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加藤茂弘(自然・環境評価研究部 主任研究員) |
| 地震断層は,内陸で大地震を起こした活断層のずれが地表まで達して大地にずれを生 じたものです.地震発生のメカニズムを調べる学術的な資料や,大震災の記憶を後世に 伝える社会的な資料としてなど,地震断層には大きな価値があります.このため1891年 濃尾(のうび)地震(じしん)(M8.0)で現れた根尾谷(ねおだに)断層(だんそう)(1927年指定) や,1927年北丹後(きたたんご)地震(じしん)(M7.3)で現れた郷原(ごうはら)断層(だんそう) (1929年指定)をはじめ,これまでに6例の地震断層が国の天然記念物に指定されてきま した.しかし,地震断層を半恒久的に保存するには,なかなかに苦労が要ります.自然状 態では,降雨や流水による浸食,湿潤・乾燥の繰り返しによる崩落(ほうらく),人による破 壊などで次第にその姿を失い,ついには出現位置すらわからなくなります.これらを防ぐた め,適切な保存区域に覆い屋を作り,断層部分を特殊な樹脂で固めるなど,さまざまな工 夫をします.防災教育に活用するには,看板を設置してその解説を行ったり,展示物を加 えたりするなど,さらに多くの努力が必要です.昭和初期から天然記念物に指定されてき た地震断層ですが,活用が進められたのはつい最近で,その例も少数です.例えば根尾 谷(ねおだに)断層(だんそう)では1991年に地下観察館が整備され,地震断層の地下断面 が公開されました. 1995年兵庫県南部地震(M7.3)で現れた野島(のじま)断層(だんそう)では,140mの地震断 層を覆い屋で保護し,地下断面も観察できるようにしたうえ,地震と活断層に関するいろい ろな展示がなされました.地震被害を受けた民家も,地震断層と併せて保存・活用されて います. 1995年以来,野島断層の保存・活用にたずさわっている筆者は,昨年から北淡町(ほくだ んちょう)教育委員会の援助(野島断層活用委員会研究費)を受け,1999年台湾中部地震 (M7.6)で現れた車籠埔(しゃーろんぽ)断層(だんそう)の保存と活用に向け,現地の研究者 と協働を進めています.台湾では,光復小中学校敷地を横切る地震断層と倒壊した校舎を 保存し,旧体育館を地震展示館として整備し,併せて「921地震教育区」という地震博物館 を創る計画です.ここでの地震断層と観察用の地下断面の保存・活用の手法を,試行(しこ う)錯誤(さくご)しながら調べています.台湾の地震断層は緩やかな撓曲崖(とうきょくがい)と して現れ,野島断層に比べると保存は容易です.しかし,砂礫からなる地下断面は保存が 難しく,水分量の調節や断面の固定方法などをめぐり苦労が絶えません. 4月後半に土質について詳しく調べ,10月以降には地下断面の整形・固定を行う予定です. 地震博物館の運営方法など課題が山積みですが,来年9月21日には「921地震教育区」が 開園することになると思います. ※国の天然記念物指定を受けている地震断層についての情報は下記のとおりです。 |