収蔵資料紹介
巻貝(まきがい)の仲間であるゴホウラは、かつて腕輪に加工された。奄美大島以南・
南西諸島のサンゴ礁で水深10mほどのところに生息する。殻高(かくこう)18cm、
殻径(かくけい)12cm、厚さ20mm以上に達する。英語でWider Pacif
ic conchとして知られ、熱帯太平洋にも産する。
ゴホウラ(Tricornis latissimus)
4, 000種およそ10,000点におよぶ菊池コレクションは、美しい貝や珍しい貝などの宝庫です。これらのなかには装身具として加工される貝も多いのです。その一つにスイショウガイ科のゴホウラがあります。
島根県西川津遺跡で掘り出されたゴホウラ貝輪(腕輪)は日本海側の東限にあたります。一方、太平洋側では兵庫県夢野遺跡が東限になります。福岡県立岩遺跡で発掘された成人男子の弥生人骨の右腕に14枚もの縦型貝輪がはめられていました。
弥生時代中期から12世紀にかけて南西諸島と九州のあいだで貝類交易がさかんになり、南西諸島産の白色貝輪材料(ゴホウラ、イモガイ、アンボンクロザメガイやダイミョウイモガイなど)や暖海産の貝であるオオツタノハガイ、ベンケイガイが大量に取り引きされていました。
また、北海道有珠遺跡(うすいせき)から出土したゴホウラやイモガイ貝輪もこうした貝輪交易ルートの延長線上にあったと考えられます。
(生態研究部 武田 淳)
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Copyright(C) 1997, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1997/03/30