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干潟の貝

 水の汚染がさほど進んでいなく、広い干潟ができる河口では、およそ30種の貝が生息しています。小さなものは3ミリメートルほどから、大きなものでは7センチメートルあまりある二枚貝のオオノガイまで観察できます。種類によって生息場所は異なります。ほとんど水のないところにはアラレタマキリガイやタマキビガイがすんでいます。潮の引いた岸辺にはホソウミニナやフトヘナタリガイが生息し、目を凝らしてみるとカワザンショウガイやダテカワザンショウガイが砂利をまき散らしたように見られます。マガキの殻や転石のあいだにはウネナシトマヤガイやコウロエンカワヒバリガイ、ホトトギスガイなどの二枚貝が足糸でしっかりくっついて生息しているのが見られます。アサリやヤマトシジミなどの二枚貝は水中の泥や砂の中から容易に掘り出すことができるでしょう。


岸辺に群生するフトヘナタリガイ


淡水に集まるヒロクチカノコガイ


砂利のように小さいカワザンショウガイ


足糸でくっついているウネナシトマヤガイ


ホトトギスの羽根の模様に似た殻をもつホトトギスガイ


砂場に生息するアサリ


帰化種のコウロエンカワヒバリガイ


転石に付着しているマガキ


 内湾奥部やそこに注ぐ川の河口には、潮が引くと広い泥や砂泥の干潟ができ、貝やカニ、トビハゼなどが一斉に姿を現します。これらを狙ってシギやサギなどの鳥たちが集まってきます。河口の干潟は海水と川の淡水が混じるところであるため、プランクトンも豊富でさまざまな生物が生息しています。
 干潟の泥の中にはゴカイ類や二枚貝などがたくさんすみ、水中の有機物をこしとり、泥の中に無数の穴をあけます。岸辺のヨシ群落は水中に含まれる窒素やリンなどの水質汚濁の元区となる成分を吸収しますので、水の循環や浄化に大いに役立っています。
 兵庫県の瀬戸内海に注ぐ河川の河口に見られた干潟は、今ではほとんどが埋め立てられて姿を消してしまいました。トビハゼやハクセンシオマネキが住む河口干潟は、県西部にわずかに残っているにすぎません。河川の汚染が河口をヘドロ化してしまい、生物がすめない環境にしてしまったのです。下水施設の早期完備を推進して子供たちが安心して遊べるきれいな川や海に、そして生物があふれる干潟に一日でも早くとり戻したいものです。


加古川の干潟とヨシの群落


干潟で休憩するユリカモメとカモの仲間たち


 干潟には貝以外の生物もたくさん生息しています。潮が引くとともに、泥の上にはヤマトオサガニやチゴガニが盛んにハサミをふり上げ、餌を口に運んでいます。魚ではマハゼやスジハゼ、ビリンゴなどのハゼの仲間たちやボラ、クロダイ、スズキなどの幼魚が河口を育成の場にしています。ハゼの仲間のトビハゼやタビラクチといった珍しい魚が兵庫県の一部の干潟に生息しています。
 これらの小動物をねらってサギやシギなどの鳥たちが潮を引くのを待ちかねているかのように飛来し、餌探しに余念がない光景が見られるのは干潟だけなのです。
(菊池貝類研究所 大谷洋子、姫路市立水族館 増田 修)


餌をねらうチュウサギ


河口に入ってくるクロダイの稚魚


泥に住むトビハゼ


河口に多いマハゼ


ビリンゴ


葦原に生息するアシハラガニ


石の下に隠れるイソガニ

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Copyright(C) 1997, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Rivised 1997/03/21