六甲山のキノコ展 〜ミニ展示ガイド 【vol.3】〜
〜カイガラタケとチャカイガラタケ編〜
なんとか、これで3回目の連載です。
一応、「ほぼ日」を目指していますが、どんどんネタが尽きてきて休載に・・・。
そうならないように、がんばってゆきたいと思います。
今回は、山歩きする方ならば、わりと良く見かけるキノコ、「カイガラタケ」と「チャカイガラタケ」を紹介したいと思います。
左の写真が「カイガラタケ」で、右の写真が「チャカイガラタケ」です。
恥ずかしながら、きのこ展で標本をつくる前まで、全部「サルノコシカケ」だと思っていました。
うちの子どもに山で「これ何っ!」て聞かれて、「サルノコシカケっていうて、薬になるからお父さんが病気になったら採ってこい」と答えたような気が・・・。
大ウソつきでした。
ですが、この2種類ともいわゆる「霊芝」とよばれるもので、ガンなどの腫瘍に対して薬効があるようです。カイガラタケよりも、チャカイガラのほうがグレードが高いらしいです。
学術的には間違いでしたが、本質は外していないので、とりあえずヨシとしております。
もちろん固くて食べれませんで、煎じてお茶にして飲みます。
では、いつものように、兵庫きのこ研究会の幸徳さんと奥田さんに伺ってみました。
●カイガラタケ
針葉樹、広葉樹の枯木上に重なり合って発生します。表から見ると貝殻のような美しい環紋(同心円状の模様)が並び、似た模様を持つウチワタケと見間違えそうになります。しかし裏に返すと長いヒダがあることが、見分ける大きな特徴の一つとなっています。食毒は定かではなく、触った感じも硬いことから食べてみようとした人はいないと思われます。一度発生すると長い期間その場に定着し、キノコの表面にコケ類が発生している姿もしばしば観察されます。キノコが少ないシーズンにも見られますのでキノコウオッチャーの隠し玉になります。(奥田さん)
●チャカイガラタケ
硬質菌と言われているグループのキノコは、それほど美しくもなく、かわいくもなく、食べることができないため、キノコ愛好家には人気がありません。ところが、木を分解することができる唯一の生物で、生態系の中で必要不可欠な存在です。人気がないことのひがみか?「重要な役割を担っているんだ」と主張しているかのように夏でも冬でもよく見かけ、存在をアピールしています。本種もそんなキノコの1つで、広葉樹、とくにサクラの枯れ木を分解するキノコです。傘の表面は茶色、紫色、黒色などの環紋をあらわし、その姿形が貝殻のように見えるため、この名前が付けられました。硬質菌の傘の裏の形状は色々ありますが、本種はヒダ状です。(幸徳さん)
お二人のご意見をまとめると、いつでも見られる地味なキノコ、といったところでしょうか。それでもって、樹木を分解するので、生態系の中で重要な役割をしている訳ですね。
さらに、がんにも効くなんて、いい仕事しています。いぶし銀って奴でしょうか。
そんなことを知ってか知らずか(多分、知らんと思う)、御影高校の生徒たちは、「カイガラタケ様」と呼んでいます。
そのココロは?
採集会で、キノコが全然とれないときに、唯一とれるのがこのキノコなんです。いつもは普通に生えているので、あんまり見向きもされないのですが、キノコが不作のときに重宝されて、「カイガラタケ様」になる訳です。キノコウオッチャーの隠し玉といわれるように、「カイガラタケ様」は、観察会のネタ的にも良いものです。
さて、この2種類ですが、標本の作製はいたって簡単です。製作の難易度は、★です(5点満点で1点)。もともと固いので、天日干ししても良いぐらいです。それに、真冬に採りにゆけば、「天然凍結乾燥」状態になっています。しかし、樹脂含浸の処理を施して、展示中にカビが生えないようにしていますので、お茶にはできません。
チャカイガラタケは、封入標本にしてしまいました。
小さい標本しかなかったので、そのまま展示すると何かみすぼらしかったからです。
封入標本にして展示する意義は、手にとって見れる、という利点もありますが、「しょぼくて、どうしようもない標本」を、それっぽく装飾する役割もあります(琥珀色にするともっと良さげにみえる)。
みなさん、博物館展示にだまされないように。
次回は、カゴタケを紹介したいと思います。
もっと兵庫のキノコを知りたいひとは、「兵庫キノコ研究会」の美しいホームページをご覧ください!
http://www.hyogo-kinoko.jp/
御影高校の活動をご覧になりたい方は、以下のページから、SPP支援講座のページをご覧ください。
http://www.hyogo-c.ed.jp/~mikage-hs/
「御影高校のSPP支援講座」
http://www.hyogo-c.ed.jp/~mikage-hs/spp/index.htm
「六甲山のキノコ展〜リアルな森の妖精たち〜」は、2009年5月31日まで開催
場所: 兵庫県立人と自然の博物館 4階ひとはくサロン
【注意】
キノコの鑑定には十分な注意が必要です。初心者が、ホームページや図鑑を見て、食用できるかどうかを判断することは、大変危険です。食用と判断できない時は確実に鑑定できる専門家に尋ねてください。素人判断で食用することで、毎年のように死亡事故が発生していますので、不用意に食べることはお控ください。
(みつはし ひろむね)