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 兵庫県立人と自然の博物館では、”収蔵庫とみんなをつなぐ新しい試み”として「ひとはく多様性フロア〜魅せる収蔵庫トライアル〜」が予てより企画・製作されており、開館20周年を迎えた平成24年10月14日(日)一般公開されました。
この日はみなさまへの”お披露目”ということで、朝より館長以下研究員の先生方による展示解説が行われました。その一部を紹介します。

 

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▲ テープカットの後、岩槻邦男館長によるギャラリートークがありました

 

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▲ ”本物の標本に触れる!”解説は橋本佳明先生です

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▲ 田中先生による「コウノトリを中心とした生物多様性」の説明です

 

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▲ 古写真の展示もあります 解説は武田先生です

 

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▲ ”ひみつの収蔵庫”では、タイプ標本を見学できます 解説は秋山先生 

※見学できない場合があります

 

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▲ ”多様性の壁”の前で解説する鈴木先生

 

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▲ オオサンショウウオの骨格標本もあります 解説は太田先生

 

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▲ おおっ! はばタンにひとはくはかせも見に来ている!?

 

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▲ ”収蔵庫体験ラボ”ではまるで本物の収蔵庫にいるよう! 加藤先生の解説にも熱が入ります

 

 このブログをご覧のみなさまも、是非ひとはくにお越しくださり、この「魅せる収蔵庫トライアル」を体感ください。想像を上回る”体験”が待ってます!

http://hitohaku.jp/exhibits/permanent_exhibits.html


(生涯学習課 西岡敬三)

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先日、生物多様性協働フォーラムの第3回目が開催されました。
今回のタイトルは、社会の「つながり」を活かした取り組みの展開、です。まさに、多様な主体による参画と協働が意味するところのフォーラムとなりました。会場は、兵庫県庁のすぐ前にある兵庫県公館です。おかげさまで、広い公館が満席となりました。参加者数は450名で、高校生から年輩の方まで、こちらも多様性がゆたか。特に、若い世代の参加が多かったことが印象深いです。

講演では、当館の副館長の中瀬先生からは兵庫県における企業と行政と地域が協働した森林管理の仕組みとその事例について紹介。次に、滋賀県の経済同友会とともに活動されている菊池玲奈さんからは、琵琶湖汽船や滋賀銀行などの企業と連携した取り組みを、同じく滋賀県からブリジストン彦根工場での希少種保全や琵琶湖博物館と連携した取り組みが紹介されました。
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フォーラムでは、兵庫県の井戸知事と滋賀県の嘉田知事の対談が、当館の岩槻館長の司会のもと行われました。対談の途中には、会場にいる研究者や環境に優しい農業を推進されている方を指名する一幕もあり、大いに盛り上がりました。90分の対談時間は、ちょっと長いかなと思っていたのですが、あっと言う間でした。会場のアンケートからは、もっと聞きたいとの声が多かったようです。
さらに、この会合には、環境省の渡邉綱男自然環境局長もお越しくださり、しっかりとエールを送って頂きました。多くの環境問題は、関西圏のなかで、府県の枠を超えて対応しなければならない課題が山積
です。しかも、再生すべき場所や保全しないといけない場所はたくさんありますが、予算、人材、人々の関心といった部分でより一層の努力が必要な状況です。こうしたネットワークを活かして、生物多様性をうまく活用し、保全し、再生してゆくことが必要になるのでしょう。このときに、博物館がハブとして大きな役割を果たせればと思います。

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兵庫県公館のロビーでは各団体や博物館のブースが設営されました。
左上:大阪市立自然史博物館、右上:琵琶湖博物館、左下:ひとはく、右下:三重県立博物館
となります。どこの博物館もそれぞれの個性がでています。

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琵琶湖博物館さんは、今回のフォーラムで移動博物館「どこでも琵琶湖博物館」のセットの一部を初披露くださりました。型どりした湖産の魚や象の歯など、ハンズオングッズが充実しています。滋賀県内だけでなく、関西圏全体で、いろんな博物館が協力して、「どこでも博物館」になることを期待したいと思います。非常に充実した会合でした。

(みつはしひろむね)

ひとはく2012

2012年1月27日

ひとはくは199210月に開館し,今年で20年目を迎えます。もちろん,準備期間がありますから,ひとはくの実質的な活動期間はもう少し長くなります。さらにその20年のうち,2002年から新展開を始めました。20年の前半と,後半の新展開はほぼ半分ずつになります。新展開も準備期間がありましたから,ちょうど10年ずつなどと刻むことができないのはいうまでもありません。その間,構成メンバーに移動はありましたが,ひとはくとしての活動は一貫したものがあります。ひとはくが何を目指して開館したか,10年後に新展開を必要としたのはなぜか,20年を通じてひとはくが何を成し遂げ,何ができなかったのか,21年目以降のひとはくは,20年間の実績に基づいて,何を目指し,どのような活動を展開すべきなのか,ひとはくは20年目のひとはくに課された問題を直視しようとしています。

 

 20年というのは,個人にたとえると,成人に育つ期間です。機関でも,個人と同じように一定の成長を刻む期間といえるでしょう。ひとはくは成人できるか,大人の機関として貢献できるようになるか,それが見えてくるのが今年だといえそうです。

 化石の発掘にともなう諸企画はますます広がりを見せています。化石自体が面白い科学的な展開を見せているだけでなく,昨年のシンポジウムでも内外の評価を得たように,発掘,クリーニング,研究,成果の集成と展示など,一連の活動がひとはく独自の展開を見せています。篠山層群の化石について,今年ももっと新しい展開があることでしょう。

 

 

【恐竜化石シンポジウムinたんば】 

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      (発掘体験会)    シンポジウム会場ロビーでの展示

 

 

山陰ジオパークの事業にもひとはくは積極的に参画してきました。今年も,この企画がさらなる盛り上がりを見せることを期待し,ひとはくのもてる力をここでも発揮することになると思います。 

 昨年から,多少遅れていたキッズへの対応が活発になりました。県内外の活動は,これまでのキャラバンなどの経験を生かし,災害に痛めつけられた東北地方での活動に貢献することもできました。仙台と八戸,久慈での活動が,地域のキッズと関連の人たちに学びの歓びを運んだものだったと考えています。このような貢献が,今年はさらに拡大するように,当該地域の人たちと恊働する企画を展開します。

 

 【キッズキャラバンin東北】

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         (青森県八戸市)       (岩手県久慈市)

 

新展開が定常化したひとはくの活動が,大人に育ってさらなる飛躍を描き出すのはどのような手だてによってでしょうか。ひとはくのスタッフが主体的に活動するのは当然ですが,ひとはくにかかわっていただくすべての人との恊働もさらに望ましいかたちに高度化させる年にしたいものです。

 

                                           岩槻 邦男(館長)

 

昨日(2011年7月10日),生物多様性JAPANが主催する緊急・公開フォーラムが千葉で開催されました。

フォーラムのタイトルは「災害と生物多様性―災害から学ぶ,私たちの社会と未来―」です。

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多くの方がそれぞれの分野で,将来へ向かって精力的な取り組みをされていることが良く分かり,とても勉強になりました。

ひとはくからは,岩槻館長が基調講演を,私が植物標本のレスキューに関する講演を,それぞれさせていただきました。報告書はまとめられ,順次発信されるそうです。

 

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(自然・環境評価研究部 布施静香)

→「津波被害にあった標本を救おう18:被災自然史標本の修復技法と博物館救援体制を考える研究集会」へつづく。

 

生物多様性JAPANのHPはこちら(今回のフォーラムのプログラムも掲載されています)

ひとはく2011

2011年1月28日

2010年は国際生物多様性年でした。ひとはくでも、生物多様性大作戦を展開した上、名古屋でCOP10が開かれた10月には、会場にブースを設けて、兵庫県における生物多様性への取り組みの現状を世界に向けて発信しました。

