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3齢で蛹化!−キベリハムシの飼育記録−

菊田幸雄・菊田穣

 1991年8月26日に三田市小野の聖徳寺境内で採集したキベリハムシ成虫が、9月11日に産卵した。この卵塊を中庭のツバキの枝につけ、自然の状態で越冬させた。
 下の表は、この卵魂から孵化幼虫が羽化してくるまでの記録である。
 羽化した10匹のうち、8匹を聖徳寺裏山に放し、産卵回数を知るために2匹の飼育を続けた。
 7月初め、1回目の産卵後、博物館につくる模型の色見本のため、1匹を博物館にお貸しした。残る1匹は8月15日までに5回産卵した。
 飼育には海苔とコーヒーの空きビンを利用し、中にフィルムケースを入れて食草のサネカズラを挿した。孵化が近づいたとき、底に5cmほどの土を入れた。飼育ビンには時々霧を吹いたものの、常に乾燥ぎみとなった。しかし、この虫はむしろ湿気に弱いようで、外で飼育したものでは雨の後にいなくなっている。
 神戸に入ってきて70年も経つキベリハムシが1匹で1シーズンに5卵魂以上産卵し、1卵魂から10数匹の幼虫を孵化させながら、兵庫県内にしか広まっていないのも、わが国の湿度、とくに蛹化期の梅雨が関係しているのではないだろうか。



1992.4.2〜4.7  1齢幼虫18匹羽化、体長3mm
2匹を鉢植えのサネカズラに放し、戸外に置く(A)。
16匹を5つの飼育ビンにわけ、室内に置く(B)。
A:
4.21 脱皮して2齢。
4.30 脱皮して3齢。蛹化前にいなくなる。
B:
4.16 1回目の脱皮開始。次々と2齢になる。
4.25 2回目の脱皮開始。次々と3齢になる。
5. 8 もっとも早い個体が土に潜る。
5.11 もっとも早い個体が蛹室を完成する。
5.19 全部で13匹が蛹化する。
6.17 もっとも早い個体が羽化する。
6.20 もっとも早い個体が蛹室から脱出する。以後1週間の間に10匹が羽化、3匹死亡。


コメント

生態研究部部長・大谷 剛

 準備室ニュースNo.3で博物館の職員が1齢か2齢の幼虫を飼育して2回しか脱皮せずに蛹化したことを報告しました。今回の観察に基づくと、博物館では1齢幼虫から飼育したことになります。ただ、今回の観察は、集団で飼育してるので多少残念です。1匹ずつ個別に飼育し、温度(できれば湿度も)と体長(できれば体重も)を記録し、脱皮殻をそれぞれ確実に標本にして残すと、飼育記録の決定版になります。しかし、実際に記録を残すのは口で言うほど簡単ではありません。飼育に挑戦して下さった穣氏の三男、幸雄君にお礼申し上げます。兵庫県から広がらない原因が梅雨にありそうだという穣氏のお考えには私も賛成です。

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Copyright(C) 1998, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
Revised 1998/03/20