ありまふじサミット 2013「公園から地域へ、まちづくりへ」
ありまふじサミット 2013「公園から地域へ、まちづくりへ」
● 日時 平成26年3月16日(日) 午後2時から5時
● 場所 兵庫県立有馬富士公園 多目的ホール
● 共催 兵庫県阪神北県民局 兵庫県立人と自然の博物館
公益財団法人兵庫県園芸・公園協会有馬富士公園管理事務所
公園には豊かな自然、美しい景観、憩いの空間等々があり、魅力的な地域の資源ともいえますが、地域で活かしきれているでしょうか。有馬富士公園では、約30のグループの住民が自由に企画し実施する夢プログラムを実施しています。自然資源を活かした観察会やクラフトだけでなく、コーラスや楽器演奏、ダンスなど多様な活動が活発に展開しています。その活動のパワーが地域につながるともっと面白いことが起こるのではないかと考えます。
そこで、本サミットでは、まちづくりや地域のネットワークに強い専門家を講師に迎え、公園をとりまく地域からみた公園の魅力や課題、'公園からまちづくり'の可能性について議論し、地域とつながる公園の新たな展開をさぐることを目的としました。
<パネリスト>
① 片平 深雪 (公財)兵庫丹波の森協会丹波の森研究所 研究員
丹波地域を中心に地域づくりのさまざまなプロジェクトに関わる。旅行会社(丹波地域のツーリズム商品の企画・販売)を起業するかたわら、現在は丹波並木道中央公園地域活動コーディネーターもこなす。"地方"の暮らしと文化を次世代につなげるための取り組みを模索中。
② 河野 景子 都農enjoyスポーツクラブ クラブマネージャー
クラブの理念である「スポーツやコミュニティを通じた健康で明るい夢のある町づくり」を柱に子育て支援や健康づくり等で地域に関わる。「地域の人々の想いをカタチに」と今ある地域資源の魅力を再発見しながら、産業振興、環境学習と仲間と共に広く展開。かつて町民がよく遊んでいた都農町藤見公園の指定管理者を目指しその活性化に挑む。
③ 七島 倫恵 NPO法人シミンズシーズ
東播磨地域を中心に「市民のジリツ(自立と自律)支援」をキーワードに自律したエンパワメントを持った市民が増えるよう、様々な活動を展開するNPO。そのネットワークを活かし、今年度から兵庫県立高砂海浜公園のマネジメントに取り組んでいる。高砂市在住。
④ 若狭 健作 株式会社地域環境計画研究所 代表取締役
尼崎愛は誰にも負けない自称「地元愛コンサルタント」。中心市街地活性化や商店街・市場等の地域商業の再生、住民参加の仕組みづくりなど、街の人の想いをカタチにするプランニングを得意とする。昨年から尼崎21世紀の森コーディネートに関わる。
<コメンテーター>
① 芦田 英機 ㈲豊中駅前まちづくり会社・取締役
豊中市"まちづくり支援"室・初代名物室長として、住民主体・行政支援型まちづくりを実践し、その後、政策推進部長、京都女子大学教授、助役を歴任。「まちづくりは、邪、縦縞、長嶋」「まちづくりは、住民の夢を"仕組み""仕事""施設"の3つの"し"で実現する仕事である」「助産婦の立場で支援する...我々は横で力づけ、住民が力を発揮できるように手助けする程度で十分だ」など名言数知れず。
② 大島 一晃 NPO法人場とつながりの研究センター 事務局長
場とつながりの研究センターは、人と人が集い自分を活かせる「場」や「つながり」づくりを通して、まちづくり支援活動を行うNPO。市民や関西学院大学の学生とともに、「寄付つき商品」や「まちの寺子屋」、「居場所研究会」を昨年より展開している。
<司会>
藤本 真里 兵庫県立人と自然の博物館研究員
スケジュール
● 2時~3時30分 パネラー、コメンテーターの自己活動紹介
● 3時30分~5時 ディスカッション「公園から地域へ、まちづくりへ」
ディスカッションの概要
(1)公園ではもっと面白いことができるはず
①公園の存在が知られていない
・まだ公園ができていない。相当大規模な公園ができるにも関わらず、住民にどんなものができるか知られておらず、その説明からはじめないといけないところがこんなはずじゃなかった点である。
・海浜公園自体に興味を持っている人は少ない。いきなり公園について聞いても意見は出てこない。
