上の写真は、武庫川の下流域、武庫大橋のすこし下流です。意外と水がきれいで心地よいところです。2011年
10月8日、兵庫県阪神北県民局さんが中心となって開催されている「むこがわ探検隊」に講師として参加しました。このイベントでは、川の水生生物の観察会とアユの産卵床整備(川を耕す!)が目的です。昨年も、川を耕すことでたくさんのアユの産卵が確認できました。
(神戸新聞さんの記事はコチラをクリック!)
この会合は、武庫川流域環境保全協議会が主催となり、県土木事務所、里山・環境課さんをはじめ、武庫川漁業組合さんといった多彩なメンバーが参画しています。これに、地元の中学生や高校生、武庫川流域連携を考える会の皆さんにも参加いただき、総勢で60名を超える賑やかな会となりました。
武庫川漁協さんから丁寧な説明がありました。トンボやスコップなどがずらり。
作業風景は、こんな感じです。まるでプール掃除のようです。川底はサクサクに。
これで一雨くると、細かい砂が流れて、アユの産卵に適した川床に。
全体の作業風景は、こんな感じで、遠くからみると不思議な風景です。
でも、アユ漁がさかんな地方にゆくと、よく見られる風景です。
これからしばらくしてからが楽しみです。
川を耕す作業のまえには、みんなで生き物の採集も行いました。
各自で採集したものを持ち寄ります。
さて、この観察会では、あまり珍しいものは採れないだろうと思っていたのですが、そんな予想は9才の女の子によって、あっさりと覆されました。
棒みたいな魚が捕れてるから見に来て欲しいと言われて行ってみると、ヨウジウオの仲間が水槽に。
一緒にいた高校の理科の先生も驚き。
さすがに、見慣れない生物なんで、カワヨウジかな、ぐらいで種名までは自信がありませんでしたが、持ち帰って調べてみると、「テングヨウジ」でした。武庫川では初記録です。
調査でも、あまりお目見えしないようで、複数の知人に尋ねても、「採ったことない」とのことで、決して数が多い種ではないようです。
この種は、大きくはタツノオトシゴの仲間で、ヨウジウオ科で房総半島〜南西諸島の河川下流域〜河口域に生息し、純淡水域まで入り込むようです。産卵は、川で行うことが報告されており、仔魚は海域に移動してゆくものと思われますが、良く分かっていません。
兵庫県内の記録を調べてみると、千種川の河口域、洲本川の河口域で採集されています。このほか、淀川や紀ノ川でも採れることがあるようです。ですが、記録は圧倒的に少ないことから考えて、おそらく武庫川やその周辺での再生産は困難なのだと予想されます。
そんなわけで、今回、武庫川で採れたのは、かなりの偶然です。武庫川には、下流に潮止め堰があって、多くの回遊魚の遡上が阻まれています。魚道はついてはいるのですが、下の写真にあるように、小さな魚や遊泳能力が低い魚にはのぼれる代物ではありません。では、どうしてこの遊泳能力がなさそうな魚がのぼれたのでしょうか。
おそらく、ここ1ヶ月は台風のために水位が上昇し、この潮止め堰の堰板がバタンと倒れて(水位が増すと倒れる仕組みになっています)、上下流がつながった時期が長かったからではないかと想像しています。あるいは、数週間前から異常潮位になることもあり、満潮位がとても高かったことも関連するかも知れません。真実は分かりませんが、上の写真の場所を越えてきてきたことは確かでしょう。
上の写真にある潮止め堰ですが、数年後に撤去が予定されています。
おそらく、この規模での既存潮止め堰を撤去することは、国内では初の試みでしょう。撤去されると、アユやウナギ、モクズガニだけでなく、今回初お目見えした「テングヨウジ」のような珍しい魚や底生動物も武庫川をのぼってくることが期待されます。武庫川の下流域の自然は、ここ数年で劇的に改善されるでしょう。都会のオアシスになるのでは。
この時期、アユの産卵だけでなく、大きなモクズガニもたくさん採れます。
ぜひ、秋の川遊びにチャレンジしてください。
●なお、今回の取り組みは神戸新聞さんも取材に来ていただきました。
記事は下記のリンクをクリックしてください。
http://www.kobe-np.co.jp/news/hanshin/0004534928.shtml