日本に自生する植物は5000種あります。そのなかで風散布植物は2000種近くあり、残りの大部分は動物に食べられて、その糞とともに分散する動物散布植物です。風散布種子を散布形態別に整理してグラフに示しました。ダスト・シード型とパラシュート型をあわせると80%近くになり,この2つが主な散布型です。ダスト・シード型の3分の1が、ランのなかまです。グライダー型の半数近くをユリのなかまが占め、冠毛を持ったキク科のなかまはパラシュート型の3分の2に達しています。プロペラ型の植物には様々な植物がみられ,カエデのなかまとトネリコのなかまをあわせても4割程度です。最も単純な長い毛を生やした綿毛型はそのほとんどがヤナギのなかまです。
種子の散布型と進化の方向にはある傾向があって、系統的に原始的と考えられているヤナギのなかまなどは単純な構造の綿毛型にとどまり、冠毛をそなえたパラシュート型やダスト・シード型は、系統上進化していると考えられるキクやランのなかまになって初めて認められます。植物は、風を受ける羽根や冠毛のためには最小限の投資にとどめ、そのぶん種子により多くの栄養分を投資し、しかも効率的な散布を可能にするダスト・シード型やパラシュート型を進化の過程で獲得してきたといえるでしょう。
(文・写真 生物資源研究部 藤井俊夫)
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