2010年は国際生物多様性年でした。ひとはくでも、生物多様性大作戦を展開した上、名古屋でCOP10が開かれた10月には、会場にブースを設けて、兵庫県における生物多様性への取り組みの現状を世界に向けて発信しました。
生物多様性はメディアに取り上げられることも多く、人々の関心を引くこともできました。しかし、最近の日本では、いたずらに流行を追って付和雷同し、盛りが過ぎれば見捨ててしまう傾向が極端です。生物多様性に向けての目も一過性で終わるのではないかと心配しておりました。
国際生物多様性年は、12月の金沢のクロージングの集いで幕を閉じました。12月の国連総会で、これからの10年を生物多様性の10年とする、日本からの提案が採択されたことは知っていますか?この問題について、長期的な取り組みがなければ、人類の生存を全うすることなどあり得ないとの認識です。その上、以前からの取り決めで、2011年は国際森林年です。生物多様性のうちでも、とりわけ森林の生き物との共生に、真剣に取り組もうという年です。
COP10会場「生物多様性交流フェア」 ひとはくブースのようす。 1万人を超える方々が訪れました。
ひとはくはひとはく独自に日本の博物館活動を活性化する術を求めて行動します。しかし、地球規模の動きに合わせて活動を効率的に育てるのも無意味ではありません。生物多様性の10年が進行しつつあることも、2011年が国際森林年であることも意識しながら、新展開から10年になる今年のひとはくの活動が展開します。ひとはくの活動は、ひとはくに集う人たちの活動であり、これからひとはくで共に学習しようとするはずの人たちへの呼びかけの活動です。
「共生のひろば」のようす。昨年は58件の発表者と330人を越える聴講者がひとはくに集ま り、活発に意見交換を行いました。
紙の上の目前の豊かさだけに執心し、一過性の「はやり」に振り回されているうちに、日本は何とも情けない国に落ちようとしています。日本列島に住んでいた先祖たちは、きびしい自然の脅威に喘いでいたときでさえ、毅然とした態度で生き抜いてきました。わたしたちの世代が、日本列島を人の住めない場に追いやることだけは避けたいものです。そのためには、わたしたち自身が、いま何を学び、何を行うか、見定め、考えることです。誰かに教えられ、あっち向いてホイ、と生きることは奨められません。自分の目で見、自分の頭で考え、何か問題があればひとはくを訪ねて、館員や館に集う人たちといっしょに学習し、行動したいものです。
岩槻邦男(館長)