さまざまな生物が絶滅(ぜつめつ)の危機にあります。水田や湿地の泥土に生えるデンジソウもそうした植物のひとつです。直径2〜3cmの四枚葉は四つ葉のクローバーそっくりで、欧米ではwater clover(水辺のクローバー)と呼ばれて、四つ葉のクローバーの代用にされているほどです。日本では”田”と見立てて、『田字草』としたものです。
デンジソウは兵庫県レッドデータブックでAランク(もっとも絶滅の危機にある植物)に指定されています。私の知る限り、兵庫県では現存する生育地は2ケ所(伊丹(いたみ)市・小野市)しかなく、標本の記録も丹波(たんば)・淡路(あわじ)で数ケ所あるだけです。減った原因としては、水田で除草剤が使われるようになったことがいわれていますが、適当な湿地や、冬の間も湿った水田が少なくなった影響も大きいようです。なお沖縄では、別種のナンゴクデンジソウがわりあい普通の水田雑草となっています。
デンジソウは、実は胞子で増えるシダ植物で、花はありません。ふつうのシダは葉の裏に胞子をつくりますが、デンジソウは、かわった胞子のつくり方をします。葉をつけた柄のつけねのあたりに5mmくらいの小豆のようなカプセル(胞子嚢果 ほうしのうか)をつけ、その中に雌雄(しゆう)の異なった2種類の胞子をつくります。このカプセルは硬くて乾燥に強く、この中で胞子は20年以上も生きているといわれています。栽培はきわめて簡単で、田んぼの土をいれた水深10〜20cm程度の水槽に株を入れ、日当たりのよい場所に置いておけば、地下茎が横に伸びて四つ葉だらけになります。
先日、ある講義でデンジソウについてふれたところ、加古川市の学生が子供のころ、四つ葉のクローバー集めをしていて、水田のあぜで四つ葉ばっかりのところを見つけたと話してくれました。まちがいなくデンジソウです。水田で四つ葉のまとまりを見つけたら、博物館まで連絡下さい。
(生物資源研究部 鈴木 武)
ナンゴクデンジソウの嚢果 |
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Hyogo
Revised 1999/07/29