 生物多様性はメディアに取り上げられることも多く、人々の関心を引くこともできました。しかし、最近の日本では、いたずらに流行を追って付和雷同し、盛りが過ぎれば見捨ててしまう傾向が極端です。生物多様性に向けての目も一過性で終わるのではないかと心配しておりました。

 国際生物多様性年は、12月の金沢のクロージングの集いで幕を閉じました。12月の国連総会で、これからの10年を生物多様性の10年とする、日本からの提案が採択されたことは知っていますか?この問題について、長期的な取り組みがなければ、人類の生存を全うすることなどあり得ないとの認識です。その上、以前からの取り決めで、2011年は国際森林年です。生物多様性のうちでも、とりわけ森林の生き物との共生に、真剣に取り組もうという年です。

 

 

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  COP10会場「生物多様性交流フェア」      ひとはくブースのようす。                                                                           1万人を超える方々が訪れました。

 

 ひとはくはひとはく独自に日本の博物館活動を活性化する術を求めて行動します。しかし、地球規模の動きに合わせて活動を効率的に育てるのも無意味ではありません。生物多様性の10年が進行しつつあることも、2011年が国際森林年であることも意識しながら、新展開から10年になる今年のひとはくの活動が展開します。ひとはくの活動は、ひとはくに集う人たちの活動であり、これからひとはくで共に学習しようとするはずの人たちへの呼びかけの活動です。 

 

 

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    「共生のひろば」のようす。昨年は58件の発表者と330人を越える聴講者がひとはくに集ま

     り、活発に意見交換を行いました。

 

紙の上の目前の豊かさだけに執心し、一過性の「はやり」に振り回されているうちに、日本は何とも情けない国に落ちようとしています。日本列島に住んでいた先祖たちは、きびしい自然の脅威に喘いでいたときでさえ、毅然とした態度で生き抜いてきました。わたしたちの世代が、日本列島を人の住めない場に追いやることだけは避けたいものです。そのためには、わたしたち自身が、いま何を学び、何を行うか、見定め、考えることです。誰かに教えられ、あっち向いてホイ、と生きることは奨められません。自分の目で見、自分の頭で考え、何か問題があればひとはくを訪ねて、館員や館に集う人たちといっしょに学習し、行動したいものです。

 

                                                      岩槻邦男(館長)

 

今日は、BS JAPANの取材で東京から取材スタッフがやってきました。
より多くの視聴者の方へ生物多様性保全の意義や重要性についての認識を持ってもらいたいという30分の特別番組だそうです。

 

「生物多様性」保全の意義・重要性などについて岩槻館長へインタビュー
場所は博物館横の芝生が美しい深田公園で。


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取材を終えたスタッフは「岩槻先生の言葉は重かった。マスメディアの責任を感じます。」と言っていました。

 

午後からは、服部研究部長のセミナー「里山・ジーンファーム講義と観察」の取材です。


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            (笑いありの楽しい講義のようす)

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            (ひとはくの森)    (ふだんは公開していませんジーンファーム)

 

服部研究部長は、この日の午前中NHKの取材もありました。
大忙しです。

 

「こんな面白いセミナーがあるとは。全く力を抜いていない盛りだくさんのセミナーですね。」と言って、取材スタッフは、帰りの新幹線の時間がないため慌てて帰京されました。
お疲れ様でした。

こうしたマスメディアを通じて情報を発信していくことも、ひとはくの大切な役割のひとつです。
放映は来年1月の予定です。


小林美樹(生涯学習課)

 本日、8月22日(日)、午後6時〜7時、NHK教育/デジタル教育1チャンネルにおいて、TVシンポジウム「地球の未来を探る〜共生思想をどう生かすか〜」にパネリストとして、ひとはくの岩槻邦男館長が出演します。

 

 人類文明の進歩と急激な人口増大。そのことに起因する地球規模での環境問題の深刻化。その解決をはかるため「自然と人間の共生」についての議論が活発化しており、「共生」の場として日本独特の「里山」が注目されています。

 今年の7月18日に東京で開かれたフォーラム「地球生命の未来を探る〜共生思想をどう生かすか〜」での議論の様子が放映されます。

 

 ぜひ皆さんも番組を視聴していただき、持続可能な社会を構築していくにはどうしたらよいのか、一緒に考えましょう。

 

2010年のはじまりは、2010年代10年のはじまりでもあります。2000年代の最後の年は変化がもてはやされ、新しさが期待された年でした。しかし、もし創造が本当にあるとすれば、2010年代の10年に期待します。そして、前向きの創造を成し遂げることができなければ、この地球も、日本という国も、日本に住むわたしたち1人1人も、よりよい未来に歩みを運ぶことが出来なくなってしまいます。


2010年は国際生物多様性年です。10月には、名古屋で、日本初の生物多様性条約加盟国会議(COP10)が開かれます。わたしたち自身がその要素のひとつであり、またそれなくしてわたしたちの生などあり得ない生物多様性、その持続的利用と保全について、今年はじっくり考え、行動したいものです。 

そういう年に向けて、篠山層群の化石は、恐竜だけでなく、多様な生き物たちのすがたを見せてくれます。1億何千年か前の奥丹波で活動する生き物たちのすがたを、現在うごめく生き物たちと比べながら観察するのも楽しいことです。

山陰海岸をジェオパークに、という運動も具体的な姿が見えてきたようです。兵庫県のうちでも、奥丹波や但馬の自然に焦点が当てられるのも、2010年代のあり方かもしれません。

kanchou1-1.JPG                        (写真1:「猫崎(豊岡市竹野町)と夕日」) 

SATOYAMAイニシアティブという動きもかたちが見えてきました。里山の維持管理に兵庫方式を提唱し、モデル実験をしてきた実績を、2010年代には日本の教科書に育て上げたいものです。

kanchou1-2.JPG  (写真2:「兵庫方式で管理され明るくなった里山の林内の様子。」)


 ひとはくは2010年にもたくさんのメニューを整えて皆さんと一緒に考え、行動する準備を整えます。ひとはくの活動に積極的に参画し、とりわけきびしい状況を示している自然環境について、自分の頭で考え、自分のからだを動かす日々をつくりあげてください。地球の環境をよくするのも悪くするのも、地球に生きるすべての人に負わされている責任です。

                                              

                                                                    岩槻邦男(兵庫県立人と自然の博物館 館長)

 

 2009年も12のうち11番目の月が終わろうとしています。最後の1月が、今年を有終の美で飾るものにするために、12月もまた堅実な歩みを発展させたいものです。

 

 恒例のひとはくフェスティバル、今年は11月1日(日)に開催されました。何年ぶりかの雨のフェスティバルになり、深田公園が使えず、野外での設営が予定されていた事業はホロンピアホールと雨よけの通路などで実施されることになりました。この日は県内でもいくつかの同類の施設で類似の事業が開催されましたが、いずれも雨には苦しめられたようでした。 

 

 天気予報に合わせて急遽博物館の建物の中で展開されることになった催しは、しかし、どこもたくさんの入館者の関心を惹き付け、終日たくさんの人々で賑わっていました。例年なら深田公園を歩く人たちも、狭い場所に集まることになった出店付近よりは、館内の催しに向かうことになったせいかも知れません。おまけに、秋晴れを期待して野外を散策する予定だった人たちを、休みの1日を博物館に向かわせた効果もあったように見せてもらいました。

 

 午後に「恐竜疾走コンテスト」が開かれ、わたしも審査にかかわりました。恐竜の気分になって走ったり吠えたりするパフォーマンスを比べるという催しです。実際に恐竜がどのような行動をとっていたか、さまざまな傍証から推定されはしますが、実際は誰も見た人はないのですから、正確には分かってはいません。だから、審査するといっても、パフォーマンスする人と同じで、多分こうだったのだろうと自分勝手な想像に基づいて評価するわけです。実際に近いパフォーマンスかどうかという評価はできないのですから、行動を通じて恐竜に抱く夢をどのように表現するかが評価の基準になります。

 