・地元の大人たちが昔よく遊んだ公園であるが現在は看板さえわかりにくい状況になっている。
・自分も自分のまちにある公園を知らない。知らない人がいることをあまり気にしないことにしている。知っている人は知っているといわない。丹波市、篠山市の全小中学生に広報誌を配布しても「知らない」という声はあがるのであきらめている。アクションを起こすことで知られるようになればと思う。
②公園の制度・ルールの限界
・役人は制度・ルールの限界についてどこまで勉強しているか重要である。特例処置など土俵際がどこかよくわかっていれば、市民の使いやすいように柔軟に運用することができる。
・自由に使えるという話があったが、担当者が制度をよくわかっていてやるのならよいが、わかっていない場合、責任をとれないなど問題がある。
・土俵際でがんばる職員を公園利用者等関係者が応援する、そういう職員に権限をもたせる、現場に出られるようにするといったしくみをつくればよいと思う。
・図書館の運営に関わっていて、共用空間の話になったときに「禁止事項をなくす」という提案があった。
・もはや「やったらあかんことが何かわからん」という状況である。
③バーベキューはできるか
・「バーベキューをしたい」という意見がよく出る。
・例えば、なぜ、バーベキューができないのか。
・できる施設とできない施設がある。施設の特性による。ゴミのポイ捨てなどひどい状況になると、他の来園者に影響が出るため禁止になる。エリアを決める、利用料金を徴収するといったことで可能にすることは考えられる。
・むちゃくちゃマナーのよいバーベキューならよいということになる。このようなバーベキューをどう育むかである。そのためには、行政と利用者が話し合える場があるとよい。
・尼崎21世紀の森では、関係者が自由に集まれる「森の会議」でそういう議論をして利用の幅を広げていきたい。
・基本は何でもできると思っている。
・温泉を掘ることだって、ちゃんとした調査や資金があれば可能なくらいである。
・バーベキューをしているところを見た人が無秩序にやりだすことが大変だという話もある。
・やりたい人はみんな森の会議にきて、話し合いをしてみんなでよいということになったらやれるようにしたいと思っている。有馬富士の場合は、夢プログラムがそのフィルターの役割をしているのだろう。
(2)議論の場
①行政と利用者で折り合いをつける場
・行政と利用者で折り合いをつける話し合いの場が重要である。しかし、行政にとっては何か要求されるのではないかという警戒心が強い。
・やはり激しいクレーマーとなる住民はこわい。仕事なのでわりきってやっている。規制していることについて第三者に問われて応えられないという状況は避けなければならない。
②フラットな意見交換
・今日の会議を聞いていて、パークマネジメントからパークコミュニティマネジメントにかわってきているということを感じた。
・公園でフラットな意見交換は難しいのではないか。本当にできているのか。
・丹波では地縁型のコミュニティが強く、地域の活動でとても忙しく、フラットな会議に出てほしいといっても時間的に難しい。また、なかなか「フラットに承認する会議」という概念自体まだ難しく、理解が進みにくいと感じている。
・そのようなものは都会的な場では理解できるのかもしれないと感じている。方法論は簡単に移築できない。都会の公園では活動支援型で、田舎では地域課題解決型の支援になる。
・尼崎は自治会の力が強く、尼崎21世紀の森でも森の会議などに自治会関係者に来てもらって議論している。テーマ型の活動の担い手とは意識や想いが異なることもあるが、今議論することが重要と考えている。
・別の会議で同じ人に会うということがよくある。意見を伝えようと思う人が限られている状況がある。いろいろな人が関われる公園であること、居場所になる公園であることを知ってほしいと思っている。そこからスタートだと思う。
・有馬富士公園はふらっと訪れる公園ではなく、何か目的をもって行く公園だろうと思う。どういう目的があるのか。
・みんなで決めるといってもみんなは限られている。特定の人のためになっているのではないか。
(3)評価のあり方
・評価をするにしても来場者数だけでは十分な評価といえない。
