六甲山のキノコ展 〜ミニ展示ガイド 【vol.6】〜
 〜スッポンタケ編〜
 

suppon.jpg
写真:土屋規麻太さん撮影

連載6回目となる今回は、前回のサンコタケに引き続き、くさいキノコの代表選手「スッポンタケ」を紹介したいと思います。
卵の殻のようなものを突き破り、にょきっと直立するキノコを見つけた男子生徒たちは、六甲山中にて下ネタ祭りになってしまいました。高校生の男子なんで、まあ仕方ないかな、と思っていたところ、きのこ研究会の山上さんから、このキノコの発見者も同レベルとのご指摘がありました(ちなみにかの南方熊楠もしかりです)。学名の意味が・・・です。
このスッポンタケの学名、Phallus impudicusなんですが、Phallusは「・・・」で、 impudicusは「恥しらずな」ということだそうです。博物館の公式ブログでは、これ以上は書けないので、詳しくはご自身でどうぞお調べください。
それはさておき、奇妙な姿なんで、森のなかで出会うと、なかなかのインパクトです。

では、兵庫きのこ研究会の奥田さんに、スッポンタケについて聞いてみました。

スッポンの首のような格好をしたキノコ。頂上の部分はグレバと呼ばれる胞子を作る器官で、独特の匂いを放つことでハエなどの昆虫をおびき寄せて胞子を運ばせていると言われています。グレバ以外の部分は輪切りにして中華風のスープなどに入れて楽しむことが出来ます。淡白な味わいですが食感がシャクシャクしていて珍味です。幼菌は卵型で、切ると未成熟のスッポンタケがゼリー状の物質に包まれているのが見えます。珍菌ですが、普通に観察され、見つけたときは、その奇妙な姿に嬉しくなります。 (兵庫キノコ研究会 奥田さんより)

suttupontake.jpg  suttupontake_youkin_danmen.jpg
写真:山上公人さん撮影 (右:幼菌が割れて本体が出てくるところ、左:幼菌の断面)

このキノコ、実は食べられるとのことです。標本を作成していても、サンコタケほどではありませんが、臭いが生ゴミ風でキツイので、とても食べれるとは思えないのですが・・・。幼菌を半分にしてみると、中にはゼリー状の物質が詰まっていて、はっきり言って気色悪いですが、とてつもなく薬効がありそうな雰囲気です。きっと、昔の貴族な皆さんは、精力剤とか言って食べまくってたんでしょうね。
このスッポンタケの幼菌なんですが、標本作成したところ、なかのゼリー状の物質は全然変化しません。凍結乾燥・真空引きしても、80度に加熱しても、ブニョブニョしたままで、全然カラっと乾燥してくれません(カゴタケ以外はちゃんと乾燥します)。きっと強力な保水成分が混じっているに違いありません。この成分を抽出して研究すれば、優れた保湿成分をもった化粧品ができるかも知れません。ですが、あの匂いを想像すると、スッポンタケ抽出液を顔に塗るなんて、・・・微妙ですね。なぜか得体の知れない薬効があるのではないか、と期待させてくれるキノコです(一同納得)。

DSC_0071.jpg   suppon_spec.JPG

さて、標本の作製ですが、こちらも難易度★★★★★です。とっても作るのがやっかいです。リアルに再現できません。
幼菌を野外の状態のように、張りをもったまま標本にすることは、未だにできておりません。どうしても表面に皺ができてしまいます。卵型の幼菌となるキノコのリアルな標本作成は、今年の課題です。どういう技法で責めるか、思案中です。穴をあけて凍結&減圧してもダメだったので、きっと常圧で含浸処理か、冷凍庫シリカゲル貯蔵(3か月放置)、とっとと中身を抜いて紙粘土詰めしかないかな、という感じです。
右側の写真がスッポンタケの成菌です。こちらは上手くできているのですが、以前にも紹介したとおり、腹菌類はいくらプラスティネーション処理しても、外気に触れていると、白い本体部分がどんどん黄変化してしまいます。ですから、ちょっと大きいのですが、樹脂封入標本にするのがお勧めです。せっかく作ったので、グレバ(先の黒いとこ)の部分にポッド用シリコンを使って、ぬめぬめ感を出したいと思っています(ある日突然展示物されると思いますよ〜)。

次回は、シイタケを紹介したいと思います。ちょっと連載速度が年度はじめで遅延しているとの読者の声がありますので、頑張ってたくさんの種類を紹介したいと思います。

もっと兵庫のキノコを知りたいひとは、「兵庫キノコ研究会」の美しいホームページをご覧ください!
http://www.hyogo-kinoko.jp/

御影高校の活動をご覧になりたい方は、以下のページから、SPP支援講座のページをご覧ください。
http://www.hyogo-c.ed.jp/~mikage-hs/
「御影高校のSPP支援講座」
http://www.hyogo-c.ed.jp/~mikage-hs/spp/index.htm 

■ぜひ博物館へお越しください!
「六甲山のキノコ展〜リアルな森の妖精たち〜」は、2009年5月31日まで開催
場所: 兵庫県立人と自然の博物館 4階ひとはくサロン

【注意】
キノコの鑑定には十分な注意が必要です。初心者が、ホームページや図鑑を見て、食用できるかどうかを判断することは、大変危険です。食用と判断できない時は確実に鑑定できる専門家に尋ねてください。素人判断で食用することで、毎年のように死亡事故が発生していますので、不用意に食べることはお控ください。

(みつはし ひろむね)


Copyright © 1995-2014, Museum of Nature and Human Activities, Hyogo, All Right Reserved.