 参加したのは、そうと決められたわけではありませんでしたが、子どもたちばかりでした。恐竜への夢を表現してやろうという若者も老人も、応募してもらえなかったようでした。恐竜が、子どもに夢を与えるほど、若者や老人の行動意欲を呼び起こすということはなかったのでしょうか。それとも、大人は頭の中で恐竜を夢想し、行動で示そうとするのは子どもの手足だけなのでしょうか。

 

 恐竜の話に関連してですが、篠山層群では、丹波竜として有名になった恐竜化石に加えて、さらに貴重な化石の発見が続き、ひとはくと化石の関係はますます緊密になっています。11月下旬には篠山市内で発見された化石についても公表することができ、また全国に発信されました。化石そのものは一見目立たないものですが、学術的にはたいへん貴重な材料です。世の中では、学術的に貴重なものより、多くの人の関心を惹きつける材料の方が高い評価を受けています。しかし、科学の発展は、そのことを通じて技術の革新につなげ、人類社会の豊かさ、安全さを高めると同時に、文化を高め、正邪の判別をより確かにし、人のこころをいっそう豊かにする根源となるものです。博物館は、そのもの自体が多くの人の関心を引く材料を提示し、学びの機会を提供するのと平行して、人のこころを豊かにする素材をさまざまな階層の人たちに理解可能なかたちにして提供し、学びの歓びを生きる歓びに深化させる役割も担っています。学術的に貴重な化石の発見は、博物館活動の活性化にも追い風となる出来事で、フェスティバルのような催事につなげる良い資料が付加されることになります。

 

 せち辛い世の中ですが、ひとはくには前向きの話題が豊富です。ひとはくの館員の日常的な活動が話題の創出につながってもおりますが、それ以上に、ひとはくが重きを置く連携の環の拡大が、着実に成果をあげているためかと思われます。ひとはくを活用される人たちと一緒に、ますます活用し甲斐のあるひとはくの形成に向けて、より多くの人たちとの連携を強めたいと夢を描いています。


岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム10

2009年10月27日

 ひとはくの新展開では、博物館活動の原点に戻り、生涯学習支援とシンクタンク機能の発揮が活動の2つの柱とされました。生涯学習支援の視点はすでに第8回に取り上げましたので、今回はシンクタンク機能について、ひとはくが貢献している実例をいくつか拾い上げて紹介します。

 シンクタンク機能とひとことでいっても、多様な対応が期待されます。県立の博物館という博物館の位置づけから、県政課題への対応が業務としても必要なことはいうまでもありません。この領域では、第3回に紹介しました「生物多様性ひょうご戦略」策定での貢献が分かりやすい実例です。近頃の評価システムでは、委員会にどれくらい出ているか、などと数字に表れやすい資料が大手を振って歩くことになっていますが、ひとはくも実際いろんな委員会での貢献もしています。しかし、戦略に結びついたのは、絶滅危惧種や外来生物への日常的な対応、里山林などの基礎的な調査研究から管理維持への貢献など、これまでに積み上げてきた実績です。博物館としての日頃の調査研究活動が、県政課題へのシンクタンク機能に結びついているきれいな実例といえます。

 ひょうご戦略に実った成果は、来年秋の生物多様性条約加盟国会議(COP10)に向けての活動、とりわけ神戸で開催される諸会合での活動につながり、ひとはくのメンバーの貢献はここでも光っています。環境問題は「地球規模で考え、地域で活動を」と訴えられます。兵庫県における地道な活動が地球の明日への指針を描き出すことが、兵庫県の自然の保全につながる基本です。

 県立の博物館だから県政課題に貢献していればそれでいいというものではないでしょう。県立の機関は県民のものです。実際、兵庫県におけるさまざまな自然環境問題への取り組みに、ひとはくはシンクタンクとしての役割を果たしています。ひとつは、市町村等の公共団体への助言と協力です。具体的に協力協定を結んだり、形式上の取り決めはなくても、実際上求められて事業の企画に助言をしたり、評価に協力したりと、さまざまな貢献を重ねています。

 自然環境と人とのかかわりは、行政だけで理想的に維持されるものではなくて、そこに住む人々の自主的な活動によって支えられるものです。日本列島の自然は、典型的に、日本人の、人と自然の共生を育んできた生き方によって維持されてきました。(そのことを、昨年の連続セミナーで話しましたが、内容をかいつまんで9月末に研成社から刊行した『生物多様性のいまを語る』に紹介しています。)現在もまた、自分たちの環境を大切にしようと考えるさまざまなNGO, NPO によって多様な試みが進められています。自然環境についての日常的な調査研究の知見に基づき、ひとはくのメンバーはこれらの人々に必要な助言を提供し、シンクタンクとしての機能を果たしています。求められて応じるだけでなく、ひとはくのキャラバン活動などを通じて、地域に新しい意欲を芽生えさせるきっかけづくりも行ってきました。ひとはくの活動に連携する人々の環を育てようという試みです。その成果は、毎年2月11日に開催することにしている「共生のひろば」で見事に花を開かせつつあります。

 今夏は佐用川できびしい災害に見舞われるという悲しい出来事がありました。ひとはくは船越山麓の昆虫館と強い連帯をもって活動しており、わたし自身も昨年は昆虫館との共同事業に参加しました。災害に見舞われた日もまさに連携活動が実施されている時でした。昆虫館の災害につきましては、このブログでもすでに紹介した通り、ここでの活動を大切にしている人々といっしょに、復興支援の呼びかけをしています。これもまた、ひとはくのシンクタンク機能から出発した具体的な活動です。シンクタンク機能は座って理論を展開することも大切ですが、環境問題への貢献を考えるなら、具体的な活動につながってはじめて成果が結ばれることも認識する必要があります。


岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム9

2009年10月14日

 10月は自然の季節の分かれ目でもありますが、人が設定した年度の上半期から下半期への移行期にもあたります。最近では、衣替えという言葉は流行りませんが、エコスタイルと呼ばれる服装から旧来のすがたに戻る時で、男性はネクタイを締め直す季節です。国のエコスタイルはなかなか徹底しませんが、先行していた兵庫県では遥かに徹底しており、周囲に気を使う心配もなく、安心してエコスタイルをとることができるようになりました。国では9月も自動的にエコスタイルが要望されますが、県は6月、9月は各個に状況判断をすることになっています。現実には、東京ではネクタイ派が多いのに対して、兵庫県ではエコスタイルが断然優勢だったように見ました。

 年度の半ばに達した時ですから、10月のひとはく月例報告会では、09年度の前半を見通しながら先月の実績を評価しました。単年度の中間というだけでなく、ひとはくでは新展開第2期5年間のちょうど中間に当たる時でもあります。5年の目標値の半分が達成されたかどうかを確かめ、達成されていないとしたら何が問題だったかが洗い出されないといけません。第1期では、目標値の設定自体にさまざまな問題が含まれていましたが、第2期では、第1期の経験に基づいて目標値を設定していますので、自己評価に向けて下手な言い逃れはできません。

 ひとはくの外の動きを見ますと、今年度の上半期には、県では知事選もありましたが、国政選挙では変革も刻まれました。これが吉と出るか、凶につながるか、変革を演出した国民の参画と恊働を含めて、厳しい行動が求められます。もっとも、一足早かった change は、もうノーベル平和賞で顕彰もされています。変えようと思うこと自体が、未来をつくる夢を育てることであり、未来へ向けての重要な一歩を刻んだことだからでしょうか。

