「生物多様性」という言葉を、新聞やTVなどで見聞きされた方も多いことかと思います。「生物多様性」とは、簡単にいうと「地球上で生命が誕生してから現在までに育まれてきたすべての生き物と生き物同士の関係によって成り立っている、生物や生態系の間に違いがある状態」のこと指します.私たち人間は、この生物多様性から様々な恵みを受けて今日の文明を築き、保ってきました。
しかし、近年、人間と生物多様性との関わりが大きく変化し、世界各地でこの「生物多様性」が失われつつあります。そこで、世界中の国々が生物多様性を守りながら賢く利用してゆくための約束事として、1992年に生物多様性条約を結び、各国が生物多様性を大切にするための取り組みを進めています。その方針は「生物多様性国家戦略」といわれる文書にまとめられていて、日本でも1995年に第1次、2002年に第2次、2007年に第3次の国家戦略をつくり、国内における生物多様性の持続的な利用と保全のための活動をすすめてきました。
日本は他国に比べ四季や自然環境の地理的変化が大きいため、地域によって生物多様性の様子は大きく異なっています。そのため、国内の広い範囲を対象とした国家戦略をすすめるだけでは、各地の地域性を活かした生物多様性の利用と保全をすすめることはできません。そこで、2008年に制定された生物多様性基本法では、都道府県や市町村などの地方単位でも生物多様性戦略をまとめることを推奨しています。
兵庫県は、これまでに生物多様性に関連した様々な事業をすすめており、国や他の都道府県に対するお手本となるものも多くあります。しかし、県全体として生物多様性にどう向き合うかを定めた「戦略」をもっていませんでした。そこで、兵庫県では2008年度の1年間かけて「生物多様性ひょうご戦略」(2009年3月策定)をつくり、兵庫県における生物多様性に関する様々な事業の方針をまとめました(※ この戦略の策定にあたっては、ひとはくの多くの研究員が関わっています。)。
詳しい内容は文末に示したHPにある戦略本文に譲りますが、ひょうご戦略の特徴としては(1)県内の生物多様性の現状や、g行政やNPOなどがこれまで行ってきた生物多様性への取り組みについてわかりやすくまとめていること、(2)戦略の実施状況を評価する数値目標が示されていること、(3)市町版の戦略の策定や企業・市民グループの生物多様性への取り組みを支援する制度や社会環境整備を目指していること、などが挙げられます。
兵庫県の生物多様性の守り、賢く利用し、その恵みを受けるためには、行政の取り組みに加え、兵庫県で暮らす様々な人々の協力が不可欠です。ひとはくでは、これからも生物多様性に関する普及・啓発や市民・企業活動の支援を進め、戦略の推進に協力してゆきます。ひょうご戦略が、みなさんが生物多様性について考え、行動するきっかけとなるテキストとして活用されることを期待しています。
橋本佳延
(自然・環境再生研究部 研究員/生物多様性タスクフォース メンバー)
<ひょうご戦略の公開場所>
兵庫の環境HP
http://www.kankyo.pref.hyogo.jp/JPN/apr/index.html
の画面右下のバナー群から「生物多様性ひょうご戦略」をクリック。
直接本文pdfへのアクセスは
http://www.kankyo.pref.hyogo.jp/JPN/apr/keikaku/strategy_of_biodiversity.pdf