・評価指標を専門家がしっかり現場に示す必要があるだろう。そうでないと現場職員は成果をめぐる戦いに勝てない。
・例えば、新規の来場者がどれだけいたかといったことは質を示す指標になるのではないか。
・ぶれない公園運営の方針を示し、関係する団体、来園者の質的変化をアピールするよう心がけている。連携した団体数、行政部局数、行政と連携した事業数が増えたことなどをアピールする。また、行政の人員が減少する中、公園がいっしょにやることで効果的な成果をあげられるといったアピールもしている。
・「人数は少ないが意味がある」という地域の声を首長に伝えるしくみをつくることが重要である。
(4)パークマネージャーの仕事
①雑談能力、コミュニケーション能力
・公園の運営計画を策定するにあたって、まず住民ヒアリングから始めた。公園について考えていることはあまりないが、地域づくりに対する思いは強くあって、そういう話が公園を考えるヒントになる。いかに公園以外の話をきくか、公園以外で会う機会をもつかということが重要である。住民との信頼関係が構築でき、公園に関わる課題の本質が見えたり、アイディアが生まれたりする。パークマネージャーには住民との雑談能力、コミュニケーション能力が重要である。
②営業力
・公園の外に営業力が重要。市民団体をコーディネートする団体に行って最近の市民グループの動向を聞いたりする。
・一番求められているのは営業力、コミュニケーション力だろう。公物管理の感覚とは異なる。むしろなぜ営業に出かけないのかと思う。
・営業の価値がわかる担当者が少ない。実際の現場では時間がなく動きにくいところがある。
③イベント
・大きな祭りは担当者の負担が重い割に有機的な交流につながりにくい。
・大きなイベントは行政からやってほしいといわれるし、評価される。わかってもらう手段、きっかけづくりといえるだろう。
・普段どれだけ来てもらって、愛着をもってもらうかということだ。
・イベントは大きくなればなるほど無目的になって焦点がぼけてしまう傾向がある。
・「みんなが楽しいイベント」よりも少人数がめちゃくちゃ楽しめるイベントなら考えやすく、よいのではないか。100人集まるイベント1発よりも10人集まるイベントを10発の方がよい。ただ、予算としては大きなイベントの方がたてやすいという事情もあるだろう。毎月10人くらい集まるイベントをやって、そのリピーターがまた、10人くらい集まるイベントをやるといった状況の方が求められているだろう。タモリ倶楽部的な、マニアックなイベントがよいと思っている。
(5)行政関係機関との調整
・公園の管理主体が複数存在しているため複雑で、調整役が必要だった。行政が担ってくれるのかと思ったが調整も担うことになっている。
・港湾も関わっていて手続きが多くなっている。
・管理体制はゆるく、自由な利用ができている。草刈りもするなら利用料はいらない、鍵も渡しているなど。管理人が一人いるだけである。今後指定管理者となった場合、気軽に使えていたのを予約、管理できるのか。
・信頼関係があるといろいろできる
・逆にわたしは調整役をやろうと思って指定管理者になった。それを買って出ると自然と自分のところに情報が集まり、ハンドリングがしやすくなる。行政の○○な事業をやる予算があるという情報を受けて公園事務所と行政が協働で事業化するというようなこともある。
・複数の部局が関わるところで何かやろうとすると手続きが煩雑で、行政担当者もわからないところがある。これらの調整は重要で、行政よりも指定管理者など外部の人が調整した方が良い。例えば運河を利用する場合、土木の他に港湾、海上保安庁との手続きが必要で、これらを簡略化するともっと利用するようになるだろう。調整業務はビジネスチャンスともいえる。これらの調整は、折り合いがつくように翻訳する、行政が納得する理屈をたてるといった作業でこれもパークコーディネーターの重要な仕事ではないかと思う。
・何かやりたいときに関係部局に集まってもらうとそれぞれ自分の部局の説明をされる。それらをまとめるとどうなるかが重要で、自分たちのようなよそ者がその間を埋めていると感じることが多い。行政にもコーディネーターがいると、いろいろなことが迅速にすすむと思う。