 ひとはくの新展開は最初の5年を終え、第2期も峠にさしかかりました。ここまで来ると、活動は日常化し、試行錯誤から脱却しますから運用は効率的になります。誉めていえばそうですが、逆にマンネリ化してはじめの意欲が吹っ飛んでしまうのも人間の弱さの現れです。その意味でも、節目ごとに現在を洗い直し、初心に戻ることが肝要であり、ひとはくの月例報告会はその役割を有効に果たしているものと、10月の第2金曜日に実感しました。(月例報告会については、このブログの第4回に、現状をちょっとだけ紹介しました。)
 ひとはくの新展開は、企画されただけでも顕彰に値するものだったはずです。さらに、第1期の実績も、それ相当に評価されてもよかったはずです。しかし、残念ながら、それが客観的に評価されるほど世の中は進んでいません。もっとも、客観的な評価というのは、何かで顕彰されるようなことだけではないはずです。ありがたいことに、ひとはくの活動は県内でも識者には徐々に認知してもらえているようですし、業界内でも相応に評価していただけていると、私は勝手に自負させてもらっています。ひとはく内で、諸々の制限、困難に遭遇しながらも、前向きな企画がひとつひとつ積み上げられているのも、構成員の自信とやる気の現れでしょう。その成果がもっとも大きな収穫です。

 ひとはくが発信するさまざまな事業のうちで、セミナーは『ひとはく手帖』で紹介されているように多彩に展開しています。昨年度はわたしも10回シリースに取り組みましたが、三田に遠くて参加いただけない人にも活動内容の一面を知っていただけるように、内容の一部を紹介する『生物多様性のいまを語る』という書を研成社から上梓しました。宣伝を兼ねてになりますが、ひとはくの情報発信活動のひとつを見ていただくために報告します。ひとはくの活動に、檄を飛ばしているだけでなく、自分も参画しているという歓びを実感してもいます。


岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム8

2009年9月29日

 明治以後の日本の教育体系の中で、生涯学習は少しいびつなかたちで展開してきました。これは、教育という言葉の意味が、教え、育てると理解され、教える主体(教師)の導きかたで教えられる客体(生徒)を育てる、という方法が重視されてきたためでしょう。明治維新以後、西欧文明に追いつけ追い越せと突っ走ってきた日本の教育は、100年経った時、少なくとも経済的には先進国の一角を占める成果をあげていたのですから、それなりの効果を生んできたのでしょう。教育を知育に限っていえば、知識の習得など、教え育てられることに意味があります。

 自主性、独創性に富んだ人は、教育体系の正統派でないという現象を生み、平均的日本人は大政翼賛的な大勢順応を旨とするのは、教える教育の成果だったのでしょうか。education という言葉は引き出すという語源をもち、教えられる客体の能力を育てることに主眼をおいた行為だと説明されます。英語の時間には、education は教育と訳されましたが、これは学習と訳した方が意味が近かったのかもしれません。国際的な会合で、頭の中でeducation を教育と理解して話を進めていて、しばしば理解に行き違いが生じるのを感じたのは、対訳の意味のずれに原因があったように思います。

 日本人が模倣に優れており、取り入れたものを巧みに改良して世界一のものに育て上げる能力をもっていることは歴史が実証している事実です。だから、自主性、独創性が日本人の資質として正統派でないことは明治以後の教育のせいだとばかりはいえないでしょう。しかし、寺子屋で営まれた全人教育は明治以後姿を消しました。それでも、だんだん昔の話になってしまいそうですが、優れた教師に心酔することの多かった頃には、知識の習得だけでない学びを学校でも経験していました。

 知育がすべてで、受験勉強の勝者が学校社会の勝者であるようになりますと、教えられることはあっても、学ぶことが乏しくなります。字義とおり、勉めて学ぶ勉強はしても、学ぶ歓びを満喫する学習の機会は学校にはなくなってしまいます。社会が学校に求めるのが教育だけとなったら、子どもは学びの歓びを満喫する機会をもたないままに、大勢順応型で、そのくせ変にこましゃくれた大人になってしまいます。

 日本で生涯学習が軽んじられてきたことは、西欧文明の後追いをしながら、博物館等施設を軽視してきたことにも現実の一端が見られます。もっとも、博物館関係者の対応にも問題がなかったとはいえません。それが、ここへ来て、一部の博物館の活性化によって姿を変えようとしています。新展開で生涯学習の振興を主題に掲げたひとはくも、そのトップランナーのひとつだと自負しています。知識を習得して博覧強記を目指すだけでなく、自分の目で確かめ、自分の頭で試行錯誤を経験する機会が、博物館には準備されています。もっとも、最近の博物館、少し奉仕精神が強すぎて、人々が考える前に考え方を提示してしまいそうで、それが教えられることに慣れた人々に求められていることであったとしても、博物館らしさを失わせる元になるのではないかと心配になることもあります。ノーベル賞候補に名前の挙がることのある畏敬する化学者が、子どもの頃何度も博物館へ連れて行かれ、一人で館内を彷徨していろいろ学んでいるうちに理学を志すようになった、と思い出を話されたことがあったが、最近のようにタッチオンの機会も多い博物館だったら、自分の好みに任せて博物館を自主的に利用するようであってほしいものである。

 生涯学習を生涯教育と同義語として使い、成人教育に置き換えてしまうようなあやまちはあまりなくなったようではあるが,生涯を通じて学ぶ歓びを感得するこころ豊かな生を全うするために、博物館がますます社会から求められる存在になるようでありたいものである。


岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

岩槻邦男のコラム7

2009年9月11日

 4月にこのコラムを始めた時、月に2回ほどのペースで、と約束しましたが、早々に7、8月の2ヶ月は休載してしまいました。9月から復刊し、今度は中断なく続けたいと思っております。
 「週刊文春」の09年8月27日号に、夏休みに訪れたい博物館を紹介する特集があり、自然科学系の博物館のランク付けでひとはくが3位に評価されていました。1位の科博は国立で予算規模がちがい、2位の科学技術館の立地や設立基盤も考えますと、地方公共団体が設置している機関としては最高位に評価されたものとありがたく見せてもらいました。すでにこのコラムの先行号で紹介しましたひとはくのさまざまな前向きの取り組みの成果が、外から見た評価でもそれなりの得点を得る効果を生み出しているということでしょうか。

 今年の夏休み期間中の入館者や、諸行事への参加者は例年より多く、実際に来館くださった人たちにも、ひとはくの取り組みは評価していただけていると見せてもらっています。展示のリニューアルもできないままに設備の老朽化に悩んでいても、予算の削減に行動を縛られていても、その気になれば自ら汗を流し、手を動かすことで、生涯学習支援にもそれなりの効果を上げることができることを実証しているようでもあります。ただし,大和魂だけでやれることには限界がありますし、玉砕精神ならば一過性で終わってしまいます。活動をいかに永続させるか、4次元での展開を描き出すことが条件であることはいうまでもありません。


 ひとはくの活動のひとつの成果として、地域の組織、機関との恊働に成果を収めている点があげられます。キャラバンという名の博物館の出張活動を通じて、県下一円にひとはくの活動を展開したことは、多大のエネルギーを要することではありましたが、それ相応の収穫にも恵まれました。その展開のひとつに、消えようとしていた佐用の昆虫館の再生への恊働がありました。昨夏、わたしもこの館と共催のフィールドトークに参加し、何年ぶりかで船越山麓を訪れました。わたしがまだ大学院生だった頃、恩師の故田川基二先生がここで得られた材料をもとにルリデライヌワラビという新種を発表された場所です。昆虫館の内海功一先生とも、40何年ぶりにお逢いし、昔の仲間たちの話題で会話を楽しんだことでした。ところがこの夏佐用町を直撃した台風9号の集中豪雨で、残念なことに、この施設も致命的な被害を受けとの情報に接しました。もともと行政の支援に限界があって維持が危ぶまれていた昆虫館が、有志の努力もあって、新しくつくられた NPO に支援され、存続が確かめられたところへの打撃でした。それでなくても町の再生に手一杯の佐用町に、昆虫館を修復する余裕は期待できません。恵まれた場所に設定され、自然環境に関する生涯学習支援に実績を上げてきたこの昆虫館の復興のためには、有志の協力が不可欠です。ぜひ多くの方が関心をもっていただき、前向きに協力をしていただくようお願いします。ひとはくのスタッフもお手伝いをしています。


