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◇ 熱帯雨林の構造と種の多様性
多くの種数
熱帯林は、地球上の森林のうち、もっとも種の多様性の高い森林
です。地球上には、500万から1000万種の生物が生息していると言わ
れていますが、そのうちの約半数が熱帯林に生息していると考えら
れています。たとえば、マレーシア半島に生育する顕花(けんか)
植物は約7,900種が記録されていますが、それはイギリスに生育する
種数の約6倍に当たります。また、同じ場所に生育している種の数が
多いのも熱帯林の特徴で、東南アジアの熱帯林では、直径10センチ
メートル以上の幹を持つ樹木は、1ヘクタール当たり、200種以上に
達します。
熱帯雨林の構造
ここにあげた図は、マレーシアのグヌン・タハンの森林を横から見
たところです。森林を横から見ると、その高さによって、樹木にいく
つかの層を見て取ることができます。この図では、50メートルを超す
ような高い木の巨大高木層、30から40メートルに達する大高木層、15
から25メートルの小高木層、5から10メートルの低木層と、草本層(地
表層)の存在がわかります。このうち、高木層から抜け出したような
巨大高木層は、熱帯雨林の特徴的な存在です。森林を構成する高木層
の主な種類は、日本ではシイ、コナラ、ブナなどのブナ科の植物です
が、熱帯林ではフタバガキ科やマメ科の植物になります。草本層には、
ヤシ科やサトイモ科の植物、シダ植物などがよく見られます。また、
つる植物が多いのも熱帯雨林の特徴です。熱帯林には動物の種類も豊
富です。グヌン・タハンの林床には象の足跡や糞があり、木の間をく
ちばしの大きなサイチョウが飛ぴ回り、朝夕には巨大なヒグラシの仲
間が鳴いていました。
マレーシアのグヌン・タハンの森林を横から見たところ
(東京農業大学 宮本 太博士 提供)
「種の宝庫」が消えていく
地球上の森林面積の約半分、約20億ヘクタールを占める熱帯林は、
現地に住む人々に食料や薪(まき)、飼料などを提供するばかりで
はありません。空気中の炭酸ガスを固定し、酸素を供給する役目も
担っています。しかし、ここに示したような立派な森林も、現在で
は急速に矢われつつあります。熱帯林のうち、すでにその40パーセ
ントが失われ、さらに年間1700万ヘクタール(本州の面積の約2分の
1)が失われつつあると推定されています。熱帯林の消矢により、
「種の宝庫」と言われる熱帯林から、1日に10種以上の生物が失わ
ているとされており、21世紀までに100万種が絶滅するのではないか
と言われています。また、近年問題となっている地球の温暖化の原
因の一つは、熱帯林の過度の伐採にあるとも言われているのです。
(系統分類研究部 池田 博)
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Revised 1996/01/16