・豊中市では、企画部局にまちづくり支援室をつくり、役所の中を調整し意見をまとめる作業、まちづくり協議会がつくった構想を計画にする作業をやった。
(6)公園とまちづくり
①住民の声を制度にのせる
・まちづくりは3つの「し」。しくみづくり、しせつづくり、しごとづくりである。公園という施設はすでにあるので、しせつを有効に活用し、改善するには、しごとづくり、しくみづくりが重要である。
・公園はトップダウンでつくったもの、ボトムアップでやろうとすることには困難なことが多いだろう。合意形成をどうするか、行政との協議をどうするかというしくみが重要。
・現場と管理部門ではなく、先端職場と支援職場としていた。先端職場で利用者の声を聞き、利用者の声を形にする(制度にのせる)のが、いわゆる管理部門の仕事である。
・首長選挙のときに首長を公園によび、つくりたい制度の実現を確約させる。さらに部下にちゃんと伝えてほしい旨も主張する。選挙の前には予算がたくさんつくので、このようなアクションをぜひやるべきである。
・コミュニケーションをとるための事業は、予算根拠をつくるための工夫が必要である。
②楽しいだけでは活動を継続できないのでは...
・公園を楽しければとよいとフリーライダーのように使い続けるということには危機感をもつ。住民と行政といっしょに使い勝手のよい公園にするためのしくみを築きあげないといけない。
・さまざまな政策の改善には、そのためにがんばる職員を住民が応援することが必要だ。職員に権限を与えるしくみも必要だろう。
・行政と住民の位置関係には5段階ある。行政によるサービスを受ける施策の対象としての住民、行政が住民から意見聴取をする、行政が参加して支援する 行政と住民の恊働、自律支援である。
・住民には計画を策定する権利があり、行政にはその策定を支援する義務がある。また、行政には計画を実現させる義務がある。
(7)その他
①有馬富士公園の夢プログラムに感動
有馬富士公園で市民が夢プログラムをやっていることに感動した。いい人との出会いがあっていい公園だった、いいまちだったと思うものである。藤見公園でもそう思ってもらえるように、公園に愛着をもつ人々の足跡がみえるような工夫をしたいと思う。
アンケート結果
以下は、質問や感想についての自由記述形式のアンケート結果である。
・何か新しい考え方を教わった気がします。参加できてよかったです。
・とても魅力的なサミットでした。次回もぜひ開催してほしいと思っています。ありがとうございました。
・公園管理サイドばかりのパネリストだったので利用者サイドからの発言、発想がなかった。この点こそ大切と思う。
・よい企画で充実した3時間でした。パークコーディネートの軸足は利用者向けが70〜80%でもいいですが、公園内での活動団体への注力も必要です。今回の企画は公園に留まらず、地域づくりに携わっている私にとっても結構役に立つ内容でした。公園活動団体への思いを聞きたかった。
・必要な議論をする会議も大切ですが、利用者と公園側、行政とのコミュニケーションをとるのみの会(例えば飲み会や食事会)も大切にして、お互いにざっくばらんな話ができる場があればよいかもしれないと思いました。ありがとうございました。
・公園は家族で楽しく安全に時間を過ごせる場所と思っていました。管理者が危なくない環境づくりをして税金で運営されていると思っていました。(昔の成功者が寄付された施設は別として) 何も知らなかった老人ですが、若い方々がこれからやって行かれる事に生きている間は見続けていきたいと思います。
・公園という施設にとどまるのではなく、「地域がつくる」「利用者がつくる」という体制の確立を行えていないところを再認識した。マネージメントを行う事の重要性を再度勉強したい。
・おもしろかったです。公園のパークマネージャーの営業力という考えと、来場者だけが大事というわけではないというのが参考になりました。
・公園の来場者やイベント等に対する"評価"について重要でありながら、これまで課題としてあがらなかった。今回その質問でみなさんも同様に重要視されていることが理解できた。専門家には早急にこの課題の方向性をつくってほしい。