 内閣府が6月に行った調査によりますと、生物多様性という言葉を聞いたこともないと答えた人が 61.5 %に達するといいます。1年後に迫った第10回生物多様性条約加盟国会議(COP10)で、それなりに報道が見られるようになったと思っていましたが、まだこんな数字かと残念に思います。生物多様性国家戦略を知っていると答えた人はわずか3.8 %だったといいます。ひょうご戦略がどれだけの人に知られているか、心配です。政治の世界で組織が変わっても、国民全体に広く認識が行き渡るようでなければ、変化は表面だけで通り過ぎるでしょう。ひとはくの生涯学習支援の活動がますます着実な歩みを展開していくようでなければならないとあらためて実感することです。

 いい情報と厳しい情報の錯綜する夏でした。

 

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム6

2009年6月30日

 ひとはくの活動の中で、さまざまな階層向けに、多様なセミナーを開設していることはもっとも分かりやすい事業の一つです。セミナーの内容紹介のためには、「ひとはく手帖」が毎年刊行されています。この印刷物は、経費節減のあおりを受けて今年から印刷できなくなってしまいそうでしたが、事業部の努力で、資金援助をしてくださる応援団を組織し、09年も無事刊行できました。これも、資金がなかったらできない、などと引っ込んでしまうことのないひとはくの現状を示す具体例です。

 ひとはくのセミナーにはいろいろの形状のものがあります。わたし自身についていいますと、08年以前は、誘われるままに年に1、2度関係したくらいでした。08年になって,もっと積極的に参画と恊働の姿勢を見せようということで、月1回のペースで、「博物館で生物多様性を考える」という10回シリーズを設定しました。生物多様性条約加盟国会議のCOP10が来年名古屋で開かれるというのに、生物多様性についての正確な理解が広がらないことに問題意識をもっていたからでした。このセミナーは無事完結しましたが、講師もレポートを書くのが責任だという日頃の持論にもとづいて、セミナーで話したことを軸に出版物の準備をしました。研成社の「のぎへんの本」のシリーズに加えてもらうことにし、先日から校正刷りのチェックをしています。間もなく刊行されるはずで、さまざまな批判が届くのを期待しています。

 生物多様性という課題はわたしの仕事の中核にあるものですから、10回シリーズも余裕で語ることができました。しかし、このセミナーで話したことを起点にして、「人と自然の共生」という概念を実践してきた日本人のコンセプトを歴史的な展開に合わせて考察してみたいという、怖いもの知らずの妄想に取り付かれました。関連の話題について、昨年の『人と自然』に欧文の総説を掲載してもらいましたが、この課題をさらに詰めてみたいと考えたからでもあります。そこで、今年は、「日本列島の歴史——人と自然の共生とその危機」という表題で、全7回のシリーズを計画し、すでに2回はセミナーを終えました。

 わたしにとって、これまで学習の行き届いていない分野に言及する必要がある課題ですから、これまで経験してこなかった領域の文献にも当たる必要があり、緊張しています。しかし、学習を進めると新たな知識を獲得し、考えている問題点が解きほぐされたり、ますます混沌としてきたりし、まなびの楽しさを実感することです。学習が期待通り展開していけば、7回のシリーズを美しく閉じることができると期待でき,来年の今頃はまたまたレポートの校正ができていればいいがと,問題の大きさをまだ十分に理解しないままに、楽しみにしているところです。

 このような課題に取り組みたいと思うようになったのも、積極的にセミナーに取り組んでいるひとはく館員の熱気に押されているせいかと考えています。平均年齢が上がっているとはいえ、ひとはく館員の多くが、セミナーの形式にも多様さをもち込み、どのような話題をどんなかたちで演じることによって仲間の輪を拡大していけるかを真剣に考え、実践していくのを見ていますと、「老」館長ものんびりしてはいられないというのが現実なのでしょう。まなぶ歓びを通じて、科学的志向にもとづいた健全な自然観、世界観が育ってくることを期待するというのなら、まず自分がまなびをどのように展開するか、実践する必要があります。ひとはくという機関は、まなびに向かっての真剣な取り組みに向けて、間もなく後期高齢者と呼ばれるようになるわたしまで誘導してしまいます。生きていてよかったと、いつでもいえるような意識の向上を、今日もまた展開したいものです。ひとはくを覗いてみることで、そうする仲間の輪が広がることを期待します。

 

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム5

2009年6月16日

 09年度が動き始めてから、もう2ヶ月が過ぎました。その2ヶ月の間に何が展開したか、わたしの周辺をちょっと振り返ってみます。

 年度の移り変わりは、人の異動を演出します。事務系の職員だけでなく、研究職の人たちにも出入りがあります。退職、転出する人を送り、新しく仲間となる人を迎えます。あたらしく博物館の仲間に加わった人が、徐々に博物館に慣れ、活動の中核を占めるようになるのを見るのは嬉しいことです。

 わたしの行動範囲は兵庫県に限定しません。原則としてひとはく勤務は木、金ですから、他の日はひとはくを外から眺める立場でもあります。もっとも、同じ建物の中にいてもメールで交信するのが最近の特徴のようで、どこにいても、いつでも、ひとはくとの連絡が出入りするのは当然です。

 館外では、いくつかのNGOの活動も支援しています。樹木環境ネットワーク協会のグリーンセイバーの検定にはもう10数年協力しています。4月には、この協会の大阪支部の総会をひとはくで開いていただき、公開講演会では話をさせてもらいました。検定に対応したセミナーも、例年アドバンスコースでは1コマだけ担当しておりますが、今年も東京でも大阪でも話をいたしました。いずれも4月中のことでした。NGOといえば、生物多様性ジャパンという組織の名目上は代表も務めています。まったくの任意団体ですが、IUCNの正規のメンバーです。堂本前千葉県知事がIUCNの理事、副総裁を務められた頃に立ち上げた機関ですが、いくつか出版物をつくったりして活動を続けています。今年度は、事業の一つに、世界植物保全戦略の日本での活動を2010年目標に合わせて評価しようと、植物園自然保護国際機構(BGCI)と共同で準備を始めました。

 国際賞、国内賞とさまざまな賞の選考などにも関与していますが、今年度のみどりの学術賞の選考にも参加しました。受賞者が、前の(社)日本植物学会長の和田正三さんと、日本生態学会長の矢原徹一さんでした。どちらも個人的に親しい方ですので、知人の栄誉を喜ばせていただきました。

 ひとはくのセミナーで、昨年度は「博物館で生物多様性を考える」という10回シリーズを終えました。この結果は近くレポートを公表しようと、目下記録の著作を印刷中です。今年度は「日本列島の歴史」と題し、日本人の人と自然の共生という概念がどのように育ってきたのかを検証したいと思っておりますが、7回シリーズを5月に無事立ち上げました。自分でもこれまで学んでこなかったことを、準備のために学習することを楽しんでいます。

 今年の生物多様性の日は東京で、国連大学や環境省の主催するシンポジウムで基調講演などをさせていただきました。「外来種の来た道、行く道」という難しいテーマでしたが、参加してくださった方が最後までおつきあいくださったことで、それなりに対応できたのかと思った次第です。事例報告から、いろんなことを学ぶことができたのも収穫でした。国環研の五箇さんが、クワガタムシを愛好するのは日本人だけで、これは里山の形成と関係があるのではないか、と話されたのは大変興味のあることでした。ついでですが、機会を与えていただいて、内閣のメルマガで、生物多様性の紹介をしています。ひとはくでは生物多様性ひょうご戦略の展開にも多少活動の輪を広げようとしています。

 淡路の景観学校が、10年の実績の上に、新しく専門職大学院を立ち上げられました。その記念式典でも話をさせていただきました。この機構、設立の準備委員会では座長を務めさせてもらいましたが、その報告書は大学院レベルの組織をつくるべきだというものでした。すぐに提案通りにはなりませんでしたが、活動実績の上に、当初の目標に到達されたのには敬意を表し、さらなる発展が見られるようにと期待するところです。

 

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

 

