今回は、樹木の冬越しについてみてみましょう。樹木は環境が悪くなる(気温が低くなったり、雨が少なく乾燥したり)と葉を落として休眠します。このときにつける芽を冬芽と呼びます。冬芽には葉だけが出てくる葉芽(はめ)、花が咲く花芽(はなめ)、両方が混じっている混芽(こんが:アオキなど)の3種類があります。また、芽が小さな鱗片(りんぺん)におおわれている鱗芽(りんが)、鱗片がなく裸になっている裸芽(らが)などがあり、この組み合わせで芽のグループ分けができます。裸芽を持つ樹木は熱帯など、暖かいところが起源のものが多く、サンショウ、アジサイ、クサギ、センダン、ムラサキシキブなどが代表的です。鱗芽を持つ樹木が圧倒的に多く、深田公園では9割以上がこのタイプです。

 

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(写真:いろいろな冬芽。

左上からトチノキ(鱗芽)、アジサイ(裸芽)、2列目上からキンモクセイの縦生副芽、ニセアカシアの葉痕からのぞいている鱗芽、3列目上からカンツバキの花芽、カンツバキの葉芽、4列目上からアオキの葉芽、花芽。)

 

少し変わった冬芽では、葉の中に隠れているタイプです。葉がソケット状に新芽のまわりについていて、葉が落ちると冬芽が現れるもので、ニセアカシアやスズカケノキがあります。また芽が縦に並んでつく縦生副芽(じゅうせいふくが)というものがあります。キンモクセイの腋芽(わきめ)は、たてに2−3個並んでついているものがあります。これが縦生複芽で、一つの芽が何らかの原因で大きくなれなかった時の保険をかけているようなものです。

 

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(写真:ロウバイの花の分解図。

    芽鱗から花弁へと、連続的に変化している。)

 

さて、この冬芽を保護している芽鱗(がりん:冬芽を包んでいる、鱗状のもの)は何からできているのでしょうか。少し大きい冬芽をつけるツバキの花芽やタラノキの葉芽を外側からていねいにはがしていくと、いつのまにか花弁や葉へと変化していきます。そうです、芽鱗は葉が変化してできたものなのです。

 

 

 

 

藤井俊夫(自然・環境再生研究部)

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