほどの草木を用いて予備試験をしました。これらの植物は染めを試みる直前に集めることが出来ましたが、藍染めに用いるタデアイは、あらかじめ準備が必要です。今回はタデの生葉染めとタマネギの皮を用いた染めを中心にお話します。
タデアイはタデ科の1年生植物です。野生植物ではないので、春に種を蒔きある程度大きく育てておく必要があります。有機質をたっぷり与えて育てると、葉の色もよく、染まりも良いようです。秋に開花結実する前までに、2,3回葉を刈り取ることが出来ます。
生葉300gを用意します。
@ 生葉30gと水500ミリリットルをミキサーに入れタデの葉をどろどろにします(これを繰り返し、全部の葉を粉砕します)。 又は生葉300gに塩と水を少々加え、よく揉んだ後水5リットルを加えて生葉液を得ます。
A どろどろにした生葉液を目の粗い布で濾します。
B 濾液は濃い緑色をしています。これにコップ半分くらいの消石灰を加え、しばらくしますと水の表面が紺色の薄い膜が張ったように見えてきます。
これで準備OKです。
C これに染めたい布を浸すわけですが、染めむらが出来ないようにあらかじめ布の糊を水で洗い流しておくか、布全体をしめらせておくといいでしょう。
D 染めたい材料をBの液に浸し、揉んで液と布をよくなじませます。液の中では薄い青色に染まっていた布が、空気中に取り出すとあーら不思議、見る見るうちに青色に変化します。
この操作を2,3回繰り返しますと色濃く染まります。
E 最後によく水洗いし、市販のオキシフル液を10倍くらいにうすめた液に浸して固定し、乾かせば完成!
大きなレストランやコロッケ屋さんに前もってお願いすると、沢山のタマネギの皮を無料で貰うことが出来ます。タマネギの皮100gに水2リットルの割合でステンレスの鍋に入れ、これを30分間ぐらい煮立てた後皮を取り除き、残りの液を染液とします。途中、水の量が減ってきますが適宜加えます。
この染液に染めたい布を入れ、しばらく液を煮立てます。タマネギの皮100gを用いるとハンカチなら10枚以上は染められるでしょう。
取り出した布は流水で軽く洗い、媒染液に5分間ぐらい浸します。 その後取り出し十分水洗いして乾かします。媒染液に浸すと最初の染まり具合から若干色調が変わります。
一般的に言えば、ミョウバンを用いた媒染は明るく、鉄を用いた媒染は暗い色に仕上がります。ミョウバンは市販されていますし、鉄媒染は、鉄分を多く含んだ湧水を用いても効果は十分あります。
今回は、酢酸アルミニウム、塩化第1錫、酢酸銅、水酸化カリウムなども媒染剤として用い、同じ染液を用いても異なる色に染め上げることが分かりました(表紙参照)。なかには入手困難なものもあり、後始末も難しいものもあるので、初めての方には薬局でも入手できるミョウバンを用いた媒染をおすすめします。
他の植物でもタマネギよりやや多めの材料をステンレスの鍋に入れ沸騰させた後、目の粗い布で濾した液を染液として用いると、タマネギの皮と同じ方法でいろいろの色に染めることが出来ます。
木片で布の1部を強く挟んだり、紐や輪ゴムで布の一部分を絞って染めることにより、染め分けたり、絞り染めを施すことも出来ます。レッツ・トライ!
ステンレス製の鍋、長めの箸、ポリバケツ、染めようと思う草木の葉・花・皮など、染めを施すハンカチ、コースター、シャツなど、媒染液、固定液、消石灰(園芸用で十分です)(汚れても良い服装)
藍染め以外は煮沸した染液を使いますので、取り扱いに注意しましょう。子供だけで行うのは危険です。
(生物資源研究部 永吉照人)
Copyright(C) 1999, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1999/10/29