岩槻邦男のコラム4

2009年5月23日

 ひとはくの新展開は成功しつつあると、多少独断的に自己評価します。根拠はいろいろありますが、計画の方針が妥当で、その結果さまざまないい現象が現れていると見るのもその理由の一つです。

 ひとはくの事務部には総務課、生涯学習課、情報管理課の3課があり、研究部は複数の部門で構成されており、最近は大学院生も所属しています。他に、委託で派遣されている管理や清掃の関係者もあります。ひとはく関係者は大学籍を含めて常勤職員は50余名(定員不補充などで、定員と定数は一致していません)ですが、大学院生、派遣職員や私のようなパートタイマーを加えると、広い意味の館員は100名近い規模になります。

 新展開が始まった時、県の職制とは別に、博物館独自の事業部組織がつくられました。と同時に、事業部員の座る席が設けられましたから、大学籍の教員も、指導主事も、事務職員も、職制で区別されることなく、館員の間の情報交流はスムースに行われ、恊働が円滑に進むようになりました。

 さらに、毎月1回、第2金曜の朝30分間、全館員が集まって月例報告会を開きます。新展開では、さまざまな項目に数値目標が設定されています。前の月に、その数字がどう動いたかを取りまとめ、厳密な内部評価を行う会合です。数字を見るだけだったら、全員が集まるまでもないのですが、この種の統計では、数字がしばしば一人歩きして、勝手な解釈につながることがありますので、報告会で問題になりそうな数字を検証し、問題のある項目についてはよりよい成果に結びつけるような方策が模索されます。短時間ですが、ここでも職制を超えて館員の意思疎通が円滑に進みます。

 わたしは、ひとはくに関与するまで、所属は一貫して高等教育機関でしたが、京大、東大、立教大、放送大と少しずつ違った4つの大学に勤務しました。しかし、どこでも、研究者側と事務側に考え方の相違があり、その間の意思の疎通が何らかの障壁に遮られているのを感じていました。

 東京大学では植物園という多少特異な性格の部署にいました。もとの国立大学では、教育研究を支えているのは教官だと考える雰囲気が強く、技官、事務官は教育研究支援要員と呼ばれたりしていました。だから、大学ではすべてを教官が決めようとし、教官は会議に時間を取られていました。植物園には優れた能力を備えた技官もいました。教官のもっとも大切な役割が研究教育にあることはいうまでもないことで、わたしも植物園在任中には、いいスタッフにも恵まれ、研究や教育にそれなりの成果をあげてきたと自信をもっていますが、さらに優れた技官との恊働にも積極的に取り組みました。技官の貢献をもとに、スエーデンの王立科学院が発行している雑誌AMBIOに共著の論文を出したりもしました。ことほど然様に、大学のような機関でも、教官、事務官、技官が三位一体で活動し、研究教育に貢献するのが本来のすがただと考え、そういう雰囲気づくりに努めました。

 日本の大学等機関では、残念ながら、一般的に、研究者と事務職員の間の意思の疎通には埋めがたい断絶があるのが現実です。そういう現実を見続けてきた目でみれば、ひとはくの事業部組織が、館員の意思疎通を円滑にする器となっており、恊働の精神を実体として構築しているのを見るのはたいへん心強いことです。恊働が実行されることによって、ひとはくは実際に実力(人員数でも個々人の能力でも)以上の成果を挙げているといえるのだと見ています。

 日本では大きい方だとはいえ、ひとはくの規模は欧米の主要な博物館等施設に比べるとずいぶん小さなものです。ですから、活動には規模に掣肘されるさまざまな制約があります。しかし、それにもかかわらず、最近のひとはくは、生涯学習支援、シンクタンク機能発揮に具体的な成果を描き始めています。まず、博物館内で、前向きの意思統一が進んでいることが原動力になっているためでしょう。

 

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム3

2009年5月 8日

 3月末に生物多様性ひょうご戦略が公示されました。この戦略の策定に当たって、ひとはくはシンクタンク機能を発揮し、参画と恊働の実を挙げることができました。

 生物多様性条約は1992年にリオデジャネイロで開かれた国連環境会議で採択された国際的な協定の一つです。日本はこの国際条約に積極的に賛成し、早期に批准して、成立に貢献しました。1993年5月に日本はカナダと並んで先進国としては最初に批准しましたが、その年の12月には、必要な条件を満たしてこの条約が発効することになりました。現在、世界の190国とEUが加盟しておりますが、アメリカ合衆国は参加していません。

 生物多様性条約では、加盟国はそれぞれの国で国家戦略をつくることとしており、日本も95年に最初の生物多様性国家戦略をつくりました。この戦略は常に変動する生物多様性と、それに対応する人間側の事情も踏まえて、5年ごとに改訂することにしており、2002年に新・生物多様性国家戦略、07年に第3次戦略がそれぞれ首相を座長とする関係閣僚会議で採択されました。

 生物多様性国家戦略は当時は政府の施策の基盤ではあっても、国内法によるものではありませんでした。2008年に生物多様性基本法が策定されましたが、この法で国家戦略をつくることが定められるだけでなく、地方公共団体やさまざまな主体がそれぞれに生物多様性戦略を策定することが期待されています。このような背景のもとに、生物多様性ひょうご戦略は08年春以来検討が進められてきましたが、09年3月に生物多様性にかかわる県の施策の基本方針として確定されました。

 兵庫県は日本海と瀬戸内海を南北に控え、中国山脈の東端を含み、さらに本州ではもっとも低地の平面分水界があって南北間の生物の移動に有利な地形をもつなど、多様な生物の棲息に好条件を備え、実際豊かな生物相がそこに住む人々の暮らしを潤してきました。自然と共生する日本人の生き方は兵庫県でも歴史を通じて見事に演出されてきました。最近も生物多様性について先進的な対応が図られてきました。生物多様性ひょうご戦略では、それらの現実が整理され、さらに今後必要とされる対応が述べられています。このひょうご戦略は兵庫県のホームページから読み取ることができますが、直接にhttp://www.kankyo.pref.hyogo.jp/JPN/apr/keikaku/strategy_of_biodiversity.pdfで検索することもできます。

 生物多様性ひょうご戦略は、兵庫県環境審議会が定めたものですが、この戦略の検討の過程では、人と自然の博物館がいろんな面で協力し、ひとはくがシンクタンク機能を十全に発揮したいい例となりました。兵庫県の生物多様性に関する情報が、ひとはくに蓄積されており、すでにこれまでにもさまざまな対応を行ってきた実績があり、その経験が役に立ったということです。もちろん、ひとはくは今後も兵庫県の生物多様性の持続的利用に貢献することに力を注ぎますが、それが日本の、そして地球の自然環境との共生に実を結ぶことが期待されます。環境問題に関しては、地域で活動し地球規模で考察する、は基本的な方針です。

 県レベルの戦略としては、最初につくられたのは千葉県で、兵庫県の戦略は約1年遅れて策定されました。目前に名古屋で開催される10年10月の第10回生物多様性条約加盟国会議(COP 10)が迫っています。ここでも、兵庫県の取り組みが地球の持続性を先導する力になることが期待されますが、そのためにも、生物多様性基本法に沿って、県下の多くの市町やさまざまな主体で生物多様性戦略が策定され、すべての県民が生物多様性の持続的な利用に向け、地球規模で考え、地域で活動することが期待されるところです。

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

岩槻邦男のコラム2

2009年4月24日

 4月24日に秋篠宮文仁親王殿下がひとはくを訪問されました。自然史研究機構の研究会を兵庫県で開催され、私的に参加された機会に、研究会の皆さんと一緒に、ひとはくへもお出でいただいたということです。自然史研究機構では、兵庫県立大学自然・環境科学研究所の構成や活動に関心をもたれ、その実情をヒヤリングされるとともに、同研究所の活動舞台でもある森林動物研究センターと人と自然の博物館という2つのユニークな機関を実地調査されました。ひとはくが開館したとき、妃殿下とご一緒にお出でいただいておりますが、今回は、話題の恐竜は当然として、植物、鳥類や昆虫の標本をはじめ、生物多様性情報の管理状況などについても丁寧に調査をされました。

