福知川の護岸修復工事の時に、工事現場に入らせていただき、福知泥炭層の調査をしました。このときに地層のはぎとり標本を作りました。地層の標本とはどんなものでしょう。
川岸を重機で掘ったところの写真です。地層の断面に黒い層があらわれました。よく見ると、人の身長よりも高くまであります。この黒い層が泥炭層です。
幅1m、高さ2mの大きさで地層の標本を作ることに決めました。はじめに表面を平らにけずってととのえます。高い所がとどかないので、両わきにはしごを立てました。
きれいにけずったら、しましまが見えてきました。白いところはけずるとじゃりじゃりします。これは砂の層です。黒い泥炭層がたまる途中で、くりかえし何度も砂が流れてきてたまったことがわかります。
次に、地層の表面にはけで樹脂をぬっていきます。これはトマックといい、水と反応して固まる接着剤です。上から順番に、いちばん下まできれいにぬります。加藤研究員、両手をはなして作業しているけれど、落ちないでね!
いちばん下まで樹脂をぬったら、次に補強用のうすい布を同じ樹脂で1枚ずつはりつけます。少しだけ重なるようにはるのがコツです。大きな布1枚をはりつけてもいいのですが、小さい布のほうが手早くきれいにつけられます。
全面にきれいにはりつけたら終了です。あとは乾くのを待つだけ。
さあ、乾いたら上からはがしていきましょう。やぶれないように、少しずつ慎重に!
白い樹脂の裏側に、地層がきれいについてきています。やったー!
樹脂の量はちょうどよかったようです。布もやぶれずにうまくはがせそう。
カッターで切っているのは木材です。泥炭層に木材化石が入っていました。そのまま引っぱると木材がはぎとり標本からはがれてしまうので、はぎとり標本のほうに木材が残るように切りました。
はぎとり標本をはがし終わったあとです。この地層の表面の厚さ数ミリが、はぎとり標本についているわけです。
はぎとり標本は、博物館に持ち帰り、洗って表面を整え、板にはりつけました。
ミニ企画展「宍粟市でみつかった9000年前のタネ・はっぱ・虫」では、このはぎとり標本を展示します。できばえの気になるあなた、はぎとり標本を見にきませんか。
自然・環境評価研究部 半田久美子