昭和30年代、養蚕は貴重な現金収入で、田畑を耕す牛とともに織物の生産源
であるカイコはどの家でも見られました。また、地域でカイコの餌となる桑園をつ
くる必要があったことから、地域の繋がりを大切にした産業でもありました。
養蚕家屋も面白く、蚕棚、まぶし(カイコが繭をつくるために、段ボールで組んだ
小部屋です。)、暖房器具(養蚕には温度を一定にしておく必要があったことか
ら、暖房器具は必需品でした。しかし、これが原因で火事も多かったそうです)
など、様々な知恵が結集した空間を体験できます。そんなカイコが最近幼稚園
の環境学習で頻繁に用いられるようになってきています。カイコは子どもに伝染
する病気を持たない清潔な昆虫であること(逆に人間から感染することがあるの
で手洗いの習慣づけになること)、卵からマユ(蛹)になるのが約1ヶ月であり、
観察には丁度良い長さであること、織物や食材など人間の生活と密接に関わり
のある材料であることなどが、教材として有用である理由です。蚕1匹で1000m
以上もの糸を出すカイコを、学校やご家庭で育ててみては如何でしょうか?
嶽山 洋志(自然・環境マネジメント研究部)