 日本の博物館等施設は、(国立科学博物館を除いて、)普及活動をするのが本務の機関であり、その基盤として研究活動を行うと規定されているようです。しかし、ひとはくには兵庫県立大学の附置研究所が置かれていることから、研究所としての活動と、博物館としての活動が両立することが期待されています。具体的にも、研究スタッフの多くは、研究所所属の教員であって、博物館の研究員を兼ねているというのが実体です。しかし、博物館はイベント会社ではありませんので、生涯学習支援にあたるスタッフが第一線の研究者でないのなら、博物館という看板をかけるのはおこがましいというのが実際でしょう。博物館は生涯学習支援にあたり、シンクタンク機能を果たすために、充実した資料標本と、それを基盤に活発な研究活動を行っている研究者を擁している機関であるはずです。

 だからといって、博物館は研究所そのものではありません。普及活動という言葉の解釈は難しいですが、充実した資料標本を用い、優れた研究者集団を中心に、シンクタンク機能を果たし、生涯学習支援を行わないのだったら、博物館である意味がありません。

 兵庫県立大学の自然・環境科学研究所は、ひとはくが設立された時にひとはくのために創設された機構でした。その後、淡路景観園芸学校、コウノトリの郷公園、西はりま天文台公園、森林動物研究センターがつくられると、これらの機関にも併設されることになりました。ですから、これらの機関の研究者は兵庫県立大学の教員でもあります。今では、ひとはくの自然環境系、淡路の景観園芸系、コウノトリの田園生態系、天文台の宇宙天文系、そして動物センターの森林動物系の研究部門がきれいに並立しています。また、2007年には大学院環境人間学研究科に、共生博物部門が設けられました。今年3月には、ひとはくでまなんだ修士の学生がはじめて巣立ちました。さらに、この4月から、淡路景観園芸学校は県立大学の緑環境景観マネジメント研究科(専門職)となり、ひとはくの中瀬副館長が研究科長を兼任しています。

 これだけいえば、ひとはくは博物館とずいぶん違ったイメージを与えるかもしれません。ただし、ひとはくには教育委員会傘下の研究者もいます。ですから、構成はたいへん複雑です。もちろん、だからといって身分の違いが活動の違いになって現れることが無いように配慮はされています。相互に緊密な協力関係のもとに、生涯学習支援、シンクタンク機能の発揮などにいそしんでいます。

 かつては国立大学の教官も、教官といいながら、研究を第一の課題と考える傾向がありました。しかし、現実には、職種は教官で、学生を教育するのが本務です。ただし、高等教育は第一線の研究者でないと勤まりません。第一線で研究活動を行っていることが大学の教官にとっての必要条件です。ところが、研究に没頭してしまうと、教育を雑用というようになります。残念ながら、平気でそういう教官が散見されました。博物館等施設も同じだったかもしれません。今、ひとはくでは、博物館らしい活動に力が注がれます。私も、日本で博物館らしい活動に参加する歓びを味わっています。

 

岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

 

 

岩槻邦男のコラム

2009年4月10日

 2009年度は月に2回くらいのペースでコラムを担当したいと思います。館を代表する考えを述べる場ではなくて、日頃抱えている個人としての思いを、その時々に思いつくままに発信しようというものです。

 4月は新しい年度の始まりです。形式的なことは好きではありませんが、そうはいいながら、句読点を気にするように、節目節目には、自分の行動を振り返ってみ、やってくるべき日々に向けて、どのように取り組んだらいいのかを考えます。

 4月1日には、人事異動にともなって新しく赴任してくる人たちがありますし、ひとはく固有のやり方で執行している事業部の組織も一部修正して再編します。辞令の伝達や交付は、組織として年度はじめを具体的に意識する行事です。

 事務部の新人(ずいぶん年配の人も含めてですが)には、ここはお役所ではないと思ってください、といい、研究部の新人には、ここは研究所ではないと思ってください、といいました。さらに、自分のイメージに描いている博物館活動に参加するという意識も一度払拭してくださいといいました。多分、ひとはくに居着いている人たちは、平均的日本人が考える博物館人とはずいぶん違った行動様式を身につけていることでしょう。ここで活動を続けているうちに、ひとはく固有の活動をする人になってしまっているのです。とは言っても、ひとはくの人たちが変人、奇人になってしまったというわけではありません。私の理解では、もっとも望ましい博物館活動とは何かを、真剣に求める人たちの集団がここにあるということです。それが世間の常識を超えてしまっているのです。

 2001年にひとはくが新展開を始めた時、「自然界との共生関係を明らかにし、人と自然のあり方を探り、人と自然の共生系の構築を目指す学問」としての共生博物学に立脚し、「新世紀の環境優先社会の構築を支える人と自然の博物館」に向けた行動を求めると宣言されました。その目的の達成のために、生涯学習の支援と自然・環境シンクタンク機能の充実を2本柱とした活動の展開が謳われています。8年前に、時代を先取りした理解で行動に取り組んだということです。

 2000年度中に構想が立てられた新展開は、2001年度を準備期間とし、2年間の第1ステージから、開館10周年に当たる2002年度からの5年間を第2ステージと定めて具体的な行動に入りました。さらに、新展開の5年を終えてから、それを継続発展させる2年も過ごしました。もちろん、その間、出る人、入ってくる人が相当の数に達したことはいうまでもありません。私自身も2003年から、途中参加をした者の1人です。

 兵庫県は今未曾有の財政危機に陥っています。他の地方公共団体と違って、最大の原因は14年前の大震災の負荷によると聞いています。聖域なしに、人員削減や経費減が求められており、ひとはくももちろんその例外ではありません。しかし、もともと構成人員だけではできないほどの大きな夢を描いている組織です。目前の課題として兵庫県民のための生涯学習支援とシンクタンク機能の高度化を図り、それらを通じて日本の博物館活動の充実に貢献しようという強い意欲が、厳しい環境のうちにあってなお確実な成果を挙げつつありますし、そのことを内外の人々から認めていただいていると自負しています。環境優先社会の構築が不可欠とされる21世紀もすでに9年目にさしかかっています。ひとはくの歩みがそれにふさわしい展開となっているのか、新年度のはじめにあたって、あらためて考えるところです。自己評価のための全館員対象の月例報告会も、定例の30分から、4月だけは1時間の特番になりました。08年の業績を振り返り、09年度にさらなる飛躍を期します。

 

                                岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

今年,あなたは,どのような1年を生きますか?生きていることの充足感を,何に
求めようとしていますか?人は自然と共生して生きることに歓びを見出します。
生きる歓びを,ひとはくでまなぶことから育て上げてみませんか?

2009年は前年から引き継いだ経済危機を背景に幕を開けました。金儲けだけを
追求して失望の淵に追いやられたようなこういう時にこそ,人の知的活動は思い切
り羽ばたけるはずです。暗い話を吹き飛ばし,こころのうちに明るさを展開する年
にしたいものです。
ひとはくは今年もまなぶ歓び、生きる歓びの創造を目指して,力強い歩みを進めよ
うと張り切っています。

○ 3年目に入った丹波の恐竜の発掘は,さらなる発見をもたらしてくれると期待
 します。化石は恐竜だけでなく,他の動物群にも発展していますが,今年も新
 しい発見があることでしょう。

  
     
     

(第3次発掘調査現場)


○放棄された里山の荒廃は目を覆うばかりです。都市近辺の里山をどのように維
 持するか,中山間地帯の里山をどのように管理するか,世紀の単位の時間を見
 通しながら,今年やるべきことの指導理念を見出すことが求められます。

○今年も数多くのセミナーを準備しています。学びを求める人たちとの恊働が,多
 様な道筋で拓かれることでしょう。特注セミナーへの申し出もお待ちします。

○ひとはくのスタッフとの恊働は,連携の強化につながり,今年もフェスティバル
 や共生のひろばではっきりした姿を見せるに違いありません。

(ひとはくフェスティバル 深田公園)   
      

