春といえばサクラ。
では、サクラといえば何でしょうか。たぶんソメイヨシノを連想される方が圧倒的に
多いのではないでしょうか。ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの自然交
雑または人工交配によって生まれた園芸品種であり、江戸時代中期〜末期に誕
生したと言われています。種子はできても正常に育たないため、挿し木や株分け
など栄養繁殖的な方法でしか増やすことができません。ですから、ソメイヨシノは
いろんな地域に植栽されていますが、実はそれらは遺伝的に全く同じもの、要す
るにクローンなのです(ご存知でしたか?)。
 
   
  
さて、話は突如かわって、ここからが本題です。ソメイヨシノは園芸品種ですが、
日本にはいろんな種類の野生のサクラが生育しています。このうち、今回は兵庫
県に自生する代表的なサクラ(バラ科サクラ属)をご紹介します。ソメイヨシノの花
見も楽しいですが、野生のサクラの花見もなかなかおつですよ。


1. エドヒガン
ソメイヨシノの母種。本州・四国・九州に広く分布していますが、兵庫県では大変
珍しく、兵庫県版レッドデータブックのCランクに指定されています。自生地は限ら
れていますが、妙見ケーブルや一庫ダムの周辺では比較的多くみられます。
花期は4月上旬〜中旬です。


2. ヤマザクラ
 県内各地の里山で普通にみられます。展葉と同時に花を咲かせるのが特徴で、
褐色の若葉と淡紅色の花の調和がたいへん優美です。
花期は4月上旬〜下旬です。


3. カスミザクラ
 県内に広く分布していますが、なぜか淡路島ではほとんどみられません。ヤマ
ザクラと同じく展葉と同時に花を咲かせます。ただし、若葉は黄緑色で花は白色
です。
花期はヤマザクラよりもやや遅く、4月下旬〜5月上旬です。


4. キンキマメザクラ
 本州の日本海側(兵庫県では但馬地域)を中心に分布し、蛇紋岩地帯に多いと
いう特徴があります。樹高は低く、5m程度にしかなりません。3月下旬〜4月上旬
に淡紅色の花を下向きに咲かせます。花は少なくて迫力に欠けますが、何ともい
えない風情があります。


5. ウワミズザクラ
ヤマザクラやカスミザクラに比べると数は少ないのですが、県内に広く分布してい
ます。サクラらしくないサクラで、花期(4月中旬〜下旬)になると、新しい枝の先に
総状の花序を出し、そこに白色の小さな花を数多くつけます。
その姿はまさに「白いブラシ」です。


                           石田弘明(自然・環境再生研究部)

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