皆さんは、インドネシアというと、どんなとことをイメージされるでしょうか?
「暑くて、いともかんたんに伝染病が広がる、貧しい国」でしょうか?
インドネシアは、大小の島々がつらなった島国です。マレー諸島とセレベス島
やニューギニア島の一部まではいってしまう、とても大きな国なのです。
面積は日本列島の5倍もあります。ですから、「インドネシア人」と一口に言っ
ても、いろいろな人がいます。民族や話すことば、さらには食べ物までもが、も
ともとは、地方によってことなったのです。
そういえば、人と自然の博物館から毎年行っている島はボルネオ島ですが、ボ
ルネオ島というのはマレーシアからの呼び名で、インドネシアではおなじ島をカ
リマンタン島と呼んでいるのですよ。
わたしはむかし、毎年のように、アフリカのコンゴ共和国とインドネシアに行
っていました。ところが日本での仕事が忙しくなり、忙しくなりすぎて、とうと
う6年前に脳梗塞になってしまいました。右半身が動かなくなったのです。そし
て闘病の後、2年前からやっとインドネシアには行けるようになりました。今で
はかなり動けるようになりましたが、それでもやはり、山に登ったり、坂をかけ
下ったりといったフィールド・ワークはムリなのです。
今、行っているのは、スマトラ島という西の端の大きな島と、ジャワ島という
首都ジャカルタのある島です。
スマトラ島のパダンという都市にあるアンダラス大学の先生といっしょに、車
に乗せてもらっていなかを回り、どんなところにどんな動物がいるかを調べます。
また病気になる前から通っていたジャワ島のパンガンダランでは、シルバールト
ンというサルの食べ物を調べたりしています。
写真;パダンの街なか
スマトラ島では、伝統的な〈我が家の畑〉がだんだん見られなくなっています。
それでもパダンの近くにはまだよく見られますが、パダンから山脈を越えた北東
へと続く広大な地域には、すでに伝統的な〈我が家の畑〉は見られず、かわりに、
どこまで行っても油ヤシのプランテーションが広がるようになりました。おなじ
地域には、国際的な石油会社もパイプ・ラインを伸ばしています。
写真2:若い油ヤシの畑
野生動物の生息は、プランテーションを広げたり、パイプ・ラインを引いたり
する妨げになります。ここにはアジアゾウやスマトラトラがいます。でも、生息
地を追われたゾウやトラは、畑に入りこんだり、家畜や人をおそったりするので、
人びとから恐れられています。
スマトラ島では、経済的な開発と、伝統の生活と、野生の自然が、互いにせめ
ぎ合っているのです。
(この連載は、不定期に続きます。)
三谷 雅純(兵庫県立大学/人と自然の博物館)
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