ひとはくはひとはくのスタッフだけのものではありません。
人と自然のかかわりに関心の高いすべての人が,今年もひとはくを舞台に美しい
演技を展開することでしょう。より多くの人と,より強い絆を構築する2009年
にしたいものです。

                    岩槻邦男(人と自然の博物館 館長)

9月20日から始まった「ひとはくファーブル大作戦!」。
今日で、ちょうど2ヶ月になりますが、来館者3万人を迎えました。
3万人を突破してくれたのは、神戸市立若宮小学校3年生のみなさんです。

元気いっぱいセミナーの様子


若宮小学校3年生のみなさんへの記念品です。

記念品その1:スカラベの信楽焼・クワガタ封入標本・てぬぐい
       ひとはくオリジナルエコバック



記念品その2:講談師 ちんげいさいのサイン入り扇子
この他、ひとはくオリジナルテレフォンカードもありました。


記念品を受け取ってくれた3年2組の代表の女の子は、「みんな外でドッチ
ボールをして元気なクラスです。」とクラス紹介してくれました。



岩槻館長からお祝いの言葉



若宮小学校3年生のみなさんと岩槻館長と記念写真です。
若宮小学校3年生のみなさん、ご協力ありがとうございました。
また来てくださいね〜。


                     生涯学習課 小林美樹

「ファーブル大作戦!特製フィールドノート」岩槻館長バージョンが完成しました。

岩槻邦男館長のフィールドノートから特別にコピーさせてもらったページと館長からの
フィールドノート活用についてのメッセージもついています。
ファーブル大作戦!期間中に配布している「ふぁーぶるポイントカード」に15ポイント
たまったらプレゼントします!
ふぁーぶるポイントは、ご来館はもちろん、セミナーやイベントに参加するともらえます
ので、どしどしセミナーなどに参加して、みなさん、ゲットしてください!


<表紙>


<岩槻館長のフィールドノートからの抜粋>
シダのイラスト入りでわかりやすいですね。お手本にしてください。


<館長からのフィールドノート活用のメッセージ>
サイン入りで、研究者としてのノート活用指南が書いてあります。


ファーブルTF 川東丈純

10月10日(金)午後2時過ぎ。9月20日(土)から始まりました
「ひとはくファーブル大作戦!」の18日目に来館者1万人を迎えまし
た!
この1万人を突破してくださったのは、明石市からご夫婦でお越しくだ
さった中野様。今度、お孫さんが小学校の遠足でひとはくへ来ることに
なっているので、どんなところだろうとお越しくださいました。中野様、
ご自身も虫好きだそうです。

来館者1万人を記念して、岩槻邦男館長より、特別記念品が贈られまし
た。

記念品はファーブル講談でおなじみの「河南堂珍元斎」先生のサイン
の入ったセンスやインペラトールホソアカクワフガタの封入標本など。
「これまで、この博物館が新展開等でやってきた実力が発揮され、こん
なにも早く1万人達成しました。とてもいいことです!」と岩槻館長。
ファーブル大作戦、会期は11月末までです。
今度は、あなたが、ひとはくファーブル大作戦!来館者3万人、5万人
を突破してみませんか。


生涯学習課 小林美樹

G8環境大臣会合にさきかげて、環境省とともにひとはくが主催して標題にあ
る国際シンポジウムを開催しました。

  
(桜井環境副大臣)
  
  

(井戸兵庫県知事)
 
桜井環境副大臣や井戸兵庫県知事もお見えになりました。


「里山」に焦点をあて、里山と地域のかかわり、文化としての里山、兵庫県の施策や
アジアの里山など具体的な事例紹介が行われました。



(パネルディスカッション)
その後、岩槻館長のコーディネイトによるパネルディスカッションが行われました。


(会場のようす)
400人を超える方にご参加いただき、立ち見が出るなど盛況でした!

ひとはく2008

2008年1月20日

ひとはくへ来たことがありますか?ひとはくのイベントに参加したことがありますか?
もし、あなたがひとはくを名前でしか知らない人だったら、あなたはだいぶ損をして
います。

2007年のひとはくは恐竜化石でテレビや新聞に度々紹介されました。まだ人の祖
先のかけらもなかった1億3、4千年前に、日本列島をノッシノッシと歩いていた巨大
な動物が、化石のすがたで語りかけてくれるのです。すばらしい機会です。

化石で知名度を上げましたが、ひとはくのお宝はこれだけではありません。テレビや
新聞が知らない楽しみを発見するのはあなた自身です。ひとはくは誰でも楽しめる材
料を山ほど準備して、あなたが人生を豊かにするのをお手伝いします。
ジャングルに咲くラフレシアを見ませんか?


里山の生活が失われるってどういうことか、ちょっと考えてみませんか?
日本の自然はどのような進化の結果今のすがたをとるようになったか、わたしたちの
生活がその自然とどのように共生しているか、しばらく実体験をしてみたら?

2008年は、あなたがひとはくで生きることの歓びを満喫する年であってほしいです。

人と自然の博物館長 岩槻 邦男

岩槻邦男館長による2008お正月特別セミナー「お正月をいろどる植物−ウラジロ−」が行われ、約70名の聴衆で大セミナー室はいっぱいになりました。

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ウラジロに始まり、門松やおせち料理まで、お正月に使われるさまざまな植物について、その植物の説明だけでなく、なぜ使われているのか、その理由を日本人の自然との関わり方の中で考えるというお話でした。

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葉裏の白色を尊んで使われるウラジロや、常に緑を保つ門松のマツ、古い葉から若葉へ間断なく交代するユズリハなど、お正月のおめでたさを表すのにさまざまな植物が使われてきました。日本では昔から身の回りにある植物に意味をもたせ、うまく利用するというやり方で自然とつきあってきたのです。

日本人の自然観と密接に結びついた、自然との共生のしかたの本質をつくお話でした。

                           (企画調整  高橋 晃)

丹波市の山南住民センターに「丹波竜化石工房」が12月1日、オープンしました!
(丹波市整備)
化石のクリーニングの様子が発掘現場である山南町で見ることが出来ます。


(写真:クリーニングの準備を始めるスタッフ)


(写真:プラスタージャケットを開封!)

工房オープン当日、化石が入っているプラスタージャケットを約150分かけて開封
すると、中からきれいに骨が並んで見えました。この化石の産状の型を取り、レプ
リカを作り、クリーニング作業を進めていきます。
レプリカをつくるためにシリコンで型どりしたら、この綺麗に骨が並んでいるのが見
れなくなってしまいす。
今が見どきです!


(写真:ガラス越しに見学する人たち)

こちらの工房は午前と午後のそれぞれ2時間、ガラス越しに作業が見学できます。
見学出来るのは、水曜〜日曜日で午前のうちの2時間、午後から2時間
(年始年末の12/29〜1/3は、お休みだそうです。)


 当館の岩槻邦男館長は、シダ植物の系統と分類に関する研究を進め、日本の植物分類学を世界レベルへと押し上げました。そして、在野の研究家との協力によるレッドデータブックの作成、生物多様性の保全など地球環境問題への貢献などにより、2007年度文化功労者に選ばれました。

 館長のコメント:「植物分類学者である私が選ばれたことは、博物館活動を振興すべしという示唆と受け止めています。」



 新聞記事はこちら


 2008年1月4日は,館長の新春オープンセミナー「お正月をいろどる植物−ウラジロ−」があります.みなさんそろってお越しください.ご案内はこちら

【必見】岩槻館長がテレビ生出演します!

番組名:ガラスの地球を救えスペシャル
     「とどけ 生きものたちの声」

日時:2007年4月30日(月・祝) 午後2:00〜5:54

チャンネル:ABC (6ch →関西方面のみ)

生物多様性の危機と問題について解説されます。
見逃すと損するよ〜リアルタイムで見てね。録画もOK!

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